ゆるいキャンプin異世界   作:Re鯖

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普段書いてる小説がこれっぽっちも筆が進まないけど何か書かないと落ち着かないから色々書いてたら割と溜まってきたので投稿してみようと思います。


第一章 肩代わりの栄誉
キャンプ場は綺麗に使いましょう


 私には、何の取り柄もないと思っていた。

 貧しい人達から見ればふざけるなと殴り殺されるかも知れないが、思ってしまったものは仕方ない。この世界における貧富の差は重々理解しているからそれで許してくれるはずがないが許してほしい。

 恵まれた家柄と、恵まれた容姿。それ自体が取り柄だという人もいるかも知れないが、人は誰だって努力して着飾ればそれなりのものにはなると思っているし、そもそもそれだけのものを持っているのに親の操り人形だった私にとってそれらは溝に捨ててしまったも同然だ。

 そんな私が変わることができたのは、あの超がつくほどのお人好しが教えてくれたあのゲームがきっかけだ。

 ユグドラシル。

 日本におけるDMMORPGの金字塔とも言えるそのゲームに、早い話がのめりこんだ。現在ではとても体験できない広大な自然。身一つで空を飛ぶという経験。

 そして何より、一緒に夢中になって取り組む事ができるかけがいのない仲間。

 現実世界で最も欲していたものをユグドラシルは与えてくれた。

 何があってもユグドラシルだけは続けようと努力した。

 現実でのクソみたいな作業が日に日に増えていっても、ユグドラシルがあるから私は頑張れたような気がした。

 

 けど、この空っぽの円卓を見ると思う。

 もっとうまくやれたんじゃないかって。最終日くらいみんな集まれるように出来たんじゃないかって。

 

 でも、言わない。皆それぞれ事情がある。

 それにそんな事を口に出せば目の前のこの人はきっと壊れる。

 こんな見た目のくせして誰よりも優しかった骸骨さんは、きっと。

 

―――――――――――――――――――――

 

「へー、じゃあモモンガさんとアンさんでずっと維持費稼いでたんですか。維持費も馬鹿にならなかったでしょうに……」

「そうでもありませんよ。アンさんが地道な作業結構得意で、ログインした時にはノルマの3倍稼いでたなんて日もありましたもん」

「いやいや、あの日は奇跡的なまでにオフだっただけさ。事実そんなことはあの一度きりだっただろう」

「……モモンガさん、休日って都市伝説じゃなかったんですね」

「あはは……」

「……ごめん」

「いえ……っていうかスルーしてましたけどなんですかその口調」

「色々あったのさ、色々ね。敬語の方が良いかい?」

「別にどっちでもいいですけど……」

 

 ユグドラシルのゲーム内に存在する巨大なダンジョン、『ナザリック地下大墳墓』。現在ではギルド『アインズ・ウール・ゴウン』のギルド拠点となっているそのダンジョンの最深部。巨大な円卓が備え付けられてある部屋にて3人のプレイヤーが雑談を交わしていた。1人は紫色の粘液の体を持つスライム。1人は豪奢なローブに身を包んだ骸骨。1人は陶磁器のように白い肌と短髪が特徴の女型の天使。

 

「って、もうこんな時間か。すみません、自分もう落ちます。流石に眠すぎて……」

「ん、それなら仕方ないな。体は大事にしなくては」

「ですね。ヘロヘロさん、お疲れ様でした」

「お疲れ様でした、モモンガさん、アンさん。また、どこかで会いましょう」

 

 表情こそ何も変わらないが、声色からして疲労を滲ませていた古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)、ヘロヘロが最後にそんな言葉を残し、その空間にいるのはアンさんと呼ばれた天使とモモンガさんと呼ばれた骸骨だけとなった。しばらくの間、両者の間にやや気まずい沈黙があったが、そんな雰囲気を払拭するかのようにアンさん、アンサング・ドールが言葉を紡ぎ出した。

 

「ふぅ、もう後20分か。サービス終了が発表されてからあっという間だったな」

「はい、とりあえず、ナザリック地下大墳墓が完成して何より、って感じですね」

 

 両者のやりとりに、悲しさを感じさせるものはなかった。互いに流せるだけの涙は流し尽くした。互いに翌日の仕事に支障が出るレベルで運営への文句をひたすらに愚痴りあった。ギルドメンバー全員で作ったこのナザリック大墳墓は最後を迎えるにふさわしいだけのものになった。思いつく限りでやり残したことは何もない。

