機動戦士 ハイスクールAGE〜革新の為に〜   作:silverArk.

4 / 4
大変遅くなってしまい、申し訳ございません。何分、風邪をひいたりと色々ありまして。また纏めきれなかったので中編です。


墜ちる魔(中編)

アーシアと別れた俺は、暫く町で時間を潰して帰宅。そして夜の十二時を過ぎた頃に、とある廃屋へと足を運んだ。

目的は、日が出ている際に見つけたはぐれ悪魔を討伐する事だ。

元々、ある程度の目星を着けて歩き回っていたがさっくりとこの場所でレーダーに反応したのである。このレーダーは、悪魔、堕天使と天使の魔力反応に対してだけ感知する。

さらにかなりの年月を経た事で、かなり精度を誇り、手のひらサイズにまでの小型化に成功している。それまでは、MSの頭部に着ける他なく戦闘に支障をきたしていた。が、小型化によりMSを乗着する事なく索敵を行える様になっていた。

話を戻そう。はぐれ悪魔と言う者は元々は転生悪魔と呼ばれていた者達である。転生悪魔と言うものは、元々は悪魔でなく人間や妖怪と言った種族だ。その他種族をいとも簡単に悪魔に変えてしまう冒涜的な道具がある。

それがイービルピースだ。この道具は他種族の了解に拘わらず、強制的に悪魔へと転生させる力を持った、当に悪魔の道具である。

この道具によって悪魔になってしまった者達は転生悪魔と呼ばれている。そして、その道具の持ち主の奴隷と化すのだ。当然、その中には何らかの理由(ほぼ、持ち主悪魔の悪事)によって持ち主を殺したり、魔窟から脱走する者が出てくる。当たり前だ、少し前まで普通の生活だったのが歪んだ奴隷生活を余儀なくされるのだ。マトモな精神を持っているのならば発狂して当然だ。

そして、この被害者達の事を俺達は“はぐれ悪魔”と呼称している。悪魔側からすれば反逆者だが。

大体、駒を持つべき者をあのお飾り魔王がしっかりと選別しないからこうなるのだ。殺されるべき事をしているのにも拘わらず、転生悪魔がソイツを殺せば、ろくな捜査もせずに即反逆者扱い。明らかに人間や他の種族を下に見ている証拠だ。

さらに、そのような事件が起きているのに悪魔達は駒の使用を止めようとしない。只、悪魔の人口が減っていると言う理由だけで。それは、アイツらが人間を下等生物と思っている証だろう。これをそのままにしておけば、人間達は食い物にされ続ける。だからこそ――

 

「……だから、戦わなければならない」

 

つと、漏れる言葉。言葉にしてこそ分かる、自らの血塗られた覚悟。アーシアのような純粋に思う事は出来ず、その純粋には永遠に戻れない事に。

 

「…旨そうな匂いがするぞ?鉄のような油のような匂いだ。うまいのかな?それとも毒があるのかな?」

 

廃屋を進んでいると、待ってましたとばかりにはぐれ悪魔が出てきた。

体長は5m前後、上半身は裸の美女で下半身はアラクネの如く蜘蛛だ。その細身の腕には到底につかない、重厚なハルバードが握られている。

悪魔の姿は変化自由自在と言う訳ではない。が、殊に転生悪魔は違う。悪魔の駒には俗に言う、七大罪の業がプログラムしてある。これが、転生悪魔が異形化する原因だ。

悪魔の世界は力社会(実際は貴族主義による純血社会)である。その中では当然、力の比較的弱い転生悪魔は力を求める傾向にある。

そして、悪魔は欲望への歯止めと言うものは無いに等しい。さらに、人間は欲望に弱い生物である。そうして飽くなき力への欲望をみなぎらせた結果、七大罪の成分が暴走。異形へと化してしまう。

そして、力への渇望の原因はほぼほぼ主たる悪魔が原因だ。つまり、はぐれ悪魔とは悪魔への加害者ではなく徹頭徹尾、被害者なのだ。

そして、はぐれと認定するシステムもガバガバだ。主たる悪魔を殺さなくても、その主が一言訴えれば即はぐれである。

当然、はぐれ悪魔は逃げる。その先には自身の自我を保つ手段がない限り暴走、と言う結末が横たわっている。

そして、暴走の果てにあるのは言わずもがなでる。

その結果の一つであるはぐれ悪魔に俺は何も声を掛けなかった。否、掛けられなかった。現状、悪魔の駒を分離する手段は無く、暴走した彼等彼女等を止めるには殺すしかない。事実、俺は既に数千のはぐれ悪魔を手にかけている。そんな破壊者にして、殺戮者でもある俺が救いの言葉など掛けられる筈が無かった。

