原作とちがうのは両親が他界して、親戚に預けられていることと、かなり口が悪いこと。
著者にとって「ヒーロー」に対しての考えを言ってもらっています。
「またお越しくださいませ~」
途中ふらりと立ち寄ったコンビニで、僕が買ったのはコッペパンだけだった。
理由は単純。50円と、安かったから。
店員の棒読みの挨拶を聞き流して、僕はコンビ二を出る。そして帰り道を急ごうとしたときだった。
「ちゅー・・・」
弱々しく鳴きながら僕を見ている足元の鼠。
赤い布を羽織り、そのまま突っ伏しているのだけども、僕を見る目は爛々と光っていた。
「ちゅぅ・・・」
長く尖った爪のある枯れ枝のように細い手を一生懸命に伸ばす先には、先程買ったコッペパンが入ったポリ袋がある。
「欲しいなら、いいけど」
ポリ袋からコッペパンを取り出してパンの透明な包装を破く。
「はい」
しゃがみ込み、パンをそのまま差し出すと、鼠はぱくっと齧り付く。
「ちゅー!!」
その鼠の食べっぷりは凄まじく、とてもお腹が空いていたことが伺えた。自らの2.3倍も大きいパンがどんどん小さな腹の中に収まっていく。
あっという間に鼠はコッペパンを食べ切ってしまった。鼠はとても満足げに鳴いた。
「ちゅーちゅー!」
「どういたしまして。じゃあね」
僕は立ち上がって、帰路に戻った。
その後ろをなにかがついて来てるとも知らずに・・・
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
帰路を急ぐ途中、道を人だかりが塞いでいた。
「あの、何があったんですか」
「あ。あのね、この先にヴィランがいるのよ。それで、そのヴィランが男の子を人質にしていてね」
質問に答えてくれた40代くらいの主婦が言ったことに胸騒ぎがした。
「ありがとうございます!」
お礼を言って、僕は人だかりを掻き分ける。
前方へ出た先の光景は―――
「なにバカなことやってんのかっちゃん!?」
人質が居る為にヘドロのようなヴィランに近づけていないヒーロー達とそのヘドロヴィランに捕まり、助けを求めている人質―――幼馴染みの姿があった。
僕は叫んでからヘドロヴィランに向かって駆けて行く。
「バカヤロー!! 止まれー!!」
「うっさいわ!あんた等ヒーローなら人質助けろよ!」
「はぁ!?」
僕は止まれといったヒーローに向かって文句を叫ぶ。
ヒーローがヘドロヴィランの前に居たなら僕はそこへ向かおうとはしなかっただろう。
でも人質が死にかけているというのに一向に立ち向かわないヒーロー達に僕は痺れを切らしていた。
「殺られる前に殺ればいい!僕はできないけどね!」
さらっと自虐を入れる僕。
「人質が助け求めてんのになんで助けない!?そんなことしてたら人質死ぬだろうが!!」
僕のしていることはむしろ人質を早く死なせてしまうような行為だということは僕自身分かっている。でも、こうしてヴィランの気を周りから逸らせば、隙くらい出来るはず・・・!
バカなことだとは分かっている。どうせ僕がこんなことしても、ヒーローは攻撃なんて出来ない・・・いや、
人質と言うのは肉盾だ。それが無くなれば気兼ね無しに攻撃できる。
でも無くならなければ攻撃出来ない・・・そうヒーローは言いたいのか。
なんで出来ないと決め付けてる?それも
警察とかがどうにか出来ない時のために、
僕は背負っていたリュックを開き、ヴィランめがけて投げつける。
ヴィランはヘドロの体を使い、かっちゃんの手のひらをこちらに向けている。
ああ、そっか。確かかっちゃんの個性は手のひらを使うんだっけ。
横に避けて、直撃を免れる。
「デク、てめえ…っ」
「かっちゃんってたまに災難なことに巻き込まれてたよね。因果応報って奴かな?」
「んだとテメェ!」
「うん。元気そうで何より」
しれっと悪口を零す。それにキレられる位なんだからまだ余裕はありそうだ。
かっちゃんの腕をつかんで、走り抜けるように引き抜こうとするが、出来なかった。
「テメェ助けるんだったらちゃんと助けろや!」
「そーゆーのは本業の人の方が向いてるんじゃないかな、ねぇ?」
ちらりと後ろのヒーロー達に目を向ける。
―――今がチャンスじゃないのか?
