ゆるいキャンプin異世界   作:Re鯖

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ちょっと意識していないミスリードが多すぎて心が折れそうですが今日も投稿します。一応付け足すと救った村はカルネ村ではなくカルネ村の前に襲われてた村です。


事前の情報収集は念入りに

 とりあえず落ち着いて話をするために入った小屋から村の外の様子を見ると、魔法詠唱者らしき者達が機械的な印象を与える天使達を従えて村の周辺に等間隔で陣取っており、村を囲っていた。天使は、ユグドラシルのプレイヤーならば誰もが一度は倒した事があるであろう『炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)』であるということがわかり、アンサングは内心で疑問符を浮かべていた。

 

(炎の上位天使……? やっぱりユグドラシルの後継作なのか?)

「ふむ……確かに居るな」

「すまないが、私はこの辺りには来たばかりだからこの辺りの情勢には疎くてね。彼らが誰なのかはわかるのかい?」

 

 とりあえず今はどんな些細なことでもいいから情報がほしい。そう考えたアンサングからの問いに対し、ガゼフは一瞬考えた後に答える。

 

「あれだけの数の魔法詠唱者を揃えられるのは、おそらくスレイン法国だろう。それも、神官長直轄の特殊工作部隊、六色聖典のいずれかだ」

 

 ガゼフの言葉を聞きながらアンサングは目を閉じて腕を組み考え込むような仕草を見せる。もちろん、そんな専門用語だらけの推測を言われてもアンサングからしてみればまるで意味がわからないのだが、納得している体を装いながらも、頭の中では必死に思考を巡らせる。

 

「じゃあ、この村を襲ったのは……」

「装備は帝国の物だったが、おそらくスレイン法国の偽装兵だろうな」

「なるほど……この村は偽装までして襲う何かがあるのかい?」

「いや、他国に攻められるような理由はこの村にはないな」

 

 表面上ではそれほど変化はないが、疑念を孕んだ口調でアンサングがガゼフに問いかけた。

 少なくとも、アンサングが村の入口から軽く見た限りでは、そこそこ栄えてこそいるものの別段そこまで裕福というわけでもない村だった。おそらく何かしらのイベントの舞台なのだから何か宝でも隠されているのかとも思ったが、その様子もない。アンサングの情報が伝わるにしてもいくらなんでも早すぎる。となると消去法で相手の目的は1つしかなくなるため、アンサングはため息をついた。

 

「ドール殿に心当たりが無いのならば、答えは1つだ」

「……なるほど、君はまんまと釣り上げられたわけだ」

 

 ガゼフはアンサングからの指摘に対し、苦笑いをしながら頷いた。そんなガゼフを見ながら、アンサングは考えにふける。

 

(なるほど、これは邪魔に思われるわけだ)

 

 目の前に居るガゼフは身分からしてそれなりに腹芸もこなせるものだとばかり思っていたが、どうやらそういった事に対する適性はほぼないとアンサングの経験が告げていた。リアルでのアンサングはその職業柄そういったことに関しては怪物級に長けている者達の相手を嫌という程にこなしてきた。そういった者達には対面して話したときに独特の雰囲気を醸し出し、尚且それを隠すために非常に複雑な雰囲気を持っているものだ。

 だが、目の前のガゼフからはそういった雰囲気を一切感じられなかった。正真正銘の化物ならそういった雰囲気を隠しきることも不可能ではないかも知れないが、まず間違いなくその線はありえないだろう。ゲームのキャラ相手に考えすぎだと自分でも思うアンサングではあったが、無意識にそんな事を考えてしまうのもある種の職業病とも言えるだろう。

 腹芸ができないのに政治的な社交の場に出ざるをえない身分の人間など、アンサングならば即決で関係を断っている。弱点を自ら野ざらしにしているようなものだ。命を狙われるのも、ある種仕方のないことと言えるだろう。

 実際にはガゼフの命が狙われる要因はそれとは全く関係ないのだが。

 そんな事をアンサングが考えていることなど知る由もなく、ガゼフは軽く肩をすくめてみせた。

 

「本当に困ったものだ。貴族派閥だけでなく、スレイン法国からも狙われているとはな」

 

 ガゼフはその後すぐに表情を引き締め、改めてアンサングと向き合った。対するアンサングはこれから問われるであろうこともだいたい察しているが、何も言うこと無く表面上は穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「ドール殿、よければ雇われないか? 報酬は望む額を約束しよう」