故に、はぐれ悪魔の言葉に対して俺は行動を以て返した。

無言でAGE2を乗着した俺は、右マニュピレータでリア・スカートからビームサーベルのグリップを装備。そのまま、発振させた。

その行動に危機感を得たのだろう。はぐれ悪魔は胸部から魔力をそのままマシンガンの如く撃ち出した。

悪魔や天使共が、使用する光力と魔法は、自身の光力と魔力をそのままに撃ち出す物とある程度属性に加工して撃ち出すものがある。そして、例外もあるが光力と魔力をそのままに撃ち出すものは威力が低く、加工した方が高い威力を誇る。しかし、どちらも脅威である事には変わり無かった。その実例として俺もそれで一度は死んでいる。

だが、人間の最も大きな力はその成長性である。

はぐれ悪魔の魔力マシンガンに俺は、左腕にマウントした小型シールドを掲げて吶喊した。

魔力マシンガンが小型シールドに着弾する。が、しかしその魔力マシンガンがシールドを貫く事なく霧散して行く。

以前、悪魔の魔力攻撃によって死んだ俺だが、その戦闘データからAGEデバイスがその魔力攻撃を防ぐ基本理論を構築。そして、その理論を元に魔術師や材料開発科が合同でそれを物質化させた。

それが、A.B.C(アンチ・マジック・コーティング)技術である。これを装甲に塗布する事で、加工されていない魔力攻撃ならばほぼ容易に防ぐ事が可能になった。

故に。魔力マシンガンはシールドの表面を撫ぜるのみにとどまった。

その光景に驚いたのだろう。一瞬、はぐれ悪魔の動きが停滞した。そして、それを見逃す俺ではない。

ガンダムの背部のブースター、さらに両肩に配備された計四枚の可変翼を以て一瞬で最速まで至る。そこに銃弾の様な回転も自身に加え、はぐれ悪魔の蜘蛛と人間体の継ぎ目を斬り抜けた。

吹き出る夥しい量の血液。ドチャリ、ドチャリと地に落ちる人間体と崩れ落ちる蜘蛛の体。それと同時に漂う――最もガンダムに乗着しているために嗅いだ訳ではない――肉が焦げる匂い。荷電粒子による為だ。

はぐれ悪魔を斬り抜けた俺は、背を向ける事なく即座にスラスターによる姿勢制御を行い、ある程度距離を取りつつはぐれ悪魔へと機体を翻した。

その迅速な機体のレスポンスに、不謹慎にも俺は満足感を得た。前回の俺がくたばった要因たるリゼウム討伐作戦。その際にはAGE1の反応が俺に追い付いていなかった。

MSの基本操作にはインテンション・オートマチックと、手動操作の両方を採用している。新兵でもMSを動かして戦闘に参加させる為だ。

そして、リゼウム討伐戦。激闘に激闘を重ね、多大な被害と俺の死亡を以てして討伐には成功した。しかしながら、その戦闘中でAGE1は俺の思考に追い付かず、その機動にラグを生じさせていた。

何度も何度も機体のOSやシステムのアップデートを行い、多数のウェアも開発した。が、機体が俺に付いてこれなければ戦闘はろくにこなせない。

だからこそ、基本設計から見直したAGE2は俺の望むスペックを十全に備えていた。その事実に満足感を得てしまったのである。

血の海に倒れ伏すはぐれ悪魔。最早断続的に血液を吹き出して震えるしかないその身に止めを刺すべく、通常歩行にて接近をかける。そして、ビームサーベルの刃が十二分に届く位置まで接近、無言で腕を振りかぶった。

瞬間、脳内に閃光が走った俺はビームサーベルを振り下ろす事なく、脚部スラスターによるホバー移動を以て後退した。

果たして、先程まで俺が居た場所には重厚なハルバードが突き立っていた。それを成したのは無論、はぐれ悪魔だ。

 

「……何故だ、何故だ何故だ何故だ何故だ何故だぁ!」

 

叫び声を挙げるのははぐれ悪魔。その眼からは血涙が滴っている。

叫び声と同時、蜘蛛は俺に向かって白い液体を吐き出した。即座にセンサーが正体を特定、酸だ。

 

