宣誓と一回戦目を書きます。
あとしばらく一週間に一回のペースになります。リアルの忙しさ故、ご容赦を。
体育祭の開催が言い渡されて、早二週間。ついにその当日となった。
(サンズがあるサプライズを用意するとかなんとか言ってたけど、碌なことにならない気がする・・・)
出掛ける前にサンズに言われたことに緑谷はいやな予感を覚えていた。
会場内には今か今かと観客やプロヒーロー達が入り込んでいた。
この体育祭の今年の目玉は1年生の部だろう。
なぜならヴィラン侵入という災難に見舞われながらも、全員が挫折せずにこうして体育祭を迎えられたのだ。十分な研鑽をしないまま修羅場を一度潜り抜けたという実績が出来た故にいつもなら三年生の部に注目されるはずが、一年生の部へ注目が集まる結果となった。
そして生徒控え室にて。
体育祭ではコスチュームを着ない。サポート科や普通科などにそれが無い為だ。
着るのは体育服のみというのは緑谷にとって、かなりのペナルティだった。
(一時的な完全変異をしたら服が耐えられない。本気が十分に出せないから不利だな・・・)
言っておくが完全に変異したら体育祭が崩壊してしまう。自分の危険性は昔から理解しているはずなのに、緑谷はなぜかその日、そのことをまるっきり忘れていた。
「皆!準備は出来てるか!?もうじき入場だ!」
飯田の声を聞き、緑谷は気合を入れる。
そのとき、突然轟が緑谷に話しかけてきた。
「緑谷」
「轟君・・・何?」
「まだ戦ったことが無いからお前の強さは分からない。だが・・・絶対に勝つぞ」
いきなりの宣戦布告に緑谷は固まる。
「おぉ!?クラス最強が宣戦布告!!?」
「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって・・・」
「仲良しごっこじゃねぇんだ。何だって良いだろ」
切島の制止を轟が振り払う。
だが緑谷は。
「ええ・・・まじかぁ・・・」
「は?まじかって」
「僕今回コスチュームが使えないから本気で戦えないんだよね。だから君が満足できる戦いになるかどうかが・・・」
「コスチュームが使えないから本気で戦えない、だと?どういうことだ」
「体操服だと耐えられずに破れるからだよ」
「それがどうした・・・・・・あっ・・・」
「そういうこと。ホントにごめん。だけど僕が出せる全力で優勝を取りにいくよ」
「・・・ああ」
R-18展開(というより絶望の権化が君臨する)は流石に宜しくないので緑谷は謝っておく。
ついに、体育服を着て引き締めた顔で1年A組が競技場へ入場する。
『雄英体育祭!!ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!どうせてめーらあれだろ!?こいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘らず!鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!』
山田ひざし先生―――プレゼントマイクのビッグヴォイスが会場に響き渡る。
『ヒーロー科!!1年!!!A組だろぉぉ!!?』
その声とともに緑谷達が、入場してくる。
「わあああ・・・人がすんごい・・・」
「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか・・・!これもまたヒーローとしての素養を身に着ける一環なんだな」
「めっちゃ持ち上げられてんな・・・!なんか緊張すんな・・・!なぁ爆豪」
「しねぇよ。ただただアガるわ」
続いて別のクラスも入場してくるが、緑谷は目もくれずに観客席を見渡す。
・・・そして目的の人物らを発見した。
(いたよヴィラン連合!てか変装上手いな!?)
顔が見えず、そしてギリギリ不自然に見えないような服装をしていた。
その一人―――死柄木弔がこちらを見つけた緑谷に小さく手を振る。
「警備五倍に増えてんだよね?なのになんでこんなにガバガバなんだよ・・・」
「うわマジで居やがった。よく侵入できたな」
緑谷の髪の中から顔だけを出したドロッチェだが、すぐにヴィラン連合の存在を視認していた。
黒霧に個性があるとしても、なぜ観客席に警備を置かなかったのだろうか・・・
「ま、言う気も無いんだろ?」
「そりゃね。勘だけど多分イザコザは起こさないだろうし」
するんだったらまずあんな目立つ所いるはずがない。
「選手宣誓!!」
ピシャン!と十八禁ヒーロー『ミッドナイト』が壇上に立ち、鞭を振って進行する。
彼女が一年性の進行役のようだ。
(ツッコミどころがありすぎてツッコミ切れない・・・)
言いたいことが多々ある緑谷。何を言いたいのかは大体察せるだろう。
代表は爆豪・・・もといかっちゃん。
どんな内容だったかって?かっちゃんらしい宣誓だったよ。だって1年全員に宣戦布告したからね。
そして二年生、三年生も入場してなんやかんや言っていたが、それは緑谷には聞こえていなかった。
(なんで貴方が居るんですかあああああっっっ!?!?)
