征兎side
あれから少しして、俺たちは鈴とセシリアの様子を見に、保健室に見舞いに訪れていた。
この後のことを考えると憂鬱だが、それはそれとして切り替えて行こう。
「鈴、セシリア、大丈夫か?」
声をかけた一夏を先頭に中に入っていく。
そこには治療を終えていたであろう2人と……万丈のヤツがいた。
アイツ……いなくなったと思ったらここにいやがったのか。
「み、みんな!? へ、平気よ、このくらい!」
「そ、そうですわ! このくらいなんてことありませんわ!」
あんま平気そうじゃないように見えるけど……。
なんかスゲェ慌ててるな……。
その後は、なんか無様な姿を見られたくなかっただの言って、楽しそうに言い合っている。
「……で、お前はいつの間にこっちにいたんだ?」
「ん? 先生たちが来たとき。鈴ちゃんたちを運ぶときにそのままいっしょに」
なんか普通だな……。
「だいたい、征兎が戦いに夢中になっちゃったから、私が2人をみてたんでしょ。いっつも1つのことに集中して、周りが見えなくなっちゃうんだから」
はぁ……とため息をつかれながらそう言われる。
クソォ~……確かにそうかもだけど、万丈に言われるとなんか釈然としない。
ま、まぁいちおう2人はケガ人だし、あんま無理させてもあれだしな。
などとちょっと逃げの思考に入りつつ……。
そういえば、この後、報告書と反省文を受け取りに行かないといけないんだよな……。
「さて、2人もゆっくりできないだろうから俺たちはこの辺で」
「……は~、征兎にもそんな気遣いができたんだね」
「だな……新発見かも知れねぇ。いつのまにか成長してたんだな」
「黙らっしゃい!」
ったく、コイツらは……。
「アホなこと言ってないで行くぞ」
――ドドドドドドドドド!!
「ん?」
「な、なんだ?」
なんか地響きのような音が聞こえてくる。
しかも、なんかこっちに近づいてきているような……。
そんな音が保健室のドアの前まで来たと思ったら、そのまま勢いよく開かれた。
「うぉっ!?」
「え、何事!?」
各々がそれぞれ驚いている間に、その地響きの原因――大量? の女子たちがなだれ込んできた。
「「「「「織斑くん!!」」」」」
「「「「「デュノアくん!!」」」」」
唐突に男子の名前を呼ぶ女子たち――って、アレ? 俺と和海は?
まさか……眼中になし!?
「……」
うん、わかってる……わかってるから、そんな目を向けるのはやめて万丈。
別にね、やましい感情なんてこれっぽちも無いんだよ。いや、ホント。
「ど、どうしたの、みんな?」
そんなこちらのことなぞ知らんとばかりに、デュノアが女子たちに問いかけていた。
「「「「「これ!!」」」」」
これ?
そう言った女子たちが持っていた紙を見せてもらう。
「え~と、なになに……学年別トーナメントルール変更のお知らせ?」
え? なに? ルール変わるの? めんどくさ。
「今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的に行うため、二人一組での参加を必須とする。なお、ペアができなかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする」
はぁ~ん……なるほどね。
それでみなさんここにきたわけだ。
「織斑くん、私と組もう!」
「デュノアくん、私たちならベストカップルになれるよ!」
みんな男子と組みたいからか、さっきからそんなお誘いが2人へ飛び交っている。
というか、俺と和海は? なんでお誘いがないの? なんでなのねぇ、ねぇ?
「あ~、みんなゴメン。実は……」
そう言いながら、一夏はデュノアの肩に手を置き、
「俺、シャルルと組んだんだ。だから、みんなゴメンな」
などと言いやがった。
まぁ、そうすれば2人同時にお誘いを断れるし、いいんだろうけどな。
「なぁんだ、そうなのか~」
「でも仕方ないか。男の子同士のほうが組みやすいだろうし」
「それに、男の子同士でだなんて……きっと特別な訓練をするに違いないわ!」
「男の子同士の絡み合い……!」
「そうよ、それよ! まずはアリーナで共に青春の汗を流し、その後更衣室へ」
「そして、そこでじっくりねっとりと……」
「きゃぁぁぁぁぁ!」
……。
納得してもらえてるのはいいんだろうけどさ……。
いったい何をおっしゃっているの? この方たちは?
なんか色々心配だ……。
「じゃあみんな行こっか」
「はぁ~い」
「この熱が冷めないうちに書き起こさないと」
なんか一部おかしい人たちはいたけど……みんなそれぞれ帰路に着こうとする。
「あ、そうだ。……ねぇ、ちょっといい?」
が、デュノアがそう言ったため、女子たちもなに? と立ち止まる。
「ペアの誘い、征兎もいたのになんで僕と一夏だけだったのかなぁと思ってさ」
それ、俺も気になってました。
ちなみにデュノアには俺たちの呼び方は好きにしていいと言ってある。
アイツの呼び方は……まぁ正式に女子として入ったときに考えると言ってある。
「あ~それ? いや、だって……ねぇ?」
「うんうん」
……??
なんだ? なにかしたっけ?
いや……ペアについて知ったのはさっきのはずだし、それはない……と思いたい。
「だって、桐生くんは万丈さんとペアを組むんでしょ?」
「そうそう! この通知が出たのだってついさっきなのに、さすがだよね」
「さすがベストカップル候補だよね」
そう興奮気味に教えられる。
というかさ……は? え? なに? なんなの?
というかなんでそんなことに?
俺と万丈がカップル?
「……」
チラッと万丈を見ると、なにやら顔を赤くしてモジモジしてた。
否定しておくれよ。
ホント……意味わからん。
いつのまにやらデュノアのお礼おを受けた女子たちはいなくなっていたが……それどころじゃなかった。
傍らでは、セシリアが一夏に自分と組めと言っていたり、鈴が別に自分は誰とでもいいと言っていたり、いつのまにか来ていた山田先生が2人のISがダメージレベルCだから今度のトーナメントは出場してはダメだとか言っていた気がするが。
「……」
「……」
俺たちはお互いに向き合ってはいるが、顔はあさっての方に向けたりしてしまって、なんとも気まずい空気になっていた。
「あ~、その、なんだ……」
「う、うん……」
もう、こうなったら仕方ない。
今なら場の流れに乗っていける!
「ペア……組むか?」
「……! いいの?」
「あぁ、まぁ……」
「じゃ、じゃあ……お、お願いします……」
「お、おう」
「「……」」
き、気まずい……。
無事にペアを組んだはずなのに、これはいったい……。
「見合いかよ、お前ら」
そんな空気を壊してくれるかのように、保健室のベッドの一つのカーテンが勢いよく開かれた。
「ったく、んな雰囲気にされちまったから出て行きにくいったらなかったぜ」
そう言いながら、出てきたのは――和海だった。
「お前……いつからそこにいたんだよ?」
「あん? さっきの女子たちが来る直前にな。なんか面倒なことになりそうだったから隠れてたんだ」
コイツのことに女子たちが触れなかったのはそういうことだったのか!?
自分だけ見事に面倒事回避しやがって!
ちくしょうめ!!
ちなみに和海は抽選で決まった相手と組むことにするそうだ。
今回のトーナメントはあんま上位を狙ってないのか?
そして、ペアの申請に行ったとき、次いでと言わんばかりに千冬さんに報告書と反省文用の紙を渡されてしまった。
なぜか俺の方が、万丈より紙の枚数が多かった。
残念ながらあの人の圧力の前には抗議など何の意味もなかった。
トホホ……。