あくる日ヒカルは院生達に指導碁をしている中でも、奈瀬の実力はぐんと伸びていた。
ハクの教えが効いているのだろう、一組でも上位常連になり始めたのである。
元々碁会所巡りで強くなっていたのに、さらにハクの教えのおかげで安定度が増してきていた。
「進藤、本当にありがとうね、紹介してくれて」
「別に気にしなくていいよ、ハクとの縁があったから、弟子になれたわけだし、そもそも縁がなかったら、指導碁を打ってもらうこと自体なかっただろうしね」
こっそり二人が話していると、
「進藤! 今度いつkuroshiroに挑むんだ!?」と和谷の声。
「そんなこと言われたっていつになるかわかんねぇよ!」
「いつまでもkuroshiroに無勝のまんまってわけにはいかねぇだろ!!」
「そりゃそうなんだけどさ…」
呟くヒカルであった。
久々にkuroshiroとHikaとの対局が実現した。
今回は珍しくハクがヒカルに申し込んだ形となった。
「いやさ、弟子の奈瀬がね、師匠のかっこいいところ見たいとかいうから…」
割と動機は不純な理由であった。
もちろんヒカルとしては断る理由はなかったので、「師匠のかっこ悪いところ見せてやる!」そう奈瀬に言っとけ!とヒカル
佐為も傍らで『その調子ですよヒカル』と応援している。
昨今のネット碁界では、kuroshiro sai Hikaと強者のトライアングルが出来ていた、うち一人であるHikaだけは正体を隠していないので、進藤ヒカルだということは、知れ渡りはじめたが、以前としてkuroshiroとsaiは謎のままであった。
その中でtoya koyoが名乗りを上げ始め、ネット碁界は白熱した状況下にある。
誰がkuroshiroを破るのか? これが一番だが、そのkuroshiro以外に負けてないHikaとsaiにスポットが当たりはじめてしまった。
何故Hikaとsaiは対局をしないのか?
インする時間が噛み合わないのかを疑われ始めたのである。
これはまずいとヒカルは考え始めたが、よくよく考えたら、ハクに代打ちしてもらえばいいじゃないか、という結論にたどり着き、その疑いは闇へと葬られることになる。
そして肝心の対局はというと…。
「むむむ…だぁぁぁぁ! 2目半足りねぇ!!」
どうやら今回もHikaが敗北を喫したようだ。
『惜しかったですねぇ…』との佐為の言葉。
「あともうちょっとまできてそうなんだよなぁ」手応えは掴んできているヒカル。
佐為だってそうだろ!?と振ると、
『私も今少しという手応えは確かに感じています』手を少し伸ばす仕草をしている佐為。
「ハクの家で打ってても、手応えは感じてるんだよ…、でもあと一歩がとどかねぇー…」
と悔しそうなヒカル。
『弟子にかっこいいところを見せれて今はさぞかし気持ちいい思いをしてるでしょうねぇ』
あ!とヒカルは思いだし、「くそーーー、かっこいいところになっちまったじゃねぇか!」キィーーっとさらに悔しがるヒカルであった。
筆が…進まない……。
もう走れないかもしれませぬ…。
まだ走りたい……でも走れない……。