征兎side
そんなこんなで放課後。
俺たち男子生徒組(デュノア含む)と万丈はトーナメントに向けてのトレーニングをするためにアリーナに向かっていた。
トーナメントでは敵同士とはいえ、一人では何かと効率が悪いからな。
「そういや俺の白式って他の武器を入れられないんだよなぁ。なんでだ?」
「それは多分、零落白夜――単一仕様能力にほとんどの拡張領域を使ってるからだと思うよ。一夏のISには後付武装《イコライザ》が無いんだよね?」
「あぁ、そんなのは一切なかったな」
で、今は一夏が自分の白式について聞いているところだ。
「そういえば、単一仕様能力ってなんだっけ?」
このアホウは……。
「その名の通り、そのISだけが発動できる特殊能力みたいなもんだ。白式の場合だと零落白夜がこれに該当するな」
「自分の専用機のことなんだからしっかり知っておけよ」
「あれってそんなにスゲェものだったのか」
俺の説明と和海の一言にこの返し……。
コイツちゃんと勉強してんのか?
「通常は二次移行《セカンドシフト》して初めて発現するはずのものなんだよ? それが一次移行の時点で発現してるんだから……」
「それってそんなにスゴイことなの?」
「前代未聞だ」
「マジか」
「ヘェ~、そうなんだ」
コイツらホントに大丈夫か?
教科書読めばわかることだぞ、これ?
「それに確か、零落白夜って織斑先生が現役時代に使ってたISと同じ能力だよね?」
「らしいな。姉弟だからか?」
「さぁな。ISは未だに謎な部分が多いらしいからな」
開発者である束さんでもわからないことなのかもしれないな。
もしそうなら、その謎を是非ともこの天才物理学者の手で解明してみたいもんだ。
「んん?」
「どうした、万丈?」
なんか万丈が急に立ち止まって疑問符を浮かべ始めたため、それとなく聞いてみる。
「いや、なんか周りが……」
「そういや、なんか騒がしいっていうか、慌ててるっていうか……」
ふむ……確かに、周囲の女子たちが慌ただしくしているな。
なぜだ?
「なんかアリーナで代表候補生が戦っている……みたいだな」
通りがかった女子たちの話を聞いたんだろう。和海がそう教えてくれる。
代表候補生……ね。ここにいない代表候補生っていうと、鈴とセシリア、あとはあのラウラってヤツ。
……なんだか嫌な予感がする。
「行ってみるか」
「そうだな」
この予感が杞憂で終わってくれることを思いつつ、俺たちもアリーナへ急いだ。
アリーナに着いた俺たちの目に飛び込んできたのは、ラウラのヤロウが鈴とセシリアの首を締め上げてる光景だった。
――って何やってやがんだ、アイツ!?
「ヒドイ……。あれじゃ機体がもたないよ!」
「このままじゃ、2人が!」
デュノアと万丈がそれを見て思わず叫ぶ。
無理もない。それほどまでに状況はヤバイ。
今はまだISの絶対防御に守られてるが、機体のエネルギーが切れたらそれこそ終わりだ。
「おい、やめろ!!」
「そいつらはもう戦える状態じゃないだろ!!」
すかさず、一夏と和海がヤツに向かい叫ぶ。
だがヤツはそれを聞き、やめるどころか、こちらを向きニヤリと笑いやがった。
「あのヤロウ……!!」
もうキレそうだった。
だが、今はまだそのときではない。まずは2人を救出しないと。
「とりあえず、デュノア! 誰でもいいから先生を呼んできてくれ! それと救護班もだ!」
「うん、わかった!」
今の状況故か、デュノアは俺の出した指示にすぐさまうなずき、行動してくれた。
後は、どうやってあそこに突入するかだが……。
「どうする、征兎?」
なぜか一夏は俺に指示を仰いでくるが、この緊急事態だ。まぁいい。
突入後のプランはすぐできた。
――が問題は、
「とにかく、この遮断シールドをなんとかしないと」
「わかった! 任せて!」
と、自身満々に言った万丈は、手にドラゴンフルボトルを出し、それを振りながら腕を引く。
「――って、おい!? なにするつもりだ、万丈!?」
「なにって……これ壊すんでしょ?」
「いや、そうだけどさ!?」
「だったら問題ないでしょ!」
いやいやいやいや!
「お前バカ!? ISの攻撃にも普通に耐えられることのできるシールドだぞ!? 素手でなんて無理に決まってるでしょ!?」
これだからおバカさんは……!
いくらフルボトルを振ると身体能力が上がるからっていっても、それはムチャでしょ。
「穏便にいきたかったが仕方ない! 一夏! お前の零落白夜でシールドを壊して突入! それからあのヤロウの気を引き付けろ! その間に俺が2人を救出! 和海は一夏の援護だ!」
「わかった!」
「よっしゃ!」
2人に作戦を告げ、すぐさま行動を起こす。
「来い! 白式!」
一夏が専用機を展開し、零落白夜を発動させようとした、そのときだった……。
――バゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
俺たちの耳に凄まじい轟音が聞こえてきた。
その後、アリーナ全体が静寂に包まれた。
……マジでなんなん?
ラウラってヤツもアリーナで事を見ていた他の生徒たちも、揃って信じられないようなものを見る目でこっちを見ている。
もちろん俺たちも……。
さて、現実逃避はやめるか。
俺たちの視線の先には、フルボトルを握った拳を突き出した状態の万丈。
そして、その先にあったシールドはものの見事に砕け散っていた。
うそ~ん!?
コイツ……マジで素手で砕きやがった!? そりゃみんな啞然とするしかないわ。
ISの攻撃を防げるはずのシールドだよ?
つまり、それを破壊したアイツの拳はこの間の無人機のバ火力ビーム並の威力があるってこと? ヤバくねぇ?
「マジでか……」
「信じらんねぇ……」
一夏と和海も呆然といった感じで、なんとかそう口に出したって感じだ。
だろうね。 俺も同じ気持ちだし。
ってか、あのパンチをたまに俺はくらってるってこと? よく無事だな俺。
「ホラッ! なにボサッとしてんの! さっさと行く!」
「へ? ――おわぁぁぁぁぁ!?」
万丈のヤツがいきなりそんなことを言ったかと思えば、シールドにできた穴からアリーナに一夏を投げ込んだ。
おいおい、一夏って確かIS纏ってなかったっけ? どんな力してんだよ……!
「何してんの! アンタたちも行くんでしょ!」
そう言って俺と和海の胸倉を万丈が掴む。
いやいや、そこじゃなくてもっと別の場所がいいんじゃないかと……。
「――ってそうじゃない!」
「ま、待ておい。落ち着け!」
「行っっっっけぇーーーー!」
「「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
そのまま投げ入れられた。
一夏はIS纏ってたけど、俺たちは生身なんだぞ!?
そして、残念ながら俺たちは重力に従い、アリーナに見事に落ちた……。