鈴音side
現在、目の前にはアタシたちに視線を向ける千冬さん。
何がどうしてこうなったの?
自由時間を終えて、夕食、入浴と済ませて部屋でクラスメイト達とのんびりしてたところを急に呼び出され、来てみたらこの状況。
「さて、揃いも揃ってよくもまあ盗聴する気になったものだ。その興味の対象が、私か一夏か、はたまた征兎か和海なのかは知らんが」
あんたらいったい、何やってたわけ? そんな思いを込めて、隣で正座をしている4人へジト目を向ける。
案の定、即行で目をそらされる。
「まあ今は置いておこう。さっきもメンツでだいたい察しはついている。本人も居ないことだし聞いておこうか」
本人――おそらく一夏のことだろう。
メンツ的に他の二人は考えにくい。
……そういえば部屋に入ったときからその二人がいないわね。
「先生、そういえば征兎と和海は?」
「征兎のヤツは、発明品のアイディアを探しに行くとか言ってどこかへ行った。和海はそのお守りだ」
こういうところに来ても相変わらずというかなんというか……。
和海にとってはいつも通りの貧乏くじね。
なるほど、だから龍華が大人しいのか。征兎がいないもんね。
「さて、話を戻そう。アイツは確かに器用だ。炊事洗濯をはじめとする家事全般はもちろん、さらにはマッサージなど特技が多い。どうだ、欲しいか?」
「「「「くれるんですか!?」」」」
「馬鹿者、やらん」
現金にも反応した箒、セシリア、シャルロット、ラウラに意地の悪い切り返し。
まだまだ話は続きそうだけど、アタシには関係ないかな。
一夏のことは嫌いじゃないけど、恋愛対象とまではいかないかな。ようやくこの前気まずい関係から抜け出したばっかりだしね。
壁際で、みんなが正座の中、脚を崩し、何かの本を読んでいた龍華と話そうと近づく。
というか、あの龍華が読書? 教科書を開いただけで眠くなっちゃうような人物が? 征兎辺りが見たら、熱でもあるのか!? とか言いそう。
さて、なに読んでいるのかな~。
タイトルは――素敵な筋肉を作るための素敵な筋トレ!
まったく、珍しく龍華が本なんて読んでるから何かと思えば……。
「いや、なによ、これ!?」
「うわっ!? なに、鈴ちゃん!? ビックリするじゃん!? ていうか居たの?」
「アタシがこの部屋に来たことすら認識してなかったの!? どんだけ集中して読んでたのよ、その本!」
「いや~、けっこう興味深い内容だったからさ~」
「そもそも、女子高生が読むような本じゃないでしょそれ! そして何より、素敵な筋トレってなに!? おかしいでしょ!?」
「なかなか興味深い内容だよ。見る? 鈴ちゃん、見た感じ筋肉なさそうだし」
「有難迷惑もいいところよ! だいたいアタシは筋肉じゃなくて、身長と胸が欲しいの!」
「……無理じゃない?」
「あんですって~!」
そこまで言い終え、ハアハアと荒い息を吐く。
まったく、叫んでいたせいで、ちょっと喉が渇いちゃったじゃない。さっき千冬さんが出してくれたのは、飲んじゃったし……買いに行くのはめんどくさいし。
ふと、龍華の傍らにお茶のペットボトルが置いてあるのが見えた。中身も八分目くらい残っている。
何で龍華だけペットボトルなのかは気にはなるけど、とりあえず喉を潤すために少しもらいましょう。
「龍華、悪いけどこのお茶、少しもらうわよ」
「いいよ~……って、あ、それ……」
龍華が何か言いかけてたような気がしたけど、気にせず飲んだ。
しかし、直後に後悔した。
口の中で、なんとも言えないヤバイ味が広がる。とにかく言えることは――クソマズい! セシリアの料理といい勝負できるわよ、コレ……!?
結果、どうなるか……。
「ゴフエぁーーーー!」
吐いた。
「あ~……鈴ちゃん、汚いよ。女の子としてどうなのそれ?」
やかましい! こっちはそれどころじゃないっての!
というかなに、このヤバイ飲み物!? こんなの平気で飲めるのアンタくらいよ!
