今日は撮影、そしてレッスンは完全にお休み。とっても貴重で珍しい日だ。普通なら、休養を取ったりゲームしたりして過ごすんだけど...今日は、今日だけはいつもと違う。何故なら───
「...ここが卯月ちゃん達が今日踊るんだぁ...」
「世にも凄まじき波動が感じられる...(すごい大きいね...)」
──今日は、特別な日なんだから。
会場には始まる前から外にかなりの人達がいた。その数...おおざっぱに数えても千人は超えてると思う。今は物品販売中でもうこれでもか!っていうレベルで人が集まってる。私達?もう既に買ってるもんね!フフンッ!
「にしては...買いすぎだと思うにゃ...」
「そうかな...観賞用、保存用、布教用の三つは必要だって偉い人が言ってたよ。それに買ったのも団扇とライブで使うサイリウムぐらいだし」
「だからと言って同じ団扇三つずつは必要ないと思うにゃ」
勿論家族に布教するために余分に買ったからね。しかもコウは何故か城ヶ崎さんの団扇だけは絶対買えって言ってたしね...って、お?みくちゃんと...かな子ちゃんと智絵里ちゃん?皆から外れてどこか行ってる?
「ねぇねぇ、どこ行くの?」
「うん、卯月ちゃん達見に行くの!」
「凉月ちゃんも行く?」
「ん...行こうかな。コウ、良いよね?」
『勿論だ。最近あんまり会ってなかったしな...激励くらいはいいだろ』
「おっけ!行こう!」
◯ ◯ ◯
現在時刻は十二時過ぎ。コンサート開始までそれなりに時間はある状態であるはず...なのにも関わらず、控え室にはもう沢山のスタッフさん達が駆け回っていた。撮影の時にもスタッフさんはいたっちゃあいたんだけど...別物だねこれ。
「...あ、ここかな?」
「あ、ホントだ」
「ふ、ふん!どんな感じか見てやるにゃ!」
対抗意識かな?...まぁ多分そんな感じだろうけど。
「気付かれないようこっそり入るにゃ...」
「は、はい...」
...おろ、武内さんの声。プロデューサーとして卯月ちゃん達に激励かな?...なんでかな、急に私なんかが激励していいのか少し不安になってきた。
いやコウはいいんだよ?ダンス上手いし私なんかよりずっと凄いからね。でも私は...私には個性っていうのがないからね。精々ゲームがちょっち出来るって程度だよ。でもその程度...なんだよね...
「──ほら、凉月ちゃんも!」
「ふぁえ?」
「卯月ちゃん達に一言言うために来たんでしょ?」
「あ、えっと...あの...」
あーこれもう皆言った感じだ...だったら私達も言わないとだよね?
えっと...なんて言おうかな。今まで練習は見られなかったけど───これは長すぎる!!えぇとそれじゃあ...
『...ルリ、皆困ってる。言うなら早く言おうぜ?』
「わ、分かってるよ!...えっと...」
『はぁ...ただ一言、「頑張って」だぞ?オレを言うから...な?』
「一緒に?...うん、分かった」
私は軽く...ほんの一瞬だけ目を瞑る。完全にコウと入れ替わるものじゃなくて、心を一つにする...みたいな簡単なもの。
そして────私達は告げる。
「『頑張って!」』
「「「「!!」」」」
...あれ、どうしたんだろ三人とも。てか武内さんまで驚いてる?
「い、今ルリリン...コウルンもいたよね?」
「は、はい...赤と青が混ざってました...」
「混ざってた...のかな...」
なんて言ってるんだろ...うっすら聞こえたけどコウルンて...いやコウルンて。
『...笑うなよルリリン』
「いや笑ってないけど...とりあえず戻ろうよ。邪魔になっちゃうし」
「あ、うん。そうだね」
「は、はい」
「...一体何が起こったのにゃ...?凉月チャン自身は分かってないみたいだけど...」
◯ ◯ ◯
ライブの感想は...ただ一言、圧巻だった。会場で響き渡る歓声、無数のサイリウム、その中で笑顔で踊り歌う先輩アイドル...そして、卯月ちゃん達。人間ってすごいって思ったときは本当にすごい、しか出てこないものなんだって初めて知ったよ。
いつか私もコウも...こういったステージに出るのかな。出たいと思う反面、怖いという震えが沸き上がってくる...
気付けば私達は寮に帰っていた。暫くの間ゴロゴロしてたりゲームしてたりしたんだけど...まだライブでの興奮が収まる気がしない。
よしそうだ。レッスンしに行こう。なんか今日はそんな気分になってる。
「コウ、これからレッスンしに行きたいんだけど...いいよね?」
『オレもそろそろお前に同じことを言おうと考えてた。さ、行こうぜ!』
たった今、私達には目標が出来た。
それは────まずは卯月ちゃん達に追い付くこと。勝手にライバル的な感じにして申し訳ないけど、それは許して貰おう。だって、置いていかれるのだけは嫌だから!