僕と優子と鬼ごっこ   作:鱸のポワレ

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第6話 俺と翔子と大丈夫

「うぃーん」

 

今日2回目のサイレンが鳴った。

この鬼ごっこでは誰1人死なせはしない。絶対に。

俺、坂本雄二は、そう心に強く誓った。

ここまで偉そうに仕切ってきたが、実は俺はかなり緊張していた。守らなきゃいけない奴らがいるからだ。

一緒に行動しているメンバーは、ムッツリーニ、工藤、そして翔子の俺を含めて計4人。

みんな身体能力だって高い。大丈夫だ。

それにいざとなったら俺が……。

いや、根本的に鬼と遭遇する確率は低いはず、1週間生き残るためにも、今は心を落ち着けることが大事だ。

俺がキャラに合わず深呼吸をしようとした瞬間、女子生徒の叫び声が廊下中に響いた。

 

「代表、あれってうちのクラスの森さんじゃ……」

「……うん」

 

どうやらAクラスの生徒だったらしく、工藤と翔子が動揺し始めた。

 

「じゃあ助けなきゃ」

「…………まて、今行ったら危ない」

「でも森さんが!」

 

今度は工藤の声が廊下中に響き渡る。

やばいぞ、このままじゃ最悪こっちに鬼が来ちまう。

こういう時はどうすればいいんだ?

俺が仕切んなきゃ始まらねえのに……。

俺は自信がなくなり俯いてしまった。

しかし、その視線の先には俺の前で屈んでいる翔子の姿があった。

 

「……雄二。大丈夫」

「翔子……」

「……落ち着いて」

 

翔子の言葉にハッとする。そうだ落ち着け俺。

こいつらを、翔子を守るんだろ。

考えろ。死ぬ気で。

 

「悪いな。サンキュ」

「……うん」

 

1つ息を吐いてから、言い争っているムッツリーニと工藤の間に入る。

 

「お前ら落ち着け」

「で、でもこのままじゃ森さんが、クラスメイトが死んじゃう」

「…………だがお前を危険な目には晒せない」

「ムッツリーニ君……」

 

え?何こいつらイチャついてんの?

いかんいかん。今はそんなこと言ってる場合じゃない。

俺は須川に言いつけてやりたい衝動を抑え、改めて説明する。

 

「とにかく、ムッツリーニの言う通り残念だが助けるのは無理だ。他の奴を助けてる余裕なんてないからな」

「そんな……」

「……愛子落ち着いて」

「俺たちは俺たちの身を守るんだ。とにかく近くに2-Fの教室がある。そこに行くぞ」

「…………教室は危ないんじゃないのか?」

「ああ、普通の教室はな。でも2-Fは別だ」

「……何するの?」

「着いてからのお楽しみだ」

 

 

「あの木下さん?そんなに近づかれると歩きづらいんだけど。主に女性陣に足を蹴られてるから」

「でも、吉井君が守ってくれるんでしょ」

「ま、まあ……」

 

守ってあげたいんだけどね。

そうすると、なぜか美波と姫路さんが敵になる気がしてならない。

 

「はあ、姉上。いい加減にせんか。それだと明久が疲れてしまうじゃろ」

「わ、わかってるわよ。場を和ませるための冗談よ、冗談」

「和んでるのは姉上だけじゃろ」

「僕も和んでるけど」

「「ガス!」」

「痛!?」

 

美波と姫路さんに思いっきり足を蹴られた。

僕なんか蹴られるようなことしたかな?

やっぱり乙女心は難しいなと思いつつ、廊下の角を曲がる。

その先には鬼、……ではなくF組の面々がいた。

 

「あ、みんな。久しぶり」

「よお、吉井。元気だったか」

「まあ、なんとかね」

「チッ」

 

あれ?今、舌打ちされたような。

気のせいかな?

 

「にしても、みんなはなんで一緒にいるの?雄二が大勢での行動は危ないって言ってたよね?」

 

僕の問いを聞くと、F組の面々は馬鹿にするかのように笑い出した。

 

「おいおい吉井〜、冗談きついぜ。男だけのグループでこんなことやってられっか!」

「で、でも結局集まってもみんな男しかいないんじゃ……」

「黙れ吉井!元はと言えばキサマが!」

「コロス。吉井。コロス」

「吉井って炒めるのと茹でるのと蒸すのってどれが1番好き?」

「それって料理のことだよね!?」

「ああ、新作料理だ。珍しい食材が入ってるぞ」

「絶対僕だよそれ!?」

「相変わらずお主らは馬鹿じゃの」

 

2-Fのみんなは、こんな状況でもバカやってる。

こういうのもなんかいいなとか思ってしまう。

 

「吉井君。もう行きましょ」

「き、木下さん!?」

 

突然、木下さんが僕の手を握りながら言った。

F組のみんなが、それを見て僕を睨みつける。

ついでに、後ろからは思いっきり蹴られてるんだけど……。

 

「やっぱてめえは燻製だ!」

「コロス。吉井。コロス」

「今なら心臓2個で勘弁してやるよ」

 

やっぱり最悪だこいつら!

僕は木下さんの手を引っ張ってその場から逃げる。

 

「行くよ木下さん!」

「ちょっと吉井君!?みんなとはぐれちゃうわよ」

「ごめん木下さん!でもまだ燻製にされたくないから」

「燻製って……」

 

「うぃーん」

 

木下さんの声と重なるように、終わりのサイレンが鳴った。

 

「あ、いつの間にか鬼ごっこ終わったね」

「ええ。でも……」

 

木下さんは、僕たちが走ってきた道の方を振り返った。

誰の気配も感じられない。

僕たちは秀吉、美波、姫路さんとはぐれてしまっていた。

 

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