月、ころてる   作:鈴本恭一

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第3幕・第9章:ゆかり vs あかり

○海岸

 

(崩壊していくそれが、嗤う。

 

 羽虫の羽ばたく音。

 無数の弦楽器を出鱈目に弾きまくる音。

 電子ノイズ。

 それらを無理やり束ね、人間が聞こえるような領域に落とし込んだような騒音で、嗤う。

 

 "よろうてつ"の哄笑。

 

 崩れていく金銀の粒子達が、みるみるうちに七色に輝き出す。

 不協和音の洪水の中に、子供の甲高い笑い声が混じっていく。

 

 "よろうてつ"の全てが虹色の風となって、嵐の海岸を席巻する。

 "よろうてつ"から"さろめ"へ。

 

 "さろめ"、"さんがむりや"に遊ぶ)

 

 

 

 

 

○"さんがむりや"次元

 

 

 極彩色の嵐、星屑を混ぜ込んだ豪風で蒼い空間を蹂躙する。

 風に含まれる輝きの粒子、通過した空間を研磨剤のように傷つけ、玉虫色に変色させる。

 (あかりの振り下ろした三重の竜巻は"さんがむりや"の空間全体を侵蝕し、水平線から生える樹木たちを悶絶させていた)

 (逆巻く黒い海も、その海面が虹色に汚されている。事故を起こしたタンカー船が漏れ出したオイルで海の水を汚染するように)

 

 放射されたゆかりの烈光、アンカーのように固定される無数の羽枝を引き千切り、周囲の海面を帯電した光刃で破砕。

 

 侵掠の七色による巨大な竜巻と真っ向から激突する。

 

 (激突の轟音さえ光に変わる)

 (光槍、三重の竜巻のうち最外周部の渦を貫通)

 (第二層に突き刺さる)

 (七色の嵐の第二層、風に含まれる星屑の鑢で槍の切っ先を削り散らす)

 (月光の刃は無数のスペクトルの閃光へ)

 (虹の妖風は無色の放射熱へ)

 (拮抗)

 (澱んだ海面が爆裂し、揺れる空気は音ごと破壊される。迸る衝撃波でふたりの髪も衣服も激しく翻る)

 (空間はその蒼さを喪い、狂乱する光と熱に暴虐の限りを尽くされていた)

 

 

紲星あかり「――――っッ!!」

 

 あかり、振り下ろし続けながら天へ吠える。

 (唯一汚されていない天頂の月に向けて。その顔に極彩色の罅割れが走る)

 

 七色の竜巻、咆哮に応えるように密度と勢いを激しく増加。烈光の巨槍を研削していく。

 あかりの両腕、凄まじい速度で生身の部分が喪われる。

 (代償)

 竜巻第二層、月光の噴流をじりじりと押し返す。

 (砕かれた光刃が舞う)

 

 結月ゆかり「……(強烈な光の乱舞に目を細め、パーカーを引き千切られそうなほどにはためかせながら、あかりを捉える。

 肉体を極彩色に蝕まれながらも咆哮し続ける、その姿を)」

 

 

 

 

 

 * * *

 

 

 (フラッシュ)

 

 ゆかりの部屋。

 

紲星あかり「え、一位でいいの?」

結月ゆかり「あなたが不快でないのなら」

紲星あかり「ううん、いい。一位がいい」

 

 

 (フラッシュ)

 

 公園。水鉄砲。

 

紲星あかり「なんで顔ばっかりなの!?」

結月ゆかり「面食いなので」

紲星あかり「意味がちがう!」

 

 

 (フラッシュ)

 

 バーベキューエリア

 

紲星あかり「……ハンバーグ、作ってみたの」

 

 

 (フラッシュ)

 

 キャンプファイヤーエリア

 

紲星あかり「つまり?」

結月ゆかり「私が『あかりさん』と呼ぶ相手は、この世にひとりしか意味しない、ということです」

紲星あかり「ゆかりさん……!」

 

 

 (フラッシュ)

 

 ゆかりの部屋。

 浴衣のあかり。

 

紲星あかり「かわいい?」

結月ゆかり「もちろん」

 

