神様の気まぐれで転生させられます。(仮)   作:CHIEN

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60話

 征兎side

 

 臨海学校2日目。

 今日はISの装備の試験運用が行われる日だそうだ。

 専用機持ちは何もないのかと思いきや、それぞれの国から大量の装備が送られてきているらしい。なぜにわざわざ臨海学校時に送ってくんの? と正直思った。

 ちなみに、nascitaからは何も送られてきていない。もしかして今日、俺らヒマ?

 そして、専用機持ちの集合場所では、現在ラウラがコアネットワークについての説明を行っている。彼女にしては珍しく集合時間に遅刻した罰のようだ。

 まぁ人間だし、たまにはこういうこともあるさ。

 それより、専用機持ちのところに箒がいることが気になる。実力云々はともかく、まだ箒は専用機持ってないんじゃ?

 わざわざ千冬さん直々にこっちに呼んでたから何かあるんだろうけど。……あ、ちょうど説明してたわ。

 

「急な話だが、お前には今日から専用機が――」

「ち~~~ちゃ~~~~ん!!」

 

 途中までで箒に専用機が与えられることはわかったが、問題は今、聞こえた声。

 マジか……あの人のご登場だぜ。

 地響きと砂を巻き上げ、ヤベー速度でこっちに来ている。

 科学者のはずなのに、身体能力は相変わらずですか。千冬さん、頭抱えてますよ?

 

「やあやあ会いたかったよちーちゃんさあハグハグしよう愛を確かめ合おう」

 

 そして、ものスゴイ勢いで千冬さんに抱き着こうとした。

 何気に言葉もノンブレスだし。

 

「やかましい」

 

 だが、千冬さんはそれを片手で見事にキャッチ。

 この人もやっぱり人間やめてんな……。

 

「ぐにゃ~~~~~!?」

 

 その流れのまま、アイアンクロー。

 

「潰れる、潰れる!? 束さんの脳が飛び出ちゃうよ~~~!?」

 

 ちなみに、束さんだからこの程度で済んでいるのであって、一般人ならおそらく即死です。

 

「久しぶりにみたな」

「だな」

「束さん相変わらずだね~」

 

 和海と万丈もこのやり取りに多少のなつかしさはあるようだ。

 確かに、しばらく見れてなかったからな。

 

「ふう……久しぶりだね! いっくん、せいくん、りゅーちゃん、かずみん!」

 

 何事もなかったかのように、アレから抜け出したのか!?

 マジでスゴイよ……。

 それぞれ、言葉を返しているのを聞きつつ、改めてそう思う。

 

「とりあえず、さっさと自己紹介しろ」

「え~なんでそんなことしないといけないのさ~」

「やれ」

「は~い。私が天才の束さんだよ、ハロ~。終わり」

 

 ヒドイ自己紹介を見た。

 こんなところも相変わらずだな……。

 この人が、ISを世に広めたかの天才――篠ノ之束さん。

 

「もう……束ちゃん、もっとちゃんとした自己紹介しないとダメじゃない」

 

 と、また新たな女性の声が――聞こえたと思ったときには、そこに千冬さんのアイアンクローがせまっていた。

 

「ごめんなさい、束ちゃんと違って私がそれをくらったらシャレにならないわ」

「なんでキサマまでいるんだ」

 

 それを何気に避けている時点でスゴイです。

 そして、どこか諦めたような声の千冬さん。ご苦労様です。

 

「お~、くろのん! くろのんも来てたんだね!」

「まあね。ちょっと野暮用があってね」

 

 そう……新たに登場したのは、我らがnascita社長――氷室玄乃さん。

 つーか、この3人が揃ってるの見たの久々だ。

 何気にスゴイ光景じゃね? 他のみんなもIS界の大物たちの登場に啞然としてますよ。

 いち早く復活した山田先生が関係者以外どうこう言ってるけど、片や唯我独尊・自由奔放を地で行く天才科学者、片や商談という言葉の刃での戦いを制しまくっている大企業の社長。結果は火を見るよりも明らかだった。

 

「さて、こっちの要件を済ませましょうか」

 

 そう言って俺、万丈、和海に向き直る玄乃さん。

 箒に何かで頭を叩かれた束さんを視界にとらえた。

 

「まずは……和海くんね」

 

 そう言い、和海に何かケースのようなものが渡される。

 あの……向こうでなんか箒の専用機っぽいもののお披露目してんですけど?

 大空をご覧あれ! って束さんが言った直後、なんか落ちてきたんですけど!?

