駆逐艦響戦闘詳報   作:Вер提督

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拙作は「艦隊これくしょん-艦これ-」の二次創作であり、作者が練習で書いたものです。
ただ史実をなぞるだけの内容なため、大変読みづらくなっております。また艦艇(艦娘)の轟沈(死亡)描写が多々ありますし、歴史を見ればどういう結末になるかは御存知でしょうから、注意してください。
過去の人物を侮辱していると捉えられかねない表現が多々ありますが、あくまでもフィクションとしてお楽しみください。実在する或いはした人物団体その他のいかなるものに関係ありませんし、また特定の思想を植え付ける事を目的にしていません。当方にそういった意志は一切ありません。
あと、作者の文章力と語彙力は大変に見苦しいものであり、またウィキペディアの記述を中心に話が作られているので「これ間違ってるよ!」「ここおかしくない?」とかあったら優しく教えてください。


第一報告:昭和一九年 三月一八日 インドネシア/セレベス海南西部

 

第一報告

 

昭和一九年 三月一八日

インドネシア/セレベス海南西部

 

 

 時は昭和一九年、大東亜戦争のまっただ中。

 戦端を切って落とした真珠湾強襲から既に二年と三ヶ月が経過していた。

 劈頭(へきとう)こそ優勢であった戦いは、連合国の果敢な反撃により劣勢に立たされている。

 

 大日本帝国はソロモン海戦及びレンネル沖海戦を経て、奪還は絶望的となったガダルカナル島からの撤退を決定。去年の二月にケ号作戦が発動された。

 捲土重来に由来するその作戦は成功を治め、万にものぼる兵が救出された。だがそれは捲土重来を期するというよりかは、ただ惨めに敗者が逃亡するかのようにしか見えず、半年にも渡る膠着により失った戦力は米豪両軍より限界が低い日本にとって致命的な損害である。

 そしてその五ヶ月後、乾坤一擲を意味するもう一つのケ号作戦、即ちキスカ島撤退作戦が発動した。潜水艦による補給を行った第一期作戦では潜水艦三隻を失ったものの、水雷戦隊による守備隊撤退を行った第二期作戦は大成功。アリューシャン方面の重要拠点であったアッツ島及びキスカ島を放棄したことは結果として北方部隊に余力を持たせることになり、南方の諸島のような泥沼を避けることを達成していた。

 しかし、食糧不足を皮肉り()島と呼ばれたガダルカナル島、敵国に暗号が殆ど解読されていたが故に起こった山本五十六大将の戦死、そしてアッツ島守備兵たちによる萬歳突撃(玉砕)

 敗戦の足音は明瞭に聞こえるようになっていた。

 

 

 最前線最大基地であるブイン、ラバウル、ショートランド。そしてそれらを支えるフィリピン、インドネシア各島が太平洋における日本の生命線だ。

 そしてインドネシアを構成する島の一つ、セレベス島。「K」の字に棒を乗せたような形をしている島である。

 その北部に位置するセレベス海を三隻の軍艇が駆けていた。

 

 額の真ん中で茶髪を分け、前髪の下に鉢巻きを巻いた女性(空母)

 そして彼女より頭一つ以上小さい、白髪と茶髪、二人の少女(駆逐)

 

 輸送作戦を遂行中の千代田(ちよだ)、そしてそれを護衛する第六駆逐隊所属の(ひびき)(いなづま)である。

 

「どうするのです?」

 

「どうするもこうするもないさ。目的地まで、あと300、いや290ってとこかな。引き返すほどの事じゃない」

 

 何の前振りもなく、要領を得ない問いかけを電が発した。

 しかし、それに響は直ぐに答える。

 そして千代田も一拍遅れて続いた。

 

「……どうかしたの二人とも。周囲に敵影無し……もしかしなくても潜水艦?」

 

「その通りなのです千代田さん。……あぁもう、気づかれてるみたい」

 

「ああ。恐らく、結構遠いけど近づいてきている。狙われてると見て良いだろう。電、爆雷の準備を」

 

「もう始めているのです。安心してください、千代田さん。絶対に沈ま(死な)せないですから」

 

「……はは、ありがと。魚雷の一発や二発で沈む気はないけど。こんなところで死ぬわけにはいかないもの、よろしくね」

 

 そう気丈に振る舞う千代田の顔は若干引きつっている。潜水艦の脅威を知らぬ者は聯合艦隊に居ない。

 

「ここまで来たら泊地まで接敵しなければよかったのに」

 

「そんなに甘くはないさ」

 

「言ってみただけなのです」

 

 呉から今まで遭遇が無かっただけに電の気落ちは大きいようだったが、しかし電も日帝海軍が誇る歴戦の特型駆逐艦。響の言葉に、直ぐさま緊張感を取り戻す。

 

「……電、威嚇で数発撃とうか」

 

