ヒカルは見ていた。
この一手の先には何があるんだろう?
その一手の先には何があるんだろう?
あの一手の先には何があるんだろう?
黒、sai 対 白、kuroshiroのネット碁では二回目となる対局であった。
黒が白を覆うように、白が黒を覆うように、どちらに偏るわけでもなく均等なバランスだ。
ただほんのちょっと白が濃かっただけ、ただそれだけだった。
『終局…ですね』
ふぅ、と一息入れた佐為は口惜しそうにこぼした。
「綺麗だ…」
ヒカルが呟く、『ええ、とっても…』
つーっとヒカルの頰に涙が流れていた。
「畜生!なんでお前達の碁はこんな綺麗なんだよ!! ずりぃぞ!!!」
涙を乱暴に拭きながらヒカルが喚く。
『何故でしょう? 何故かハクとはこういう碁になってしまうのです』
何故かわからない風に語る佐為。
「嘘だい! いつもはもっとバチバチした碁を佐為だって、ハクと打ってるだろ!!」
『そうなのですが…何故でしょうね?』
ふふっと笑って誤魔化す佐為。
『この一局を余人が見るとなると、どうもハクとはこういった碁になってしまうようです』
「でも俺はこの碁の美しさがわかるところにいるんだな」
鼻をかみながらヒカル。
『そうです、この碁の本当の美しさを貴方はわかるところまできている、恐らくはあの者も』
あの者とは塔矢先生のことだろう。
「素晴らしい碁だ、こんな碁がネットというものを介して世に伝えられるとは…」
愛機であるノートPCを見ながら、あることを思いつく塔矢行洋。
「棋譜…棋譜をとらねば…どうすれば…? 緒方君はどこだ…? アキラでもいい!」
自分で並べられるのに、何か形に残すべきだという警鐘にかられた、塔矢行洋であった。
『でもヒカルだってハクと美しい碁を打っているでしょ』
すっかりヒカルをなだめるモードになっている佐為。
「本当に?」すっかりいじけて部屋の隅っこに座っているヒカル。
『本当ですとも、私だって本当は二人の対局にいつも感動していますが、我慢しているんですよ!』
「本当の本当に?」
『えぇ!そりぁもう!この前のあの一局なんてもう涙なしでは見られませんでしたよ!』
「でも泣いてなかったでしょ?」
『あ、そのーー、これから紡げば良いではありませんか!』
ジト目で佐為を見るヒカルだが、
「まぁ…、そりゃそうだよな! 俺には俺の碁があるんだ、佐為とは違う形かもしれないけど、俺なりに紡いでいくよ!」
『その調子です!』
ホッとしたと同時に、佐為という自分の殻を破っているヒカルに、佐為は密かに感動していた。
「次を見てろよーハクー!!」
ヒカルのご近所迷惑にならない程度の叫びが夜を木霊した。
しかしその願いとは裏腹に、翌日ハクは碁への興味を失っていたのであった。
囲碁もできないのに、対局シーンはやはり無理がありまする…。
でもなんとか形にしたくて、物として残したくて、こうなりました。
ヒカルの碁はそんな囲碁がわからない私でも楽しいと思える凄い漫画、アニメだったんだなと再認識させられました。