其ノ壱
雪が降る
私は路地裏でひっそりと倒れている
たった16年、か···
いや、16年生きられたことに感謝しないと···
体から熱が奪われていくのが感じられる
死ぬのだな、と 改めて実感が湧く
(神様、どうか最後におばあちゃんに会わせてください···)
そう願った時、目の前に幻想的な光の玉が現れた
その中から一人の美青年が現れる
「···リーリエさん」
何で私の名前を···?
「16年間、よく頑張りましたね」
何で16歳ということを知ってるの?
「ん?疑問に思っているような表情ですね
···私は名も無き渡り神です
みんなからはワタリガミって呼ばれています」
ワタリガミ···様?
確かどこかで聞いたことがあるような···
(ワタリガミ様、どうかおばあちゃんに会わせてください···)
そう言おうとしたけれど、口が動かない
けれど、ワタリガミ様は心の声が聞こえるらしい
「おばあちゃん、ですか
たしか、税金を集める仕事を任されていたからフランス革命で処刑されてしまったのですよね?」
はい、という意味を込めて頷く
とても優しいおばあちゃんだった
厚い信頼があった
王族から税金を集める仕事を任されたことが災いして、死んでしまった
「···いいでしょう 但し、一つだけ大きなリスクがあります」
リスク?
「このまま倒れていると、同い年の青年に助けられて、大きな幸せを掴み取れます」
うーん、リスクには思えないけど···?
「ただし、おばあちゃんに会いに行くと···」
急に声のトーンが低くなった
「あなたはここで死んでしまいます」
おばあちゃんが処刑されてから二年間
一人でずっと生きてきた
時には盗みを働き
時には自らの体を売り
生活費を稼いでいた
そんな日々が今日 終わりを迎える
幸せを掴むのか 死んででも会うのか
究極の2択だった
「あと三分ですかね?
三分以内に決めないとどちらも叶わぬまま死んでしまいますよ」
猶予は無い
どっちを選ぶのか
私が選んだのは···
不思議なことに体が軽くなった
ワタリガミ様の手を握り、立ち上がる
「···分かりました
では、おばあちゃんに会わせてあげましょう」
幸せではなく、おばあちゃんを選んだ
私とワタリガミ様の体が空へ舞い上がる
「では、処刑執行の前日に飛びます」
神様って時間も越えられるのか···と関心しつつ、ワタリガミ様と過去へ遡る
さようなら、この世界···
フランス革命から二年後のロンドンの路地裏で命の花が散っていった
革命の渦に巻き込まれて死んでしまったおばあちゃんに再び会うために···