征兎side
眠い……。
これもすべて朝いきなり俺を叩き起こしやがった和海のせいだ。
しかし、玄乃さんから――
『とっても大事な連絡があるの』
――と言われては直立不動にならざるを得ない。
内容が内容だっただけにその時点では眠気が完全に覚めてしまった。
しかし、教室に着いてからまた眠気が……。
みんななんかISスーツについて話してるっぽいけど、俺たちはそんなん関係ないからどうでもいいな。
そうして眠気と戦っているうちにいつのまにか先生たちが来ていた。
「みなさん、今日はなんと転校生を紹介します。それも2人です」
なんで転校生が2人いて、両方このクラスなの?
その時点で多少なりとも怪しいんだけど……。
教室に入ってきた2人だがみんな驚いている。
それぞれ金髪と銀髪だが、金髪の方の格好が……
「え……お、男?」
男子の制服を着ていたからだ。
みんなは4人目の男子だと騒いでいるが、俺は今朝聞いた話のせいでまったく男に見えない!
確かに中性的かも知れないけど、所々女って感じが隠しきれてない気がする。
「初めまして。シャルル・デュノアです」
シャルル・デュノア……ね。
同じ境遇がどうこう言ってるけど、聞く気にもならんよ。
そもそも一斉検査で見つからず、今頃出てきたとか怪しさ満点よ。
しかもあのデュノア社……。
頼むよ……変なことしないでよ……。
『今日あたりにそこにフランスから転校生が来ると思うの。男の格好をしてるけどただの男装女子よ。ハニートラップやデータを盗まれたりしたら、半殺しにしてすぐに連絡しなさい。フランスという国名がなくなるぐらいの報復をするから』
――という我らの所属企業の社長からのお達しがあるのでね。
要点をまとめたところで恐ろしいこと言ってるのは変わりないわ。
――バシッ!!
……ん?
「私は認めない!お前があの人の弟であるなどと」
……え?
何が起こったん?
気づいたら一夏が銀髪の転校生に平手打ちをくらってたんだけど……。
あ~……とりあえず一夏……ドンマイ!
「え~と……織斑くんと桐生くん、それと猿渡くんでいいかな? 僕は……」
「ゴメン! 挨拶は後だ! 行くぞ!」
「わあぁぁぁ!?」
次の授業が2組との合同での実習ということで、移動するわけだが一夏がデュノアの手を掴み一目散に走って行ってしまった。
どうせ転校生男子を見たいがために集まった女子たちに阻まれて終わりだろうけど。
まぁ俺たちは巻き込まれないようゆっくり行きますかね。
どうせ、着替える必要ないし。
そんなこんなで案の定、一夏たちは授業に遅刻した。
なぜか一夏だけが出席簿の餌食となったが、改めて授業が進められる。
「それでは、今からISの起動及び歩行訓練を開始する」
しっかし、相変わらずISスーツってのは過激ですな……。
ホントに視線には気を付けないと……。
「まずは……そうだな……オルコット、凰、前へ出ろ。お前たちにまず戦闘の実演をしてもらう」
戦闘の実演か……。
まぁ専用機持ちならすぐに始められるし妥当かな。
「はぁ……まるで見世物ですわね」
「まぁやるしかないわよね……」
当人はあまりやる気はなさそうだが……。
だが、それを見かねた千冬さんが2人に耳打ちをした。
すると、セシリアが目に見えてやる気を出した。
「やはりここは、イギリス代表候補生である私の力を示さなければなりませんわね!!」
「あんたも現金ねぇ……」
あんなにやる気になるとは……いったい何を言われたのだろうかね?
「勘違いする前に言っておくが、お前たちの相手は別にいるぞ」
「「え?」」
相手? ……誰?
「きゃあぁぁぁぁぁ! ど、どいてくださーい!!」
2人の相手が誰なのか考えていたところで、上の方からそんな声が聞こえてきた。
……上!?
見ると、ISを纏った山田先生が上空から墜ちてきた。
……って避難しないとヤバイのでは!?
「……へ?」
ボケーっとしてたのか、間の抜けた声を一夏は出していた。
……あ~しかも、アイツのとこに落ちるな。
一夏だしもう別にいいか……。
――ドォォォォォン!!
そして、そのまま一夏のところに墜ちた……。
一夏よ……せめて何かしらのアクションを起こしてほしかった。
「お~い一夏~大丈夫か~?」
「あぁ……なんとか大丈夫だ」
「そうかそうか。それは良かっ……た……」
いちおう声をかけ、無事であることを確認したのも束の間。
直後の光景を見て、思わず固まってしまった。
なんと――一夏が山田先生の胸を鷲掴みしてたのだ!!!
ラッキースケベにも程がある!!!
当人たちは何故か離れず、わけのわからないやり取りをしているが……。
「一夏、お前!! なんてけしから――んん! うらやましいことを!!!」
アレ??
思わず叫んじゃったけど……なんか違くなかった?
「征兎……お前……バカだろ?」
和海にそう言われた直後、背後に殺気が……。
振り返った瞬間、衝撃が――
「ぎゃぷ!!??」
「…………」
そのまま漫画のように吹っ飛ばされ、壁に激突した俺はあっけなくダウン。
……万丈……もう少し加減してくれても良かったのでは……?
「さて、バカは放っておいて授業を再開する」
……そんなぁ~……。
――ガクッ。
俺はそのまま意識を手放した……。
――目が覚めたのは、昼休み直前だった。