ガトーカンパニーが崩壊したという情報はあっと言う間に波の国の住人全てに知れ渡った。
更にアスマはガトーの保有していた資産の一部を波の国大名の許可を得た後、今まで搾取されていた波の国の住民に分配した事で一躍時の人となり、英雄と称される事となった。
そしてガトーの死により手の平を返した様に島民達が橋造りに協力したことで、予定より早くタズナの橋が完成を迎えた。
「アスマ大橋か……ま、それだけの活躍はしてくれたから当然かな」
ナルトの名など一文字も見当たらない橋の名を見て、俺は今だ住人に感謝と別れを惜しむ声に囲まれるアスマに視線を向ける。
「おじさん、本当に帰っちゃうの?」
「アンタはガトーを倒してこの国を救ってくれた英雄だ」
「アスマさん、本当に何度感謝の言葉を言えば良いか」
あの調子でもう1時間近く出発の予定が遅れてしまい、紅達は勿論の事他の第十班の面々も呆れた様子でアスマを見つめていた。
「先生~、いい加減に出発しないとまた一泊する事になるぜ」
「そうよそうよ。早く木の葉に戻ってガトーの事報告しなきゃいけないんでしょ」
「分かってるって。じゃあ皆さん、お元気で」
完成された橋に一歩踏み出したアスマの表情はとても晴れやかな物だった。
しかしその顔は紅から発せられた一言で一瞬で曇ってしまう。
「ねえアスマ、私達はこれから寄る所が有るから先に木の葉に帰っててね」
「なっ!?そりゃないだろ。俺だって付き合うぜ」
「アナタは里への報告が最優先でしょ。火影様には忍具の買い足しで遅れるって伝えておいてね」
それから暫く食い下がるアスマだったが、同行を断固拒否する紅にガックリと肩を落とし、第十班のメンバーに慰められながら再不斬との死闘の末手にした戦利品である首切り包丁を担いで木の葉へと歩みを進めるのだった。
「あの男のお陰で波の国が本当に生まれ変わる事が出来そうじゃ」
「そうね……ねえイナリ、弟と妹だったらどっちの方が嬉しい?」
「な、何それ!?あの煙草オヤジまさか!!」
アスマ達が去った後にタズナ一家はとある誤解をする事になるのだが、その誤解が解けるのはいつかツナミが真実を話した時だろう。
空区と呼ばれる廃墟群。
ここにはうちは一族が代々忍具の取り引きをしている猫バアと呼ばれる人物が住んでおり、俺は第七班のメンバーと、どさくさに紛れて一緒に付いて来たイノと共に廃墟の中を歩いていた。
「なんか陰気臭い所ね。本当にここに忍具屋なんて有るの?」
「陰気臭くて悪かったニャ。サスケ、久しぶりだニャ」
サクラの悪態に反応したのか猫バアまでの案内役の忍猫デンカとヒナが現れる。
「久しぶり。ほら、マタタビボトルとここに来る前に見つけたオマケの生のマタタビの実だ」
「相変わらずの上物だニャ。猫バアの所まで案内するからついて来るニャ」
通行料となるマタタビボトルを受け取った忍猫達は俺達を猫バアの元へと案内し、俺は波の国で大量消費した兵糧丸の補充と、その他忍具類を用意して貰う。
「ありがとう猫バア。おつりは取っておいて良いから」
「随分と羽振りが良いのサスケ。下忍の稼ぎで良くこんな大金貯めたね」
「ちょっと臨時収入が有ってね。それよりタマキはどうしたんだ?」
タマキとは猫バアの孫娘の事だが今は姿が見えない為何処にいるのか尋ねると、俺が訪ねてきたと知って店の奥へと駆けて行ったらしい。
俺は店内を物色するサクラ達を残してタマキが居るであろう店の奥へ向かった。
「え~と、この服はちょっと派手すぎるかな?どうしよう早く決めないとサスケ君が帰っちゃう」
猫バアの店の奥の居住スペースではタマキがクローゼットの中から衣服を取り出しあーでもないこーでもないと悩み続けていた。
「何をしてるんだタマキ?猫バアの店で服も売る気になったのか?」
「きゃんっ!!さ、サスケ君っ、駄目だよ。今こんな格好なのに」
下着姿で悩んでいたタマキの背後から不意に抱き着くと、タマキは驚きと恥ずかしさから俺の腕から逃れようと足掻いた。
「この前来た時はもっと恥ずかしい格好してただろ?何だったら今から同じ姿にしてやろうか?」
下着の上からタマキの胸の先端を摘まんで耳元に息を吹きかけ舐め回すと、タマキは形だけの抵抗を止めて俺の指と舌の動きに翻弄される。
「あっ、アッ、あアァん。さ、サスケ君っ、も、もうらめらってぇ」
「本当に止めて良いのか?こっちは準備出来てるって言ってるぜ」
片腕を下半身を覆っている下着の方へと移動させ、タマキの身体を三ヶ所同時に攻め立てると、波の国で経験を積み更に高まった俺の技術によりタマキは止めどなく続く刺激に耐え切れず、店内に漏れない様に塞いだ俺の口内に嬌声を発した後気を失ってしまった。
