征兎side
あれから少ししてからデュノアが泣き止み、落ち着いてきた。
「ゴメンね……僕のために話を中断させちゃって」
「気にすんな」
ここまで来たら乗り掛かった舟どころか、もう乗り込んでるって感じだしな。
「なぁ……俺、思ったんだけど、生徒手帳に書いてある“特記事項”を使えばなんとかならないか?」
特記事項?
あ~あの……学園は色んな国や企業の介入を原則的に許可しないって感じのヤツか?
「これがあれば少なくとも三年間は大丈夫じゃないのか?」
そう思いたくなる気持ちもわかる。
だが、現実は非情なのだ。
「……一夏」
「千冬姉?」
やっぱり千冬さんはこれの役に立たなさをわかっていたみたいだな。
「その考えは甘いと言わざるを得ない」
「な、なんでだよ……」
「理由はいくつかあるが、一番はデュノアが代表候補生であることだ。その時点でそれはほぼ適応されない」
「どういうことだ?」
まぁ一夏の頭じゃ難しいかもな。
「簡単に言うと……代表候補生である以上国の命令には逆らえないってこった。デュノアの場合だと、フランス政府に国に帰ってこいって言われたらそれに従わないといけないってこと」
「……マジかよ」
「規則なんてそんなもんだ」
俺のザックリとした説明に愕然とする一夏。
いつの時代も規則は破られるためにあるのさ……ってか。
「ホント俺たちに相談してくれてなかったらどうなっていたことやら」
「そうだな。その点に関しては上出来だった」
「え?」
突然の千冬さんからのフォローに一夏も呆けたような声を出していた。
ちなみに俺も驚愕です。
「お前のことだ。迷惑をかけたくないとか言って相談するのを渋っっていたに違いない」
「う……」
さすが姉弟。お見通しってわけですね。
「今度からはそんなアホなことは考えず、キチンと相談しろ。私はお前の姉であり、家族なんだからな」
「……千冬姉」
あー感動的なシーンだなー。
もう俺ら完全に空気じゃね?
和海も肩を竦めてどうしようもない感を出している。
「なんにせよ、デュノアの両親と直接話してみてからだな」
あ……感動シーンは終わってたのね。
「デュノアのことをなんとも思ってないのか、それとも先程の推測通りデュノアを守るためにやったことなのか。それを確かめないと動くに動けん」
だよな……。
さっきのはあくまで推測であって真実ではない。
「デュノア、なんか連絡手段みたいなのあるか?」
「あ、うん。あるよ」
ポケットから小型の通信機みたいなのを出して、テーブルに置く。
「じゃあお願いできるか?」
「うん」
デュノアがそれを少しイジると投影型のモニターが出てきた。
音声だけかと思ったらまさかモニターが出てくるとは……。
これは次の俺の発明に役立つのでは? もっとよく仕組みを理解して……。
「征兎、後にしろ」
和海にたしなめられた。
なんで考えてることがわかった?
「お、映った」
その声に反応し、画面を覗くとどこかの部屋が映っている。
「これはどこだ?」
「多分、デュノア社の社長室だと思う」
画面にはもう一つ、後ろを向いてる背もたれ付きの高級そうなイスが映っている。
デュノア社の社長さんが座っていると思うんだけど……。
なんでこっちを向かないんだ?
「お……お父さん?」
恐る恐るデュノアが声をかけた。
するとイスが回転し、正面をこっちに向けようとしていた。
俺はイスが正面を向けば、デュノア社の社長――デュノアの父親が映ると思っていた。
そう……高級そうなスーツを着た男性が映ると思っていた。
だけどモニターに映ったのは――
『【残念だが、社長さんは今ここにいないんだ。悪いな】』
――俺たちが二度と会いたくないと思っていた赤い全身装甲。
――ブラッドスタークだった。