今日からマのつく成り代わり!   作:なす

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DER ERSTE AKT(3)

 

無い威厳を絞り上げカッコつけた直後。

 

「ぼくを……っ!」

 

負けじと、振り絞るように出された声により、肩を怒らせた少年が視界に入る。

どうやらフォンヴォルテール卿の長身が祟って、俺の視界から外れていたらしい。

どうりで、いないと思った第二の刺客。

 

「ぼくを無視して話を進めるんじゃない!」

 

俺の渾身の笑顔が気に食わないとでも言いたげに、美しいアルトボイスが空気を裂く。

輝く金髪をもった美少年は、翠の瞳をキッと吊り上げ俺を睨め付けた。

 

「まず兄上に挨拶とは殊勝な心がけだな。そこ だ け は 褒めてやろう。

だがぼくにはないのか新魔王。いや、人間!」

「ヴォルフラム。」

 

ウェラー卿が窘めるように彼を呼ぶが、それは彼の睨む対象をスライドさせるだけだった。

 

「お前もお前だコンラート!こんな素性も知れない人間もどきをこの城へ入れるつもりか!?恥を知れ!」

 

指を突きつけウェラー卿を怒鳴りつける姿は、確かに高貴なお方といった風体だ。

だがその威圧感は、先程の魔王然とした重苦しい空気を纏ったフォンヴォルテール卿のそれには及ばない。

その上、原作の先入観もあってかどうにも脅威には感じ得なかった。

……って、そんな軽んじる様な考え方よくないとは思うんだけどな。

実際、ゲームの攻略のように簡単に信頼を勝ち取れるわけでもないのだろうし。

その点、『ユーリ』はすごいよな。

事前知識なしに、彼等の信頼を得た。信頼のしの字も望めなさそうなフォンヴォルテール卿でさえ、『ユーリ』を王として認めた訳で。

俺には彼のようなカリスマはない。なんだかんだ言って乗り越えていく勇気も、聡明さも。

あるのはこの知識と、慎重さかな。……良くいうならば。

正直なところ、彼等の信頼を勝ち得る自信が俺にはなかったりする。それも、すごく。ものすっっごく自信がない。

だから、色々と考えてはいた。

彼等の信頼がなければこれから先詰む可能性のある場面があるし、ないままに乗り越えるのはかなりキツイはず。

それに彼等は仮にも前王の息子で、この国で地位の高い貴族でもある。

そもそもの話、味方のいない王様の政治とか、想像するだけで頭が痛い。いい未来なんてないだろう。

恐怖政治とかはちょっとな……。たぶん、この身体のスペック的にできなくはないんだろうけど。未来もねぇな。

だからこそ、彼らの信頼はできることなら手に入れたい。苦労を少しでも減らせる手段があるのなら、誰だって欲しいだろう。でも俺には、それが出来るだけの自信はない訳で。

……おそらく、原作通りの行動を……言葉を。真似したのならある程度の信頼は得られる。

本心でない振る舞いで、他人の模倣で。原作ほどに強固な信頼とは断言できないが、そこそこの関係は築けるんじゃないだろうか、とか。

少なくとも今の険悪な関係からは脱せる。

それを土台に、俺なりにしっかりとした信頼関係を作ればいいわけで。

だから、そこだけ真似する選択肢はあるにはある。せっかく知識をもつのだし。当初の予定通り、いいとこ取りってやつ?

この先の事を考えれば、そうした方がいいのかもしれないとか、考えて。考えて。ここに来て。

ふと、人を真似てまで、信頼を得るのって、なんか最低じゃないかって。

ないと、困るのはわかってるんだけど。

今、彼等が俺を好いてないのは事実で、確かにそれは改善すべきで。でも俺にはそれをするだけの自信がなくて。補えるかもしれない方法を知っていて。

でも将来のためとか、その方がいいからとか。……俺が、俺自身を信じてないとか。信頼を得る自信がないとか。そういうのを理由にして、相手と向き合うのを怖がって、他人の真似をするんじゃなくて。

ちゃんと、俺自身で向き合うべきなんじゃないか。

正直に言うと、俺は怖い。怖いからこんなくそみたいな案が浮かんだんだと思う。彼等と真っ向から対峙するのが怖いんだ。否定されるのが怖い。信頼されない可能性が怖い。そうして進んだこの先のことが怖くて仕方がない。

