呪腕先生は人理修復後、ハルケギニアに呼ばれたようです 作:海棠
「ま、ますたー?私が?」
ルイズは呆けたような声でそう言った。いまだに現実が飲み込み切れていないらしい。
「えぇ、その通り。貴殿が望んでおられたのでここに参上いたした次第。貴殿の目となり剣となることをここに誓いましょう」
「え・・・?そんなに簡単に認めちゃっていいの?」
「・・・?どういうことですかな?」
「え、だって、私たちまだ会って10分すらたっていないのよ?それなのにそんなこと誓っちゃっていいの?」
「・・・私は誰がマスターであろうと付き従うのみ。これだけは譲れませぬ」
「え、でも・・・」
「ヴァリエール嬢、契約は早めにすました方がいいですよ?」
彼女が彼のあまりの献身ぶりに困惑しているとコルベール先生が口出ししてきた。人が悩んでいる最中なのになに口出ししてんだこのハゲと彼女は思ったが口に出さないことにした。
「あ、あの・・・」
「?」
「ち、誓いのぎ、儀式をするから、その・・・かがんでくれないかしら?!!」
「承知」スッ
するとアサシンは素直にひざを曲げて顔をルイズの高さに合わせる。
「あの・・・」
「?」
「その仮面、はずせるかしら?」
「縫い付けておりますゆえ無理ですな」
「ファッ?!!!!!」
さらっと言ったが何言ってるんだこいつ、とルイズは内心パニックになった。
「しかし、なぜそのようなことをお聞きに…?」
「こ、こここここここうするからよ」
すると彼女は間髪入れずに彼の口にあたる部分にキスを落とした。次の瞬間、シュバッと彼は後ろに下がる。
「何をしておいでですか魔術師殿!自分の身は大事にしなければいけませんぞ!」
「あんたはお母さんか!」
「そもそもヌグゥ?!」
するとアサシンは左手を抑えた。何か焼き付くような痛みが走ったのだ。少しするとその痛みは引き、代わりなのかは知らないが甲に何か文字が刻まれていた。
「・・・?」
アサシンは不思議そうに自分の左手を見つめているとコルベールが近づいて話しかけてきた。
「あの・・・」
「?」
「左手にある文字、拝見させてもらっても?」
「どうぞ」
特に隠す必要性もないので彼は素直に左手を見せるとコルベールは興味深そうにそれをしげしげと眺めていた。
「ふむ、珍しいルーンですね」
そう言いながらコルベールは彼に刻まれているルーンをさらさらと書き写した。
「では今日はここで終わりです。皆さん、帰りましょう」
そして移し終えた手帳をパタンっと閉じると彼はふわっと空に浮かび上がった。
彼は少しびっくりしたが彼のいた環境では普通に人は飛んでいたのであまり気にしないことにした。
「ルイズは歩いて帰れよな!」
「あいつレビテーションどころかフライもできないもんな!!」
そういうと周りの人間が笑いだす。
ルイズはイラつきながら浮かんでいく人たちを見た。
アサシンはそんな彼女を眺めていた。
すると彼女はこっちを見るとつぶやいた。
「帰るわよ」
「承知」
するとアサシンは左手でルイズをしっかりと抱える。
「・・・え?」
「魔術師殿、しっかりとつかまっていてくだされ」
次の瞬間、二人は風になった。周りの景色がどんどん後ろの方に流れていく。途中にある障害物をまるでそこにないかのように踏破していく。
そして空を飛んでいたやつらをぶっちぎりで追い抜いて一番乗りで到着した。
ルイズは思った。
(あれ?私結構すごい使い魔を召喚しちゃった?!!)