『ッ!!』
僕の言いたいことが伝わったようだ。
ヒーロー達が一斉攻撃を始める。
「あヤバッ!」
「人質が無いとまともに戦えないような奴がヴィランに向いてるとは思えないなぁ。あんたは臆病者かな?」
「ッ黙れ!!」
挑発したらすぐヴィランは激昂した。あれ、図星かな?
まあ、どっちでもいいか。
「あはは。チェックメイトだ」
「!しまっ―――」
ヒーロー達の攻撃をモロに喰らったヴィランは気絶した。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ごほっごほっ!」
僕は拘束から解かれたかっちゃんの背中をさする。
「全く・・・なにやってるんだ君は」
さっき僕に止まれと言ったヒーローが話しかけてきた。
「でもちゃんと解決しましたし、もういいじゃないですか。ちゃんとかっちゃんも助かったんですから」
「そういうことじゃないんだが・・・まあ、ある意味助けられたということは否定しない。だが、君はもう少し自分を大事にした方がいいぞ」
「死ぬことは怖くないです。僕が死ぬことで誰かが助かると言うのなら喜んで僕は死にます」
「・・・・・・」
ヒーローはなぜか絶句している。僕は本心を言っただけなのに。
「それに、僕は【無個性】ですよ?今時の世の中、【無個性】は死んだって悲しむ人なんてどこにも居ませんし。まあ身内なら悲しむ
僕が死んだって悲しむ身内はいませんけどね。
暗にそういう意味を込めて僕は【常識】を言った。ありゃ、また無意識に自虐挟んじゃった。同情してもらう気なんて全く無いのに。いや、同情されるはず無いか。
「かっちゃん、調子良くなった?」
「良くなるはずねえだろ・・・」
「あの、救急車は来てますか?」
「もう呼んでいるよ」
「そうですか・・・」
そのあとかっちゃんは救急車に運び込まれ、病院へ救急搬送された。僕はヒーロー達にめっちゃ叱られた。自業自得だからしょうがないが。
「・・・で、なんで君が居るの?」
そう、僕が言った相手は、足元のさっきコッペパンをあげた鼠だった。
「え、さっきのお礼をするためだが」
反射的に後ずさる。
「ね、鼠が・・・え??」
「そこまで驚かなくてもいいだろうに」
「いやいやいや、驚くに決まってるでしょ!TRPGならSANチェック案件だよ!?」
「個性って言う異能があるでしょうが。驚きすぎだ」
鼠が喋るという光景の混乱が落ち着くのには、かなりの時間を掛けた。
「・・・落ち着いたか?」
「うん・・・それで、君の言うお礼って何?」
「君じゃない、オレはドロッチェだ。お礼ってのはな、お前にオレの個性をやることだ」
10秒間の沈黙。
「はぁ!?個性を!?」
「そうだ」
「・・・本当に?」
「本当だ」
どうやら、本当に個性をくれるらしい。
「・・・ありがとう」
嬉しさのあまり、泣いてしまった。
やっと、僕は周りの人と対等になれるのか。
気軽に話せるようになれるのか。
「そんなに嬉しかったんだな」
「うん・・ひぐっ・・・やっと対等になれるから・・・」
「そうか。まあ、個性をやる前にまだしないといけないことがあるけどな」
「・・・しないといけないこと?」
ドロッチェが真剣な目で僕を見た。
「まずは、お前の歪んだ【常識】ってのを正すぞ」
「・・・は?」
いじめ+親戚のDVなどが緑谷を歪ませる。
緑谷らしくない悪口と失礼さは、只のハッタリで、本心からではありません。
ただし、ヒーローに言った事は、本心。心からの、緑谷にとっては疑いの無い常識。