飛鳥ちゃんが厨二系オリ主とぐだぐだ話すお話 作:hotice
そろそろ期末試験が近づいてきた。
まあそこまで勉強が苦手な方ではないから、面倒だけども適当に怒られない程度には勉強しようか。
正直いつもならもっと直前になって詰め込むタイプなんだけどね。
まあ今回はちょっとやってみたいことがあってね。
「なあ立夏。一緒に勉強会しないか?」
「ん?いいよー」
迷った様子もなく、二つ返事で了承された。
立夏って意外というか、文系教科が滅茶苦茶できるんだよね。国語、古文、英語、日本史、世界史。どれも中間試験でトップだったのだ。
まあその分理系はどうやら得意ではない様で、そこそこではあるのだが。
でも僕が理系と国語が得意教科、英語がもうすんごい苦手教科なので、ここはぜひ立夏と教え合いっこしようと思い至ったのだ。
そうすれば一緒に遊ぶことも出来るからね。
試験終わりにもお疲れ様の会でも開いて遊びにだって行ける。
そのまま席に戻るととんとんと肩を叩かれる。
振り向くと、クラスメイトの子のキラキラした目がささる。
「ねえねえ、二宮さんって藤丸君と仲いいよね」
「まあ、それなりにはね」
下手に否定すると余計大変なことになりそうだから、ほどほどに肯定しておこうか。
うっ、目がすんごくきらきらしてる。確かこの子恋バナ大好きだったっけ。
ああ、てことは・・。
「じゃあじゃあ、
あー、やっぱりその質問が来たか。
さてはてどうしようかな。あいつとも仲だって良いし、そういう関係になるのを期待してないと言えばうそになるんだけども・・・。でもまだこっちから告白するつもりはないからなあ。
とは言っても最近立夏の奴、地味に女子の間で人気なのが気になる。
ううむ、下手に誰かがちょっかいをかけ始めるのも面倒だな。
しょうがない。ちょっとばかり恥ずかしいけども・・・。 口に人差し指を当てて、しーっと息を吐く。
「まだ、だね。まだ。
だからあまり言い触らさないでくれよ」
うん、こういう子にはこうしておけばいいだろう。
案の定、満面の笑みでぶんぶんと頷いている。この様子なら間違いなくそれとなく言い触らすだろうし、ある程度周りの女子への牽制にはなるか。
☆
放課後、立夏と二人で適当なファミレスにやって来た。
ドリンクバーを頼んで、数時間居座る学生特権のあれだ。
迷惑?・・・ごめん。
「うーん、お腹空いたなあ。飛鳥ちゃん何か軽く食べない?」
けど席に着くや否や、立夏がメニュー表を開いてしげしげと眺めだす。
確かに今日は体育があったから多少は腹は減っているんだけど、しかし中学生の財布事情を考えると中々厳しいものがあるのだ。
特に僕はアクセサリーに結構金を使うせいで、金欠気味なところがあるし・・・。
「あはは、中学生が見栄を張るものじゃないかもしれないけども、飛鳥ちゃんの分も俺が払うよ」
「いやいや、それこそ余計に駄目だろ」
下手したら中学生のお小遣いの一か月分の大半が吹き飛ぶレベルじゃないか。
この後も色々と行きたいところがあるんだからそういう気遣いなんかはいらないって。
「いや、それがある組織で働いてた時にすっごい大量の給料をもらっちゃってさ。
本当にこれくらいなら奢ることの出来る余裕はあるんだよ」
いや、立夏アルバイトしてなかったって聞いてるんだけど。
結局その後僕の分まで奢るのはなんとかして止めてもらったけども・・・。
でも立夏の奴ガンガン頼むな。そんだけ頼んで、金とか夕食とか色々本当に大丈夫なのか?
まあ大丈夫というならそれを信じるけどさ。
ある程度メニューを注文した後でドリンクバーへと赴く。
とりあえずここはブラックコーヒーだな。
って、立夏もコーヒーのブラックなのか。
これも中二病の性って奴だね。だってかっこいいから、仕方がない。
しかし席に着いた立夏は自然にコーヒーに口を付けた。
えっ!?立夏普通にブラック飲めるのかい?
「まあ前まではそんなに好きじゃなかったんだけどね」
そう言って立夏は苦笑するが、なんか謎の余裕が感じられてすごい腹が立つ言い方だ。
これは僕も負けていられないな。
コーヒーカップを手に持つ。うん、どう見ても飲み物の色じゃない。
ぷるぷると震える手を、口元まで運ぶ。そのまま少しだけ口の中へと流し込む。
・・・・・やっぱり苦い。
コーヒーカップを置いて新しいドリンクを取りに行く。口の中が苦みで得たいことになってる。うん、やっぱりおいしくない。
「あはは、飛鳥はブラック飲めないんだね」
「いや、好んで飲まないだけさ。飲めない訳じゃない」
そう決して飲めない訳じゃないのだ。多少なら飲める・・・はずだ。
けれど、気持ちはわかるよと立夏はうなずいてくる。
「まあ最初はまずいからね。とりあえずコーヒーもお酒も慣れだよ」
「ん?酒?」
「い、いやただの例えだよ。例え」
うん、まあそうだよな。僕もお酒は一回チャレンジしてみたいんだけども、さすがに法を犯すのは、ね。
年齢さえOKなら、ワインとかウィスキーとかかっこよく飲みたいんだが。
「とにかく俺も最初はコーヒー好きの奴に勧められて飲み始めたけども嫌いだったからね」
「そうなのかい?」
「うん。でもそいつがいなくなってから何となく飲むようになってね。気が付いたらブラックじゃないと飲めない様になっちゃったんだよ」
なるほど、そういうストーリー設定はいいな。
僕も飲めるようになって、同じような事しよう。
☆
「うーん。疲れたぁ」
あの後3時間程勉強してたんだが、そろそろ店も混んで来た。
これ以上は本当に迷惑になるからね。
店を出て、ゆっくりと家路に帰る。
初夏とはいえもう6時過ぎだ。空は夕焼けで真っ赤に染まっている。
カラスの鳴き声と僕らの歩く音だけが響く。
こういうのもいいね。
「ふふ、君とこうして夕焼けの中を歩くのは心が安らぐね。世界に僕と君しかいないみたいに思えるよ」
「成程、確かに分かるかも。どこまでも広がってるはずの世界が、手の届く範囲しかないみたいだ」
「世界が無くなって僕たちだけ取り残された気分かい?」
「そうだね、もうこりごりだけど」
「こりごり?」
「いや、何でもないよ。
そうだ、良ければまた勉強会開かない?飛鳥ちゃん理系教科教えるの上手いしさ」
「ああ、勿論いいよ。こっちも英語を教えてもらえるのは非常に助かるからね」
少しずつ家に近づいてくのが心惜しい。
うん、非日常と新しい物を求めていた僕が、この日々がずっと変わらずに続けばいいのになんて心から願う日々が来るなんて。
まだこの気持ちに名前は付けてないけれど、でもまあ多分そういうことなんだろうな。怖くて見ないふりをしてても、ずっとこのままでいることなんて出来ないし。
後は立夏がそういった感情を抱いてくれているのを祈るしかないね。