ソードアート・オンライン~剣と槍のファンタジア~   作:白泉

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 どうも、白泉です!

 今回ツカサとあの団長の回です。


 ではさっそく、どうぞ!


19話 処置

窓から高く上った日の光が差し込み、部屋の全体と、そしてその部屋に置かれたベッドを明るく照らしていた。

 

 

 

 そのベッドには一人の少女が眠り、その隣には一人の青年が片方の膝を伸ばし、もう一方を抱えて座っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ツカサは、何をするわけでもなく、ただぼんやりと部屋の壁を見つめていた。リアはあれから目覚めず、隣で昏々と眠り続けている。

 

 

 部屋の中を満たすのは、リアの柔らかな寝息、明るい陽射し、そして静寂のみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、唐突にその均衡をツカサの頭に響いたアラームと、視界に広がる「新着メッセージ」の文字で崩される。

 

 

 

 

 

 そもそも、フレンド登録というものをしている人が少ないツカサにメッセージが来ることはほとんどない。たまにキリトから来るぐらいである。しかし、このタイミングはあまりにも不吉過ぎて、ツカサはそれを開くことをためらった。だが、結局開くことにする。

 

 

 

 

 案の定、それは嬉しいものではない。

 

 

 

 

 

 

 差出人は、“あの”ヒースクリフ。ツカサたちと同じように、ユニークスキル“神聖剣”を持ち、最強ギルドと名高い血盟騎士団の団長を務める、影響力がとても強いプレイヤーの一人だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな彼とフレンド登録をしているということはさておき、ツカサはその内容に目を走らせる。それはいたって簡潔、拍子抜けするほどシンプルだが、その中の重みをツカサは感じ取った。

 

 

 

「君だけでも、彼女を連れてでもいいから、グランザムまで来てほしい」

 

 

 

 

 

 ツカサは、隣を見やる。そして、覚悟を決めると、ベッドを下りた。

 

 

 

―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―

 

 

 

 

 55層主街区、“グランザム”。別名、鉄の都とも呼ばれ、その町は無数の鋼鉄の尖塔で形作られ、その手の職人も多くいる。そのあだ名の通り、町全体は灰色で覆われ、その金属独特の光沢は寒々とした雰囲気を与えている。

 

 

 ツカサは、そんな街をたった一人で歩いていた。すでに正午は過ぎているはずだが、22層の晴れ間とは打って変わって、空は灰色の雲が低く垂れこめていた。

 

 

 

 まるで自分の心の中を現しているようで、ツカサは思わず重くて長い溜息を吐いてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 巨大な鉄の塊のような城の入り口に立っている門番に、ヒースクリフからのメッセージを見せ、最上階へと昇る階段を昇る。

 

 

 自分の足音がやたらと廊下に響くような気がして、まるで童話の中の登場人物にでもなったような気分になる。

 

 

 

 

 そんな階段も終わりを迎え、目の前には大きな扉が現れた。迷いなくツカサはその扉をノックする。

 

「はいりたまえ」

 

 

 という彼の声を聴いてから、ツカサはその扉を押し開けた。

 

 奥の壁はすべてガラス張りで、晴れの日には恐らく日が入って気持ちがよいのだろうが、今はあいにくの曇天で、暗い雰囲気でしかない。

 

 その窓に背を向けるようにして、こちらに向かって座っている男。彼こそがユニークスキル“神聖剣”の使い手、血盟騎士団団長、ヒースクリフである。

 

 

 

 

「やあ、ご足労すまないね」

「いや、それは別にいい」

 

 

 

 ツカサはねぎらいの言葉を冷たくバッサリと切り捨てる。なぜなら、“彼の本当の姿を知っているから”。

 

 

 

 しかし、彼はツカサの様子に気に障ったそぶりも一切見せない。ツカサはまっすぐ歩き、彼の目の前に立つ。

 

 

 180近い身長と、がっちりとしたその体躯は、ツカサのかなりほっそりしたそれを大きく上回るが、今はツカサが見下ろす格好になっている。

 

 

 

 

「それで?前置きはいい。要件はなんだ」

「君はすでに分かっているはずではないか?」

 

 

 

 質問に質問で返す彼に、ツカサはいら立ちを隠さない。あからさまにヒースクリフをにらみつける。

 

 

 

「…リアのことか」

「そうだ」

 

 

 

 彼は簡潔にそう言うと、前かがみになり、テーブルの上で手を組み合わせた。

 

 

 

 

「私はあの場にいなかったせいで、その時の状況はよくわからないが、彼女はずいぶん攻略組たちを怖がらせたようだね」

 

「……」

 

「…攻略組たちは、彼女の一か月前線に立ち入り禁止と、攻略組との接触を禁じることを望んでいる」

 

「ッ!?おい、どういうことだ、ヒースクリフ!」

 

 

 

 

