名ばかり冒険部っ!   作:こたねᶴ᳝ᵀᴹᴷᵀᶴ᳝͏≪.O

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月下連邦は民主主義の月下国本州を宗主に、帝が収める君主制の都市国家、都皇国(正式には国名はなく、国際社会向けに名乗っているもの。)、武士階級の国である人工島群、月下武国(こちらも正式には国名はない。)によって構成される極めて密接な連邦国家である。
本州のとある高校、冒険のできない名ばかりの冒険部(を名乗っているが部活としての申請をせず、同好会としている。)に、今年も新入部員が……


1話「名ばかりの冒険部」

「ここが冒険部の部室……」

 

冒険部同好会、と扉の横に貼り紙のされた部屋の前に、ひとりの少女が立っている。

少女、菖蒲(しょうぶ) 桜子(さくらこ)の赤紫色の瞳が、何度も貼り紙と扉を行き来する。ここが冒険部の部室で間違いはない。

意を決して扉をノックし、返事を待って扉を開ける。

 

「しっ、失礼します!」

 

扉の向こうが少女の瞳に映る、緊張して微かに揺れていた瞳は、驚きに固まることになる。

緊張の原因となっていたような、少女の思い浮かべていた、厳格な騎士団の拠点、あるいは屈強な冒険者たちの集う酒場のような光景はそこになかったからだ。あるのはただ、平凡な、少し狭めの現代の部屋と、数人の少女たちだけ。男すらいない。

 

「……ここって、冒険部の部室であってますよね?」

 

黄色い瞳の少女が応じる。その横の、黄緑色の瞳の少女も話す。

 

「うん、そうだよー?君は入部……というか入会希望の子だよね。」

 

「今年は1人かぁ、珍しいねぇ。」

 

「いっつも入会希望だけは多いもんねー、人は増えないけど。で、入会希望ってことであってるよね?」

 

「はい……入会って、部活じゃないんですか?」

 

「うん、ここは部活の申請はしてないよ、ただの同好会。これを知らずに来る子も多いねぇ。」

 

「部って名乗っちゃってるからでしょー。」

 

「まあ……うん。とりあえず、最初に自己紹介しとこうか。

 私が一応会長をやってる常陸(ひたち)勇火(ゆうか)。こっちのおっとりしてるのが……」

 

「一応副会長の苗代(なえしろ)ひたち。勇火の苗字と名前がいっしょで紛らわしいけど、私の名前はひらがなねぇ。」

 

「で、あっちで暑苦しい格好してこどもビールあおってるのが赤佐(あかさ)あいり、向こうで空を眺めてるのが浅葱(あさぎ)瑠璃(るり)ね。君は?」

 

「わたし、菖蒲(しょうぶ) 桜子(さくらこ)って言います!:

 

「うん。なんて呼べばいい?」

 

「なんでも……」

 

じゃあとりあえず菖蒲さんで。最初に言っておくけど……」

 

「……この冒険部は、名ばかりだからね。」

 

「名ばかり……?」

 

「うん。まぁこの現代の平和なこの国に、冒険をするようなところはないってこと。

 活動内容はといえば普段はここでのんびりしたり、あとは一応冒険ってことで山とか海とか森とか探検したり。でも小旅行程度にしかならないね。高校生だし。」

 

「はぁ……」

 

「なんかの思いつきで変わったことをするってのもあるけど、本当にこれで全部だよ。こう、冒険者!って感じの冒険はないね。」

 

これで少女、桜子が抱いていたイメージは全て消えた。

いや、壁に飾ってある剣と盾などは残っている。背景の現代的で無機質な白い壁で台無しだが。

 

「びっくり、って感じだねぇ。よくあることだー」

 

「いっつもは半数ぐらいがこれで帰って、残りもちょっと体験したあと去って行って、大体は登山部あたりに行くけど。どうする?」

 

「うーん」

 

冒険部、と聞いて抱いていた印象は全て消えたが、だからと言って桜子は落胆したというわけでもなかった。

元来英雄譚や冒険者の話を好み、憧れていた彼女は、冒険部、という名を聞いてここにやってきた。漠然とした、何かしたい、という気持ちの後押しを受けて。

しかしどうしても冒険がしたい、というわけでもない。憧れはあっても、そうして危険に踏みこむような勇気……というよりは体力がないのだ。彼女は運動が不得意であった。

むしろ冒険部の活動内容、ちょっとした山や海の探検、というぐらいに魅力を感じていた。

 

「わたし、あんまり運動とか得意じゃなくて……冒険には憧れてたけど、できる気はしないっていうか……

 だから、思ったより過酷じゃなさそうな、そういうちょっとした探検とか良いかなって思いまして。

 だから、とりあえずは居てみようと思います。」

 

「おー、これも珍しいタイプだね。今年はなんだかいつもと違う。」

 

「むしろ入会しない入会希望者のみなさんの方が冒険者らしいぐらいだしねー」

 

「まあ、そういうことならしばらくここにいたらいいよ。気に入らなかったらやめればいいし、あんまり本格的でないことなら大体はできるから。

 先輩とか後輩とかもあんまりないし、のんびりしたいだけでも。」

 

「はい、よろしくお願いします!」

 

「じゃあ奥までどうぞ……、さっき紹介した奴らにもうちょっと細かい自己紹介を……

 っと、私も改めて自己紹介しとこうか。、常陸勇火。一応会長をやってます。趣味は……、なんだろう?ぱっと思い浮かぶことがないな。よろしくね。」

 

「私も?私は苗代ひたち。趣味は……ひなたぼっこかな。よろしくねぇー。」

 

「やあ新たなる同志候補よ!私は赤佐あいりだ!よろしく頼むぞ!歓迎のウォッカはどうだ?」

 

「ウォッカじゃなくてこどもビールでしょ。私、浅葱瑠璃、趣味は空を飛ぶこと、空を眺めること。よろしく。」

 

「私、菖蒲桜子って言います!趣味は……本を読むこと、とか?運動は苦手だけど外に出るのは好きです。よろしくお願いします!」

 

「自己紹介も済んだし、あとは適当に。あいりあたりが色々教えてくれるでしょ。」

 

「おう!さて桜子同志候補!歓迎のウォ……こどもビールはどうだ?わかさいももいいぞ、これは実に革命的な菓子だ!」

 

「か、革命的……?」

 

「あいりの言う事はあんまり深く考えなくていいよー。ちょっと変わった趣味してるのよー。悪い子じゃないから、仲良くしてあげてね?」

 

「……あ、晴れてるのに雨。」

 

空を眺めることに戻った瑠璃からの呟き。

皆が揃って窓を見れば、その通りに、晴れた空から水が落ちてきていた。




菖蒲桜子
新入会員(仮)。冒険者とかに憧れを持つが平和的で少し引っ込み思案。
運動は苦手だが外に出るのは好き。
黒髪、赤紫の瞳。

常陸勇火
会長。まとめ役。濃い奴らに対して個性が薄いのを少し気にしている節がある。
黒髪、黄色の瞳。

苗代ひたち
副会長。おっとりのんびりしてる。間延びした口調で話す。
黒髪、黄緑の瞳。

赤佐あいり
会員。共産趣味者。キャラが濃い。根は気さくでいい子。
黒髪、赤の瞳。暑苦しい格好というのは常時ロシア帽等のこと。

浅葱瑠璃
会員。空が好き。寡黙なようなそうでもないような。
黒髪、深い空色の瞳。
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