「ふむ……」

 

 アンサングは少しの間再び考えるような素振りを見せた。

 アンサングの中ではこの一連の出来事はゲーム内のイベントであることはほぼ確定している。このイベントは王国の戦士長という重要そうなポジションに居るガゼフというキャラが絡む以上、後々受けておいたほうが良かったと後悔する事のほうが多いことは明らかだ。そう結論づけたアンサングは笑みを浮かべ、答えた。

 

「今彼らが従えている天使が彼らの主戦力ならば私一人で問題ないだろう。だが、もしあれ以上の存在が出てきた場合は私の独断で撤退しても良い。という条件付きならば引き受けよう」

「おお、そうか! 感謝するぞドール殿!」

「いや何、ここまで来たら乗りかかった船というやつさ」

 

 ガゼフは破顔してアンサングの手を取った。アンサングとしてはこの世界についての若干の情報と、王国までの道筋を炎の上位天使の群れを倒すだけで手に入るのならば悪い話ではない程度の意識だったのだが、ガゼフからしてみれば死ぬことも何らおかしくない戦いに同行してくれるというアンサングの承認は非常に心強いものに思われた。

 

―・―・―・―

 

 彼らはゆっくりと村の入口から出てきた。その事に対し、村を包囲したスレイン法国の特殊部隊、陽光聖典の隊長であるニグン・グリッド・ルインは怪訝そうな表情を浮かべた。陽光聖典の部隊は〈第三位階天使召喚(サモン・エンジェル・3rd)〉を習得した精鋭部隊だ。ガゼフ率いる戦士団は練度としても規模としてもガゼフ以外は驚異にすらならないのだから、ガゼフ達が取るであろう手は撤退か奇襲のいずれかだと予想していたニグンは戦士団の先頭を歩くガゼフと、その隣にいる非常に整った容姿を持つ美女、アンサングに対して警戒の視線を向けた。

 アンサングはその顔に親しげな笑みを浮かべ、陽光聖典へと視線を向けた。

 

「やぁやぁ、初めましてスレイン法国の皆さん。私の名前は、アンサング・ドールという。まぁ好きなように呼ぶといいさ」

 

 自らの胸に手を添え、まるで演者のように名乗りを上げたアンサングに対し、ニグンはその顔に嘲笑を浮かべた。戦士団と「炎の上位天使」の集団では戦力差は明らか。そんな子供でもわかるようなことを理解していないのか緊張感の欠片もない彼女は、驚異に値しないと判断したからだろう。

 

「ほぅ、それで? そのアンサング・ドールが我々に何のようだ?」

「ああ、実は少し聞きたいことがあってね」

 

 未だに自分達の命がニグンの掌の上にあるという自覚がないのか、無邪気な笑顔を浮かべながらアンサングは言葉を紡ぎ出す。そんな彼女の様子は、彼女の纏う豪奢な装備も相まってニグンたちからしてみれば滑稽極まりないものであった。

 

「この村とは少し縁があるんだ。まぁそんな物騒なものを出してる段階で襲うつもりなんだろうけど、君達が襲うというのならそれなりに抵抗したいんだけど良いかい?」

 

 とうとうこらえきれなくなったのか、ニグンの傍に居た魔法詠唱者の内数人が静かにだが笑い声を上げ始めた。ニグンもその顔に浮かべる嘲笑を更に深めた後、

 

「やれ」

 

 ニグンが手を振り下ろすと同時に2体の炎の上位天使がその手に携えた光の剣で以てアンサングへと襲いかかった。炎の上位天使達の光の剣によって放たれた刺突は剣などまともに振るうことすらできなさそうなアンサングの体へと突き刺さる。

 

「フン、愚かなものだ。下らんハッタリしか知らん小娘だったとはな」

「ドール殿!!」

 

 ガゼフが驚きの表情を浮かべた後に剣を構え、アンサングのもとへ駆け寄ろうとするが、

 

「言っても無駄だろうが1つ言っておこうか」

 

 その一言で、場の雰囲気が凍りついた。先程までの友好的な雰囲気をはらんだそれとは全く異なる、まるで虫にでも向けるような慈悲の欠片もない口調。

 

「流石にここまで危機的な状況でヘラヘラ笑う年頃の美少女なんて居ないと思うぞ?」

 

