征兎side
報告書とかなりの枚数あった反省文を書き終えたのが先日。
ようやく、今日、学年別トーナメント当日となった。
朝のSHRで今日のことに関する説明を受け、各々準備に取り掛かる。
まぁ準備といっても、まだ対戦表は発表されてないから着替えるくらいなんだけど。
「いよいよだな」
「うん、そうだね」
気合が入ったような一夏の言葉に、デュノアがそう返す。
ホント、この日を迎えるまでだけでかなりの密度の日々だったからな。
いちおう万丈や和海と訓練をし、連携も少しはとれるようになった……と思う。
和海曰く――お前らに連携訓練なんて必要ないだろ。――とのこと。そんなことないと思うんだけどなぁ。
しかし……前のクラス対抗戦はアクシデントにより中止になっちまったからな……。
今回の学年別トーナメントは無事に終わることを心から祈る。
割と切実に……。
……ん? ……アレ? これってフラグ?
いや頼むよ! ホント、マジで!!
「それにしても、ずいぶん人が多いな……」
「う~ん……。仕方ないといえばそうなのかな? 一夏たち男性操縦者が出るし、征兎たちの専用機はあのnascitaの独自開発だからね。どうしても気になるんだと思うよ」
さすがnascita。
なんで政府と提携せずにそんなに業績を伸ばせるのか?
これも玄乃さんの手腕の成せる業なのか?
「ぉ……対戦表が出るぞ」
「できれば、初戦から征兎たちや和海とは勘弁してほしいな」
「だな」
「俺はまず、誰と組むことになるかが気になる」
まぁ和海はそうだろうな。
対戦表がモニターに表示されたということで、まずは自分の名前を探し出す。
「え~……あ~……あった」
俺と万丈のペアはちょうど真ん中辺りにあった。
対戦相手は……うん、誰だかわからん。
「和海、どうだった?」
「悲しいかな、1回戦最後の試合だ……」
うわ……。
「ペアの相手は……更識簪さん……か」
「更識……痴女会長の身内か?」
「だろうな。多分、妹かなんかだろ」
まぁそんなとこだろうな。
さて、一夏たちはどうだろうか。
「一夏、お前たちは――」
「あそこだ」
……最後まで言わせてよ。
指さされたところを見てみると、確かに一夏とデュノアの名前があった。
しかも、1回戦第一試合……。
和海の最終試合もやだけど、最初の試合ってのもヤダな……。
そして、さらに問題なのは、一夏たちの対戦相手。
――ラウラ・ボーデヴィッヒ・篠ノ之箒
わぁ~お。
アイツのペアが箒なのはおそらく抽選だろうけど、これはまたなんとも……。
つーかできすぎだろ。
ホント無事に終わるのか? このイベント……。
(――ったく、なんで私がこんな面倒なことを……)
IS学園の地下。
ここにナイトローグこと氷室玄乃が佇んでいた。
少し先に行けば、パンドラボックスが保管されている空間がある。
それを知っていてあえてここで待機している。
(はぁ……こんなことなら面倒でもトーナメントに出席すればよかったかな? いや、でも、そうするとあの無能なクズ共を相手しないといけなくなりそうだし……)
そんなことを考えているうちに、この場で待機する原因となったやり取りを思い出してしまう。
(ったく、今回だって少し前にいきなりだったし……)
『【お前さんには、地下空間の警備レベルを調べてもらう……という建前のもと、万丈とやり合ってもらう】』
「…………は?」
『【心配すんな。戦闘に関するデータは全部、束のところに送られる。それに、お前さんなら前回のリベンジということにもできるからな】』
「いや……そうじゃなくて」
『【安心しろ。たとえ負けたとしても、万丈と戦うことに意味がある。だからそこらへんは気にしなくていい】』
「あの……だから」
『【万丈は俺が責任をもってお前さんのところに送る。イベントならどさくさに紛れてどうとでもやりようはあるからな。だから先に地下で待っててくれや】』
「お~い……」
『【じゃあ、当日はよろしく頼むな】』
「あ、ちょっと!?」
といったやり取りがあった……。
(っていうか、一方的に押し付けられただけよね? まぁ確かにサポートするとは言ったとのは私だけどさ……)
自分で言ったこととはいえ、ちょっと後悔しそうになる。
(最近だって私に何も言わずに、フランスでなにかやってるみたいだし……原作から考えると、デュノア社……かな?)
