ダークバスターの旧作品群   作:ダークバスター

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プロローグ・4
聖龍が気がついた時は、既に夜だった。
だが、シーラを送る途中で、本人の意思で寄り道をする。
そこでシーラは、店で拾ったカードを返したと同時に、聖龍のことを尋ねる・・・

悠久前奏曲、完結話。



 ここはさくら亭の食堂だった部屋。
「はい、ちゃっちゃっと片付ける!ほらそこ、手が止まってる!」
 鬼神と化したパティが、エルとマリアとピート、そしてとばっちりを受けたアレフとリサの計4名に激怒の指示を飛ばしていた。
 ちなみにクリスもいたが、寮に帰らないとマズイので、なんとか帰してもらえた。
「ほらピート、手がお留守よ!」
「へ~い」
 手を休めて小休憩していたピートだったが、パティの激怒が飛んできたので仕方なく再開した。
「うわ~、こんなに酷かったのかよ」
 二階から降りてきた俺は、一階の惨状を見て、直感的な感想を漏らした。
 シーラも、その言葉に苦笑いをした。
 当たり前だ。
 テーブルのほとんどは壊れ、皿もメチャクチャ、椅子もバラバラの状態である。
 カウンターとかは、何とか無事だったようだ。


前奏曲・4

「あら、生きてたの?」

 聖龍に対してのパティの第一声。

「もぅ、パティちゃん!」

 シーラが、少し怒った口調で言った。

「はあ……一応は」

 怒っていたため、言い方が皮肉になっていたパティだったが、そんなことを気にせずに聖龍は答えた。

「だが、ピートの顔面蹴りは効いたぞ、って」

 そう言いつつ、まだ僅かに痛いところを擦る。

「おい、平気か?」

「へ~、アレフが心配するとは、珍しいことがあるんだな」

 リサが直したテーブルを起こしながら言った。

「ったく、いいだろ別に」

 アレフはソッポ向く。

「ホントか、ホントに大丈夫なのか?」

 心配してピートが寄ってきた。

「ああ、大分腫れは引いているから、問題は無い。この程度なら、明日には痛みもなくなる」

「お~い、奥の掃除終わったって、聖龍……平気か?」

 奥から出てきたエルが、聖龍を見るや否や、心配の言葉を掛けてきた。

「ああ、なんとか」

 苦笑しながら返事を返す。

「そういえば、マリアは?」

「ああ、アイツならまだ奥で掃除しているよ」

 エルは、マリアがいる場所を指差した。

「……なんで穴が開いてるんだよ」

 聖龍は、エルが示した場所を見て呆れた。

 なんせ、壁に大穴が開いていた。さらに、その開いた壁の先の部屋が貯蔵庫?だったらしく、野菜などが散乱しているのが見えた。

「……アリサさんは?」

 ふと肝心な事を思い出した。

「アリサおばさんなら、この惨状と、アンタの容態を聞いて家に帰ってたわよ」

「そうなのか、なら帰らないと」

 聖龍は急いで店を出ようとした。

「ちょい待ち!」

「ぐげ!」

 パティに襟首を掴まれ、聖龍は変な声を上げた。

「げっほ、げっほ…何するんだよ?」

 蒸せながら振り返る。

「あのね、アンタを付きっ切りで看病していたシーラに、お礼の一言も無い訳?」

「ぱ、パティちゃん!」

 顔を赤くしながら声を上げるシーラ。

「……ありがとう、シーラ。……あ、の…そうだ、シーラ、家まで送るよ」

 顔を赤らめ、照れ隠しで言った。

「え、あ、その…別にそこまでしなくても……」

 シーラも顔を赤らめた。

「似た者同~士が、ここにいる~♪」

 パティはホホホと笑いながら歌う風に言って、カウンターに入っていった。

 聖龍は周りを見渡したが、他の連中もニヤニヤとこっちを見て笑っていた。

「い、行こうシーラ」

 聖龍はシーラの手を取って、店の入り口に向かった。

「え、あ、や、あの、せ、聖龍くん!?」

 動揺しまくりのシーラを気にもせずに店を出るのだった。

 

――からんからん♪

 

「かわいいボウヤだことで……おや、アレフ、どうしたんだ?」

 リサは、聖龍とシーラが出て行くのを見届けたあと、原因が分かりきっているのにあえて、沈んだアレフに尋ねた。

「……わかってるんだろーが」

 暗く低い、呻くような声でリサに言った。

 

