飛鳥ちゃんが厨二系オリ主とぐだぐだ話すお話   作:hotice

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1話

 僕、二宮飛鳥は中二病である。

 よくある思春期がまねいた恥ずかしいかっこつけの一種だが、でもやはりそこには自覚してもなお止められない浪漫があるのだ。

 だから僕は奇異の目に晒されようと、中二病であることを隠すつもりはない。

 その結果として学校でもそういうキャラで通っているわけだが・・・。

 

 そんな僕だが、最近学校で僕の中二病センサーに引っ掛かる奴がいるんだ。絶対に間違いない、あいつも僕と同じ中二病患者であるってね。

 どうやら隠そうとしているようだが、僕の目はごまかせないぞ。

 

 そいつが気になった初めのきっかけは、確か教室で隣の席になった時だったか。

 何やら古臭い本を読んでいるのが気になって表紙を見てみた所「リア王」であったのだ。一応名前だけならば誰でも知っているであろうウィリアム・シェイクスピアの作品だ。

 けどただの中学生が読むにしては中々に渋いチョイスだったので、少しばかり興味が引かれたのだ。

 そいつが普段、あまり本を読まない、どちらかというとクラスカースト上位の人間であった事も要因の一つではある。

 

 だからこそ、少しばかり声をかけてみたのだ。

 「シェイクスピアとは珍しい物を読んでいるね。そういう本を読むタイプとは思っていなかったんだけども。案外好きなのかい?」ってね。

 

 そしたら、そいつは困った顔をして頭を掻き始めたのだ。

 「いや、まあそんなに好きじゃないんだけども・・・。まあ色々と気になってね・・・」

 

 そう言ってたじたじな、ぎこちない答えが返ってきたのだ。この時点で僕の中二病センサーには結構ビビっときていた。

 ”こいつ間違いない。かっこいいからシェイクスピア読んでやがる!!”ってね。

 

 分かる、分かるよ。その浪漫は。

 周りの奴らがしょうもない恋愛小説とか、漫画を読んでいる中で「シェイクスピア」を読んでいるっていうのは中々に格好いい。

 僕も中二病患者として負けていられないと思い立って、その日の帰りに本屋に寄ってシャイクスピアの本を買ったからね。

 そうして適当な静かなカフェにでも入って、シェイクスピアを読む。ううむ・・・、かっこいい。これはかっこいい。

 

 その後、僕もシェイクスピアを読み始めたから色々と話す機会が増えたのだ。

 元々クラスの中心人物的な奴だったから、全く話したことなかった訳でもなかったしね。

 まあ気取ってる僕はあまり人に容易く話しかけない主義なんだが、教室でシェイクスピア談義とかかっこいいだろう?

 結構シェイクスピアの名言ってかっこよくて、それについて話し合ってるだけでも僕の中二回路はもうぎゅんぎゅんだったね。

 

 『外観というものは、一番ひどい偽りであるかもしれない。

 世間というものはいつも虚飾にあざむかれる』

 

 シェクスピアの名言の中でも中々に気に入っているフレーズだ。

 けれどこういうフレーズについて感想なんて、普通の奴に聞いてもよく分かんないとか恥ずかしがって無難な答えしか返ってこないだろう。 

 でも、あいつはきちんと自分の考えって奴を話してくれる。少しばかりのロマンを交えてね。

 素直に言葉にしたことは無いが、あの瞬間は最近の一番の楽しみになってる。

 

 おっと、少し話が逸れたね。

 それでそいつと話すようになったのだが。

 ちょっと気になることがあったんで、色々と探りを入れるつもりで聞いてみたんだ。あいつ滅茶苦茶神話とか歴史に詳しいっぽいからね。

 そしたらあいつギリシャ神話、日本神話、ケルト神話、インド神話、果てにはメソポタミア神話まで詳細に記憶してた。

 それこそ有名な武器とか登場人物だけじゃない。例えばだけどヘラクレスの十二の試練とか天照の岩戸隠れなんかは歴史に詳しければ多少の知識はあるかもしれない。

 けれど普通ギリシャ神話のキルケーの魔女とかメソポタミア神話のイシュタルとかなんて知ってるかい?

 

 この時点でほぼほぼ確信したね。絶対にこいつが中二病だってね。

 けれど僕は問い詰めるつもりはない。

 

 本当なら初めて見つけた中二病仲間だから色々と話してみたいこととかあるんだけどもね。

 中々の中二病患者の様だし、絶対に楽しい中二談議になるとは思うんだが。

 でも、それでも僕はこの関係を壊すつもりはない。

 それはこいつが”陰で世界を救ってる設定の中二病”だからだ!

 

 ここ数か月くらい仲良くなってから彼と遊びに行ってるんだけども、彼にいきなり電話がかかってきて予定が入ることがよくあるのだ。

 確かあいつはアルバイトとかしていないはずだし、ここ一年ほど忙しそうにしているがそれ以前はそんな忙しそうにしていなかったはずだ。

 実際にあいつと仲のいい友達にも確認したし間違いないはずである。

 

 そもそもここの中学はバイト禁止だし、そんな中学生に友達との約束より優先するほどの予定が何度もいきなり入るはずもない。

 つまり、これはそう!陰で世界を救う秘密結社所属設定なのだ!

 各地で危険なモンスターだとか闇の組織だとかが現れたからその都度潰しにかかるとかそういう設定のあれである。

 そうして世間を守るために日夜戦い抜いてるけども、誰にも知られず誰にも感謝されない。それでも世界の平穏の為に戦う知られざるヒーローなのだろう。

 なんともありがちな設定だね。

 

 全く、彼は本当に・・・。

 そんなの滅茶苦茶好きに決まっているだろう!?そんな滅茶苦茶かっこいい設定なんて!?  

 いい。そのダークヒーロー感、とってもいい。

 彼は一々僕の中二病センサーをこれでもかというほど刺激してくるから堪らないね。

 ただ割と君と一緒に遊ぶのは楽しみにしてるんだから、回数はもう少し抑えて欲しいんだけどね?

 

 しかも度々遠い目をして、「平和っていいもんだな」みたいな雰囲気を出すのも忘れていない。

 彼なら役者になれんじゃないかと思うほど、その時の演技は様になってる。知られざる戦いを思いだしながら、ゆるやかに流れる時間を漫然と、けれどしっかりと噛み締める。あの雰囲気はそうとうなりきらないと出せないはずだ。

 

 ふふ、彼の中二センスは僕と合ってるのか、彼と一緒にいるといつも心が躍ってしまうね。どんな世界を見せてくれるのか期待でドキドキが止まらない。

 ん?そのドキドキはそういう事なんじゃないのかって?

 ・・・・まあ気の合わない男と二人で何度も遊びになんて行かないさ。仮にもデートになるんだし、さ。

 

 うん、じゃあ今日も少しばかり遊びに行くとしようか。 

 きちんとエスコートしてくれよ?

 ()()()()君。

 




新しい話とか思いついても書き溜めしてる内に飽きて止めちゃうので、いつもの様にプロットも書き溜めもなしで勢いだけで書いていこうかなと思います。 
ですんでネタが思いついたらどんどん感想で書いてくれると嬉しいです。


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