それに考えてもみろよ。こんなストレートにお前のこと嫌いですって、認めないって、態度で示されることあるか?少しは取り繕ったりするだろ。人前でなら尚更。怖いわ、そりゃ。

でも、彼等には、それがない。

ただ正直に。自分の思いのままに、俺と対峙している。

仮にも王様に選ばれた人相手で、取り繕って上辺だけ優しくして、こんなガキなんて好きに動かすことだってできたはずで。だって俺よりも、長く生きてて、頭もいいはずで。

そうだな、さっきのナイスミドルさんみたいな、そういう態度だって取れたはずで。

でも彼等はそうしなかった。なんでって、それを考えたら、きっと彼等の矜持がそうあることを許さなかったからで。

そうやって俺のことを真っ直ぐ見てて、偽ることをよしとしなかった人達に、俺は、取り繕った自分で取り入ろうっていうんだろうか。

……と、ここにきて、思ってしまった訳で。

じゃあ、結局、信頼を得られるかわからない、自信のない俺のままで、やってみるしかないだろう、もう。

それでどうなっても、どんな大変な目に合っても、どんな苦労をしたとしても、それは仕方がないことで。

結局、そういう訳なんですよ。

彼等がそれでも認めたくないと言うのなら、仕方がない。それでも構わな……くはないけど。

ただ、諦めることだけはしないことにしよう。

それでも俺が、この国で王様やるのは決定事項だから。やっぱり、仲良くなれたほうが、……仲良くなりたいとは、思うので。

とにかく。

もう決めた。この信頼関係は長期戦だ。スローガンは諦めないで食らいつく。そう、たとえ怖くとも!認められなくても!認められるまでやれってんだ。

伝家の宝刀:誠実さで勝負する。誰だってもってる、誰にだって伝えられる態度で勝負しよう。

Mr.普通とは俺の事!

俺は『ユーリ』みたいな主人公になんて逆立ちしたってなれないけど、主人公じゃない人間だって、やったら案外いいとこいくかも。

ネガティブになったって良いことないし。

俺なりに頑張ってみるしかねぇんだよな、結局は。

 

ひとつ頷いて、俺なりに決意を固めると現状に目を向ける。

俺がぐるぐると思考に時間を割いている間も、金髪の美少年くんはウェラー卿に指を突きつけたまま文句を言っていたわけだが。

挨拶をしろと言いつつ、挨拶をする暇も与えてくれないこの美少年はフォンビーレフェルト卿でファイナルアンサー?

これで魔族似てねぇ三兄弟が揃ったわけだ。

あと、先からの彼の随分な物言いに、俺の信者もといギュンターが食ってかかる気配を察知。

なんならよくここまでもったよな。

たぶんウェラー卿が相手して、やんわりではあるけど注意してたのがよかったんだろう。プッツンしたけど。

俺のためだしありがたくはあるが、そうなると話が進まなくなるので、俺の前に出ようとする彼を咄嗟に手で制した。

そんな漫画の中の偉い人みたいな動作で止まってくれるの地味に感動しちゃったよ。

俺今偉い人だもんな……。ちょっと恥ずかしかったけど。

 

「陛下……。」

 

はいはい俺のこと考えてくれたんだよな。わかってるから捨てられた仔犬みたいな顔はよしてくれよ。

陛下頑張るからさ。

未だに一方的な言い合いを続ける末っ子と次男。

周りの見えていない末っ子を差し置いて、ウェラー卿はおや、と言わんばかりにこちらに意識を向ける。

長男はといえば、腕を組んで眉間に皺を寄せたまま成り行きを見守っていた。

そっちが口出さないのはありがたいが、よろしく、の返事を貰ってないのは覚えてるからな。

どうにかして信頼勝ち取ってやるから覚悟しとけよ。

意地でもこの男の口からよろしくと言わせてやる。目標があるのはいいことだよな。

 

でも今は、彼だ。

ちょっと気合いを入れて息を吸う。

 

「だいたいお前はっ、」

「フォンビーレフェルト卿。」

 

よしよし声は綺麗に出た。噛んだりしたらかっこつかないからな。

で、ご所望は挨拶だったかな?