 

「これって……」

「フルボトルよ。これで少しは攻撃のバリエーションも増えるでしょ?」

 

 ありがとうございます、と言いそれを受け取る和海。

 ふむ……これでツインブレイカーのツインの攻撃もできるようになったわけだ。

 

「そして、これが龍華ちゃんね」

 

 万丈にも同じようなケースが渡される。中身もフルボトルだろう。

 

「もう一つ、これね」

 

 ん? もう一つ?

 

「あ……」

「って、スクラッシュドライバー!?」

 

 なんでまた?

 万丈にはビルドドライバーとクローズドラゴンがあるのでは?

 

「ロボット以外にもスクラッシュゼリーが作れたんだけど、それがドラゴンだったの。そしたらさ、もうこれは龍華ちゃんに渡すしかないじゃないって」

 

 あ、そうっすか……。

 そのままの流れで、万丈がスクラッシュドライバーで変身することに。

 まあ普段、和海が使ってるの見てるし、大丈夫だろ。

 

「龍華」

「ん?」

「最初の1回はキツイけど、頑張れよ」

「……? よくわかんないけどわかった」

 

 わかってないじゃん。

 

「どういうことだ?」

「見てればわかる」

 

 和海に聞いてもこれだし……まあ別にいいけどさ。

 

『スクラッシュドライバー!』

 

 そうこうしているうちに、万丈はドライバーをセットする。

 

『ドラゴンゼリー』

 

 和海のロボットスクラッシュゼリーとよく似たドラゴンスクラッシュゼリー。

 それをドライバーのパワープレススロットに装填。

 

「変身!」

 

 その声とともに、ドライバーの右側のレンチ型レバーであるアクティベイトレンチを押し下げる。

 

『潰れる! 流れる! 溢れ出る!』

 

 そうすると、左右のプレスパーツがゼリーを揉み潰し、抽出された成分が液化装備であるヴァリアブルゼリーに変換され、透明な装甲を形成する。

 そして、ビーカーをモチーフとした特殊加工容器のケミカライドライドビルダーが周囲に出現する。

 しかし……人のこと言えないかもだけど、玄乃さんのセンスも相当だと思うんだよね、俺。

 誰も口にできないだろうけどさ。

 そして、頭頂部のスクラッシュファウンテンと胸上部のスクラッシュノズルから噴出したヴァリアブルゼリーが全身を包むことで変身が完了する。

 だが、ここで和海の忠告の意味を理解することになった。

 

「ん?」

 

 なんか、バチバチ電気っぽいのが流れ出したのだ。

 

「へ? あ、ぐ、ぎゃああああああああ!?」

 

 さすがの万丈もこれは効いたのか、女としてダメな声を上げている。

 まあ今さら感がありまくりだが、いちおう……な。

 

『ドラゴンインクローズチャージ!』

『ブラァ!』

 

 そんな万丈を無視するかのように、無事? 変身は完了した。

 

「おお……」

 

 これが、クローズチャージ……。

 和海のグリスが金なのに対し、こっちは銀。

 頭部と胸部にはクリアブルーでドラゴンの頭のようなものがあしらわれている。

 こうなると次は俺の番。ちょっと期待しちゃいますな。

 

「あ、征兎くんには今回はないわよ」

 

 ……え?

 そんな期待はもろくも崩れ去った。

 マジですか!? この流れで!?

 

「その代わり、強化プランにあった強化アイテム――完成したわよ」

 

 マ~~ジですか!!

 さっきの沈んだ気持ちもなんのその、一気にテンションがマックスだぜ!

 

「あれ? じゃあなんで……」

 

 玄乃さんの話では、完成したはいいけどちょとした問題があって、ここでは試運転させられないそうだ。

 だから夏休み期間で使いこなせるように頑張ってもらうことにした、ということらしい。

 そして、万丈と和海に今日渡したものをしっかり使いこなせるように、と言い去っていった。……やっぱ忙しかったのね。

 

「マジか……」

 

 そして、夏休み期間に頑張ってもらうということはつまり……。

 

「「…………」」

 

 思わず和海と目を合わせる。

 互いに顔が引きつっている。

 

「俺の夏休みがーーーーー!?」

 

 夏休みがほぼほぼ潰れたのと同義だからだ。 

 

 

 

 人の夢と書いて儚い。

 俺にできることはもう、夏休みと期間とはいっても1週間ぐらいだよね? ――という淡い期待を持つことだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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