 

 

<さくら亭・外>

「ったく……わかっててからかってるな、あいつらは」

 シーラの手を引いて店を出た聖龍は呆れ口調でぼやいた。

「……あの……聖龍くん……」

「うん?……あ、ごめん!」

 聖龍は、慌ててシーラの手を離した。

 お互いの顔は真っ赤になっている。

 お互い向かい合いながら、シーラは俯き、聖龍は空を見上げた。

 お互い何を言えばいいのか分からない状態に陥っていた。

「あ、あの、聖龍くん」

 シーラが声を出した。

 まだ困惑、恥ずかしさもあるが、勇気を出して、とにかく声を出した。

「え、あ、な、何ですか?」

 何故か敬語で答える聖龍。

 まだ考えがまとまらず、どうすればいいか考えている時、シーラに声を掛けられた。

「え~と、その……ちょっと寄り道していきませんか?」

 顔を真っ赤に染め、俯きながら聞いてきた。

「え、ええ、別にかまわないけど……大丈夫なのか?」

 考えはまだまとまらなかったが、平常心を取り戻し、シーラに返答を返した。

「うん、少しくらいなら……それに……」

 それから黙るシーラ。

「それに?」

 シーラが言った、最後辺りの言葉を復唱した。

 そして、1,2分くらい経ってから、シーラは重い口を開いた。

「やっぱり、エレイン橋で言うことにするわ」

 そう言って、シーラは先に歩き出した。

 聖龍は、何も言わずにシーラのあとを付いていった。

 

 

 

<エルイン橋>

「へえ~綺麗だ、ここの水面に映る星空は。それに静かだし」

 直球な感想を述べた。

 二人はローズレイクを眺めていた。

「うん」

 シーラも、その感想に同意した。

「っで、シーラは何故ここに?」

「うん、聖龍くんに聞きたいことがあって……あと、コレ」

 シーラが俺に、布で包まれた手のひら大の長方形の薄い包みを渡してきた。

 そして、その包みを受け取り、その場で開いた。

「ん?これは……俺の聖龍王の」

「うん、ケーキをさくら亭で忘れて取りに来た時に、落としいったから……」

「ああ、ありがとうシーラ」

 聖龍はカードを大事そうに、懐へしまった。

「どういたしまして」

 テレながら言った。

 だが、すぐに顔つきが変わった。

 今まで恥ずかしがっていたり、戸惑ったりしていたが、今度は真面目な顔つきになった。

 すぐに俺は気づき、真面目になった。

「ここに足を運んでもらったのは……聖龍くんの過去の事で聞きたいことがあるからなの」

 

静寂。

 

「い、いきなりどうしたんだよシーラ。俺は記憶喪失というやつらしいから、過去の記憶なって――」

「寝言で」

「――え?」

 俺は、シーラの問いに戸惑いを隠しながら、平常心を装い、普通に態様をしたが、寝言というシーラの一言で止まった。

「寝言で……記憶喪失は嘘、本当は過去を消したかったから嘘を言った。って……」

 その言葉に聖龍は、いつの間にか合わせていた視線を逸らして、夜空を見上げていた。

「説明して……欲しい、かな?」

 聖龍の雰囲気を察したシーラが、強制でないこと言った。

 シーラも、夜空を見上げる。

 また静寂。

 だが、すぐさま口を開く。

「……いつか」

 俺は、シーラに横顔を向けながら言った。

「いつか……きちんと話す。……心の底から信じる事が出来る人が現れるまで」

「……心の底から……信じる事が出来る人?」

「ああ……心の底から信じる事が出来る人」

そのまま水面に顔を向け、腕を組み、欄干(らんかん)に寄りかかった。

「……だから今は、まだ話せない」

 俺は、重々しく言った。

「でも……いつか絶対に話すよ、本当の事を。だから、この事は秘密にしてくれないか?」

 シーラは黙りこんでいた。

 しかし、彼の雰囲気からして、それなりの理由があることは明白である。

 だからシーラは――

「せめて、アリサおばさんには話してあげて」

――そう答えることしか出来なかった。

 彼の言う『心の底から信じる事が出来る人』とは、どんな人なのか想像できなかったからである。

 だが、驚くべき答えが返ってきた。

「それは駄目だ」

「なんで!?」

 大人しいシーラも声を上げた。

 それはそれだ。恩師でもあり、今彼の寝床を貸してくれている人なのにも関わらずに、拒否の答えが出てきたのだから。

「俺は……俺はあの人……アリサさんですら、信用していないからだ」

 俺は、ハッキリと言った。

 今日で何度目かの静寂。

 だが、その静寂はあっさり破られた――

 

