IS学園アリーナ。
夏休み中ということもあり、利用者もほとんどいないはずのそこには現在、倒れて動かない人物が2人と、それを見下ろす人物が3人いた。
「なんか……思っていたより弱い相手だったね」
「まあ、なんだかんだ言っても所詮は候補生ってことなんじゃないの?」
「そういうことなのかなぁ?」
そんなことを話しながら、倒れている2人から待機形態となったISを奪い取る。
「ヘル・ハウンドにコールド・ブラッドか……」
「イージスなんて呼ばれていても、ユウナちゃんの敵じゃなかったね!」
それは言い過ぎ、と窘めつつユウナは2つのISを自身の拡張領域へとしまう。
「最初こそ、ISなんて手に入れて何に使うのかと思ったけど……そのおかげで私の“コレ”ができたわけだからね」
そう言い、自身が持つ特殊なボトルとアイテムを手に出す。
「本当に世の中なにが役に立つかわかんないよね~。あのウサ耳女が造ったやつじゃなくて、その辺の有象無象が造ったやつだったから尚更」
「まあ確かにね」
「今度はコレでなにするつもりなんだろう? またなんか造るの?」
「どうかしらね。最近はISの装備とかワンオフとかを結構見てるけど……」
「ふ~ん。けどさ~どうやってISの情報とか見るの? そういうのって結構ガードが堅いイメージなんだけど」
「マスターお得意のハッキングよ。恐らく、各国ISの全容から専用機の装備、ワンオフ持っている機体はその能力まで、全て……ね」
「さすがマスターだね!」
「そのついでに実際に戦闘してみたりして、機体能力と搭乗者の腕をすり合わせているみたいね」
それをやるかやらないかはマスターの気分だけど……ということは自分の胸の内にしまっておくことにしたユウナだった。
「ただ、白式のデータは完璧には取れていないって愚痴ってたから、今度また何かお願いされるんじゃない?」
めんどくさいやつじゃないといいなぁ~、と言うの聞きつつふと気付く。
3人いるはずなのに、2人でしか会話してないことに……。
その当の本人は、アリーナの壁に寄りかかり、目を閉じていた。
まあいつものことだからとスルーする。
「じゃあ、あんまり長居もできないことだし、撤収しましょうか」
「了~解。――おっと、忘れてた」
壁のところにいたもう一人を呼び、ユウナ以外の2人がボトルを取り出すと、キャップを開け、それを振った。
すると、そこから大量のネビュラガスが散布され、倒れていた2人を消滅させた。
「これでよし!」
「証拠隠滅完了~」
ようやく声を発した1人のなんとも間延びした声を聞き、消滅を確認したユウナが声をかける。
「よし、撤収!」
2人のそれぞれの返事を聞き、アリーナのカメラのハッキングを解除した後、姿を消した。
征兎side
nascitaでの訓練という名のしごきが始まり早数日。
最初は新アイテムが手に入り、それを使えるということで気分が向上していたが、いざ始まるとそれどころではなくなった。
『はい、これがご所望の征兎くんのための新アイテムの“ハザードトリガー”。なんと、私と束ちゃんの合作よ』
渡されるときにそう言われた。
マジで勘弁してほしいんですけど……。
これ、俺の想像していた以上のとんでもアイテムだった。
確かに、これを使ったときのパワーは凄まじい。ベストマッチのとき以上のパワーが出ている。
しかもこれ……俺が造ったスパークリングよりもパワーが上なのでは……?
けっこうショック……。
さすが、玄乃さん&束さん作。
片方が造っただけでもかなりのものなのに、合作と来たもんだ。
正直、世間に知れたらとんでもない争奪戦になりそう。
それよりも……この数日での成果がまったく出ていないほうが問題だ。
いや……出ていないっていうわけではないと思うけど……。
俺が渡されたハザードトリガーというアイテムは、使用者の力を限界まで……いや、限界以上に引き上げるものらしい。
しかし、そんな強力なアイテムになんのリスクもないわけがなかった。
僅かな時間使用したたけで使用者の脳を破壊し、自身が死ぬかトリガーが外れるまで、敵味方問わず周りのすべてを破壊しようと暴走してしまう。
使用後すぐに意識がなくなり、気が付いたときには万丈と和海が倒れていたり、医務室のベッドで寝ていることが多々あった。
つまり……俺はまったくハザードトリガーを制御出来ていないということなんだろう。
和海と万丈には、かなり迷惑をかけちまってるな。
いつもがんばって俺のベルトからトリガーを外してくれているんだろうか……。もしかして……和海と万丈にはそれが訓練だとか……? そんなはずないか。
「はあ~……」
思わずため息が出てしまう。
ホント、どうすりゃいいんだよ……。
玄乃side
渡してしまった……。
ハザードトリガー……本当は渡したくなかった。
けど、これからアイツと戦うためには必要なものでもある……のよね。
あれはすべてを破壊する悪魔のトリガー。
でも……私は信じたい。
征兎くんたちなら、あのトリガーを希望の光にすることができると……。