しれっと司会がいる特等席ともいえるところにあのウェスカーが居たのだから。
仕事はどうした、なぜそこにいるのを許されているんだ、などといろんな疑問が頭の中で渦巻きながら、体育祭、開幕。
第一種目は障害物競走。
「・・・出久」
「言いたい事はわかってる」
そういって、緑谷は今いるスタート地点から、モニター室の上にある巨大スクリーンの上にのった者達を見上げる。
「人間共オオオオオオォォォォォ!!!!この障害物競走とやら、私達が滅茶苦茶にしてやろうじゃないか!!!!!!!!」
「アフフフフ~♪蜘蛛ちゃんたちの朝食にしようかしら~?」
「わ、私も頑張ってロボを私が改良した改人間用の殺戮兵器に入れ替えておいたわ!」
「ニェーーー!!いい眺めだ!俺様思いっきり戦うぞ~!」
「ククッ、イズク。これがオイラの『サプライズ』さ。面白そうだろ?」
全身鎧を纏って青白い槍を持っている魚人。
赤いワンピースを着た二足で立つ蜘蛛。
白衣を着て丸眼鏡をかけた黄色い恐竜。
そして緑谷にとってすごく見覚えがある二体のスケルトン。
「ドロッチェ、全力で皆を守って。僕も全力でカバーするから」
「言われなくても、分かっている!!緑谷は落とし穴とかの落下阻止、頼むぞ」
「了解!」
会場に動揺が走っている中、緑谷とドロッチェだけが落ち着いて作戦会議していた。
「スタートだ、ニンゲン共。ボーンッとしてるとスパイダー共に骨になるまで喰われ尽くされちまうぜ?・・・骨、だけにな。HeHe」
サンズがいつの間にかもっていたピストルを撃つ。
最初は皆動揺していたけれども・・・
「ぎゃああああああああ!???!?蜘蛛がたくさん来たあああっ!?!!?」
「しかも目が光ってる―――!!」
「突っ立ってたらこれ絶対喰われちまうぞ、速く逃げるぞ!!!!」
全員死に物狂いで走り始める。
緑谷はこれはどうこう言ってられないと、身体を変異させた。
完全変異の姿は、巨大ヒルだ。しかし、只の巨大ヒルではない。
人型の形を取ったヒルというべき存在。
その体からは、形のおかしいヒルが寄り合わされた触手が無数に生えている。
《女王ヒル》
昔、マーカスが自らの意思で無数の変異ヒルを身体に取り込み変異した姿に付けられた名前だ。
「ミッションノ・・・・・・クリアジョウケン・・・シシャヲヒトリモダサナイコト・・・・・・!!」
いつものおぞましい色とは違う、アルビノの様に白いその触手が競争のコースに沿って素早く伸びる。
最初の障害物は入試試験での0P仮想ヴィランの大群。だが
「それにはたくさんの兵器を搭載してるのよ!ガトリングにチェーンソー、槍にクロスボウ、そして、たくさんのロケットランチャー!弾はたくさん詰め込んでるから弾切れはまず無い!そして表面はロンズデーライトを使ってるから耐久力は桁違いよ!!力も理論上オールマイト以上の馬鹿力!貴方達に止められるのかしら・・・?」
なんというぶっ壊れ性能なのだろうか。ろくに経験を積んでいない一年生、いやヒーロー達でもこんなのに勝てるはずが無い。
だが、こちらには対抗できる手段がある。
「どんなに硬くたって伝説の杖の前には紙と同等!『トリプルスター』!!」
ドロッチェが杖を振るえば、たちまち巨大な流れ星、いや流星群が空から降ってくる。
その流星群は巨大ロボに全て激突して、ロボは見るも無残な姿となった。
次は『ザ・フォール』。落ちたら失格というものなのだが、またしても
「アフフフフ~♪落ちたら最期、蜘蛛ちゃんたちのご飯になっちゃうワヨ?」
そこには目を赤く爛々と光らせる無数の蜘蛛たち。
何人もの選手達が足を止めれず落ちていく中―――
「ダイジョウブダ、オチタラボクガウケトメル!」
変異した緑谷に援護によって、全員落ちずにすんだ。
だが、その中の何十人かはすぐにリタイア―――
「したら俺様と遊んでもらうぞ?」
出来なかった。今にも泣きそうな顔の選手が所々見受けられるが、どうしようもない。
ちなみに先生方は謎の蔦によって拘束され、何も出来ない。
オールマイト?赤目のソウルレスによって足止めされてますけど何か問題でも?