 

 

結月ゆかり「あなたが一番かわいい」

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 

 

結月ゆかり「―――――"さんがむりや"」

 

 

 (天頂が輝く)

 

 (眼球に似た満月に再び鋭い光が宿る)

 (虹彩めいた中央部分の一点が強力に閃き)

 (空気が凍結)

 

 

紲星あかり「!(天空からの輝きに瞠り、上を見る。そしてはっと、その目をゆかりへ向ける)」

結月ゆかり「(あかりの視線を受け止める。力を込め、見詰め返す)」

 

 

 

 月光、放たれる。

 

 

 (一条の光)

 (変色する空気も暴れ回る光熱も貫いて、ゆかりの手元に到達する)

 (二度目。光槍が膨張する)

 (放出を続ける烈光の巨槍は、その輝きをさらに猛々しく大きくさせる。膨れあがった光の強さに、ゆかりの腕や肩が灼けていく。血飛沫が散る。スカート状に固定させた羽枝の触手がびりびりと破けていった)

 

 光刃、倍以上の密度へ。

 スペクトル分解される先端を暴力で押し込む。汚れた海も異色の空間も真珠色に染め上げて粉砕。進路上の全てを破壊し、七色の嵐を叩き斬る。

 (拮抗は崩壊)

 月光の槍の切っ先を受け止めていた竜巻の第二層、大穴を穿たれ、ぼろ雑巾のように引き千切られる。

 分厚く迸る光の奔流、一気に竜巻の中心層へ到達。嵐の剣そのものを刺し貫こうとする。

 

紲星あかり「ぅ、ぁっ、ぁあ……ッ!(嵐の剣の中で最も密度が高く最も威力の強い中心渦、それを握るあかりの両腕は、ほぼ全て極彩色の塊に置き換わっていた。両腕から七色の高圧ガスを放って巨剣に送り続けているが、気違いじみた月光はそれさえ押しのけ、着実にあかりへ近付いていく)」

結月ゆかり「(放射の反動で槍を持つ腕が黒く焦げる。肩から首に掛けて裂傷が広がり、体自体が後方へ押し流されそうになる。それを留めている羽枝の触手もかろうじていくつかが残るだけ。それでも放射をやめない)――――磔刑に処せ」

 

 

 

 

結月ゆかり「《さんがむりや・ありかんじょ》」

 

 

 

 

 

 

 

○海岸

 

 

(七色の風からなる"さろめ"、"さんがむりや"が放った蔓状触手の群れを躱す。

 翻した妖風から星屑が舞い散る。

 風は実体を薄くし、拡げ、再びすぼまる。

 

 "さろめ"は"さんがむりや"自身を狙わなかった。

 

 樹状触手から赤い実を放たれても、爆風に紛れ虹色の渦で煙に巻く。

 内臓めいた触腕で掻き散られそうになっても、"さろめ"は子供の笑い声を響かせながら受け流していく。

 

 挑まず、離れず、"さんがむりや"から攻撃を誘い、繰り出されるそれをふわりふわりと避け続けた。

 

 それは闘争ではなく遊戯だった。

 

 人界で、ただただ遊んでいたのだった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○"さんがむりや"次元

 

 

紲星あかり「……ゆかりさんは、やっぱり強いね」

結月ゆかり「そうでしょうか」

紲星あかり「怒っても悲しんでも勝てない。体中こんなに痛いのに負けちゃいそう」

結月ゆかり「そうでしょうね」

紲星あかり「ゆかりさんが好き」

結月ゆかり「はい」

紲星あかり「ゆかりさんが好き」

結月ゆかり「ええ」

紲星あかり「ゆかりさんは、私が好き?」

結月ゆかり「もちろん」

紲星あかり「本当に?」

結月ゆかり「もちろん。あなたが好きです、あかりさん」

紲星あかり「……それなら、じゃあ、だから……だから私は今から燃やすよ」

結月ゆかり「なにを?」

 

 

 

 

紲星あかり「私の命を」

 

 

 

 

 

 

 

○海岸

 

 

 (いつまで経っても攻めてこない"さろめ"に、"さんがむりや"は対策を講じる。

 