 

「さて、私はもう行くよ。モモンガさんも好きにするといいさ」

「え、もうログアウトするんですか?」

 

 立ち上がり、円卓の間を出ようとするアンサングに対し、モモンガはどこか寂しがっているかのような声色で問いかけた。アンサングは足を止めた。こういう人だから、みんなこの人についていったんだろうな。そんな事を思いながら、アンサングはモモンガの方を向き、言葉を紡ぎ出す。

 

「まさか。外に出て適当なところを飛び回るさ」

「だったら別に大墳墓を出なくても」

 

 引き留めようとするモモンガを右手で静止、声だけでも悪戯めいた笑みを浮かべているであろうことがわかる口調でアンサングが言葉を紡ぎ出す。

 

「いいかい? 私は最も付き合いが長くなったモモンガ君との別れが運営による強制切断なんてのはごめんなのさ。最後の我儘ということで聞いてはくれないかい?」

「そうですか……わかりました。じゃあ、アンさん。またどこかで」

「うん、その時はまた皆でバカをやるとしようじゃないか」

 

 そう言い残すと、後腐れなく出ていくためだろうか、その指にはめたリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを外し、円卓の上に置いた。アンサングは最後に優雅に一礼をした後、ナザリック地下大墳墓を出ていった。

 

――――――――――――――――――――――

 

「次、か……」

 

 このギルドにずっと寄り添い続けてくれた唯一の存在が去り、とうとう自分1人となった円卓の間にて、モモンガはそうつぶやいた。ナザリック地下大墳墓。この一室だけを見ても、相当な手間と時間がかかったことが伺えるモモンガ達のギルド、『アインズ・ウール・ゴウン』の拠点。モモンガはそんな部屋の風景を見渡しながら、部屋の壁に鎮座している絢爛豪華な装飾が施された杖『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を見る。このギルドの象徴であり、輝かしい記憶の残滓でもあるその杖を、モモンガは手にとった。

 杖を見ていると、この杖を造っていた頃の思い出が蘇ってくる、杖にはめられている宝石1つ1つを入手するために仲間とした苦労も、完成した時に分かち合った喜びも、このギルドが歩んできた道筋も。

 もっと続いてほしい、終わらないでほしい。そんな叶うはずもない願いが思考を支配する。

 

「いや、気にしたところで仕方ないな」

 

 そんな思考を頭を振ることで払拭した。流すだけの涙は全て流し尽くした。なら後やることはおとなしくこの終わりを受け入れることだけだ。スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手に取り、席を立ち、その場を後にした。

 

「ギルドの皆も、今日くらいは俺の勝手にしても許してくれるよね」

 

 向かった場所は、自分が本来座すべき玉座の間。

 

―――――――――――――――――――――――

 

「次、か……」

 

 ナザリック地下大墳墓を出たアンサングは、転移門を利用してアンサングが知る限りこのゲーム内で2番目に空が綺麗な場所に来ていた。その背にいびつな形の白い翼を生やし、空を舞う。その動きは非常に洗練されたものであり、素人が見たとしても、その技術は極まっているのだろうとわかるレベルの美しさを持ち合わせていた。

 

「まったく、あいつも最終日ログインするくらいの甲斐性はないのか。誰かが困ってるぞお人好しな誰かが……いや、仕方ないか」

 

 ギルドの仲間にしか意味はわからないであろう自問自答を一つした後、再び空を駆け抜ける。仮想世界に関する法整備が整っている現在では五感に関する規制はかなり厳しいものとなっているため、風をその身に感じることはない。だが、視覚や聴覚から得られる情報がそれに近いものを錯覚させてくれる。

 

「この空ともお別れか……」

 

 同じギルドの仲間であるブループラネットから教えられて初めてここに来たときにはひどく感動したものだとアンサングは当時の事を思い出す。プレイエリアの関係上どこまでもというわけにはいかないが、それでもどこまでも飛んでいけるのではないかと思ってしまうようなあの時の感動は今でも忘れられない。とはいえ、そのブループラネットが作った夜空は更に凄まじいものだったのだが。

 

「さて、そろそろか……」

 