「私はぁ!私は悪魔に捕まって!ソイツは奴隷商人で、私は貴族悪魔に売られて!!」

 

降りかかってくる酸に、俺はAGE2の左肩を可変。ビームバルカンの砲身を露出させると、その直撃コースの酸を迎撃する。

さらにはぐれ悪魔本体から放たれる電撃に対しても回避運動をする。

 

「ずっと、ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと!奪われて、奪われて続けて!やっと、自由になったのに…」

 

ビームバルカンによる迎撃と回避運動をしつつ、はぐれ悪魔の隙を見つけた俺は、左マニュピレータで、リア・スカートにマウント状態のビームサーベルを発振、そして投擲。蜘蛛の脳天を貫き惨殺した。

自身の一部であった蜘蛛の末路を歯牙にも掛けず、はぐれ悪魔は消失した下半身の代わりとして蝙蝠の翼を展開。ハルバードを構えての突撃を敢行した。

 

「こんな所で…こんな場所なんかで!死ねるかあああああぁぁぁぁぁ!!」

 

「……すまない」

 

風を切って突き進むハルバード。その重量とはぐれ悪魔の膂力から鑑みるに、AGE2の装甲を貫かずとも俺に致命の傷を与える事は確実だった。

しかし、俺はその愚直なまでの突撃を身を沈ませる事で回避。はぐれ悪魔の懐まで忍び込み、心臓へとビームサーベルを突き刺した。

するり、とビームサーベルを抜くとはぐれ悪魔はその場に崩れ落ちた。

俺は、突撃時の表情のままに開かれたはぐれ悪魔の眼を左マニュピレータでゆっくりと閉ざす。

……何時もこの瞬間がやりきれない。はぐれ悪魔が悪では無いことは分かっている。分かりきっている。しかし、暴走した彼等彼女等を殺さなければ無駄に血は流れ、命は消える。

はぐれ悪魔を殺した時、俺にのし掛かるのは拭いきれない罪の意識。そして、俺が壊す事しか出来ない破壊者である事を再認識させられるのだ。

俺は命の灯火が消えたはぐれ悪魔に黙祷を捧げると、蜘蛛に突き立ったビームサーベルを回収。真夜中の駒王町へと舞い上がった。

 

 

 

 

「……血の匂い」

 

無能姫リアス・グレモリーの眷属の一人である塔城小猫は漂ってきた濃厚な血の匂いに眉をひそめた。先日起きた、兵藤一誠殺人事件の下手人探しに躍起になるあまり、はぐれ悪魔の討伐を怠ってしまっていたグレモリー達。その結果として、大公からお叱りを受けつつ何度めかの依頼を遂行しにこの場へと足を運んだのであった。そして、其処には血の海に沈む今回の討伐対象らしき悪魔の姿が横たわるのみであった。

 

「また……ですか」

 

そう苦虫を噛み潰したような表情で呟いたのは金髪の少年、木場だ。

 

「……この街は私の縄張りなのに。一体どういうつもりなのかしら」

 

そう言って苛立たしげに親指の爪をキチキチと噛むグレモリー。その表情からは不満しか見受けられない。

しかも、その不満ははぐれ悪魔を倒せなかったと言う一辺に尽きる。多く人間の命が失われた事には全く目が行っていなかった。

 

「本当、苛立たしいわね」

 

そう呟くグレモリーの目からは自身の思い通りにならない世界への怒りが滲み出ていた。

 

 




「それでは、正式にブルーコスモスは我々を支援する。と、言う事で宜しいですね」
とある一室で、金髪の青年――リディ・マーセナスは居並ぶ人々に告げた。そして、その宣言に満足そうに頷く人々。
そして、恙無く調印も終了。人々が部屋から次々と退出する中、一人の男がリディへと声を掛けた。
「流石、見事な手並みですね。次期マーセナス議員殿は 」
「これは、アズラエルさん。いえ、これが自分の領分ですから」
「呼び捨てで構いませんよ。それより、あの件です。本気であの方は実行なさるおつもりで?」
「はい、自分たちもその積もりですよ。だからこそ、アズラエル社長も賛同なさったのでしょう?」
「ええ、勿論。全ては青き清浄なる世界のために」
そう言って立ち去るムニタ・アズラエル。
その姿を見送ったリディは懐から携帯端末を取り出した。会談の成功を告げる為に

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。