 幾度か攻撃を繰り返した後、"さんがむりや"、4つの長い羽枝をひときわ大きく外へと伸ばす。

 羽枝から細長い突起がいくつも生えた。突起は肋骨のように対になり、アンテナめいた形状に変わる。

 大羽枝、淡く青く発光。

 空間に蒼い切れ目が走る。

 空間断裂。

 切れ目、回避しようとした"さろめ"の風を容易に切断する。切り裂かれた七色の風、青い粒子となって霧散。

 青の断裂は空間的な奥行きの距離を完全に無視していた。"さんがむりや"の手前に生まれた空間の亀裂は、海原の彼方まで等しく断裂が続いている。

 無限射程。"さろめ"の回避行動は意味をなさない。

 その空間の断裂を、"さんがむりや"は360度全てに展開。細かい亀裂が周囲の全てを巻き込む。海岸の空間が青に潰れる。逃げる場所も躱す隙間もない。

 

 "さろめ"、くすくす笑う。

 

 一定の距離を保っていた"さろめ"が一気に躍りかかった。

 "さんがむりや"に向かって、ではない。

 怒濤のように流れ行く先は青い亀裂。"さろめ"は躱すことなく自ら空間の断裂に雪崩れ込む。

 切断面に触れた風が青く変色して固形化し、粉々に風化する。"さろめ"が次々と砕かれていく。

 

 妖風、変貌。

 

 内包していた様々な色を全て青一色に統一。空間断裂の色とほぼ同じ色合いになる。

 色だけではない。薄く霞がかった青い風は一瞬で結集し、高密度の塊となる。その塊は内部の空間そのものを青く切断。青い風を伴う空間の断面が"さんがむりや"の空間断裂と接続した。

 2種類の裂け目が合流。異なるはずの空間の裂け目の境界は急速に曖昧になっていく。

 "さろめ"は自分の作った空間断裂の中へ次々と潜り込む。

 風の塊が丸ごと切れ目に浸透。"さんがむりや"の空間断裂攻撃を回避する。

 そして瞬く間に、"さろめ"と"さんがむりや"双方が生んだ空間の断面が一体化。

 "さろめ"は消失。

 

 "さんがむりや"だけが残された)

 

 

 

 

○"さんがむりや"次元

 

 

 ゆかり、気付く。

 

 (極彩色に変色する空間の果てに、青い亀裂が走る)

 (亀裂は世界の果ての木々を悉く両断し、青い風が吹き出る)

 (さらに亀裂はきれいに広がるのではなく、見えない手で暴力的にこじ開けられたような大穴を抉る。暴漢が婦女子の衣服を引き破るような無理矢理さで次元の壁を破壊し、より大量の風を外から招き入れた)

 

結月ゆかり「(不快げに)招いた覚えはないというのに」

 

 

 青い風、唐突に七色へ変化してあかりのもとへ殺到する。

 ("さんがむりや"次元の果てにある木々を全て蹂躙できるほどの量が、あかりの背中に注ぎ込まれていく)

 

 あかりの背中、崩れる。

 フライトジャケットもブラウスも皮膚も、背中側に存在する全てが極彩色の煙を夥しく放出する。活火山の噴火のように。

 その七色の噴煙からは星屑めいた光の粒子も飛び散り、火山雷のごとき稲妻がいくつも閃き轟音を放つ。

 

紲星あかり「――――!!(目を見開いて吠える。口から吐かれる空気は毒々しい虹色。口からだけではなく、首や顔の罅からも同様のガスが吹き出る)」

 

 あかりの手元の竜巻、強烈な変化を見せる。

 (極彩色の暴風が恐ろしい速さであかりの手元に凝縮していく。気体の曖昧さはなくなり、想像を絶する力で圧縮され固体化していった)

 

 一振りの剣。

 円錐形。玉虫色の金属光沢。

 

 (奇しくもゆかりの槍と似た形状だった。長さはずっと短い。あかりの腕ほどの長さの剣身が帯電している)

 

 極彩色の剣、ゆかりの月光を受け止める。

 光刃、真珠色の火花を散らす。

 (進撃が止まる)