 

「……なんだ人間もどき。ぼくは認めないからな。」

「いいぜ、認めなくて。」

 

まだな!

 

「はぁ!?」

 

生意気な、って?美しい(かんばせ)が怒りで真っ赤に染まっていく。

煽ってるつもりはないんだが、そう聞こえたんなら申し訳ない。いや本当に。

 

「誰が認めなくても俺はこの国の王になる。約束もしたし。

それはあんたの承認が必要なものじゃない。」

「さっ、きから貴様ァ!」

 

美しい顔に嵌ったエメラルドを真っ直ぐと射抜く。

 

「でも、認められる努力を惜しむつもりもない。」

「!」

 

きっと大切なものなんだろう。

その、認められないと思う気持ちも。

ただぽっと出の俺が気に食わないってのももちろんあるんだろうけど。

確かにこの国を思う誠実さには、同じ熱量で返さなければ。

なにもせずに認められようだなんて甘いことは言えない。認めてくれるとも思ってない。

ただ、この先俺の努力が実を結んだならば。

彼等の大切に思うものを、俺も大切にすることをどうか認めてほしい。

初対面の人間になにを、って俺も思うんだけど。

でもその真剣さが、在り方が、どうにもかっこよく思えてしまうから。

それはここにきて出会った人大体に感じてるんだけど。

一度目は現代で、二度目は生まれ変わった世界で。

なんだかんだゆるっと生きてきた俺には、眩しく見えてしまうので。

 

「挨拶が遅れたのは謝る。ごめん!」

 

パッ、と頭を下げると、頭上から戸惑った気配がする。……あと、ギュンターの嘆きな。まぁ、それは今はおいといて。

顔を上げたら、改めて自己紹介だ。

 

「改めまして、俺は渋谷有利。この国の王になる、……魔族だ。」

 

その事実を聞いてこそいないが、原作の通りなら俺の父親は魔族だし、間違ってはいないはず。

たぶん俺は、人間でもあり魔族でもある。

人間もどき。確かにそうかも。

でもできるなら名前で呼んでほしい。結構気に入ってるんだよ、今の名前。

 

「よろしくな。」

 

手を差し出せば、彼は開きかけた口を、一度だけぐっと結んだ。

そしてこの手を一瞥してから、言いあぐねるように、ゆっくりと口を開く。

 

「…………フォンビーレフェルト・ヴォルフラム。

ぼくからの歓迎なぞ期待してくれるなよ。精々足掻くがいい。

─────シブヤユーリ。」

 

パシンッ、と。

乾いた音を立てて差し出した手を弾かれる。

フォンビーレフェルト卿はフン、と鼻で笑って踵を返した。

 

「無駄だろうがな!」

 

よっしゃお前にも言わしたるからな!

 

 

 

  ◇

 

 

 

二名の刺客以外からは歓迎されつつ、とりあえずの入城を果たす。

案内された部屋は、学校のプールよりもありそうな広さだった。セレブか?セレブだったわ。

さらにはどデカいベット。そういうところ嫌いじゃない。

寝不足と疲労の蓄積した俺としては今すぐにでもベッドにダイブしたかったが、風呂に入る方が先らしい。

さもありなん。

と思ったが、特別な会食が控えているから身体を清めろと。

はいはい前王陛下と三兄弟との(俺の)胃が痛い会食だろ。

なんて俺に優しくない世界。

 

案内された魔王専用らしい浴場はこれまた広く、三助さんが控えていた。

が、俺は知っている。

この人って、確かツェリ様のことが(大)好きな前々王陛下だったよな?印象に残ってたから覚えている。

今はツェリ様付きのお人のはず。

挨拶をすれば、ぺこりと下げられる頭を、なんとも言えない気持ちで見つめた。

 

「……あの、俺色々自分でやるんで、シャンプーとかの場所だけ教えて貰ってもいいですか?」

「こちらをお使いください。」

 

差し出されたボトルに入った、妙にいい香りのするシャンプーは、たぶん、使わない方がいいやつだ。

ツェリ様付きのこの男がここにいて、俺の世話をしようとしているってことは、これはツェリ様の差し金……とかいうのは怖いので考えるのはやめにしよう。

とにかく、俺に渡そうとしているシャンプーはあの特別な匂いの……えーっと、名前は忘れたけど。とにかく、三兄弟の末っ子を怒らせる原因だったのは覚えてる。確か嫌いな人がもっと嫌いなるとか、そういう香りのものだったはず。