「コレ、何、いったい!? かなりヤバイわよ……!?」
ラベルはお茶だったのに、中身が全然別物だったとはね。代表候補生ともあろうものが不覚よ。
ホント正直、今すぐでも意識がなくなりそうよ。
「これはね、征兎が考案した――筋肉増強滋養強壮マッスルドリンクだよ!」
「……はあ? なにそれ?」
「え~と、確か……最初に水で溶かしたプロテイン(そのときの気分の味)を入れて、後は体に良さそうなものをそのときの気分で入れるんだよ」
聞いてるだけで、頭を抱えたくなるような飲み物ね。
アタシに理解できたのは最初のプロテインまでね。
「ちなみにコレには何を入れたのよ……」
「え~と……トマト、柿の種、きのこの山、スルメ、チーズ、小梅ちゃん……とか?」
それを聞いて、再び口を押さえたアタシは悪くない。
また、吐き気が……うえぇ……。
「コレ……他に飲んだ人っているの?」
「ん? 前に最初に作ったときに征兎とカズミンが飲んだよ」
というか、アイツらホント何やってんのよ。
「私は普通においしいと思うんだけど、カズミンは鈴ちゃんみたいに吐いちゃったんだよね」
コレをおいしく飲めるのは、世界でもアンタくらいよ。
そして和海、相変わらず巻き込まれてるのね。
「征兎は、カズミンに無理矢理飲まされてたっけ。吐き出さないように口を力づくで閉じられて……」
なんででしょうね……全然、かわいそうと思えないのよね。
むしろ、自業自得と思えるわ。
「ようやく飲んだと思ったら、なんか倒れちゃったんだよね」
因果応報……どうしてかこの言葉が浮かんだ。
だがしかし! こんなのを飲んでしまった原因はすべて征兎にあるとわかったわ。
征兎、覚えてなさいよ~!
征兎side
……!?
なんだ? 今、急に寒気が……。
外に居たから体が冷えたか?
いや、でも、なんというか……ちょっとした怒りを向けられたかのような。
「おい、バカ。結局、なんで何でここに来たんだよ?」
「だから言ったろ? 発明品のアイディアを求めて……」
「何年いっしょにいると思ってんだ。今回のそれは違うとわかったから付いてきたんだよ」
ったく、さすがだな。
観念した俺は、早速モニターを出し、準備する。
「この前の戦いのとき、デュノアの親父さんにUSBを託された」
「この前? いつのまに……いや、そういえば消える前にお前の腕を掴んでたな。もしかしてあのときか?」
「ああ」
察しが良くて助かります。
「で、この前中のデータを見てみたわけなんだが……」
「ん? どうした?」
思わず、戸惑ってしまった。
それだけ、このデータは衝撃的だった。
「まぁ、見りゃわかる」
そう言い、モニターを和海に見せる。
「あん? これは……設計図……か?」
「そうだ」
「専門家じゃねえ俺にはそこまで理解できねえが、何かの装備か何かか?」
「残念だが、これはそんなやさしいものじゃない」
「なに?」
「これは……無人機の設計図だ」
俺の言葉に驚き、思わずといった感じでこっちを見る和海。
だけど、これのヤバさはそれだけじゃないんだよね。
「無人機っていうと、この前のアイツみたいな感じか? だが、それにしちゃ……」
「確かに、火力ならあっちのほうが高いが、これはおそらく人型……大きさも俺たち人間と同じくらいで、且つ、大量に造り出せる」
「なに?」
さっきと同じ返しをした和海に、思わず苦笑してしまう。
「で、こっちのゴツイほうはさっきのヤツの強化版みたいな感じだな。強さもザコ兵とエリアボスみたいな感じでかなりだな」
「もっと他の例えはなかったのか?」
ほっといてください。
他に思いつかなかったんだよ。
「前に、スタークがデュノア社に商談を持ちかけたって言ってただろ?」
「ああ……トーナメント前のあのときか」
「そうだ、おそらくコレがスタークが持ちかけた商談だろう」
「なるほどな……」
「しかし、デュノアの親父さんは断った。そっからは俺たちも知る通りだろう」
「ったく、知れば知るほどスタークのヤロウのクソさが伝わってくるぜ」
確かにな。
アイツは野放しにしておいたらダメだ。
絶対に倒さないとな。
和海と話しながら、改めて打倒スタークを決意した。