 彼の言葉に、沸点が低くなっていたツカサが声を高くした。

 

「別に私がそれを望んでいるわけではない。あくまで攻略組が望んでいるのだ」

 

「俺が聞きたいのはそういうことじゃない」

 

 

 

 触れれば切れてしまいそうなほどのツカサの鋭い視線は、真っすぐヒースクリフを射抜いている。

 

 

「確かに、リアはラフコフメンバーを殺した。だが、それは皆が殺すこともあるかもしれないという合意の下で参加し、自分だって殺すかもしれなかったんだ。それがただリアに変わっただけのことのはずだ」

 

「だが、報告によれば、彼女は殺しを楽しんでいるようだったと」

 

 

「っ…」

 

 

 ツカサは押し黙った。

 

 そう、そこがネックなのだ。別にその行為自体は、今回の場合咎められるものではない。だが、問題はその時の彼女の様子である。

 

 リアは躊躇なく…いや、むしろその唇には笑みさえ浮かべて殺していった。

 

 

 しかし、ツカサは思う。“それがいったい何だというだ?”なぜ彼らはそこまで過剰に反応する?結果は、リアがほとんどのメンバーを殺しましたの一文で済む。それなのに、なぜ掘り返そうとするのか。

 

 

 

 

 

 だが、ツカサは心の中で首を振った。何しろ、自分たちと一般人の彼らとは、そもそも“感性や考え方、価値観”もちがう。そんな相容れないような彼らに理解などできないと思うし、理解してほしいなど、ツカサは露ほどにも思っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…わかった」

 

 

 結局、ツカサはそれを承諾することにした。ここで下手に動かないほうがいいと思うし、あまり彼らを刺激しないほうがいい。

 

 

 

 

 だが、ツカサはそれだけで終わるつもりもなかった。

 

 

「だが、条件が2つある」

 

「…なんだね?」

 

 

 

 

 ツカサはまっすぐヒースクリフの瞳を見つめた。

 

 

 

「一つ目は、リアがその制裁を下されるなら、俺も一緒に受ける」

 

「…きっと、彼らも君もそうすると思っているだろう」

 

 つまり、イエス。こちらの条件は受け入れられる自信があった。だが、次の条件はどうなのだろう。

 

「二つ目は…恐らく、俺たちが前線に出ない一か月間の間に、最前線のボス攻略戦があるだろう。…だが、俺たちは攻略組たちがどんなに危険な状態になっても、絶対に出ない。死者が何人出ても、だ。」

 

「…それは、私一人の意見では決めかねるな」

 

 

 

 顎に手を当て、ヒースクリフは考え込むしぐさをする。ツカサとて、一応はここで従順な態度を見せるが、簡単に引き下がるつもりもない。何しろ、そもそもリアが虐げられているのだ。確かに自分たちは異常だとわかってはいるが、それでもツカサの神経を逆なでするのには十分だった。

 

 

 

 

 自分たちの存在の大きさを、ここでわかってもらわなければこれから先、厳しいだろう。いや、彼らは本当はわかっているはずなのだ。ここまで、ある程度のハイペースで攻略できたのは、オールラウンダーの2人の力はかなり大きいものだったと。だが、今彼らはパニック状態にある。だからこそ、もう一度わからせてやる必要があった。…これからの攻略に自分たちが…いや、リアが必要不可欠だということを。

 

 

 

 

「リアにそこまでさせるということは、つまりそういうことなんだろう?自分たちでリアを虐げておいて、都合のいい時だけ助けを求めるだなんて、虫が良すぎる。そこはどちらかに固めるべきだと思う」

 

 

「……確かに、君の言うことには一理ある。わかった。何か言われたら私のほうから彼らを説得しておこう」

 

「よろしく頼む。…それじゃあ」

 

 

 要件は終わったとばかりに、ツカサはさっさと踵を返し、扉へと大股で歩いていく。だが、

 

「やはり血盟騎士団(ウチ)に入るつもりはないのかい?」

 

 

 ツカサは足を止め、振り返る。その表情には、わずかに嘲りの笑みが含まれていた。

 

 

「残念ながら、な」

 

 

 

 

 

 

 ツカサはそう言い放つと、もう何も言わないヒースクリフを置いて部屋を出た。

 

 




 はい、いかがでした?今回はツカサとヒースクリフの絡みの回でした。


 いやぁ、それにいても、ヒースクリフに対してのツカサの態度、怖すぎですねw
 イケメンって、怒ると怖いんですよね。


 なんてことはさておき、次回は!リアとツカサの回になります!僕としては、このラフコフ編の中では一番好きな場面なので、頑張ろうと思います!



 少しでも気に入った方、感想を書いてもいいよという方、ぜひお願いします!もしかしたら、毎週投稿が継続するかも⁉(冗談ですwでもペースは上がるかもです!)では!
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