と。
夜、アサシンとルイズは自室にいた。
「で、改めて自己紹介させてもらうわ。私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。あなたを召喚した人よ」
「ではこちらも。サーヴァント・アサシン。魔術師殿の目となり剣となり盾となることを誓おう」
「その・・・」
「?」
「そのアサシンって名前偽名みたいなものなの?本当の名前ではなさそうよね・・・?」
「・・・その通り。これはクラス名。そして私は暗殺者のサーヴァント。闇夜に紛れて殺すことなぞ造作もない」
「あ、うん。もっと聞きたいことがあるわ。その、さーヴぁんとってなに?」
「サーヴァントとは英雄が死後、祀り上げられ英霊化した存在のことです。まれに反英雄や守護者、神霊、幻霊など詳しく説明すれば膨大な量になりますからここは割愛しましょう」
「えっと・・・、つまり?」
「私は過去の人間です。つまり故人です。しかし『今』に遅れを取るつもりはありません」
そういうとアサシンはふと窓越しに空を見た。天には二つの月が浮かんでいた。
「なっ・・・」
さすがの彼もこれには驚愕した。自分が知っている世界では月は一つしかないのだから。
「・・・魔術師殿」
「なによ」
「少しばかり私にも質問させていただきたい。ここの名前は?国は何という?」
「ここはトリステイン王国よ。常識でしょ?」
「ではさらに質問を。今の西暦は?」
「せいれき?よくわからないけれど、始祖ブリミルがハルケギニアに降臨したのが今から6000年位前の話らしいわ」
「・・・ッ」
今度こそ彼は確信した。自分は完全に別世界に呼ばれたのだと。
よくよく考えたら魔術が秘匿されていない時点で気づくべきだったと彼は思った。
「・・・魔術師殿、一つ心して聞いてほしいことがあるのですが」
「?」
「私は別世界から来たようです」
するとルイズは何言ってんだこいつみたいな表情になる。
「あんた何言ってるのかしら?」
「その発言は百も承知です。ですが、私の知っている夜空には月は一つしか浮かびませぬ」
「それこそあり得ないわよ。月は二つなんだもの」
「確かにここはそうですが・・・」
「と・に・か・く・私は確認しておきたいことがあるのだけれど」
「・・・何でしょう?」
「薬草とか、探せる?」
「なにか写真でも見せてくれれば探せますぞ」
「しゃしん?なによそれ」
「おぉっと、これは失礼。私の世界の単語をつかってしまいました」
「えーと…探せるのよね?」
「情報さえ渡してくれれば探せるかと」
「わかったわ。ところで」
「?」
「あなた私と五感をリンクできるかしら?」
「ふむ・・・ではお互い少し意識してみましょう」
「えぇ、わかったわ」
すると二人は意識を集中し始めた。片方はムムッと、もう片方は瞑想するように意識を相手に集中させる。
「・・・わっ」
彼女は声を上げた。彼は
「・・・うぷっ」
すると急に具合が悪くなったのか彼女は口を抑える。彼は無理やりリンクを切るとすぐに彼女の背中をさすり始める。
「大丈夫ですか、魔術師殿。あまり無理をなされるな」
「い、いや、大丈夫よ。ちょっと鋭かっただけだから・・・」
「・・・我々サーヴァントの五感のうち特に視力と聴力は人間よりも高くなっておりますゆえこのような事態になったのでしょう。ですから少しお休みをなされるといい。休めば次の日には気分もよくなりましょう」
「あんた、主夫なの?」
「暗殺者です」
「あぁ、そう・・・あ、これ」
そう言いながら彼女は彼に何かを手渡してきた。なんとそれはブラジャーだった。
「?・・・?!ま、魔術師殿!」
「んぁ、なによ」
「このような下着をホイホイと男に渡すものではありませぬぞ!」
「あんた従者じゃない」
「それはそうですが・・・!」
「じゃあお休み」
「・・・はっ。よき夢を」
すると彼女はすぐに眠りこけてしまった。彼はそれを見やると窓からするりと抜け出し、部屋をあとにした。
「ふむ・・・どうやら中世ごろぐらいか」
そう口にしながら彼はとある屋根の上で街並みを眺めていた。前のマスターたちの冒険が自分にこうして知識を与えたのだ。