最期は地雷原。本場で使われてるものより威力は弱くされてるはずだが、それも
「サンズとガスター博士との合作よ!世界最強の地雷に改造したわ!当たれば大体の肉体は爆散!一番の難関よ!」
サンズの遊び心()とはいえ、本気で殺しにかかっている。
そこで一位を保持しながら氷で疾走する轟が凍らせようとするが―――
「対抗策を取っていないとでも?」
大爆発。とてつもない爆風が轟と近くに居た選手達をザ・フォールの崖っぷちまで吹き飛ばす。
「USJの件はもう見せてもらっていたんだからね。大体の個性を使ったら爆発するから、注意してね?」
どこで見てた!?とA組全員は思った。
(ハッキングかよ!畜生!!)
サンズには前科があるために直に分かった緑谷は、直に対抗策をとる。
「グアアアアアッ!」
触手を選手らに巻きつけて。
「デクちゃん!?何を」
「くそっ、振りほどけねぇ!」
「なにすんじゃデクゥ!離せや!!」
「アバレルナ!!!ナゲルカラウケミ、トレ!」
思い切り上に放り投げた。
「ハッ、さっさと片付けてやるよ、『極太レーザービーム』!」
ドロッチェがさっきとは別の杖から真白なレーザーが放たれる。
レーザーが地雷原を薙ぐとそこの地雷をまとめて爆破した。
それから緑谷がしっかりと全員受け止める。
「それくらいは察してたぜ!こっからが本番だ、全部まとめてBADTIMEだクソガキ共!」
襲撃してきたサンズ達モンスターが、なんとゴール前に飛び降りてきた!
「ナ・・・!?」
緑谷にも、正気の限界がある。これ以上異形のままだと正気を保てない。
「クソ・・・ドウシタライイ・・・?」
「なぁ・・・・先生。やっぱり手出ししちゃダメなのか?」
「気持ちは分かるが、ダメだ」
さっきから弔が何度も手出ししたいと言ってくる。
顔は見えなくとも、彼女はとても辛そうに見える。彼はきっと助けたいのだろう。
「でも、アイツとても辛そうだし・・・」
「だとしても、これは競技だ。手出しは許されない」
「それを無視するのがヴィランじゃないのか?」
「・・・確かのその通りだ。だがな、それは彼女が悲しむことになる」
「なんで」
「ヴィランが介入することによって体育祭が中止になるからだ。彼女はああまでして選手達を守ろうとしている。これにプロヒーローたちまで手を出せば間違いなく体育祭は終了してしまうだろう。だから彼女は生徒だけでこの事態を収めようとしているんだ。そうすれば、この催しはおそらく中止を免れるだろうからね」
「・・・そっか。でも、ほんの少し、感づかれない程度に手助けするのはダメなのか?多分先生の個性なら出来るはず」
・・・弔がこんな顔をするのは、初めてだな。
「確かに出来るが・・・」
「出来るなら、頼む。緑谷を・・・出久を助けたいんだ」
「そこまでいうのなら、分かった。やってみよう」
僕は手をかざす。
やるとしたら――――――『洗脳』だ。
―――ズキン。
「ッ!?」
突然、頭痛が僕を襲った。
意識がどんどん黒く塗りつぶされていく。
いけない。このタイミングで意識を失うなど、あってはならない。
―――緑谷。
な、んだ・・・この、声は・・・
―――これ以上無理をするな。あとは僕に任せてくれ。
・・・・・・貴方、だったか・・・・・・
「アト、ハ・・・タノミマ、ス・・・」
そういい残して、僕の意識は完全に黒く染まった。
サンズ達が大昔の恨みをちょびっとだけ向けてきました。
モンスターたちが本気で復讐してきたらどうなるかを想像して書きました。
どこぞのシモンズさんみたいにでっかくは無いからね、それに完全変異は初めてだからね。
弱めになってしまったわけです。でも感染はしない。
緑谷の意思が奪われるのなら、先に奪っておきゃあいいんだよ。
次は騎馬戦、のはずが緑谷は変異のせいで激しく動けないために、それを休んで、ヴィランとついでに観戦しに来た別のヴィランたちとお話です。