「了解なのです!爆雷投射始め!」

 

 電の艦尾に設置された九四式爆雷投射器が起動し、潜水艦を沈めるための爆弾が放られる。

 とはいえ、その射程は数百mほど。何km(五海里)も先にいる潜水艦には決して当たらない。そもそもこの距離で気づけた事が幸運であったと言うべきであろう。九三式水中聴音機の性能は決して良いとは言えないからだ。

 だが、こうする事でこちらが敵潜水艦の接近に気付いていると相手に知らせる事ができる。

 

 結局、敵潜水艦は何もせずに去って行った。

 緊張を一瞬解いた電は張り詰めたままの響を見て再び対潜警戒を強める。千代田も水上艦がいないかどうか、水平線を見渡している。

 速力を大きく上げ、目的地へと急いだ方が良さそうだった。

 

 一隻の油槽(ゆそう)船と共に、四人で呉を出発したのが三週間前。

 真っ直ぐ南下しサイパン、西へ向かいマニラ、そこから南東にあるパラオと寄港し、その途中で油槽船とは別れた。

 そして今、バリクパパンに到着する。セレベス島のすぐ西、カリマンタン島の東南海岸に位置する港だ。

 

 誰一人として欠ける事なく無傷で入港でき、ようやく響は緊張を解いた。

 途中、響と電、合わせて計一六発の爆雷を消費してしまったが無駄とは思わない。 

 響が護衛しているのは貴重な空母なのだ。ミッドウェー島沖で空母四隻(一航戦と二航戦)を一挙に喪失してから、その価値、戦術的有用性は一層高まっている。

 キスカの撤退作戦から現在までで、響は龍鳳(りゅうほう)飛鷹(ひよう)海鷹(かいよう)と三隻の航空母艦を護衛してきた。その経験から、響は空母の護衛は輸送船のそれよりも精神を消耗すると思っている。

 こちらに航空支援が無く敵に有るなら負け、逆ならば勝つ。今はそういう時代だ。

 日帝海軍は方向性を間違えた。もしかしたら、現在も大艦巨砲の幻想に捕らわれた将校がまだ上に残っているかもしれない。大艦巨砲はもとより、夜間に奇襲し雷撃を放つ時代もとうに終わっているというのに。

 

 思考が負の方向へ落ち込んでゆく事を自覚しながら、響はそれを止める事ができない。

 ソロモン海戦で()()んだと聞いてからずっとこの調子だ。

 これでも大分回復してきた方だが、そろそろ切り替えなければならない。あれから一年以上が経つのだ。

 電は変わった風を見せないし、今は別行動をしている雷もしっかり前を見据えていた。同じ悲哀を抱いている筈の妹たちは、響と違って強い。

 

 情けないな、そう自虐する。

 

 四人しか居ない特Ⅲ()型駆逐艦だからこそ、姉妹を失った哀しみが少ないのだ。

 十何人と姉妹がいる他の駆逐艦はもっと多くの哀しみを背負っているというのに。

 それでも、瞳に火を灯し戦っているというのに。

 嗚呼情けない。これが大日本帝国が誇る聯合艦隊附属艦の姿か。

 

「……響ちゃん、大丈夫です?入港作業終わったよ?」

 

「ああ」

 

 自分でも驚くほど低い声が出た。

 妹に不機嫌をぶつけてはいけないと、響は自制する。

 (あかつき)亡き今、第六駆逐隊の長女は次女()なのだ。

 情けない姿を見せる訳にはいけない。少なくとも、これ以上は。

 妹たちを支えるのは自分なのだと自らを奮い立たせる。

 

「響ちゃん」

 

「大丈夫だ、電。心配は要らない」

 

「響ちゃん」

 

「何だい。次の作戦?」

 

「四日後にパラオへ出港だそうです。引き続き千代田さんも一緒に。……響ちゃ」

 

「そうか、戻るのか。パラオへ着いたら呉へ帰投かな。工廠にもっと良い対潜装備を要求しないと」

 

「響ちゃん」

 

「しつこいよ、電。まだ何かあるのか?私は大丈夫だと言ってる」

 

 反射的に電を睨めつけ、すぐに後悔した。

 響は電を支えたいのであって、傷つけたいのではない。

 

「っすまない、疲れているみたいだ」

 

「大丈夫、響ちゃんは悪くない……もう休みましょう?明日は補給もありますし、少しは疲れも取れると思うのです」

 

「……すまない、気を使わせてしまって。やっぱり、悪いのは弱い私だ」

 

「響ちゃん……」

 

「……おやすみ」

 

「……おやすみなさい」

 

 電が何かを言いかけたのを見て、響は有無を言わせぬよう目を閉じる。

 それから三夜過ごしたバリクパパン泊地は、響から疲れを全く取り去ってくれなかった。

 




お読みいただきありがとうございました。
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