 この空での感覚を少しでもこの身に焼き付けようと夢中になって飛び回っている間に思った以上に時間が立ってしまったようだ。ユグドラシルのサービス終了まで3分を切っていた。もう一度ナザリック地下大墳墓に戻り、モモンガと会いたいという欲が芽生えるが、プライドがそれを抑え、上空にて滞空する。

 

「すぅ……」

 

 気持ちの問題ではあるが、夜空の中で大きく胸を反らし、息を吸い込む。

 

「運営のぉ……バカヤローーーー!!!!」

 

 どこまでも響くようなその絶叫とともに、その怒りが形を成したかのような白い光の柱が地面に降り注ぎ、地面を抉る。威力そのものは大したことはないが、カルマ値がマイナスに振れているキャラに対して特攻効果を持つ第9位階魔法〈塩の柱(ネツィヴ・メラー)〉。見た目が派手というだけでアンサングのお気に入りとなった魔法の1つだ。

 

「不親切すぎるんだよおおおお!! 自分勝手に作って勢いが落ちたからって消えやがってええええ!! 敷居高すぎるだろうがああああ!!」

 

 そんな叫び声と共に塩の柱が乱射され、地面がえぐられる。最初は運営に対する文句から始まったが途中からはギルメンや自分自身、果てには装備やアイテムにまで愚痴を放つ始末。時折思い出したかのように塩の柱を乱射して地面を抉り木々を吹き飛ばす。早い話がそうして少しでも悲しみを和らげようとしているのだ。

 

 次。

 

 そんなものに捧げられる情熱が自分の中にあるとはとても思えなかったから。

 

「あああもおおおお!!!! ああああああああああ!!!!」

 

 最終的には愚痴も尽きてひたすらに叫びながら塩の柱を乱射し続けた。もはや自分でも何にキレているのかわからない状態だが、人間こういった行動をすると自然とハイになってくるもので、だんだん楽しくなってきたアンサングは喉が枯れ、MPが切れるまで塩の柱を乱射し続けた。

 

「…………ん?」

 

 そんな彼女が日付が代わってもログアウトしないことに気がついたのは、朝日が昇り始めてからだった。

 

――――――――――――――――――

 

 その日、その村の者達は世界が終わろうとしているのを見てしまった。

 村の近郊の上空にまばゆい光と共に彼らにとってはお伽噺の中での存在でしかない天使が降臨したのだ。

 結晶のようなもので構成された歪な形の翼と頭部に浮かぶ輪。光り輝くその姿はお伽噺のそれとはかけ離れたものではあったが、村人達にそれが天上の存在であることを確信させ、いっそ恐怖すら感じてしまうほどに美しいその風貌は村の者達の視線を釘付けにした。

 だが、次の瞬間、そんな魅了は一瞬にして解かれた。

 

 まるでこの世の全てを呪おうとするかのような叫び声とともに、気味が悪いほどに白い光の柱が降り注ぎ、地面を抉り、森を焼いていく。純白の極光は衰えるどころか加速度的に勢いを増していき、そう遠くないうちに村にまで光の柱が降り注ぐのではないだろうかという勢いを見せていた。村の者は大急ぎで最低限の荷物をまとめて一目散に逃げ出した。突如現れ、ひたすら破壊を撒き散らすあの天使の力から逃れるために。

 事実、その光が収まるまでに、その村の半分の家屋が吹き飛ばされてしまった。特に魔法への知識など持っているはずもない村人達が組み上げた家屋など塩の柱の前では紙切れにも満たない塵であったのだ。

 

「…………おい、マジか」

 

 まぁそれを見つめる彼女は内心で冷や汗が大量に伝っていたのだが。

 

-・-・-・-

 

(何だ何だ何だ何だ!? わかんない、全部わかんないぞ!?)

 

 表面上は無表情。というかアンサングの外見は見せかけのものであるため表情が動くはずがないのだが、彼女の内心は荒れに荒れていた。

 わからない。何が起きているのかも、ここがどこなのかも、そもそも何がわからないのかもわからない。

 テンションに任せて塩の柱をブッパし続けていたら見知らぬ大地に飛ばされ、なにがなんだかわからないうちに地表を見てみれば明らかに自分がやらかしたと思われる荒れ地が広がっており、所々には多分建築物であっただろうものの残骸があった。

 

「おいおい……」

 

 もしも他のプレイヤーの、建築物の材質から見て初心者が苦労して建てたものならばアンサングは罪悪感で軽く死ぬ自信があった。苦労して組み上げた建築物がログインしたら更地になっていたとか泣くに泣けない。

 とりあえず降り立って周囲の状況を確認しようとするアンサングだったがここである異変に気づく。

 

(焦げ臭い……って、臭い!? 電脳法も無視とか攻めすぎだろ運営!)

