「「キャー!!サスケ君カッコイイ!!」
「サスケ君間に合ったんだ……良かった」
サスケの登場にサクラ達女性陣は沸き立つが、ナルト達男性陣はというと失格処分にもならず当り前の様に試合を始めようとするサスケに不快感を露わにする。
「ケッ、遅刻して来た癖に格好つけやがってよ」
「そうだそうだってばよ。どうせ昨夜腐った牛乳でも飲んでさっきまで下痢してたに決まってるってばよ」
ナルトの発言に殺気の籠った視線が集まったのを感じたキバ達はナルトから距離を取ると、サスケへの罵詈雑言が悲鳴に変わるのを聞こえないふりをして試合の予想をし始めた。
「で、どっちが勝つと思うよ?俺はネジが勝つ方に賭けるぜ」
「僕はサスケに賭けようかな。何だかんだで同期で一番強いのはサスケだし」
「俺はネジだ。何故なら奴の柔拳はサスケの体術を凌いでいる」
「俺はメンドクセーからパス。て言うか俺は自分の試合だけで手一杯だっての」
試合を控えているシカマルは自分が戦う事になる砂の忍者テマリの方に視線を向けると、表情こそは変わって無いがサスケを見る目がいの達と同様の物である事に気付き、結局コイツも女かと深く溜め息を吐いた。
騒がしい木の葉の下忍達とは対照的に砂隠れの下忍3人は異様なほど静かに佇んでいた。
「やっと前座の試合が始まりそうじゃん。精々木の葉の忍者同士で潰し合えばいいじゃん」
「カンクロウ……アンタちょっと黙ってな」
何故か姉であるテマリに殺気を籠った目で睨まれたカンクロウは後退りし、何か機嫌を損ねる事をしたのかと考え込むが心当たりが思い浮かばない。
(クッ、木ノ葉崩しの情報漏れがバレない様に事が起きるまで砂隠れの忍者らしく振る舞えって言われてたけど、私もアイツ等みたいにサスケを応援したい)
テマリが不機嫌でいる理由をカンクロウが知るのはもう暫く先の事になるだろうが、そんなテマリとカンクロウのやり取りには一切興味が無い我愛羅は、品定めをする様にサスケとネジを睨み続けていた。
そして試合を観戦する為に会場を訪れていた日向一族の長、日向ヒザシは娘のハナビにネジの戦いをその目に焼き付けておく様に指示をする。
「いよいよ始まるか。ハナビ良く見ておけ、あのネジこそ日向の才の寵愛を受けた者だ」
「はい父上……あの人がうちはサスケさん」
だがハナビが注目しているのはネジでは無くサスケであり、その事に気付いたヒザシはハナビを叱咤しようとした。しかし、木ノ葉崩しが始まった際の警護配置として周囲には各国の大名が多く座っていたため、大名の目を気にして気付かなかったフリをし、ネジの戦いぶりを亡き弟に代わり目に焼き付けようと目を凝らした。
「やれやれ、どうなる事かと思ったけどようやく始まりそうだな」
「ああ、奴らがどのタイミングで始めるか分から無いから常に周囲に目を配らないとな」
お陰でネジの試合観戦に集中出来ないなと冗談を言うガイとそうだなと相槌を打つカカシだったが、神妙な顔で会場の客席を見回すアスマが気になり声を掛ける。
「ちょっとちょっと、いくら何でもそんな露骨に見回したら怪しまれちゃうでしょうが」
「そうだぞ。それともまさか大蛇丸を見つけたとか言い出すんじゃないだろうな」
「居ないんだ……紅も会場に来てる筈なのに、一体何処に居るんだ」
一ヶ月ぶりに会えると思ってたのにと呟くアスマに、カカシとガイは揃って溜息を吐きつつも未だ現実を受け入れられないアスマを励ます様に肩を叩くのだった。
「随分と凝った演出の登場だったな。てっきり逃げ出したのかと思ったぞ」
「ただの寝坊だ。待たせて済まなかったな」
ネジの挑発に俺は遅刻した事は事実なので正直に遅れた理由を告げたのだが、それを余裕の冗談と捉えたのかネジは俺を睨み付けてくる。
「その余裕の態度も今の内だけだ。うちはと日向、木ノ葉においてどちらの一族が最強かこの試合で俺が証明してやろう」
「うちは一族はもう木ノ葉には俺しか居ないんだから、今更お前が証明しても意味ないだろ」
だから俺は一族復興の為に文字通り精を出している訳だが、俺の言葉を曲解したのかネジは機嫌を悪くして眼光を更に鋭くさせた。
「それは日向の分家に生まれた俺では貴様の相手は務まらんと言いたいのか。ならば思い知らせてやろう、貴様が俺に敗北するという運命をな」
