正義の仮面 作:マスクオブジャスティス
「今日は俺のライブにようこそー!!! エヴィバディセイヘイ!!!」
プレゼントマイクが叫ぶ。残念なことだが今日は彼のライブではなく、ここ雄英高校の入学試験日だ。彼がいつもああいったDJ風なのは今日に始まったことではない。以前から彼のヒーローとしての底抜けの明るさには尊敬の念を覚える。
それはさておき、彼が司会、もとい試験の説明を壇上で行っているようだ。試験のルールを纏めるとヴィランを模したロボットを倒して、各ロボットに振り分けられたポイントを取得していく。シンプルな内容だ。
「以上で説明を終了する、といいたいとこだがもう一つ今回の試験にはポイントがあるぜー!!!」
例年であればそこで試験は開催されるのだが、今年からもう一つ新しいルールが追加された。これは今年から教師として赴任するヒーローの人員が増えたことに由来する。試験とはいえ折角ここ雄英高校まできた生徒達だが、試験の倍率は脅威の300倍、会場にいる殆どの子供達は入学することは叶わない。残酷な話のように思えるがヒーローというのは過酷な仕事、そう簡単になれるものではないのも当然だ。更に言えばヒーローを育成する学校は何もここだけではない、ただ日本で最も大きいというだけの話、受かりそうにないならば他の学校を受験してもいいのだ。そんな入学が叶わない多くの学生達にもそれだけでヒーローという夢を諦めて欲しくない、そんな理念の元で新しいルールは追加された。
「今回から各会場に一人、雄英高校の教師でもあるヒーローが紛れ込んでいるぞ!!! 彼らは普段はあまり素顔を晒していないタイプのヒーロー達だ、更に今回は簡単だが変装もしてもらっている!!! 彼は君たちと同じようにロボットを倒していく、言わばお邪魔キャラだ!!! ロボットの数には限りがある、ぼさっとしていると彼らにロボットが全滅させられちまうぞ!!!」
「失礼! 質問よろしいでしょうか!?」
「オーケー、さっきもお邪魔ヴィランロボについてリクエストしてくれたそこのリスナー、何が聞きたい!!!」
「はい! 我々もヒーローを目指す身として鍛錬は怠っていないつもりですが、流石に本物のプロヒーローとの間には大きな隔たりがあると考えます。そんなプロヒーローと並べられてしまえば本当に碌なポイントを得られずに終わってしまうのではないでしょうか!?」
「グッド!!! 俺たちヒーローは時には敵わない相手にも向かっていかなければいけない、だからと言って策も無しに突っ込むのはナンセンス!!! 自分の実力を把握出来ているいい質問だ!!! そんでもってアンサーだが、プロヒーロー達も君たちに試練を与えるつもりはあっても一方的に痛めつけるつもりなんて当然ノーだ!!! じゃあどうするかって!? 今回ヒーロー達には個性無しで参加してもらう!!!」
プレゼントマイクの答えに周囲の子供たちが騒めき立つ。小さな声だが、個性もなしでどうやって、といった内容の会話がそこかしこから聞こえる。成程、前に根津校長が仰っていた『理解しているつもり』という言葉の意味が分かった気がする。
「個性無し……!? それでは逆にプロの方たちには不公平過ぎるのではないですか!?」
「本当にそうかな!? まあ本当にそうだったなら君たちには有利でしかないんだから気にするな!!! それと変装しているヒーローの正体を見破った奴には特別に追加ポイントを与えるぜー!!! おっと個性無しとはいったが常時発動型の個性とかは勘弁してくれよな!!!」
「了解しました! ありがとうございます!」
それにしてもこの質問をしている少年は真面目だ、悪い意味ではなく良い意味でだ。真面目過ぎるのも視野が狭まる原因になるかもしれないが、ヒーローという職業の特色上は真面目であることはプラスポイントだ。それに私の主観になるが、この少年はとてもいい目をしている。おそらくヒーローについての理解は子供たちの中でも高い方だ。身内か親しい知人にプロのヒーローがいるのかもしれない。
「それじゃあ最後にリスナーへ我が校の"校訓"をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!! Plus Ultra!! それでは皆良い受難を!!」
さて、説明は終わった。おそらくプレゼントマイクのことだ、突飛なスタート合図を出すだろう。それに構えて準備をしたいところだが、子供たちの多くはスタートに反応出来ないだろう。変装して、仮面を外して若く見えるように化粧を施して貰っている程度だが、そんな私がスタート合図と同時に飛び出してしまえば自らヒーローであることをばらすようなものだ。だからここはあえて周囲の子供たちに合わせることにしよう。
「スタートー!」
と思った通り、カウントダウンも何も無しに唐突にスタート合図が上がった。想像していた通り周囲の子供たちは何が起こっているのか分かっていないようだ。
「どうしたぁ!? 実戦じゃカウントなんざねえんだよ!! 走れ走れ!! 賽は投げられてんぞ!!?」
プレゼントマイクが促すことで、ようやく全員が動き始める。少々厳しすぎる気もするがプレゼントマイクの言葉も最もだ。ヴィランに限らず災害なんてのは殆どが唐突に発生する。これくらいのことで動揺しているようではヒーローとては確かにやっていけない。
「さて、それでは私も出るとしようか」
ただプレゼントマイクはプレゼントマイク、私は私だ。手を抜くつもりは当然ないが、流石に子供たちのロボットを全て奪ってしまうようなことがない程度にはやっていこうか。
エヴィバディセイヘイ!って打ちにくい。
というかプレゼントマイクのセリフがフリーダム過ぎて打ちにくい。
プレゼントマイクのキャラは大好き。