という訳で、他のものはないかと聞けば、相手はことんと首を傾げた。

 

「お持ちします。お気に召しませんでしたか?」

「そういうわけじゃないんですけど、お願いしてもいいですか?」

「わかりました。」

 

という訳で、改めて持ってきてもらったシャンプーで頭を洗う。

コンディショナーとか、ボディソープとか、その辺も色々持ってきてくれたらしいのでありがたく使わせて頂こう。

一応二日ぶりのお風呂なので、念入りに身体や髪を洗っていく。気持ち悪いし。

この後も正装なんかもしちゃうお食事会らしいから、清潔にして損ってことはないだろう。

とか、色々考えてたんですけど。

 

「あら。」

 

ぴちゃり、と水を踏んだときの音がする。

知ってた。知ってたよ来るの。知ってたけども。早くない?一応、来る前に出るつもりでいたんだよ、俺。

嘘じゃないぞ煩悩退散!

水が目に入らないよう俯けていた顔をあげれば、視界に入るのはバスタオルを巻いただけの美女。

ちなみに俺もちゃんとバスタオルは巻いてます。

 

「あーら。」

 

そう言って笑うのは上王陛下、ツェツィーリエ様である。

腰まである金の巻毛を揺らして、彼女はこちらを楽しそうに見つめた。

 

「……こんにちは?」

「ふふ。こんにちは。」

 

そう言いながら近づいて来るのやめてもらえませんかね。

いや、きれいなおねーさんが嫌いな人類なんていないでしょうけど。いないでしょうけども。近づかれると、緊張しちゃうので。

両手を突き出してストップのポーズ。

 

「ごめんなさい。それ以上来ないでください。」

 

俺の割とガチな対応に、ツェリ様は残念そうな顔をすると、足を止めた。

 

「つれないのね。あたくしはちょっと、いつもの癖で入っちゃったけど、気になさらないでいいのよ。

ねぇ、あなたが新王陛下でしょ?奇遇だわぁ、こんなところで会えるなんてっ。」

「あー、お会いできて光栄です上王陛下。あなたこそ俺のことは気にせすどうぞ湯船に浸かってください……。」

 

考えるな、考えちゃだめだ。

初対面の美女かつ知り合いの母親と、一緒に風呂に入ってるっていう頭おかしい状況についてはなにも考えるな。

そしてできたら離れてくれ。

 

「あら、あたくしのことをご存知?」

 

その意図が通じたのかなんなのか、ツェリ様の声が離れていく。

しばらくしてちゃぽんと水の跳ねる音。どうやら湯船に浸かってくれたらしい。が、女性がお風呂で響かせる水の音とか、聞いてたら明らかに変態くさいのでやめようね、俺。

 

「えぇ、まぁ、あなたのご子息に聞いたので。」

「ふぅん。コンラートね。大切な陛下になんて紹介したのか気になるわ。」

「……金の巻毛をもつ、それは美しい人だと。」

 

あとちょっと癖のある人だとも。

 

「やぁん。コンラートったら相変わらず口が上手いんだから。でも、きっと他の娘にも言ってるんだわ。」

 

ちょっと拗ねたような声色でツェリ様が話す。これで三児の母とか詐欺じゃないのか。

ツェリ様の声を聞きながら、ザバッと頭からお湯をかぶる。もうだいぶ満足したし、お湯に浸かるのはやめてさっさと出ようかな。

親しくない男女が長いことお風呂場で一緒にいるのは、俺的に不健全が過ぎるので。

 

「ねぇ陛下。陛下のお名前は?」

「あ、渋谷有利デス。」

「ユーリ陛下っておっしゃるのね。素敵だわ。

あたくしはツェツィーリエ。フォンシュピッツヴェーグ・ツェツィーリエよ。ツェリって呼んで。」

 

背中を向けていたツェリ様が、こちらに向き直ると、湯船の縁に両腕をおいて微笑む。

 

「あら、もう行っちゃうの?」

 

立ち上がった俺が、湯船に向かうでもないのを見て、ツェリ様が言う。

 

「まぁ、はい。」

 