からん――かららららん。

 

――誰かが小石を蹴った音で。

 二人はその音のした方を、ほぼ同時に向けた。

 そして、二人とも驚き、唖然となった。

「聖龍クン……シーラさん」

 そう、そこにはテディとアリサさんが居たのだ。

 あと、顔色から察するに、今の会話は全て聞き取られていたという事がわかる。

「あ、あのご主人様……ボク、先に帰るッス」

「あ、テディ!?」

 テディはそう言って、アリサさんの返事を待たずに家の方へ走っていった。

「はあ、もうあの子ったら」

 アリサさんは少々困った顔をして、テディを見送ってからこちらを向いた。

「あ……アリサ、さん」

 俺は、なんとか口を開いて声を出したが、ほとんどかすれる大きさだった。

 だが幸いにも、ここには3人しかおらず、静かだったので聞き取れる。

「聖龍クン……アナタにどんな事情があるのかは分からないけど、だけど……これは、私の我侭(わがまま)だけど、ホンの僅かだけでも話してもらえないかしら?」

 俺は、アリサさんとシーラの顔を見て、反対側の欄干へ行き、背を向けたままで、ポツリ、ポツリと言った。

「俺は、この世界の人間じゃない。別世界の人間だ。……勉強、スポーツの両方が駄目で……それでも努力しても、一番……いや、上位ランカーすら入ることが出来なかった。元・親父は結果主義でね……過程がどうあれ、結果を出せなければ意味が無いらしい。おかげで家を追い出され、勘当……血縁すら切られたからな」

 アリサさんとシーラはその言葉に耳を疑った。

 自分の子供なのに、その権限すら破棄した父親がいることに。

 「挙句の果てに、俺には妹がいたらしい。……今まで、どこにいたのかも知らなかった」

 そして、俯いたまま振り向き、欄干に寄りかかりながら話を続けた。

「だから、どんなに親切な人でも……今の俺は、誰も心の底から信用していない。本人の目の前でいうのもなんだけど、アリサさんも、シーラも信用しきれてない。……学校でも、居ないと同じだった……育った環境で人が変わるらしいけど、だぶん……俺も悪い環境で育ってしまった一例だと思う。……人が支えあう為に大切な事を学べなかった一例が」

 シーラは唖然となった。

 たぶんある程度は端折ったり、隠したりしていると思うが……こんなに酷いとは思っても見なかった。

「……なら……私の……子供になる?」

 その発言に、聖龍、シーラ共にアリサさんの方を向いた。

「帰る家も……待っている人も迎えてくれる人も無いなら……。私も……帰る家があっても……待ってくれる人も迎える人もいないから……ただ、テディは家族だけど、いつも私と一緒だから……」

 少し悲しそうに言うアリサさん。

 それを聞いたシーラは、ただ黙る。

 俺は、ただただ呆然としていた。

 たしかにこの世界から、帰る家がなくなった。

 待ってくれる人、迎えてくれる人……12歳の4月に居なくなった。

 学校ではいても、いなくてもどっちでも良い存在。

 いればいるで、イジメを受けていた。

 だが、この世界に来てから俺は少しながら、変わった。

 あいさつを交わす。

 他人に礼を言う。

 頼みごとを引き受ける。

 そして――帰る家には、迎えてくれる人がいる。

 12歳で親元から突き放され、15歳の時に父親から決別させられた。

 家に帰っても、誰もいない。

 学校へ行っても、拒絶させれる。

 居場所、友、家族すらいなかった。

 だが、今目の前にいる人が、家族になろうと言ってきた。

 拒むことも出来る。だが、これを逃せば、二度と来ないかもしれない。

 

 これが最後の静寂の時。

 

 

 

 ここはエルイン橋。

 エンフィールドのメインの橋でもある。

 名前の由来は、かつて生贄にされた少女の名前から来ているそうだが、何分古い橋のため、本当かどうかは定かではない。

 

 

 

 だが、その橋の上で、三人がたたずんでいた。

 

 

 

 悩んでいる聖龍。

 

 

 

 蚊帳の外であるが、この問題を作ってしまった為、最後まで見守るシーラ。

 

