神様の気まぐれで転生させられます。(仮)   作:CHIEN

68 / 87
57話

 征兎side

 

「あぢぃ~……」

 

 ようやく強化アイテム完成の目途がたった今日この頃、なぜか俺はこの灼熱地獄の中、ショッピングモールなるところへ来ていた。

 

「なんでわざわざこんな暑い中来なきゃなんないんだよ……」

「別にいいでしょ。どうせ部屋でヒマしてたんだから」

 

 そんなことを言いやがるのは、俺を半ば無理矢理ここに連れ出しやがった万丈。

 ヒマじゃないよ。強化アイテム作ってたんだよ。

 

「なぁ……俺、来なくてもよかったんじゃないか? 帰っていいか?」

 

 ここにきて未だにそんなことを言ってるのは、俺が強引に連れ出した和海。

 俺が暑い中連れ出されるのに、コイツだけ部屋で涼んでいるとか許せん!

 

「……」

 

 なんか、万丈が和海のほうを複雑怪奇な顔で見てるけど……まぁいいか。

 さっさと用を済ませて帰りたい。

 

「(すまん、龍華)」

「(――!? な、なんのこと?)」

「(いやなに、二人きりにしてやれなくて悪いな、と)」

「(べ、べべべ別に私はそ、そんな……)」

「(はいはい)」

 

「んで、どこに行くんだ? さっさと済ませようぜ」

 

 いつのまにか俺が先頭で歩いていたが、目的地がわからないためそう問いかけた。

 

「ん~? 特にコレといった用はないよ。そこら辺ぶらぶらしようかな、ぐらいで」

「……は?」

 

 なん……だと……。

 こんな暑い中出てきたっていうのに……マジかよ。

 

「はいはい、じゃあ行くよ!」

 

 渋々……本当に渋々、歩きだした万丈に着いて行く。

 もう、気分がゲンナリして文句言う気も起きないよ。

 

「もういいや。行こうぜ、和海」

「ああ」

 

 はぁ……とため息をつき、もうここまで来たんだからと腹をくくり歩を進める。

 

「――おっと」

 

 いきなり和海がそう声を漏らしたから自然とそっちを見ると、誰かが和海の背中にぶつかったみたいだった。

 

「あ……す、すみません!」

「あ、いや、大丈夫です」

「本当にすいません! 治療費のほうはキチンと払わせていただきますから、どうか何卒!」

「いや、ケガとか全然してないから!?」

 

 和海の内側のヤンキーを察したのか、相手めっちゃ必死に謝ってるんですけど。

 腰のあたりまで伸ばしているストレートの銀髪の女の子。見た目だけなら、どことなくラウラに似ているような気がするな。

 ただ、全体の雰囲気というか……こうして和海に必死に謝っているとこを見ると、性格とかは全然違うんだろうなって思える。

 というか、珍しく和海からSOSの視線が飛んできてるが、おもしろいからこのままにしておくか。

 後で覚えておけ、と言わんばかりに睨まれている気がするけど気にしなーい。

 しかし……この相手の子、どっかで見たことあるような……?

 

「う~~ん」

「なんだ、裏切りのクソ野郎」

「……もうちょっとソフトな言葉にしてくれないかな?」

「黙れ、クソが」

 

 さっき助けなかっただけで、そこまで言う?

 俺じゃなかったら泣いてるよ?

 

「それよりこの子、どっかで見たことあるような気がすんだけど……?」

「なに?」

 

 そうして、女の子をまじまじと見る和海。

 傍から見れば完全にヤバイ人だな。相手の子もどうしていいかわからなそうにしてんぞ。

 

「……だ」

「ん?」

 

 なんだって?

 

「ユーたんだ」

 

 ゆーたん? ……はて? どっかで聞いたことがあるような……?

 

「あ、あの! ユーたん――じゃなくて……ユウナ、さん……ですか?」

 

 ゆうな? ……ってユウナ!? 和海が大ファンの、あのネットアイドルの!?

 

「え? あ、はい。そうですけど……」

 

 マジで!? 本物!? 普通のアイドルならともかく、ネットアイドルの彼女がなぜここに!?

 

「猿渡和海、15歳、彼女無し! ネットで初めてあなたを見たときから、心火を燃やしてフォーリンラブです!」

 

 驚愕している俺をよそに、背筋をこれでもかと伸ばして自己紹介を始めるバカ。

 そろそろ警備員とか呼ばれないか、本気で心配になってきた。

 

「えっと……猿渡……さん?」

「いえ、俺のことはカズミンと呼んでください!」

 

 コイツ、マジ何言ってんの?