 (それ以上押し推し進められない)

 (あかりの手前で大量の発光と放電が撒き散らされる)

 

 

 帯電する剣身、根本から先端に掛けて回転を始める。

 (回転する剣の周囲に虹色の風と力場が発生。穿孔機めいた円錐螺旋状を形成し、種々様々な彩りの波動で月光の奔流を削り潰す)

 ゆかりの光槍光刃、微細な破片となって散る。

 

 あかり、固体化した虹に星々を溶かし込んだような剣を両手で握りしめる。手が剣と融合し、そのまま腕ごと一体化する。

 

 あかり、ドリルじみて回転する切っ先をゆかりへ向ける。

 

紲星あかり「(……ゆかりを見詰める)」

結月ゆかり「(……あかりを見詰める)」

紲星あかり「(……わらう)」

結月ゆかり「(……わらえない)」

 

 あかり、濛々と極彩色の煙をあげていく両腕を前へ伸ばす。

 (高速回転するブレードと、その周囲をさらに高速で旋回する七色の力場。回転数は気違いじみた勢いで上昇し続け、停止するのを嫌悪するかのよう)

 

 

紲星あかり「―――いくよ」

 

 

 あかり、背中が爆発。

 蹴飛ばされたように加速する。

 

 

結月ゆかり「っ!」

 

 ゆかり、咄嗟に槍を押し込む。

 あかりの喉元に光の槍を突き立てようと試みる。

 (肩と首から血が吹き出る)

 が、光槍の刀身、無残に研削される。

 

 あかり、吶喊。

 

 その背中から莫大な七色の噴進炎を吹き出し、ロケットエンジンのように一瞬で高速度に達する。回転する剣身に推進力が加わり、月光の奔流を砕きながら突き進む。

 (凶悪なまでに太い虹色の尾を描きながら、烈光の大河を遡上していく)

 

 月光の屑が凄まじい速度で黒い海に撒かれていく。

 黒色の海水は刃こぼれのエネルギーで一気に沸騰。

 (気化していく海)

 黒い水蒸気を暴虐に蹴散らして、金属結晶めいた七色の回転剣が突進。激光の噴流を叩き割る。

 

 ―――あかり、極彩色に燃える。

 

 (比喩ではない)

 (あかりの全身が発火。玉虫色の炎に包まれる)

 (七色の炎は熱量の大部分を切っ先に集め、剣身と旋風と劫火を融合させながら超高速で回転。光熱の残影が虹の尾に混ざる)

 あかり、大加速。光刃の激流を易々と切り開いて猛進する。破壊された光の破片は虹色の炎で溶かされ消えていく。

 

 (それは虹色の彗星だった)

 

結月ゆかり「……どうして」

 

 ゆかり、あかりを見やり、唇を歪める。

 あかり、烈光の怒濤を撃砕しながら瞬く間に距離を縮めていく。

 (二度重ね掛けした光槍をもってしても、あかりの虹焔は止められない)

 (あと僅かで、妄執のように回転する先端がゆかりの中心に届く)

 ゆかり、その切っ先を見据える。

 (その向こうの、炎の塊になってしまった、あかりを)

 

 

結月ゆかり「どうして、来てしまうのですか」

 

 (剣で貫けば、あかりの炎は間違いなく"さんがむりや"を焼き尽くす)

 (ゆかりが異界へ赴くために貯め込んだ力もろとも)

 (自分(あかり)もろとも)

 

結月ゆかり「置いていく私を、どうして許してくれないのですか」

 

 (豪炎と烈風の回転螺旋、ついにゆかりの間近まで迫る)

 (2人の距離、およそ腕一本分)

 (一拍で消滅する距離)

 (炎の砲弾)

 (燃える生命)

 (あかり)

 

 

結月ゆかり「どうして」

 

 あかりを見続けるゆかり。

 

 ゆかり。

 ゆかり。

 

 

 

 

 ゆかり――――涙をこぼす。

 

 

 

結月ゆかり「どうして、わたしは……あなたと出会ってしまったの?」

 

 

 

 "さんがむりや"次元、激震。

 

 

 ―――ジャジャジャギュゲキシュキャチャシミュケケケケ……!!

