ヒカルは塔矢名人の経営する例の碁会所にきていた。
「ハクも今だに碁に興味ねぇみたいだし俺達で塔矢と打つかぁ」
とかなりめんどくさそうにしているヒカル
「なんでヒカルはそんなに塔矢と会うのにめんどくさそうなのです?」
不思議だと思い聞く佐為
「だってよぉ、あれから俺が因島とか行くたびについてくるようになったんだぜ?嫌になるぜまったく」
うざそうにしながらヒカルが言う
それを察した佐為は少し悲しい目をしながら
「ヒカル…ごめんなさい」
と謝った。
「いいんだよまたこうして会えたじゃねぇか! もう過去のことは言いっこなし! それでよぉ塔矢が毎年因島の旅行プランとか立て始めてよぉ、こっちは自分のペースで行きたいのに嫌になるぜ全く!」
佐為はその光景を脳裏に想像し、少し笑った
「だからあいつとはもっとほどほどに絡みてぇんだけどなぁ」
塔矢に対してドライなヒカルに対して佐為は
「昔は塔矢塔矢だったのに今度はハクハクですか、これが噂の三角関係ってやつですかね?」
と楽しそうに佐為は呟いた
「そんなんじゃねぇ~よ!」
図星をつかれて形勢が悪いと察したヒカルは碁会所に足を踏み入れたのであった。
「いらっしゃいませ~ あら!子供一人!?」
と市川は驚いた。
「うん、子供一人だけどいい?」
(市川さんわっか!!!)
と過去を遡ってきたものがいるならば、なら誰もが思うであろう感想を思いながら、ヒカルは言う。
「いいわよ 大歓迎!子供は500円だけど棋力はどれくらい?」
そう市川が聞くと
「棋力はね 本因坊クラスかなぁ?」
とふざけた声を出しながらヒカルが言う
「だからここで一番強い子と打たせてよ!」
と畳み掛けた。
市川は少しドキッとしたが、冷静になって
「ここで一番強い子はいるにはいるけどぉ…」
といったところで、
「君、本因坊クラスに強いの?すごいね、僕と打とうよ」
と例のおかっぱ頭の少年がやってきたのであった。
前より食いつき気味に来た塔矢に対してやはり面倒になったヒカルは
「う、うん打とう打とう」
と若干引き気味に答えた。
「その年で本因坊クラスだなんてお父さんが聞いたらびっくりするだろうな」
となぜかワクワクしている塔矢アキラである
「お前なんでそんな食いつきいいんだよ…」
と半ば呆れ顔をしているヒカルにアキラは
「だって名人が経営している碁会所に本因坊が来たってなったら誰もが興味持たない?」
とごく自然に返してきた
(あちゃ~ 言われてみるとここで名人並っていえば月並みだけど本因坊は珍しいからかぁ)
と拙い自分を少し呪ったヒカルだった
「君、名前は? 置石はどうする?」
と聞くアキラに対して
「俺? 進藤ヒカル、置石だぁ? いらねーよ 互先互先」
というヒカルの声
「そりゃ本当に本因坊だったら僕が置石置かせてもらうくらいだから当然か」
なぜか納得しているアキラなのであった
そうして始まった対局だが、ヒカルは佐為に相談した。
(佐為…お前打つか?)
佐為は首を振り、
「ヒカル私が打ちたいのは山々ですが、やはり貴方が打つべきでしょう、おそらく生涯のライバルの一人になるであろう者と…」
そう佐為は観戦を決め込んだ。
(しゃあねぇ、俺が打つか…)
そう決めて碁石を握った。
一手一手展開が進むごとにアキラの顔は強張っていった
(これは…指導碁だ…なんてわかりやすい…)
自分のはるか高みから見下ろしてくるこの少年をアキラは信じられずにいた
(この一手なんて僕の碁打ちとしての才能を確かめているようだ)
そうアキラが自分に対する指導碁に対し必死に食らいついて行く間に対局は終わった、
結果は言うまでもなくヒカルの勝利に終わった。
項垂れているアキラに対し特になにも言うことなく
「また縁があれば打とうな」
今回はなるだけ角が立たないようなおかつドライに接することに決めたヒカルはそれだけ言って帰っていった。
帰りに市川さんに子供囲碁大会のチラシをしっかりもらっていくのも忘れなかった。
「やっぱ塔矢は塔矢だったなぁ」
ヒカルは塔矢アキラが塔矢アキラであることに安心した様子で呟いた。
「随分力を入れた指導碁でしたね」
佐為も納得の表情で返した。
「まぁな 本因坊クラスって名乗ったからには本因坊クラスの指導碁くらいはしてやらねぇとなって思っちまったんだよ」
「本因坊は大変ですねぇ」
他人事のようにいう佐為であるが、
「どっかの本因坊に憧れて、本因坊になったやつもいるくらいだからなぁ」
と口を尖らしながらもやはりいつもの相棒が隣りにいることが嬉しそうなヒカル
「そうですね、どっかの囲碁幽霊が二人の本因坊を誕生させてしまったわけですもんね」
うふふと弟子の成長を喜んでいる佐為
「うっせーやい!調子にのんな!」
そんなことを言いながら帰路につく二人なのであった。