征兎side
「まったく貴様らは……自分たちのしたことを理解しているのか? 学園に戻ったら相応の処罰を下す。覚悟しておけよ」
戦闘終了後、旅館に戻ってきた俺たちを待っていたのは、千冬さんからのそんなありがたいお説教だった。
疲れているから休ませてほしいと思わなくもないが、無事に帰還できたからこそだと考えると、まあいいかと思えてしまう。
そういえば、鈴たちが戻ってきたときに、なぜか行くときには居なかったはずの一夏がいた。
なぜ? と思い聞くと、目が覚めたからとのこと。いやいやそうじゃないんだよ。
というかキミ、重症だったよね……ケガは? え? 目が覚めたときには治ってた? なに、その超常現象?
しかも、なんと白式が
だって4月に受領したばっかりの機体だよ? 色々おかしいでしょ!?
そして福音との戦いの最中、箒の専用機となった紅椿の
さすが束さんお手製の機体。もうなんでもアリですね。
そして何より、一夏たちが帰ってきたときに抱えてきた女性。なんと福音の搭乗者らしい。
当初は無人機という報告だったはずだけど……。
こうなってくると、ホントにただの暴走事故なのか怪しいところ。
搭乗者の女性の今後とともにとても気になるが、いくら未来の天才物理学者といえども現在はただの学生。これ以上はどうしようもできない……悔しいが。
それはさておき、ようやく説教が終わり、精密検査を受けたら残りの臨海学校を満喫しておけと言われた。
ここからは思い思いに過ごすのだろうが、残念ながら俺は部屋で休ませてもらうことにした。
スタークのヤロウのせいで体中痛くてしょうがない。
あのヤロウ……次に会ったら絶対に倍返しだ!
スタークといえば……正直、俺はアイツらの今回の行動に疑問を持っている。
確かに、戦い自体は手抜きって感じはしなかったし、和海たちに任せた姉妹の方も、なんか姉の方がヤバかったらしい。よくわからなかったが、スタークからの通信がなかったらどうなってたかわからなかったとか……。
けど……アイツら、本気で俺たちを足止めする気あったのか?
なんか引っかかるっていうか……スッキリしないんだよな……。
あーもう!
せっかく終わったと思ったら、なんでこんなごちゃごちゃ考えなきゃなんないんだよ!
今回の件で、やっぱりスタークと関わるとロクなことがない、と改めて思い知らされた。
「途中で姿を見なくなったと思ったら、こんなところにいたのか」
「おや、ちーちゃんじゃないか」
「少し聞きたいことがある――玄乃!?」
旅館から少し離れたところにある岬。
そこに腰掛け、モニターとコンソールを出し、何かをしていた束の元に千冬が来た。
しかし、帰ったと思っていた玄乃がいたため、思わず驚いてしまった。
当の玄乃はその反応を新鮮に思いつつ、今は話に入るつもりがないのか、手のジェスチャーで先を促した。
そこからは白式のコアの話……白式をシロシキと読むとなどといった話をしていたが、原作知識がある程度ある玄乃は、そこそこ聞き流していた。
「そういえば、玄乃。お前、帰ったはずじゃなかったのか?」
「うん、一回帰ったわよ。でも、戻ってきたの」
「なに?」
「我が企業所属の子たちの戦いを見たくてね」
それを聞いた千冬は、思わず顔をしかめた。
今の玄乃の言葉は、最初の作戦が成功していたらありえなかったことだ。
つまり、玄乃は作戦失敗を確信していた……。
「玄乃……お前は、一夏と箒が失敗するとわかっていたのか……?」
「ええ。寧ろ、成功する要因がどこにあったのか教えてほしいくらいよ」
「キサマ……!」
それを聞いた千冬は玄乃の胸倉を掴んだ。
「まさか、ブラッドスタークとその仲間が出てくることも知ってたのか……!」
「ええ」
「言え! お前とアイツにはなにか関係があるのか!」
「…………」
「答えろ、玄乃!」
鬼の形相のような千冬に凄まれても、玄乃は何ともないように涼し気にスルーする。
しかし、千冬がそれで納得するはずもなく、玄乃を掴む力を強める。
「ねえ、ちーちゃん」
「なんだ」
「ちーちゃんは、アイツ……ブラッドスタークのことどう思ってる?」
「なに?」
「ただヤバイやつだって思ってない?」
「どういうことだ?」
束からの問いかけに千冬が戸惑い、力が抜けた瞬間にはもう玄乃は千冬の手を解き、束の横にいた。
自分は人外ではないと言いながら、この動き……。やはり玄乃も2人の親友と言われるだけはあった。
「千冬ちゃん、良いこと教えてあげる。もう私たちに残された時間はあまりないわ」
「なんだと?」
「残念ながら、このままだと地球は滅びるわ」
突然の宣言に言葉が出ない千冬を傍目に、玄乃は自身のネビュラスチームガンを取り出した。
「お前、それは……!?」
「じゃあね、千冬ちゃん。またどこかで会いましょう」
「バイバ~イ!」
そのまま2人は消えてしまった。
「束……玄乃……お前たちはいったい何をやろうとしてるんだ……」
翌日の朝。
IS学園の生徒たちが乗ったバスを見送った福音の搭乗者であるナターシャ・ファイルス。
それが終わると、建前上は暴走事故に巻き込まれたということになっているため、そこそこいるいかにもガードっぽい恰好の人物たちと行動していた。
「では、お送りするための車を回してきます」
「ええ」
この後、国に帰っても自身と専用機がどうなるかなんとなくわかっているため、かなり憂鬱そうに答える。
しかしその直後、状況が一変する。
「があっ!?」
「……え?」
突然聞こえたそんな声。
何が起こったのかわからず呆然としてしまったが、すぐにハッとなり状況を確認した。
しかし、そのときにはもう、10人近くいたガードたちは全員いなくなっていた。
「【…………】」
そこに、ため息をつきながら現れた一つの影。
「【ナターシャ・ファイルスだな】」
完全にやる気のない玄乃ことナイトローグ。
ナターシャは当然、警戒する。
「【我々の元に来い。こちらとしても手荒な真似はしたくない】」
「そんな誘い、受けると思ってるの?」
ですよねー、とは玄乃の内心。
「【なら、仕方ないな】」
何をしてくるのかとナターシャは当然警戒した。
「うっ……!?」
しかし、痛みを感じたときにはもう遅かった。
目の前の敵ばかりに意識を向け、背後への警戒を疎かにしてしまった。
「【後ろががら空きなのは、軍人としていかがなものかねえ】」
意識が朦朧とする中、ナターシャが見たのは赤い全身装甲――ブラッドスタークだった。