目を逸らしながら返事をする俺に、ツェリ様の唇が美しい弧を描いた。

 

「可愛らしい方。あたくし、あなたみたいな方が新王だったらいいなって、ずっと思ってたのよ。」

 

その言葉は、思っていたよりも随分と落ち着いた声でかけられた。

ただ、言葉のまま、可愛い人が王様になって嬉しい、とかそういった意味ではないように聞こえるのは、気のせいだろうか。

彼女が王位を退いたから、俺が選ばれた。

それについてはなにを思っているんだろう。情のない人ではないはずなのに。

確か、恋がしたいとか、そういった理由で王をやめたんじゃなかったっけ。

でも、この人は、そんなにも無責任な人なんだろうか。何を考えているんだろう。よくわからない人だな、と心底思う。

 

「……だから王位を退いたんですか?」

「いいえ?恋愛も自由にできない生活にうんざりしたからよ。」

 

美しい笑みを浮かべた上王陛下が、言葉を続ける。

 

「ねぇ陛下。

あたくしの息子は、とぉっても生意気で、とぉっても無愛想な子もいるけれど、とっても、とっても可愛くていい子ばかりなの。

 

……どうか、よろしくね。」

 

 

 

  ◇

 

 

 

浴場を後にして、制服と寸分違わず作られたらしい、新しい服に袖を通した。

ブレザーとベストはなし。黒いワイシャツがどうもギュンターのお気に召したらしいので、その格好でお食事会だ。制服は正装だから、それは全然構わない。

構わないんだが、俺の名誉のために、紐パンは回避したとだけは言っておこう。

 

さて、純白の軍服のウェラー卿と僧衣のような服を纏ったギュンターを引き連れて、いざ戦場へ。

既に席に着いていたフォンヴォルテール卿も、フォンビーレフェルト卿も、どちらも軍服なせいでお食事会って感じじゃない。少なくとも、俺の知ってるお食事会ではない。

とは言っても、正確には眞王の晩餐っていう名称の、魔王と近しい血族だけで囲む晩餐会らしいから、そもそもが異文化で知ってるもくそもないんだけど。

二人を見たまま俺が立ち止まっていると、ウェラー卿が横を通り過ぎて、彼らの間に立ちこちらを向く。

 

「陛下。正門で会ったと思うけど、改めて紹介するよ。彼が俺の兄の、フォンヴォルテール卿グウェンダル。」

 

ウェラー卿が、フォンヴォルテール卿の背中に手を添えて紹介する。

彼はそれに対して何も言いはしなかったが、こちらを見ることもなかった。

 

「それでこっちが、」

 

次にフォンビーレフェルト卿の髪に触れるが、それは呆気なく弾かれる。

 

「触るな。」

「……こっちが、俺の弟のフォンビーレフェルト卿ヴォルフラム。

前にも言った通り、陛下は二人を呼び捨ててかまいませんよ。」

 

無茶いうな。

馬上でもそう言ってたけど、呼び捨てしたら間違いなく睨まれるんで遠慮しますね。……呼び捨てしてなくても睨まれてるんですけど。

フォンビーレフェルト卿はどこかいらいらした様子で、でもそれ以上何か言うでもなく、俺を睨むとシャンパングラスを口に運んだ。

 

扇情的な黒いドレスに身を包んだツェリ様が最後に現れて、それぞれの息子達とスキンシップをしてから、俺に麗しい笑顔を向ける。

相も変わらず美しいお人である。

 

「会いたかったわ、陛下。」

 

語尾にハートでも付きそうな声色でそういうけど、さっき会ったばっかですよおねーさん。

 

ギュンターが円卓から離れた場所に控え、それ以外の全員が席に着けば、胃の痛いお食事会の開幕である。

ま、やれるところまで頑張りますよ。

彼らに認めてもらいたいし。レディにお願いもされちゃったし。

俺のできることで、確実に。




読んでくださる皆様ありがとうございます!更新が遅くて申し訳ないです。
評価、感想、お気に入り等は転げ回って喜んでおります。
感想への長文返信が大変気持ち悪くて申し訳ない。
今後も性癖を愛で煮詰めた鍋を時速1400キロでつつき散らかすのでよろしくお願いしますね!
二次創作だもの!!いいよね!!≡┏( ^o^)┛
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