飛鳥ちゃんが厨二系オリ主とぐだぐだ話すお話   作:hotice

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7話

 夏休み明けの朝、学校にやってくる奴の空気は綺麗なまでに二分していた。

 宿題もきちんとやってあるし(あるいは完全なまでに諦めているか)、友達と会えるのが嬉しいので楽しそうにしゃべっている奴。そして、まともに宿題をやっていないだろうのか、必死になって机に向かうか、あるいは絶望に暮れてテンションダダ下がりな奴。

 等しく皆に訪れたはずの幸福は、しかしこうまでにも悲しい差を付けてしまったのだ。

 

 ちなみに僕は宿題はきちんと終わらせてある。基本的には事務所で宿題するアイドルの子が多いからね、そうなるとまあ自分もやっておこうかという気になる。

 346プロからは宿題は出来るだけやっておくように言われているから割と皆真面目にやってる。内申点は取っておいた方が良いという事らしい。それでもしない奴はしないらしいけど。

 

 まあでも僕がこのクラスにおいて、前者に属しているかというとそうでもない。

 目下、僕には喫緊に対処しなければいけない問題があるのだ。学業も、アイドル活動も割と上手く行っていたのに、まさかこんなアクシデントがあるなんて・・・。

 非常にゆゆしき事態である。

 ・・・・・なあ立夏。

 

 あのおっぱいで後輩は駄目だろ!?

 あ、違った。

 あの後輩おっぱいちゃんは誰なんだ!?どうやら滅茶苦茶仲が良さそうなんだけど?

 

 あの子とは、その付き合っているのだろうか。遠距離恋愛か?

 いやでも一切そういう話を聞いたことが無いし、それなら彼女だって紹介するよな。けど、それにしては随分仲が良さそうだよな・・・。付き合ってないにしても、やっぱりそういう感じなんだろうか?

 

 

 つらつらとそんなことを考えていると、どうやら立夏が登校して来たようだった。

 皆にイギリス土産のお菓子を配っているらしい。

 

 「おはよう、飛鳥ちゃん。これお土産のお菓子」

 

 「ああ、おはよう。ありがたく貰うよ」

 

 そう言って、カラフルな紙に包まれたチョコレートを貰う。すごい甘い匂いがぷんぷんと漂ってくる。

 とりあえずその場で食べてみるが、うん海外の味だな。とにかく甘ったるい。嫌いじゃないけども。

 ただ、それよりも僕的には気になることがあった。後輩ちゃんの事とは別に、だ。

 

 「それで、立夏その右手どうしたんだい?」

 

 包帯を巻いた立夏の右手を刺す。簡単にだが手の甲と手のひらを覆うように巻かれている。

 指と手首までは巻かれていないから、自由に動かすことは出来るだろうが。

 

 「え、ああ。これはちょっと怪我しちゃって」

 

 あっ、ふーん(察し)。

 どこか戸惑いがちな立夏の言葉を聞いて、確信する。こいつ怪我なんてしていないな。間違いない。

 そうか、君もついに目覚めてしまったのか。

 

 厨二病の僕には分かる。いや、全世界の中二病患者が理解するに違いない。

 ある意味古典的ともいうべきだろうか、中二病の代表格、邪気眼に違いない!!

 きっと立夏の右腕にも何かすごくてやばいのが宿ってしまったのだろう。

 

 僕も帰りに包帯を買いに行かなければならないな、これは。 

 

 「そういう事か。僕は理解しているさ、見られたら不味いんだろう?」

 

 「あははは、うん、まあね」

 

 立夏はそう言って苦笑する。

 ふっ、安心したまえ立夏。明日になれば僕も同じように邪気眼に目覚めているさ。君だけが選ばれしものだなんて決まってるわけじゃないんだぜ?

 

 

 マシュさんの事聞き忘れた・・・。

 邪気眼の事で、すっかり頭から出て行ってしまった。とりあえず今日は半日で終わりなので、立夏を捕まえる。 

 予定も無いらしく、二つ返事で遊びに行くことになった。とりあえず適当なカフェに入るか。聞きたださないといけないこともあるし。 

 そうして席については良い物の、僕が何かを話す前に立夏がカバンをあさり始めた。

 

 「ちょうど良かった。飛鳥ちゃんに朝の奴とは別にお土産があってね。

 ふふ、中々良いものなんだよ」

 

 そう言って紙の袋を渡される。中に入っていたのは、金属製のブレスレットか。

 ふうん、装飾自体は控えめだけど、全体のデザインはかなりかっこいいね。

 

