正義の仮面 作:マスクオブジャスティス
「私に教師を?」
「そうだよ、是非とも君にここで教師をやってもらいたい」
生まれ変わりアクション仮面の力を手に入れヒーローとして活動していた私の元にある依頼が入った。普段は春日部周辺でヒーロー活動をしているが、以前お世話になった人物からの依頼だったこともあってひとまず話だけでも聞いてみようかと思いこの場所にやってきた。
「しかし私には教師をできるような能力があるか……」
「なに別に一般教養の授業を受け持ってくれというわけじゃないんだ、それに今年からはオールマイトも教師として働いて貰う予定だ、彼に出来て君に出来ないようなこともないだろう」
「しかし……」
私の前にいる喋るネズミからそう言われる。正直に言えば教師になるというのは魅力的な話だ。アクション仮面は子供たちの夢でなければいけない、そのためにはヒーローとして活動するのも当然だが、直接子供たちに教えることもアクション仮面として立派な夢となれるだろう。ただやはり能力上でどうしても不安が残る。筋力だけでなく知力の方面でも研鑽は怠っていないつもりではあるが、頭がよいことや力が強いことと教え導く能力は別だろう。
「まあ君の不安も理解出来るよ。だからまずはお試し期間ということにして結果がよければ正式採用という形にしようと思う」
「そういうことであれば……」
「それと君には一つ生徒達にある課題を与えて貰いたい」
「課題?」
「課題と言っても君が特別に用意する物は特にないよ、ただヒーローコスチュームを身に着けないで全ての授業を行って欲しい。そして君は自分がアクション仮面であることを生徒達に教えてはいけない、それだけだよ」
つまり自分がアクション仮面であることを隠して活動しろということだろうか? となると生徒達に出す課題というのもなんとなく想像がつく。
「それはつまり、生徒達に私の正体を見破らせるという課題を与えればよいということですか?」
「察しが良くて助かるよ。ヴィランの中には当然その姿を偽装している者もいる、そういった人物を見分ける訓練の一つとしてね。君はアクション仮面としての知名度は高いが仮面の下の姿はそうでもないだろう?」
確かに、特別隠しているというわけではないが、人前に出る時は専らアクション仮面としてで素顔を晒すことはそうない。プライベートな情報も基本的には非公開のままだ、公開しても困ることはないが誰かに公開することを強いられたことがあるわけでもなくなあなあのまま非公開となっている。
「それともう一つ意味がある、生徒達にヒーローとは何かを教えることだ。君は資格さえ持っていればヒーローだと思うかい?」
「それは違います」
「そうだ、理由は聞くまでもないだろう。ではヴィランさえ捕まえることが出来ればヒーローかな?」
「それも違います」
「そうだ、それならヒーローコスチュームさえ身に纏っていればそれはヒーローかな?」
「違います、確かにどれもヒーローを形作る要素の一つではありますが」
「その通り、ではヒーローとは何だと君は思う?」
それは非常に難しい問題だ。今の個性社会ではヒーローは一つの職業として認識されている、そんな世の中では地位や名誉、或いは金銭の為にヒーローになる者はたくさんいる。そのことを否定するつもりはない、人が人である以上は自尊心を満たしたいと思うのは当然であり、また生きていくためには金銭が必要とされることは必然だ。むしろ何かのために努力を重ねるその姿勢には敬意を覚える。しかし、私の目指すヒーロー像とは異なる。私の目指すそれは本物のアクション仮面だ。フィクションであるが故に常に正義であり希望であり、子供たちの夢であったヒーローだ。だから私の質問の答えはこれしかない。
「私はヒーローとは光であると思います」
「成程、光か」
「ええ、今の世の中は個性という力に対して完璧とは言い難い。そんな混沌に満ちた世界で確かに進むべき指標となるのがヒーローであると考えます。もっともこれは私のヒーロー像ですので全てのヒーローがそうあるべきだとまでは言いません」
「よろしい、満点の回答だよ、特に後半の部分がね。今ヒーローを志す子供達は確かにそれぞれの目標やヒーロー像を持ってここにやってくる。ただそれだけではダメなんだ。誰もが異なるヒーロー像を持っている、それを否定せずに受け入れること、それとどんなヒーローであっても志を忘れずにいればコスチュームを身に纏っていなくともヒーローとなれること、それを教えるのが僕たちの役目だ」
「成程、しかし仮にもヒーローを目指す子供たちです、その辺りの事は理解しているのではないでしょうか?」
「中にはそういった生徒もいるだろう、けれど大半の生徒は理解しているつもりになっているだけだよ。なぜなら彼らが本気でヒーローを目指す者達と本当の意味で並び立つのはここが初めてになるからね。彼らはまだ他のヒーローの卵達のことを知らないのさ」
「そういうことですか、生憎私はなりふり構わず真っすぐにここまで来たのであまりそういうことが分からないのかもしれません」
周囲のことなど見ることもなく、ただアクション仮面になるという気持ちでここまで走り抜けてきたのだ、友人と呼べるような人がいないわけではないが、確かに交友関係はあまり広くはない。誰かと並び立つという経験が少ない。
「知らないなら知ればいい、ここでは教員だって
「分かりました根津校長」
とにかくやると決まれば半端気持ちではいられない。何かと準備をしなければならない。喋るネズミ、ここ雄英高校の校長である根津校長に一礼し、部屋を後にする。
「Plus Ultra、アクション仮面としてどこかで妥協するわけにはいかないな」
生徒ルートではなく教員ルートである