 光の剣がアンサングに突き刺さることはなかった。彼女の軽装ではあるが豪奢な鎧に吸い込まれるように放たれた刺突は彼女の鎧に当たる一歩手前の所でまるで何かの障壁にでも阻まれたかのように止められてしまい、なんとかして剣を届かせようともがく炎の上位天使の無様な姿がそこにはあった。

 

「全く、まさか私も今更こんな雑魚の相手をするとは思わなかったよっと」

「なっ……!」

 

 ため息をついた後に、彼女の腰に下げられた得物である双剣を手に取り、それを軽く振るった。ソレだけで炎の上位天使はまるで濡れた紙のようにあっさりと引き裂かれた。当然、陽光聖典の者達からしてみれば、否、戦士団の面々からしてみても信じられない光景であり、少しの間。唖然とした雰囲気がその場に立ち込めたが。

 

「続けて天使を突撃させろ!」

 

 再びニグンが指示を飛ばし、炎の上位天使を倒されたものは次の炎の上位天使を召喚し始め、その間に待機していた天使達が突撃を敢行した。今度は先程の3倍の6体の炎の上位天使による多角的な攻撃がアンサングを襲うが、

 

「原因もわからずに失敗した手を繰り返すのは愚の骨頂だ」

「くっ……!」

 

 結果は先程と全く同じだった。炎の上位天使の攻撃はかすることすら許されず、逆にアンサングの攻撃は明らかに力を入れていないとわかる軽さであるにもかかわらず炎の上位天使達を作業のように一撃で切り捨てていく。

 

「全天使を突撃させろ! 全方位からだ!」

 

 彼女の後ろにいる戦士団への対処も忘れ、ニグンは矢継ぎ早に指示を飛ばした。先程から攻撃が当たらないことには何らかの防御系の武技が関わっているはず。だが、炎の上位天使の攻撃を無条件で防げる武技などそれこそガゼフ以上の大英雄級のそれだ。ならば何らかのトリックがある。少なくとも、全方位からの攻撃を防御できるような都合のいいものではないはずだ。そう結論づけたニグンの指示に従い、炎の上位天使が全方位からアンサングへ向けて突撃する。

 

「〈宵の明星〉」

「なん……だと……!?」

 

 だが、そんなニグンの考えも虚しく、炎の上位天使の攻撃は尽くがアンサングに届かず、突如として降り注いだまるで闇を孕んでいるかのように濁った光の柱により、炎の上位天使は全滅した。

 

「っ監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)! かかれ!!」

 

 ニグンはとっさに自らが使役する全身鎧に身を包んだ天使、『監視の権天使』に指示を飛ばした。一見すれば鎮座することで自軍に防御バフをかけることができるそれを攻撃に参加させることは悪手とも言えるが、炎の上位天使がまるで役に立たない以上そうする他ないのもまた事実だ。

 

「……やめにしないかい?」

「馬鹿な……っ!!?」

 

 だが、監視の権天使の一撃でさえもアンサングには届かず、アンサングとしては目の前で勝手に恐れ戦いている陽光聖典の面々が若干哀れに思えてきたのか、なんとも言えない表情を浮かべながら双剣で以て防御力に特化しているはずの監視の権天使を切り伏せた。

 

「ドール殿……あなたは一体……」

「まぁ、それはまた後でね。それで、どうする? まだやるかい?」

 

 もはや警戒するに値しないとすら見做されたのか、後ろにいるガゼフの方を向いてみせるアンサング。そんな彼女の様子はニグンからしてみればひどく屈辱的なものであり、撤退という選択肢を消し去り得るものであった。

 

「最高位天使を召喚する!! 時間を稼げ!!」

 

 こめかみに血管を浮かび上がらせ、乱雑に懐から魔封じの水晶を取り出したニグンの言葉を聞き、もはやここまでと絶望の雰囲気が漂っていた陽光聖典の間に活力が戻り、アンサングへ向けて魔法の集中砲火を放った。〈上位魔法無効化Ⅲ〉のパッシブスキルを持つアンサングからしてみれば一切効かないものではあるものの、ニグンの言葉を聞いて少々警戒を深めていた。

 

(魔封じの水晶、それに最高位天使……!? ああくそ、ぷにっと萌えさんに見られてたら説教ものだぞこのどんでん返しは!)