 「へえ、中々かっこいいじゃないか。ありがとう、立夏」

 

 「実はそれちょっとした呪文をかけてもらってあるんだ」

 

 「呪文?」

 

 「そう、幸運の御呪い。身に着けてると良いことが起きるんだって」

 

 ブレスレットを掲げてしげしげと眺める。店の照明をよく反射して光る。

 何かのコーティングでもしているのか、ブレスレットは奇妙な色合いをしていて、何かの力を秘めているかのように思えた。

 様々な色が現れるから虹色と称するのが正しいのだろうが、それが真っ赤に燃える夕焼けの様に、あるいは澄んだ夏の青空の様に表情を変えるのは見ていて飽きない。

 確かに、幸運の一つでもひょっこり訪れてくれるかもしれない。 

 

 「うん、どうかな、似合うかい?」

 

 とりあえず右手に填めてみる。大きさも僕の手には大体あっているね。

 派手過ぎず、可愛すぎずでちょうどいい塩梅のアクセサリーだ。

 

 「滅茶苦茶似合ってるよ、やっぱ飛鳥ちゃんはかっこいいのが似合うね」

 

 「ふっ、そんな褒めないでくれ。けど本当にありがとう、立夏。大切にさせてもらうよ。

 

 それで、イギリスはどうだったんだ?楽しんで来たようだったけども」

 

 それで、本題だ。可及的速やかに解決せねばならない問題である。

 とは言っても、いきなり問い詰めるのはさすがに、ね。やっぱり色々と恥ずかしいものがある。

 ここはとりあえずイギリス旅行の話題から攻めていく事にする。まあイギリス旅行そのものにも興味があるのは事実だし。

 

 どうやらイギリスで立夏は色々と写真を撮ってきたようで、スマホを見せながら説明してくれる。日本とは違った、レンガ造りの古い町並みはやっぱり様になる。

 普通に街角にあるカフェも、大きな河口にある港町も、そして大きな時計塔もどれも異国情緒溢れていた。どこか懐古主義的な、中世の匂いをそのまま残した町は単純に言ってかっこいい物だ。

 立夏の楽し気な説明を聞くだけでも、羊皮紙の古錆びた懐かしい匂いとパンの素朴で香ばしい匂いが思い起こされる。

 勿論、それだけではなくコンクリートで包まれたビル街の写真もあった。

 こういう写真も日本とは少し趣が違って、それはそれで面白かったのだが、けれど僕の興味を引いたのはやはりレンガ造りの町であった。何故生まれ育った町とは似ても似つかないのに、こうも懐かしさとかっこよさを感じるのだろうか。

 ああ、ぜひとも僕もこういう旅をしてみたいと言う思いが湧いてくる。なんとも羨ましい限りであった。

 

 

 そうして話を聞いている内に、ピンクの髪の少女が写真に現れた。

 非常に嬉しそうな顔で、立夏と写真を撮っている。ただ、その写真に写っている顔を見た時に悟ってしまった。きっと僕よりもずっと儚くて、たおやかで、いじらしくて、けれど世界の全てが色づいて見える様な、そんな恋をしていた。

 ああ、自分の気持ちに答えすら付けていない自分がちょっかいを出すのが憚れるほどに、楽しそうな顔をしていた。

 だからだろうか、なんとなく彼女が付き合っているのならそれでいいのかも知れないと思った。すとんと落ちるかのように、それならそれでいいかと納得してしまったのだ。

 

 「この子がマシュって子なんだよね?随分仲が良さそうだけどももしかして彼女なのかい?」

 

 恥ずかしくて言えなかった言葉がするりと口をついて出てくる。

 でもまあマシュさんとはお似合いだと思う。ああ、結構気になってたんだけども。多分だけど一週間くらいは引き摺りそうだね。

 

 ただそんな僕の心境とは別に、立夏はどこか意外そうな顔をして返す。

 

 「いや、マシュとは付き合ってないよ?よく言われるんだけど。

 確かに大切な後輩だけれども、なんていうか妹みたいな感じでね。あんまりそういう目で見れないんだよ」

 

 ぽりぽりと頬を掻きながら立夏が答える。ただどこか困った様子であっても、そこに気まずさという物を感じることは無かった。

 それでなんとなくだが、さっきの写真が思い浮かんだ。それと同時にきっと彼女は告白していないんだなと悟った。

 あの恋は、きっと今もまだ彼女の胸の中に秘められているのだ。他人が見れば目を覆いたくなるほどに隠し通せていないけれども、それでも彼女はあの思いを大事に抱えているに違いない。