「お前等お喋りはそこまでだ。そろそろ試合を始めるぞ」
試験官に促される形で会場の中心でネジと対峙すると、俺は自分が負ける訳がないと自信に満ちたネジとどう戦うか頭の中でいくつか思案する。
「それでは第一試合、日向ネジ対うちはサスケの試合。始め!!」
この後に待ち受けている木ノ葉崩しに備えて手札を必要以上に晒さず勝利しなければならないのが難点だが、ある程度考えを纏め終わった所で試合開始の合図がされた。ネジは俺が遠距離系忍術を使う前に勝負を決めるつもりなのか一気に距離を詰めて来た。
「油断したな。貴様はもう八卦の領域内だ」
ネジは柔拳の奥義八卦六十四掌を繰り出すが、綱手との修業で回避力が飛躍的に向上している俺はその全ての攻撃を躱し、逆にカウンター気味にネジの顎目掛けて拳を突き出し殴り飛ばした。
「ガハッ!?ば、バカな、俺の動きを見切ったと言うのか?」
「お前が倒れてる以上そうなるな。ギブアップするなら今の内だぞ」
この状況はネジにとって想定外の事態だったらしく、ネジは態勢を立て直す為に俺から離れ距離を取る。しかし、その隙に俺は印を結び2体の影分身を作り出す。
「あああっ!!サスケの奴、俺の影分身の術パクリやがったってばよ!!」
客席からナルトの怒号が聞こえた来たが相手にするつもりは無いので無視すると、俺はネジを中心に影分身を含め三方から囲う様に位置取った。
「「「火遁・鳳仙火の術」」」
「無駄だ!!八卦掌・回天」
三方から迫る多数の火球をネジは全身のチャクラ穴からチャクラを大量放出しながら回転し全て掻き消してしまうと、ネジは落ち着きを取り戻したのかまた自信に満ちた表情になっていた。
「見たか、これぞ日向一族最強の絶対防御術。この回天の前には如何なる攻撃も無意味だ」
「どうだろうな。どんな術にも穴となる弱点はあるらしいぜ」
「なら試してみるがいい。お前はもう俺に触れる事すら出来ん」
回天の防御力を誇るネジの自信を折るべく、俺は影分身と共にネジに向かって殴り掛る。
「無駄だと言ってるのが分からないのか!!」
俺の無策とも思える突撃に怒ったネジは再び回天を使い迎撃しようとするが、チャクラを込めた俺の拳がネジでは無く地面を殴りつけた事で発生した地割れに足を取られ、バランスを崩して蹌踉めき膝を付いてしまう。
「何っ!?グホッ!!」
その隙を突かれたネジは影分身に殴られ蹴り飛ばされ、そのまま地面を転がり倒れ伏したまま中々起き上がろうとしない。
「くッ、足場を破壊するとは盲点だった。だがそれでも回天そのものを破られた訳では無い」
「その格好で言われても負け惜しみにしか聞こえないぜ」
慢心してるつもりは無いが同じ一ヶ月の準備期間を与えられたとはいえ、俺は影分身に修業を分担させて単純計算でネジの12倍の修業を積んだのだ。
更に師匠となった綱手の指導を受け、上忍のアンコ達や白を相手に修業を重ねて来た今の俺が本気を出せば、いくらネジが天才とはいえ苦戦する事はまずあり得ないだろう。
「どうする?まだ続けるなら相手になってやるぞ」
「当然だ。今度こそ俺の柔拳で貴様を仕留める!!」
予想を大きく裏切る試合内容に、サスケとネジの試合を観戦している者達は驚きを隠せずいた。
「嘘だろ?サスケの奴、あのネジを圧倒してるぜ」
「俺の目に狂いが無ければ予選の時はネジの方が実力は上だった。それが僅か一ヶ月でこれ程までの差を付けてしまうとは」
キバとシノは限られた準備期間で実力を信じられない程高めたサスケに驚愕し、先程まで野次を飛ばしていたナルトは一言も発さず悔しそうに歯噛みをする。
「チクショウ、どうしてアイツはあんなに俺より先に行っちまうんだってばよ」
「今更妬んだって仕方ないだろ。自分の実力の範囲内で適当に頑張るしかないんだよ」
「そうそう、サスケは僕達とは違って天才なんだから」
マイペースなシカマルとチョウジは悔しがるナルトを慰めるが、その慰めが却ってナルトのプライドを刺激してしまい焦りと苛立ちを生み出してしまう。
(クッソォ、こうなったら俺もあのゲジマユを倒した我愛羅をボコボコにして、サスケや皆をアッと言わせてやるってばよ)
そう心の中で誓ったナルトは離れた場所で試合を観戦している我愛羅を睨み付けるのだった。