これが終わったら本人に聞くか、調べてみようと思ったそのとき、目の前で唐突に煙が発生した。
(――来ちゃったか……)
「ケホッ、ケホッ。もうなんなのいったい~」
むせたような声とともに龍華の声が聞こえてきた。
宣言通りキチンと送ってきたようだ。
(ハァ~……やるしかないか)
煙が収まり、龍華の姿をしっかり認識できた。
しかし当の本人は、まぁ予想通りというかなんというか……そんな反応だった。
「え? ここどこ? なに、なにが起こったの!?」
急に地下に送られてきたからか、かなりうろたえている。
確かに、準備を終え、征兎と合流しようとした矢先、急に煙に包まれ、見ず知らずの場所に放り出されたため仕方ないのかもしれないが。
「【……ここはお前が通っているIS学園の地下だ】」
「――!! アンタは……」
ため息をつきたくなるのを抑えて、そう龍華に告げるナイトローグ。
そして龍華も、ようやくナイトローグを認識したと同時に驚きの表情を浮かべる。
「なんでアンタがここに? っていうか地下? なんで私がここに?」
矢継ぎ早に質問を飛ばしていく龍華。
「【……少しは自分で考えたらどうなんだ? ――相変わらずの頭なんだな】」
「んな!?」
見ず知らずのヤツにバカにされたことで、驚愕と怒りを同時に感じる龍華。
――しかし、“相変わらず”という自分を多少なりとも前から知っていないと出てこないワードが出てきたにもかかわらず、龍華は気付かない。
ナイトローグこと玄乃はこれに思わずため息をついてしまった。
真意は知らないが、なにかしら気付いてほしいと思いあえて言ったのだが、相手が悪かった。
(まぁ……龍華ちゃんだしね~)
当の本人も、やっぱりそうか、ぐらいにしか思ってないようだが。
「【まぁ、どうせバカにはわからないと思っていた】」
「はぁ!? なんで仲良くもないアンタにそんなこと言われなきゃいけないのよ!!」
(仲が良ければいいとか、そういう問題?)
無視してるようで、内心ではいちおう突っ込んでおく。
「【本当は別の目的もあるのだが、それは簡単に済ませられる。――だが】」
ナイトローグが、スチームブレードの切っ先を龍華に向け、告げる。
「【その前に、前回キサマに受けた雪辱……ここで晴らす!】」
「ちょっ!?」
言いながら、スチームガンをいきなり撃たれたが、とっさに龍華はこれを回避する。
「いくらなんでも、いきなりすぎでしょ!」
「【どうした? 何もしないならそのまま死ぬだけだが?】」
やる気になったのか、龍華はすでにベルトを装着している。
「上等じゃない! やってやる!!」
『ウェイクアップ!』
『クローズドラゴン!』
「後悔しても知らないんだからね!」
『Are you ready?』
「変身!!」
『Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!』
『Yeah!』
『ビートクローザー』
変身を完了させ、即座にビートクローザーを握る。
「【そうだ……それでいい。たとえこれがヤツの手の上でのことだとしても、今はまだ……】」
「――は? なに言ってるの?」
いきなり何かを呟きだしたナイトローグが不気味で、思わずといった感じで龍華が問いかけた。
「【キサマには関係ない】」
しかし、ナイトローグは取り合わない。
そして、改めてスチームブレードを構え、それを見て、龍華もビートクローザーを構え直した。
「【――行くぞ】」
そう言った直後、2人はどちらともなく互いに向け、駆け出した。