 あんたら初対面でしょ?

 

「じゃ、じゃあ……カズミンさん?」

「敬語も要りません!」

 

 もうダメだ……。

 完全に頭のネジが吹っ飛んでるわ。

 

「なら……私にも敬語使わないでください。歳、同じみたいなので」

 

 こっちもこっちで何言ってんの?

 つーか、同い年すか。

 

「わかり――いや、わかったよ、ユーたん。それと握手……してもらっていい?」

 

 図々しいな、おまえ!

 おずおずと手を出す和海に内心ツッコむ。

 いや、それよりも心配なことが一つ。

 

「お、おい……和海? いちおう彼女、アイドルなんだし、気軽にそういうのを頼むのは……。それに、そろそろお前がただの変態にしか見えな――げふぅっ!?」

 

 せっかく忠告してやろうとしたのに、なんの躊躇いもなく殴ってきやがった!?

 しかも、まったく見えなかっただと……!?

 

「うん! 私なんかでよければ喜んで!」

 

 マジかい。

 どことなく嬉しそうに和海の手を取るユウナさん。

 いいの? アイドルがそんなに気軽にさ。

 和海はあまりの興奮でショートして動かなくなった。

 

「それより……彼は大丈夫なの? なんか急に倒れちゃったみたいだけど……」

「大丈夫、大丈夫。アイツ時々意味もなく倒れるんだ」

「あ、そうなんだ。なんか変な人なんだね」

 

 んなわけあるかーい!!

 時々意味もなく倒れるってなに!? 今の今までそんなことなかったはずでしょ、幼馴染!!

 そして、ユウナさんも納得しないで!?

 

「あ……もう行かないと」

 

 俺の頭ではもう色々と理解できない展開の中、携帯にきていたメッセージを見て、彼女がそう言った。

 

「じゃあまたね! 今度会ったらいっしょにお茶でもしようね、カズミンくん」

「あ、うん」

 

 そう言い、彼女は去っていった。

 和海のヤツはその場に呆然と突っ立っている。

 最後まで俺、空気だったな。いつもと違い、なんか只々むなしかった。

 もういいや……帰ろう。

 

「あれ? なんか忘れてるような……」

 

 いったいなんだ?

 

 

 

「……随分楽しそうだったみたいだね」

 

 

 ……あ、万丈。

 

「私のことを忘れて、他の女と随分と楽しそうにしてたね」

 

 ヤベー……なんかわかんねえけど、怖え……。

 逆らったら、ヤラレル。

 

 

 

 その後は、心を無にして万丈のご機嫌取りに努めた。

 アホの和海は、もちろんそのまま置いてきた。

 

 俺の心の負担が軽くなったと同じく、財布の中身も軽くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドイツ某所、VTS違法研究所。

 侵入者を知らせる警報が鳴り響いているここの床には、色々なものが散乱していた。

 書類であろう紙類、機械類やドアであったものの破片、そして人。

 動いているのは、この惨状を作った人物たちだけ。

 

「まったく、私たち二人だけで充分なのに、なんでマスターはアイツまで……」

「……ん」

「そう言うのなら、少しは手伝ったらどうなのですか」

 

 その場で佇み愚痴を言う二人に対し、唯一作業をしている人物がそう言う。

 

「イヤ……」

「イヤです」

「……即答ですか」

 

 思わずため息をついてしまう。それでも、作業の手を止めないあたりはさすがというところか。

 

「問題ないでしょ。レイさんはこの前、マスターとお会いしたのだから」

「……確かに」

 

 レイと呼ばれた女――前にスタークにデュノア社で会っていた彼女は再びため息をつく。

 

「どんな理由ですか。それに私だってそれ以来会っていません」

 

 そして、さっきから文句ばかりの彼女たちに振り返る。

 

「あなたたちだって、今度の任務でマスターに会うではないですか」

「だって、私たちはまだ会ってないから」

「……うん」

「なんですか、それ……」

 

 三度目のため息。

 それから、手に持ったUSBを見せる。

 

「とにかく、終わりました」

「じゃあ帰ろう」

「……うん」

 

 そして一人が、トランスチームガンに似た紫の銃を取り出し、銃口から出した煙で三人を包む。

 

「しかし……マスターはVTSのデータなんかを何に使うのか」

 

 その場から転移する前に、最後にレイはそうポツリとこぼしたが、二人には聞こえていなかった。

 

 

 

 IS学園での一件を受け、委員会の機関が乗り込んだのは、すべてが終わった後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。