 

 風に乗って自分の元へやってきた木々の焦げる匂いは、本来なら知覚できてはならないもののはずだった。嗅覚と味覚は電脳法において干渉が一切禁止されている項目であるため、こういった仮想世界においては匂いや味は存在しないものでなければならない。にもかかわらず、アンサングは木々が焼ける匂いをはっきりと知覚していた。

 

(とりあえず、装備とか見た目はユグドラシルのままだし、モモンガさんに連絡をとってみよう)

 

 もしもユグドラシルの運営が最終日の日付が変わるまでに粘ってくれたプレイヤーたちに対してサプライズ的なものを送ってくれた、もしくはユグドラシルの後継ゲームに繋いでくれた(これも法律的にはアウト)のだとしたら当然この恩恵は彼女の友であるモモンガにも伝わっているはずだ。そう考えたアンサングは〈伝言(メッセージ)〉でモモンガとの連絡を取ろうとするが、

 

「えぇ……」

(コンソールがでなければログアウトの仕方もわからない、GMコールも使えない。少しはUIってものを考えたらどうなんだ……)

 

 もはや体に染み付いたとも言える操作をしても何も起こらなかった。確かにユグドラシルの運営はいろいろ不親切かも知れないが、最低限度のUIは保持していたユグドラシルがとうとう全てを振り切ったか。アンサングがそう考えていると、

 

「うわっ」

(頭の中にコンソールが。気持ち悪いな……)

 

 イメージの中に突然ユグドラシルで見慣れたコンソールが現れたのだ。いや、正確にコンソールではなく自分のステータスや使える魔法、再詠唱時間などが感覚的にわかるのだ。視覚を介して情報を見ているわけではないため若干の気持ち悪さを感じつつもこれが新しい操作方法なのだろうとアンサングは割り切り、慣れた様子で魔法の中に存在する〈伝言〉を選択してモモンガとの連絡を取ろうとするが、

 

「……繋がらない、か」

 

 どこか諦めを孕んだような口調でそうつぶやいた。

 繋がらなかった。抽選制なのだろうかとも思ったが流石に抽選でこんな事をするほど余裕があったらユグドラシルはもう少し続いていたことだろう。〈伝言〉の仕様が変更されたか、もしくはモモンガが〈伝言〉の届かないような場所にいるか。

 

「…………」

 

 建物だったであろう残骸の周りを歩き回りながら思考を巡らせる。

 とりあえず、この世界はユグドラシルではないことだけは確かだ。木々の焼ける匂いや、風を受ける感覚がある。これは味覚や嗅覚などの五感への干渉を制限している電脳法を犯しているものであり、即座に通報されてアウトだろう。

 ユグドラシルではない別のゲームに閉じ込められた。そう考えるのが最も濃厚な線だ。言い逃れなど不可能な犯罪であり、そうすることによるメリットは少なくともアンサングには思いつかないが、理由など一々考えられるほどの情報を現状持ち合わせていない。

 他に考えられる可能性として上がったのは仮想世界が現実となったということ……それこそありえないことだ、小説の読み過ぎである。そう考えアンサングはその案を即座に弾いた。

 何にせよ、いつになったらログアウトできるのかもわからない以上、落ち着くことができる場所がほしいというのが目下の目標だ。村はユグドラシルでもモンスターに襲撃されることが珍しくなかったため王国の都市とまでは行かずとも小都市くらいには居着きたいところだ。

 

(ナザリック地下大墳墓があればいいんだが……モモンガさんすら居るのかどうかわからないからな。そんなご都合主義期待できる運営でもないし)

「……よし」

 

 とりあえず当面の目標が決まったが、何にせよ、真っ先にやるべきことはただ1つ。

 

「真っ直ぐな木……真っ直ぐな木……」

 

 やらかした建物の代わりを建てるための材木集めだ。

 




オリ主至高の41人系が何番煎じかは知りませんがゆる△キャン見ながら本能の赴くままに書いたらこうなりました。至高の41人の男女比は37:4になってます。
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