「大気中の魔力も非常に濃く呼吸をするだけで魔力を補給できる。しかもこれだけ明かりが少なければ闇夜に潜みやすいというもの。なかなかいい世界ではないか。・・・ん?」
そう静かに分析していると彼の目にふと留まったものがあった。それは大人が子供を無理矢理路地裏に引きずりこんでいる姿だった。
「・・・」
次の瞬間、彼は跳んだ。
「おらっ、手を焼かせんな!」
「むぐー!!」
その男は貧乏だった。お金がなく、毎日の生活に困っていた。しかし彼は働くことが嫌いだった。ずっと親のすねをかじっていた。
彼はあるとき、思いついたのだ。
子供を売ってしまおうと。
そうすれば働かずに金は自分に入ってくる。相手側も満足する。まさにWinWinの関係だった。
そして今もこうして子供を拉致る。
しかし、今日は運が悪かった。
ドンッ
「うわっ」
「うぉ?!」
何かにぶつかった。子供ともども男はしりもちをついてしまう。
「テメェ、どこ歩いて…!」
男はぶつかった相手に暴言を吐こうとして、つまった。相手があまりにも異質だったからだ。
まず第一印象として黒かった。そのものを黒だけが支配していた。しかし顔は違った。顔は白い骸骨を模した仮面が張り付けられていた。一見してみればその顔だけが暗闇に浮かんでいるようにも見える。
「て、てめぇは・・・な、なにものだ」
「・・・」
次の瞬間、その黒い影は男の目の前まで一瞬で移動すると脇腹に拳をめり込ませた。
「かはっ・・・!」
男はたまらずうずくまる。
「坊や」
「え・・・?僕…?」
「そうだ。この男は私が相手をするから君はもう帰りなさい。親が待っている」
「う、うん!」
すると子供はとたとたと路地裏を出て行った。
ここからは暗殺者の領域である。一般人にはまず見せられない自分たちの仕事の時間だ。
彼は男の胸ぐらをつかんで無理やり立ち上がらせると壁に強めに押し付ける。
「貴様」
「な、なんだよぉ」
「あの子をどこに連れて行くつもりだった」
「だ、誰が教えるかクソッタレ」
「ほう・・・ならば」
そう言いながら彼は男を地面にねじ伏せると短刀を男の首元に突きつける。
「これでもはかないか」
「う、うわぁああああああ」
「さぁ、はけ」
「わ、分かった。吐くよ。吐けばいいんだろ?!」
すると男は吐いた。貴族の名前も、どこにその貴族の豪邸があるのかも。そしてなぜ自分が子供をさらうのかも。すべてはいた。
「・・・これで全部か」
「あ、あぁそうだ。だから約束だ。見逃してくれ。頼む」
次の瞬間、短刀は男の首に突き刺さった。抜くと大量の血があふれる。痙攣し始めたが少しするとピクリとも動かなくなった。
「・・・自分の
・・・それに約束した覚えなぞない」
彼はそう吐き捨てるとそのままその場をあとにした。
しばらくして街にはとある貴族とその取り巻きが何者かによって殺されたといううわさ話が流れた。それと同時に行方不明になっていた子供たちも帰ってきた。
その子たちはみな口をそろえてこう言ったらしい。
「黒くて大きな人が助けてくれたような気がする」と。
幕間:カルデアでの会話
※ハサン先生は「外法で呼ばれたため第五次聖杯戦争の記憶がなく、ほかのメンツはあり」、「先生は初期に来た」という設定です。
ランサー編
「ここがカルデアという所ですか・・・なかなかに広いですな、魔術師殿」
「あぁ、うん。ここはすごく広いから私も最初は迷っちゃったよ。エヘヘ」
「あ、マスター何してんだ」
「あぁ、ランサー。紹介するよ。この人、アサシンっていうらしいんd「!」ってなんで槍構えてるの?!危ないよ?!!!」
「おい、なんでテメェがここにいやがんだ」
「話聞いて?!」
「魔術師殿、後ろに」
「ここでケンカしないでね…?」
「承知」
「ハッ、砂蟲風情が忠義とはな」
「出会いがしらの人にいきなり砂蟲とは・・・いささか失礼では?」
「てめぇ・・・それわかって言ってんのか?」
「???いまいち意味をはかりかねますが…」
「・・・もしかして記憶ねぇのか?」
「?何のことでしょう?」
「・・・チッ」スタスタ
「な、なんだったんだろ?」
「さぁ・・・私にはわかりませぬが何か複雑な事情が絡んでいる様子。ここは様子見ということで」
「あぁ、うん」