「はぁ・・・・・・」
IS学園整備室の一つ。
そこで1人の少女が溜息をつきながら作業をしていた。
更識 簪
日本代表候補生でもある彼女だが、目の前には製造途中の自身の専用機。
本来、彼女の専用機は倉持技研が製造するはずだったが、男性操縦者でもある織斑一夏の専用機開発が優先されることとなり、彼女専用機開発は凍結されてしまった。
そしてコアを引き取り、姉がそうしたように自分で専用機を組み上げようとしているのだが・・・なかなかうまくいっていないのが現状のようだ。
「・・・やっぱりお姉ちゃんと違って無能なのかな・・・私」
そう言ってネガティブ思考になってしまう。
--ならその体、俺が有効に使ってやるよ。
「・・・え。・・・だ、誰?」
突然、自分以外誰もいないはずの整備室から声が聞こえたため、簪は慌てて周囲を見回す。
「・・・気のせい?」
しかし、その背後には怪しく光る球体が浮いていた。
--もらうぞ、その体!
「・・・え? あぐっ!?」
その球体が体に入り込んだときにはもう彼女の意識は深く沈んでいた。
簪の体に憑依したソイツは目を赤く光らせながら、手を握ったり開いたりして感触を確かめていた。
「【初トライにしては上手くいったな。言ったとうりこの体は有効活用させてもらうとするぜ。・・・さてと、そういえば今からあいつらの摸擬戦だったな】」
ソイツは座りながらモニターを展開する。
さらに自身の声を簪に戻す。
「現在のアイツらの力を拝見しましょうかね」
征兎side
一夏が無事に専用機を受領して、初期設定以外を試合中にやれと言われ、しどろもどろしながら金髪さんと試合を行いしばらく・・・。
「行ってくる」
--なんてカッコよく? 言い残して行ったが結果は・・・負け。
しかも自滅・・・。
途中までかなり劣勢だったけど 一次移行(ファースト・シフト) したことをきっかけに勝負を決めるかと思われたが・・・まさかのエネルギー切れ。
一夏の専用機である 白式 の 単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー) 零落白夜 の能力をキチンと把握してなかった結果みたいだ。
そのやらかした一夏は現在、千冬さんと箒にボロカスに言われている。
・・・まぁ、あんだけカッコつけて色々言ってたのにあの負け方だったからねぇ~。
「桐生、オルコットの準備が整い次第試合を行う。準備をしておけ」
「わかりました」
さて、ようやく俺の出番か・・・テンション上がっちまうな!
「征兎! 勝ってこいよ!」
「まぁ、なんだ・・・その・・・がんばってこい」
いつのまにか復活してた一夏と箒が激励してくれる。
「おう! 任せときな!」
「負けたら、玄乃さんに頼んで特別訓練だな」
などと恐ろしいことを和海が言ってくる。
・・・確かに短期間だったがnascitaでやった訓練は超きつかったからな。
あれは遠慮したい。玄乃さんもとても良い笑顔で課してくるからイヤなのよ。
「じゃ、じゃあ行ってくるわ」
クソ~、せっかく上がったテンションが下がっちまったよ・・・。
まぁ、いいさ。結局はやるんだからな。
「おい、征兎!? おまえIS纏わないのか!?」
アリーナのほうに行こうとしたら一夏がそう言ってきた。
「ん? あ~、せっかくだからみんなにも見せてやろうかと思ってな。俺が専用機をその身に纏うところを」
そう答えると和海は嘆息しながら肩を竦めやがった。・・・別にいいだろうよ!!
「そういえば、ISスーツに着替えず制服のままだな。いいのか?」
「あぁ。まぁすぐにわかる、楽しみにしときな」
と、そんなこんなでアリーナに向かって歩く・・・あ。
「そうだ、一夏に聞こうとしてたことがあったんだ」
「おう? なんだ急に?」
試合前にこれだけは聞いておきたかったんだよな・・・。
「金髪さんの名前ってなんていうんだ?」
そう聞くと箒と和海共々ズッコケられた。
「・・・え!? 今更!?」
・・・だって仕方ないじゃん。聞こうにもタイミングが・・・。
ちなみに金髪さんの名前は セシリア・オルコット とのこと。
よし、相手の名前も知れたしで・・・準備万端だな!
IS学園での初陣、張り切って行くぜ!!