そして現在進藤ヒカルは塔矢邸の前に立ちつくしていた。
(やっぱでけぇなぁ塔矢の家)
『そうですねぇ』
研究会に誘われたのでせっかくだからと、出席することにしたヒカルなのだが、初めての道だからわからないだろう、ということでタクシーを使う予定だったのだが、とある白いスーツの個人タクシーに捕まってしまい、するすると塔矢邸についたのであった。
「何を見ているんだ早く入るぞ」
白いスーツの個人タクシーの人はどうやらここの人らしく何気なく塔矢邸に入っていった、すれ違いざまに「進藤!きたのか!!」
さぁ早く上がってと引っ張られもはやなすがままに研究会に出席することとあいなった。
「進藤君きてくれたんだね、本当にありがとう、また君と対局できるかと思うと胸がワクワクしてね…昨日は寝付けなかったよ」
自分をあっさり負かした相手がいることが嬉しくて塔矢行洋はヒカルに席に座るよう伝えた。
「今日の研究会はこの前の私と進藤君の一局にしようか」
「是非お願いします!」
ヒカルとしては塔矢行洋の狙いが知りたかったので、この検討こそ求めていたものであった。
ほかに異論を出す弟子もいなかったので、研究会はこれに決まった。
『この碁は序盤から終盤に至るまでヒカルが攻めっぱなしで終わった碁ですね』
(うん、この頃の塔矢名人はまだsaiと打ってないからね、名人自身の碁が若くなる前だから通じた碁だと思う)
『確かに行洋にしてはまだ受けが甘いところが多々ありますね、それが積み重なりこの形になったわけですね』
「進藤ここの一手は初めから読んでいたのか?」 白いスーツの個人タクシーの人緒方九段が発言をして、ヒカルはハッとしてから
「そうそう、あ…そうです、ここは読んでいたのでこっちにあらかじめ置くことにしておきました」 前世があるというのに、未だに緒方に対しては敬語慣れしていなかったヒカルである。
それを知らずに笑って、自分の言葉でいい、教えてくれ。 と緒方はこの碁について検討を積極的にしていた。
塔矢アキラも積極的に父に一手の真意を聞いていたりと、この検討は非常に実りのあるものであった。
終わり際アキラ緒方からの僕と、俺と打て攻撃を食らったのだが、それを置いておいて進藤ヒカルには塔矢行洋に言うべきことがあった。
「塔矢先生、俺ネット碁が出来るようになったんだ、だからsaiとkuroshiroと打ってきます!」
「そうか、私も同じことを言おうと思っていた…緒方君あれを…」
はい…と緒方はノートPCを取り出しすでに準備は万端だといわんばかりの姿勢であった。
「これからの時代ネット碁の時代が必ず来る、それに乗れぬようではここで朽ちていくようなものだ、私も進藤君そしてsaiとkuroshiroを追うつもりだ」
「名人だなんだと呼ばれていた自分が恥ずかしいな」はははと行洋は笑い。
「この中では私はただの塔矢行洋だ、名人でもなく肩書きも何もない、ただの碁打ちさ」
笑いながら言っているのを見るに、ヒカルと佐為は行洋が近いうちプロ棋士を引退するだろうということを悟った。
誰よりも一手を求め、さらなる一手を求める行洋だからこそネット碁はあっているのかもしれないな…、そうヒカルは思った。
「緒方君ここはどうやるのかね」
眼鏡をしつつ緒方九段に、聞いている塔矢先生を見る限りまだまだ先になりそうだなぁ、と佐為と2人でひっそり笑ったのは秘密だ。
「進藤!君がネット碁をやるなら僕ともやってくれないだろうか!?」
やはりきたか塔矢アキラ!!!
「そうだ進藤俺とも打て!!」
やはりきたか白スーツの個人タクシーのおっちゃん!!!
「わかったよ 後でID教えるからそれでフレンドになれば、いつでも打てるはずだから、それで勘弁してよ…」
「進藤君ついでに私のも頼むよ」
こうして始まる前から進藤ヒカルのアカウントには3人のフレンドの予約がなされたのであった。