 

 

 天頂の満月、異形音。

 

 

 (空間内にあったエネルギーの全てを、無理やり一点に集めていく)

 

 黒い海は沸騰から一気に冷却され凍結する。

 青黒い天空がその光量を全て落とし、霞んで歪み、崩落する。

 

 

 満月が異常なほど発光する。その光の強さに月自身が震動を始めてしまう。

 月の震えは世界そのものに伝わり、空を割り海を砕く。

 

 力の全てを絞り出すように輝く怪異の月。

 

 

結月ゆかり「さんがむりや」 

 

 ゆかり、月を見上げる。

 月、中心部をゆかりに向ける。

 ゆかり、それと瞳を合わせる。

 

 月、ひときわ身震い。

 ゆかり、目を閉じる。

 

 満月、その異常な光輝の全てを一条の光芒にして、ゆかりに放つ。

 

(世界から急速に熱が消失する)

(止まった空気の層をぶち破り、光の柱がゆかりに届く)

 

 ゆかり、狂った量の月光を槍で受け止める。

 

 

 ―――光槍、爆裂。

 開闢のような甚大な閃光が、暗黒の世界を灼き尽くす。

 

 

 槍を持つゆかりの腕が光に呑まれる。

 腕、冗談のようにひしゃげる。

 ゆかりを固定する羽枝は全て千切れ。

 肩と首、胸の皮膚が焼け爛れる。

 

 あらゆるものを塗り潰す圧倒的な光の大爆発。

 

 七色の回転力場、その分厚すぎる光爆に晒され粉砕。

 剣を包んでいた烈火と疾風がその光の衝撃に一瞬抗うが、やはり破壊されて消滅。破却される。

 露出した剣が回転速度をさらに上昇。爆光を掻き乱し、その蹂躙に耐える。しかし金属結晶めいた剣身は音を立てて罅割れ、あかりの突進が停止する。

 

 光の激濤はあかりのみならず、全ての方向に駆け抜ける。

 (爆縮レンズで超臨界に陥った核物質のように)

 

 

 (もはや攻撃ではなく、自爆だった)

 

 

 疾駆する超々高圧の光の破壊力に、七色の剣が割れていく。

 炎を光が吹き飛ばす。

 

紲星あかり「―――――!!」

 

 あかり、吠える。

 炎を立てて激しく振動。その全身に亀裂が走る。

 

 炎が光を燃やす。

 あかり、進む。

 

 剣が先端から砕けていく。

 あかり、進む。

 肉体のあちこちが破裂していく。

 あかり、進む。

 七色の爆発が体中に重なる。

 あかり、進む。

 体が火の玉に包まれる。

 進む。

 進む。

 光が、剣の全てを粉砕する。

 進む。

 剣が塵に。その塵さえ光に還る。

 あかり、光に呑まれる。

 あかり、吠える。

 進む。

 指を伸ばす。

 伸ばす。

 伸ばして、

 伸ばして、

 

 

 

 触れる。

 

 

 ゆかりの頬に。

 

 

 

結月ゆかり「―――……(息が、とまる)」

 

 

 

 

 玉虫色の指、確かに触れて、撫でて、

 

 散った。

 

 

 

 

 

 あかりの指も手も、腕も肩も体も。

 全て光に呑まれて溶ける。

 

 

 光が全てを呑み込む。

 

 

結月ゆかり「(あかりの躯へ手を伸ばそうとするが、あかりは形を保てず光の中で曖昧になる。ゆかり自身も瞬く間に光の中へ。視界が白く染まる)」

 

 

 光が全てを呑み込む。

 

 

 

 

 ジャジャジャギュゲキシュキャチャシミュケケケケ……!!

 

 

 

 

結月ゆかり「――――(散ったあかりを目にする。口がわななく。その口の中から何かを叫び、そして吼える。今まで出したことのない声で)」

 

 声はどこにも届かない。

 光が声も叫びも呑み込んで消し去る。

 

 

 

 

 

 光が全てを呑み込む。

 

 

 

 

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