「ガゼフ殿、下がっていてほしい。もしかしたら巻き込んでしまうかも知れない」

「わ、わかった」

 

 炎の上位天使達のせいで無意識のうちに警戒心を薄くさせられていた己の不注意を恥じながら、アンサングはガゼフ達に向けて言葉を発した。

 もはやガゼフ達戦士団の中ではこの数分で完全に常識の外側へと飛んでいってしまったアンサングからの忠告とあっては流石のガゼフも従わないわけにはいかず、ガゼフを筆頭とした戦士団はアンサングから距離をおいた。

 

「〈上位抵抗力強化(グレーター・レジスタンス)〉〈上位魔法盾(グレーター・マジックシールド)〉〈上位全能力強化(グレーター・フルポテンシャル)〉〈天界の気(ヘブンリィ・オーラ)〉〈竜の力(ドラゴニック・パワー)〉」

(モモンガさんの支援無しでの大物は久しぶりだけど、天使でよかった。それならまだなんとかなる)

 

 最高位天使が召喚されるまでの僅かな時間でアンサングは自らに幾つかのバフをかけていた。そういった支援はモモンガに任せていたためそれほど習得していないアンサングのそれは万全と言えるものではない。だが、相性の悪い悪魔ならまだしも同族である天使ならば例え最高位天使である『至高天の熾天使(セラフ・ジ・エンピリアン)』であっても同じものを召喚して壁としてぶつけつつ攻撃を仕掛ければ倒せる。そう判断したアンサングはすぐにやってくるであろう最高位天使に備え身構えた。

 

「最高位天使の尊き姿を見よ!! 『威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)』!!」

「……ん?」

 

 どこか気の抜けた声を上げたアンサングを尻目に、それは召喚された。

 先程までの天使達とは比べ物にならない大きさと威光。光り輝く翼の集合体のような外見をしたそれは、紛れもなく先程までの天使達よりも遥かに格上の存在であり。陽光聖典の面々はその威容に歓声を上げ。アンサングの後方に居た戦士団はその存在に唖然とした表情を浮かべていた。

 そして、当のアンサングはと言うと。

 

「……この天使が、最高位天使?」

 

 表情こそ変わらないが呆然とした様子で、威光の主天使を眺めていた。最高位天使のあまりの威光に逃げることすら忘れてしまったのだろう。そう判断したニグンは勝ち誇った表情で言葉を紡ぎ出した。

 

「そうだ! お前にはこれを使うだけの価値があると判断した! 最高位天使の威光に滅ぼされる栄誉に溺れるが良い!!」

 

 だが、次にアンサングが見せた反応はニグンの期待からは大きく外れていたものだった。

 

 アンサングは今の自分の状態を見る。モモンガに支援されているときほどの心強さはないにしてもちょっとしたダンジョンのボスならば十分に戦えるレベルのバフ。既に発動までの所要時間を終えた〈第10位階天使召喚(サモン・エンジェル・10th)〉。先程まで携えていた双剣とは異なる神話級の武器。

 これらを威光の主天使の為に用意していた。そんな事実に。

 なんとなく、恥ずかしくなった。

 

「……そう」

 

 感情を感じさせない平坦な声でアンサングが呟くと同時に。

 威光の主天使など霞むレベルの天使、『至高天の熾天使』が降臨した。

 言うなれば、子供がゲームでワイワイ楽しく対戦している所にいきなり良い年した大人がガチ編成で殴り込みをかけたかのような大人気なさ。ダサい。みっともない。明らかに初心者向けのレベルのイベントに本気になって殴りかかるプレイヤーがいるらしい。先程までも感じていた圧倒的実力差から発生するそんな自己批判が先程まで威光の主天使程度で勝ち誇っていたニグン達陽光聖典の様子により数十倍に膨れ上がり、アンサングの中を駆け巡る。目の前の雑魚(・・)のために決して少なくない経験値を無駄にしたことも、彼女の羞恥心を刺激し、

 

 その後のことは、アンサングはあまり思い出したくない。

 

 ニグン達陽光聖典はガゼフに捕らえられ、そのまま王都へと送られる事となった。アンサングはぜひとも国王に会って欲しいというガゼフからの誘いにより、そのまま王都への道をガゼフと共にすることになる。

 

 明らかに初心者向けのイベントが進行している。それだけが分かれば良いのである。後にアンサングはそう語る。

 




自分は明らかに格下がボス面して出てくる戦闘とかちょっと恥ずかしくなるタイプです(隙自語)
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