「随分お楽しみだったみたいだニャ。マタタビの匂いよりも濃い臭いがするニャ」
「猫バアには黙っててくれよ。この間はそれで商品汚して買い取りになったんだから」
タマキとの復興作業を終えて店内に戻った俺は、店の奥で何をしていたか察している紅達を連れ立って木の葉に戻ろうとするが、大事な用件を思い出し猫バアに頼みごとをする。
「なあ猫バア、ちょっとお願いというか頼みたい事が有るんだけど」
「なんじゃ?まさかこのババにまで手を出す気じゃないだろうね?」
その台詞を聞いたサクラ達は引きつった表情をしていたが、俺は猫バアの冗談を敢えて無視して背後隠れている人物に声をかける。
「実はさ、この店で雇って欲しい人が居るんだよ。白、猫バアに挨拶してくれ」
「初めまして。白と言います。真面目に働きますので雇ってくれませんか?」
突然現れた白にサクラ達は勿論の事、紅ですら驚きを隠せずにいた。
「もしかしてこの子が波の国で協力してくれた子?」
「ああ、なあ頼むよ猫バア」
本音を言えば白も木の葉へ連れて帰ってやりたい。
しかしもし白の正体がダンゾウなどに知られた場合、今の俺では流石にどうする事も出来ない。
そこで定期的に会いに来る事と時期を見計らって必ず迎えに来ると白を説得して、まずは猫バアの元に身を置いて貰う事を了承して貰ったのだ。
「さっきのお釣りが妙に多かったのはこの為でもあったのかい。先に言っておくけど給料は安いから後で文句は言うんじゃないよ」
「はい、ありがとうございます。サスケ君なるべく早く迎えに来てね」
どうやら猫バアは白を預かってくれるみたいだ。
俺は感謝の言葉と共にガトーの元から失敬した金の入った巻物を白に渡して一時の別れを惜しんだ。
「いや~それにしても白さんって美人だったわよね。サクラなんか足元にも及ばないって感じじゃない?」
「アンタも人の事言えないでしょイノブタ。ハッキリ言って白さんとアンタじゃ月とスッポン以上の開きが有ったわよ」
原作ではあの容姿で男だったという事実を知ったらこの二人はどういう反応をするのかと思いつつ、俺はこれから先もこんな予想外の事態が起きてしまうのかと、不安と期待が半々に混ざり合った感情で紅達と共に木の葉への帰路についた。
「おや、今日は馴染みのお客さんが続く日だね」
「……武器と薬、それから他に欲しい物はコレに書いて有る」
サスケ達が猫バアの店を訪れたその日の深夜、一人の男が赤い雲の刺繍がされた衣服を纏い現れた。
その男こそうちは一族をサスケを残して滅ぼし、現在暁と呼ばれる組織に身を置いているうちはイタチであった。
「誰が訪ねて来たのか聞かないのかい。昔は良く二人でここに来てたのにねえ」
猫バアの言葉にイタチは特に反応を見せる事は無く、用意された品物を手にすると代金を払って立ち去ろうとする。
「そうそう、言い忘れていたがサスケは随分と女にモテる様になってたね。まさか私まで口説こうとするとは年甲斐も無く心を揺さぶられてしまったよ」
その台詞にピクリと肩を震わせ、イタチは立ち去ろうとした足を止めて猫バアに目を向けた。
「……猫バア、俺につまらない冗談を言うとはどういうつもりだ?」
「おや?やっぱりまだサスケの事が気になるんだね。嘘か本当か知りたいなら本人に直接問い質せば良いじゃないか」
写輪眼対策なのか目を瞑ってそう応える猫バアにそれ以上何も言わず、イタチは物陰からこちらを観察する人物を一瞥すると足早にその場を後にする。
イタチが去った事を確認した白は自分の気配を一瞬で察したイタチの実力に驚きを隠せずにいた。
「あの人がサスケ君のお兄さんですか?」
「まあね。でも、サスケにはイタチがここに来た事は秘密にするんだよ」
「お買い物は済みましたか?私も何か買いに行けば良かったですかね?」
廃墟の外で待っていたイタチの相棒である暁のメンバー干柿鬼鮫は、戻ってきたイタチが僅かに動揺している事に気付いて中で何か有ったのかと思い遠回しに尋ねる。
「あそこにはお前が欲しい品は揃っていないさ。余計な詮索は止める事だ」
「フッフッフ、それは失礼しました。では行きましょうか」
イタチが何に動揺したのか興味が有った鬼鮫だが、付き合いの長さから本当に詮索されたくない内容だと察してそれ以上は踏み込まずに愛刀鮫肌を担いで歩き出した。
(サスケ……お前は俺に復讐するつもりは無いのか?)
猫バアに聞かされたサスケの現状を思案するイタチの表情は弟を心配する兄の顔であった。
ツナミは暫くは退場ですが暫く後で再登場します。
白に関しても同様の扱いです。