飛鳥ちゃんが厨二系オリ主とぐだぐだ話すお話 作:hotice
期末試験も無事に上手く終わった。勉強会の成果もあって結構良い点数も取れた。
英語も過去最高得点だし、言うことなしだ。
とりあえず今日は放課後に勉強のお疲れ様会ということで、これから立夏と遊びに行く予定である。
今回は立夏の希望で、最近公開された映画を見に行くつもりだ。
たしか昔に公開された「300<スリーハンドレッド>」っていう映画の続編?リメイク?である。スパルタ人300人の戦士が戦う有名なあれだ。
今は映画が始まるまでもう少し時間があるので、適当な近場のカフェで時間を潰している。
「しかしほんと立夏は歴史が好きだな。半ば歴史オタクじゃないか」
「あはは、ちょっと否定できないかな・・・・。色々と話を聞いたりするのが楽しくてね」
「ふうん。歴史に詳しい人が、周囲にいたのかい?」
家族が歴史好きとかなのだろうか。まあ、確かに色々な歴史関係の雑学やうんちくは聞いていて面白いジャンルではあるしね。
世界史の〇〇先生も、そういう雑学好きの先生で結構面白い雑談をしてくれるから生徒からも評判がいいし。
「うん、組織にいた人基本歴史に詳しい人ばっかりでね。色んな国の人が居るから日本で聞くのとはちょっと違った話なんかも聞けるからね」
「へえ、それは面白そうだね。
例えば何か面白い話とかないのかい?ちょっと気になってくるんだが」
「うーん、そうだね。ヴラド三世って知ってる?」
「いや、知らないな」
「じゃあ串刺し公っていうのは?吸血鬼のモデルになった人なんだけども」
「ああ、それならばちょっとだけ」
確か大きな槍で、敵を串刺しにして処刑した人だったか。
簡単にだけども立夏が説明してくれた。
偉大なルーマニアの王であり、幾度のオスマン帝国との争いを勝利に導いた英雄でありながらも、しかし周囲からの恐怖と裏切りによりその生涯を終える。
さらにその死後でさえも、「吸血鬼ドラキュラ」という怪物に貶められた悲しき人物、か。
「成程なんともひどい話だ。守るべき民衆に呪われた無辜の怪物って奴か」
報われない人生だ。だからこそ逆に吸血鬼というイメージが広まったのかもしれないな。
日本でも道真公の例みたいに、絶望と憎悪の中で死を遂げた人間は化けて出ると考えられるんだろうな。死んでも死にきれないという、破滅的な執念を妄想してしまうのだろう。
しかし・・・・。
「結局民衆って奴は、恐ろしいものや違うもの、新しいものでさえ排除したがるんだろうな。
それが自身にとって益になるかもしれないのに、何も考えずに異物感だけで排除しようとする」
「うん、もう少しだけ落ち着いて、もう少しだけ他人を理解しようとする世の中だったならいいんだろうけどね」
どこか悲しそうな表情で立夏が言葉を溢す。
そうだろうな、結局僕たちも理解されず排除される側の人間だ。中二なんてきっと誰もが無意識的にであれ、憧れていると思うのだ。
誰にだって、かっこいいと思えるものがあるはずである。
見た瞬間にどうしようもなくかっこ良さにに心が震える。そんな体験をしたことがあるはずなのだ。
けれど、それを表現しようとすれば忽ち変な奴扱いである。
理解の出来ない奴だとして、無視され遠ざけられる。全く以て馬鹿馬鹿しい奴らだ。
「魔法に憧れた女の子がさ、誰にも否定されず微笑ましく見守られる。
そんな世界だったらいいなって思うんだ」
「むっ、別に僕は魔法には憧れていないぞ」
「あははは。ごめんごめん、別に飛鳥ちゃんの事じゃないよ。こっちの話だから。
おっと、ちょっと話がずれたね。
それでそのヴラド三世なんだけども。実は趣味が裁縫なんだよ」
「ふふっ、とてもかわいい趣味だな」
「うん、めっちゃゆるふわなアップリケを縫ったりしてたんだよ」
なんだか想像するとすごいシュールな光景だな。
真祖の吸血鬼がアップリケ大好きとかファンタジーだとまずない設定だろう。逆に嫌いじゃないけども。
「他にもマルタっていう女の人がいるんだけどね。
聖書に出てくる人でキリストに会って家に招いたり、暴虐の竜を鎮めた人として有名な聖人なんだけども」
ふむ、話を聞いている限りでは中々中二病ポイントは高そうだけども。
祈りの聖女って奴なのかな。え、ドラゴンを鎖で引き連れてる逸話もある?
町の中をドラゴンに乗って進む聖女とかすごいかっこいいじゃないか。
聖書も結構やるもんだ。いや、ロンギヌスの槍とか聖杯とか考えると元々か。
「うん、でもそのマルタさん。実はドラゴンを拳で殴っていう事を聞かせたっていう話もあるんだよ」
一体なんでそんな逸話が残ってるんだ聖女様・・・。
いきなりすんごいイケメンな聖女のイメージになったんだが。
「なんなら喧嘩っ早いヤンキー説まである」
「聖女様がヤンキー」
「うん、ヤンキー」
だから一体なんでそんな逸話が残ってるんだ聖女様。
実はヴラド三世と同じく、誰かがネガキャンでもしてるのか?ううん、可哀想な聖女様だ。そんな印象を付けられるなんて。
でもやっぱりこういう小ネタは面白いね。立夏もこんな風に歴史オタになったんだろうか。
「あっ、飛鳥ちゃん。そろそろ映画が上映するから行かないと」
立夏の言葉を聞いてちらりと時計を見るとそろそろ良い時間だった。
やはり立夏と話すのは楽しくて時間が過ぎるのが早いな。40分近くは話していたはずなのに、一瞬にしか感じなかった。
「おっと、もうこんな時間か。じゃあぼちぼち向かおうか。
そうだ、スパルタ王に関しては何かないのかい?」
「えー、そうだなー。じゃあスパルタ王の苦手な物とか・・」
☆
「それじゃあ飛鳥ちゃん、またね」
「ああ、また明日」
立夏と簡単な挨拶をして別れる。
映画を見終わったらもういい時間だったので、そのまま帰ることにしたのだ。さすがにまだ中学生だから、暗くなってくると帰らないと怒られるからね。
ちなみに映画は立夏的には大満足だったようだ。
僕の中二病的な好みとは少し合わなかったけどね。ひたすらに筋肉!筋肉!筋肉!な映画だったし。なんていうか男の子が好きそうな映画かな。
映画自体は結構ストーリーも演出も良くて、普通に面白いと思うが。
ま、それでも立夏と見に行けたし、大満足ってことでいいか。 いや少しばかり乙女チックすぎるかな?
そんな人に語るには少しばかり恥ずかしい事を考えながら、次に立夏と遊びに行く日を考える。
夏休みにプールに行く約束を結んできたのだ。結構誘うのは緊張したけども、けど無事になんとか誘うことが出来た。
その内水着も買いに行かないとな・・・。
そうして歩いていると突然声を掛けられた。
そちらの方を振り向くと、スーツを着た超大柄な男性が立っていた。
恐らく190cm代の身長、鍛え抜かれた体、人を殺したことがあるような目。
さっきの映画から出てきたのかと思うほどの男性がそこにはいた。
そ、そういうお仕事の人なのだろうか?
どうしたらいいんだ!?立夏助けに来てくれ!!
「あの、いきなりで申し訳ないのですがアイドルに興味はありませんか?」
スリーハンドレッドってリアルだとR-15だけども、まあ気にしないで下さい。多分全年齢版とかです。