時は遡り、進藤ヒカルは逆行者である、そしてその相棒ともいうべき藤原佐為もまた逆行者であった。
2人は再会を涙ながらに喜び、また碁が打てることを幸せに思っていた…、一つこの知らない幼馴染を除いては…。
「ヒカルぅ〜待ってよぉ〜」
女の子の声、ヒカルにとっては唯一の幼馴染であった藤崎あかりの声であった。
「ハクも早くしないと学校遅れるよぉ〜」
「わかってるよ、でもこの詰碁がさ…」
二人の後を追うように一人の子供が本を読みながらついて行っている。
「本読みながら歩いてると転ぶって先生にいつも言われてるじゃない!」
立ち止まりぷりぷり怒っているあかりを見て、ヒカルと佐為は(この頃のあかりってでけぇな)「やっぱりあかりちゃんは可愛いですねぇ」とそれぞれ思うところがあった。
そしてそのあかりの後ろの幼馴染を見るたびに、(絶対こんな奴いなかったよな?)「いませんでしたねぇ」と二人で話し合うのであった。
この幼馴染どうやら黒井ハクという名前らしいということ、真っ黒な髪と真っ白な肌が特徴であるということと、どうやら囲碁の本をしょっちゅう?読む時があるらしいということが、ヒカルと佐為の中で調べた結果らしい。
授業中でも読んでいるので最近の佐為は授業を受けつつも、囲碁の本も覗けて歓喜しているのだが、ヒカルからすると自分は堂々と覗きに行けないのが残念でならなかった。
そしてバレるたびに先生に怒られるのだが、成績は優秀なので、禁止にされるほどではないらしい、ということまでわかっているのだが。
ヒカルからすると、授業の内容は小学生の内容なのだが、頭が逆行しているおかげで前ほどは成績は悪くない、むしろ優秀なほうでヒカルの両親は一時期心配したようだ、祖父の蔵で倒れてから急に成績は良くなるわ、あかりと積極的にいるようになるわ、おまけに幼馴染であるハクのことをすっかり忘れているわで、大騒ぎになった、もっともヒカルも佐為もその時逆行してきたのだが、病院で検査したところ一時的なものであるようで、健康上は問題ないと言われ安心したようではある。
もっとも父親は心配はしていたが、さほど心配ではなく、ヒカルの成績が上がったことにただただ喜んでいた、なぜなら妻の小言を聞く回数が少し減ったからである。
一方でヒカルも困っていた…、今までのことを思い出すのも苦労していたし、しかし佐為がいたおかげで、大半のことは不自然な形にならずに済んだのは幸いであった、そして佐為がいることが何よりも嬉しかったが、ハクというイレギュラーがどうにも腑に落ちずにいて、ハクに対して警戒心を抱いていたが、ハクは自分を忘れられていると言われたにも関わらず、それほど気にせず無事で良かった、と思いやりのある言葉をもらったので、悪いやつではないのだろうと、ヒカルと佐為の脳内会議で様子見という結論に至ったのであった。
そんな中ヒカルは意を決してハクに何を読んでいるのか、知らない程を装いながら聞いてみた
「ハクお前それ何読んでるの?」
ハクは意外だという顔を見せながら
「本読んでる時にヒカルが声かけてくるなんて珍しいね、いつもは早く本読まない時期がこい!って言ってたのに」
笑いながらハクは表紙を見せて囲碁の本だよっていうことをヒカルに教えた。
「いつもヒカルは俺が本を読んでる時は全然見向きもしないのに、急に声かけてくるなんてヒカルお前本当に大丈夫か?」
ハクはヒカルが倒れてから何かが変わったのか察しているような感じがして、ヒカルは急いでごまかすことにした。
「いや別に大したことないんだけどさ、いつも熱心に読んでるから気になったんだよ」
「囲碁の本だよ、ヒカルいつも俺が囲碁の本読んでるとジジくさいっていって外にいつも遊びに出てるじゃん、それで読まなくなった時を見計らっては外で遊ぼうっていうから意外でさ」
ハクは笑った。
そこでふとヒカルに一つの疑問が思い浮かんだ、本を読まない時期があるってどういうことだろう?という疑問である。
このハクという少年はどうやら囲碁に熱中しているときもあれば、ぱったりと囲碁の本を読まなくなる時があるという、あかりから聞いた情報ではあるが、それ故にヒカルはその時期になるとヒカルはハクを遊びに連れまわすらしいということなのであった。
この世界に逆行してまだ碁を打てないことにヒカルも佐為もフラストレーションが溜まっているせいか、思い切ってハクに碁が打てるかどうかを聞いてみることにした。
「ハクはその囲碁ってやつが打てるの?」
ハクはまたも意外そうな顔だが少し嬉しそうに、「少しなら打てるよ」とヒカルに返した。
これはもしかしたらチャンスかもしれない!
ヒカルはそう思った、なぜならヒカルの家には祖父からもらった碁盤がまだないからである、どうやって買ってもらおうか考えてはいたが急に祖父に勝ってしまっては怪しまれる、ならばこのハクと打って腕を磨いたとすれば、多少不自然さはなくなるのではないか?とニヤリと思いついたのであった、佐為にも相談したが、それが一番無難かもしれませんねと、肯定したのでその作戦で行こうと決めたのであった。