 

 

 そして……答えを待つアリサさん。

 

 

 

 そして……

 

 

 

 俺は

 

 

 

 顔を上げた。

 

 

 

 その顔は、全てを覚悟した面構えだった。

 

 

 それを見たアリサさんは、聖龍の考えがわかったかのように、微笑んだ。

 シーラは、二人を見続けた。

 

 どんなことがあっても……最後まで見る。っと。

 

 聖龍は、口を開いた。

 

 

 

――10日後の朝

 

 

 

「ふぅ~……よし」

 聖龍は、水で洗った顔を確認して、アリサもとい母さんとテディがいる食卓へ向かった。

「遅いッス」

 テディが文句を言った。

「悪かったよ、テディ。今日は洋風の朝食だな」

「ヨウフウって、なんすかっッス?」

「洋風は、こう言うパン食などを言い、和風がご飯や焼き魚などの料理のことだ」

 なんというか……極端すぎる例を上げる俺。

「そうなんすかッス。勉強になったッス」

「ふふふ。さあ、食べましょうか」

 奥から出てきた母さんが、テーブルについた。

「じゃ、いただきます」

「いただいきますッス!」

「いただきます」

 三人(この場合、テディは一匹でいいのか?)が胸の前で手を合わせ、食べる挨拶をした。

 

――食後

 

「じゃあ、留守番お願いするわね」

 外へ出て行く母さんとテディ。

 二人は、今から役所へ行き、正式な手続きを行いに行く。

「ええ……いってらっしゃい、母さん」

 母さんだけに挨拶をした。

「聖龍さん、僕には……」

「さ~て、書類整理でも始めるか」

 テディの言葉を無視して、作業の準備を始めた。

「うわ~ん、ご主人様!」

「冗談だ、テディ……いってらっしゃい、母さんを頼んだぞ」

 すぐさま泣くのをやめ、敬礼をした。

「うッス、了解ッス!」

 その二人のやり取りを見て微かに笑う母さん。

「じゃあ、いってきます」

 玄関のドアが閉まった。

「じゃ、俺も仕事しますか」

 ここは万年貧乏のジョートショップ。

 だから、俺は働く。

 母さんの為にも――

 

――こんこん

 

――と、不意にドアが叩かれる音がした。

「ん?仕事の依頼か……は~い、開いてますよ!」

 そして、入ってきたのは、赤と白の色の服を来た女性――シーラが入ってきた。

「お、御邪魔します……あの……その……アリサおばさんは?」

 相変われず俯き、頬を赤らめながら言うシーラ。

「ああ、今さっき役所に向かったよ……正式な手続きを行いに」

 それを見て、少々苦笑しながら言う聖龍。

「もう、笑うことないのに」

 拗ねるシーラ。

「ははは、悪い悪い」

 笑いながら謝る聖龍。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聖龍は、アリサさんを母さんと呼ぶが、完全には信用していない。

 

それはアリサさん、シーラ共に理解している。

 

だが、今日から聖龍は、聖龍・アスティアとなる。

 

血の繋がりが無くても、家族は出来る。

 

信頼という名の絆があれば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠久前奏曲

 

opening / the conclusion

 

 

 

悠久幻想曲~信頼に出逢う者~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここに始まる……だが

 

It is ...... beginning here

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時の物語は、まだ終わっていない……。

 

...... that a story of that time is not yet over.

 

 

 

刺客が送られ、関係ない者たちが巻き込まれた。

 

An assassinator was sent, and the people who had nothing to do were rolled up.

 

 

 

だから……真実を知る為に

 

Therefore to know the ...... truth

 

 

 

青年は戦う

 

A young man fights

 

 

 

友の為、仲間の為、自分の為に……

 

For a friend, it is ...... for oneself for a friend

 

 

 

ここに、一つの戦いが終わる。

 

Here, one fight is over.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エターナルメロディ

 

 

 

 

 

 

 

~真実に出逢う者~

 

Part 2 / begins

 

 

 

 

END




ウッス、ダークバスターです。
色々指摘を頂いたので、内容の一部を訂正しました。
あまり変わってないですが、今後も宜しくお願いします。

ちなみに、今は無くなりましたが、アドレスのCCは「correction」(訂正)の略が入っていました。





制作開始:2005/12/28~2006/1/10

打ち込み日:2006/1/20
公開日:2006/1/20

変更日:2008/10/23
訂正日:2008/10/23
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