 そして、立夏はきっとそれに気付いていないのだ。もう隠す気なんてないだろと言いたくなるぐらいの笑顔なのに、どれ程の鈍感なのだと言いたい。

 

 けれど、正直に言えば良かった。僕にもまだまだチャンスはあるってことだ。

 

 「へえ、そうなのか。いや、すごく仲が良さそうだったからね」

 

 「あはは、うん。仲はとてもいいよ」

 

 僕の言葉を嬉しそうに立夏は肯定する。それにちょっとした不満を感じないでもないんだが・・・。ただやっぱり立夏にそういう色は無さそうだった。

 本当にただの仲の良い後輩と思っているんだろうな、恐らくは。

 いきなり降ってわいた問題だが、最悪の事態ではなさそうだった。いや、強敵が現れたわけだが勝負が終わっているよりかはマシだ。

 ただこれだけ綺麗な恋をしている子がいるのに、それを邪魔することになるのは少し気が引けるんだが・・・。

 結局は早くにこの気持ちを整理しないといけないのだ。宙ぶらりんなままに、放っておくのは良くなさそうだ。

 

 

 とりあえず喫緊の問題は解決したので、後は立夏と雑談を楽しんでいたんだ。

 色々とまだイギリス旅行の話題はあったし、僕の方もアイドル関係の事で話したいこともそれなりにはあったからね。

 だから二人で結構な時間は話していたと思う。恐らく1時間半くらいは余裕で経っていたはずだ。

 

 それでぐーたらと話していると、立夏に電話が掛って来たんだ。何かあったのか真剣な顔立ちになるから少し心配でね。

 どうやら用事が出来たらしくて、今日はここでお開きっていうことになった。それでそのまま会計を済まして店を出たんだけどね?

 

 ・・・立夏の迎えらしい車がすんごい高そうな外車なんだけど。しかもめっちゃイケメンな外国人の人達が、スーツを着て車の前で待ってるのだ。

 え?本当にその車で会ってるんだよな、立夏?なんか普通に車の方向に向かって歩いてるけども。

 

 「ふむ、どうやらお邪魔してしまったようですね。すみません、立夏さん、お嬢さん」

 

 そう言って一人の金髪の人が頭を下げる。すごくそれが様になっている。動き自体も優雅だし、高い身長と鍛えられた体がすごくスーツに似合っているのだ。

 

 「いや、気にしなくてもいいよ。多分だけどもまた事件なんだろう?」 

 

 「えぇ、その通りです。ですので、少しばかり立夏さんをお借りします」

 

 「必要なことなんだろう?仕方がないさ。

 ・・・それで立夏」

 

 「うん」

 

 「また君は戦うのかい?」

 

 「・・・・・勿論だよ」

 

 真剣な顔で立夏が頷く。ふふっ、中々いい演技だ。なんでこんな大掛かりなのかは知らないが、中々かっこいい演出じゃないか。

 じっと立夏の目を見つめる。向こうも何も言わない。何かを目で語り合ってる感じの時間が流れる。

 そして少しして、目線を外しながら肩をすくめる。

 

 「うん、まあ君はそういう奴だよな。

 それじゃあ頼んだよ、ヒーロー」

 

 「いや、俺はヒーローなんかじゃないよ。

 皆の力を借りてるだけなんだから」

 

 「いいや、ヒーローだよ。例え誰も知らなくても、誰も認めなくても僕だけはきちんと君のことを称えるさ。だからきちんと胸を張り給え」

 

 「おう、良いこと言うじゃないかお嬢ちゃん。

 マスターも謙虚なのは良い事だが、度を超すのはよくねえぜ。お前さんは紛れもなくヒーローさ。俺も認めてやる」

 

 青髪の、これまたイケメンのお兄さんが立夏の肩を叩く。ちなみに当然の如く長身かつ筋肉ムキムキでもある。すごいな。

 後滅茶苦茶いい笑顔でニヤリとされたので、こちらもニヒルな笑みを返す。

 

 「だから、頑張ってくれよ。僕のヒーロー」

 

 「・・・うん、ありがとう。そして了解!」

 

 立夏が手を上げるので、パーンとひとつハイタッチする。

 そのまま腕を組んで、立夏が出発するのを眺めていた。車が去っても数分間の間突っ立っていた。

 

 ふふふ・・・・この圧倒的中二パワー。うん、なんかすごい満足感だ!

 






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