最近のヒカルは上機嫌である、なぜならハクとここ最近は毎日打てるからである。
本気で打てないストレスはあるが、自分が打つ碁に対して、佐為とはまた違った美しい碁を打つハクに惚れていた。
あかりとハクの碁を見ている時に何気なく見渡したら、ある物が目に入った…。
それはまだこの頃では普及まもない物であるPCであった!
「ハク!そういやお前パソコンもってたんだ?」
「え? まぁ持ってるよ、ちょいちょいネット碁とかしてるくらいかなぁ」
何気なくいうハク、ここでヒカルに電流が走った!!!
(佐為!!ネット碁だ!!!ネット碁なら俺もお前も全力でハクと打てるぞ!!!)
(なんと…やはり囲碁の神様は我々の味方なのですね)
歓喜のあまり泣き出してる佐為を尻目に、ヒカルはなんとかハクのネット碁情報を聞き出すことにした。
今日もいつもの時間に現れるはずだ…。
そう思いPCに電源を入れて待機する人間がここに一人いた、緒方精次九段である。
彼は人づてにある無敗ネット碁棋士の話を聞き話半分で、試しに見て見たところその場でその棋士の虜になった。
(早くログインして俺と打て…kuroshiro!!!)
ネット碁に彗星の如く現れた棋士kuroshiro、彼に勝てたものはまだ一人もおらず現在のネット碁界ではすでに伝説とまでかしている。
現れては消え、そして気が付いた時にまた現れては消えるので、囲碁の幽霊なのではないか?とまで言われているのであった。
ヒカルと佐為はその情報を仕入れたとき心の底から歓喜した、自分たちの読みが想像以上の代物だったからである。
ハクの棋力がそこまでと知った瞬間二人の頭の中はハク一色に染まった。
早く全力のこいつと打ちたい、この者と打てば神の一手が見れるのでは!? 二人はなんとかPCを手にする方法を考えたが、インターネットカフェ以外には考えがつかなかった…。
インターネットカフェではお金がかかるので今の自分たちでは行けない、世知辛いものを感じ佐為はあまりの哀しみに泣き出す始末であった。
しかし解決策というのは思いもしないところでやってきた。
ある日の事夕飯を家族で食べているヒカルがPC〜ネット碁〜などと唸っているところを見た父は、
「なんだヒカル? PC使いたいのか? 父さんのでよければ使ってもいいぞ」
と鶴の、いや神の一声が舞い降りたのである。
「最近はお前の学校での成績もいいみたいだしな、それに碁も覚えて親父も喜んでたしな、爺ちゃん孝行してるご褒美だ!」
と父は言ってくれたのである。
母は貴方!そういって甘やかすのはよくないだのなんだのいってるが、実際成績も良くなり、祖父からの評判も良好となっている今ではそこまで強くは言えないのであった。
そんなわけで夕食が終わった後、PCを使わせてもらうことになったのだが、一つ問題が発生した…。
ヒカルと佐為どちらが先に打つか?である。
この問題は当人たちにとってまさに死活問題なのであったが、ヒカルはいつもハクと全力ではないが、打っているでしょ!!!という怨嗟の声がめいいっぱいこもった佐為の抗議により、ヒカルは折れざるを得なかった。
ここに前の世界で無敗の棋士であったsaiが再び降臨することになった。
「kuroshiroは、ハクはどこです!? ヒカル早く探して!!」
と急かす佐為なのだが、ヒカルとしても早く探して自分も打ちたいと思っているが故に早く探してはいるのだが、残念なことに毎回毎回事あるごとに対局中なので、見学または他の対局相手を選ぶしかない悲しさがあった。
そしてやはり自分たちも体験したが故にわかる、対局申請が多いのであろう、kuroshiroに対局を受けてもらうには、それだけ対局終了してからの対局申請の速さか、それだけネット碁で実力を見せつけて目をつけてもらうか、ということが嫌でもわかることになったので、まずはkuroshiroに並ぶ無敗棋士になることに二人は決めたのであった。
理由は簡単ヒカルは機械が苦手ゆえに対局申請が恐ろしく他の者たちに比べて遅いからである。
どれくらい遅いかというと、kuroshiroが次の対局を始めたあとに申請を送るというレベルで遅いのである。
初期の設定では持ち時間が少なすぎるので、持ち時間を長めに設定してじっくり打ちたい、というヒカルも佐為も二人が思っていることなのだが、この設定にも時間がかかり、結局他の人たちにkuroshiroとの対局を掻っ攫われるのである。
これには佐為はご立腹で、ヒカルのばか!!もっと早くしてください!などといつものパタパタ袖振り攻撃をそのたびに食らうので、たまらず後者の策を取らざるを得なかった。
「くそっ!!!また選ばれなかったか!」
ダンっと机を叩いてコーヒーを一口ぐびりと飲んでタバコで一服いれる、どこかのプロもまた選ばれずに悲しみを背負っていた。