七月七日――七夕の夜に、リグナイテッド=オーバーンは、何を考え、短冊を飾ったのだろうか……。
※七夕記念で3話構成で書いた作品ですが、3話目を≪工画乃郷≫という『パワードール』ファンサイトに投稿。
現在、データが手元になく、サイトも閉鎖済みなので、復旧不可能状態。
平和維持軍、第190広報部隊……それは、僕たちの前の部隊名。
今は、新生平和維持軍の部隊として戦い続けている。
そして、結成から一年がたち、現在は二度目の休暇に入る所だった。
僕たちは新たに配属された部隊員と共に、惑星ローウェンという、稀に見る地球と同じ環境下の惑星に来ている。
惑星連合の過激派も、ほとんど沈静化になった事もあり、色々飛び回っていた僕たちにとって、嬉しい日でもあった。
そんな中、二週間前の任務で出会った、記憶喪失の男と新生平和維持軍の話である。
七夕SS
ブルーブラスター
「ミッチーの番だよ」
「ええっと…………これだ!」
ミチルの引いたカードは、ハートの1だった。
「よし、これで上がり!」
元から持っていたスペードの1と、先ほどシンシンから引いたハートの1をトランプの山の上に置いた。
「またミチルの一番抜けかいな」
手札を摘んで、ヒラヒラと前後に振るパトリシア。
「ミッチー、ズルしてない?」
少し不機嫌顔で言うアヤカ。
「そ、そんなことしないよ。第一、遊びでズルしたって面白くないよ」
「そうかな~」
と、ミチルを睨みながら、拳を握るシンシン。
「はいはい、喧嘩は駄目よ」
シルヴィアが止めに入る。
「遊び程度で、喧嘩和はやめるんだな」
シュディも止めに入ってきた。
「「は~い」」
同時に返事を返すシンシンとアスカ。
相変わらず仲がいい。
――パシュ
誰かが入ってきたようだ。
「誰か、オーバーン曹長を知らないか」
「あ、エルザはん。リグナイテッドはんなら、確か格納庫に行くような事を言ってはったな」
「どうしたんですか、エルザさん?」
尋ねるミチル。
「ええ……少し気になることがあって」
少し歯切れの悪い答えを返すエルザ。
「あー、わかった!」
「どうせ外してると思うんやけど、答えてみ」
「えーと、書類に嘘が書かれてた!」
「よくわかったわね」
驚くエルザ。
「ほ~ら、はずしってええ~!」
エルザ以上に驚くパトリシア。
「えへへ」
「で、どの辺りが?」
興味を持ったのか、聞くシュディ。
「それは――」
持っていた書類を捲る。
「ここの部分よ」
シュディが、書類を覗き込む。
「……戸籍、ですか?」
「ええ。早急に調べたんだけど、該当する人物が居ないって通達が来たのよ」
その言葉に、和やかな空気が一変した。
「念のため、聞きなおそうと思ってね」
「なら、僕が聞いてきます」
「ミチルが、か」
「はい。それに……いつか書類の事で聞かれる時がくるから、ミチルが聞きに来てくれって」
その言葉に、その場にいた者たちは驚いた。
「そう……わかったわ。フェアテーゼ曹長、頼むわ」
「判りました」
――カン、カンカン……チュィィィィィィィィン!
持っていた工具を置いた。
「ふう……さすがわは、ブルーブラスターの衝撃剤。脚部の負担も大分解消されてるな」
俺の名前は、リグナイテッド=オーバーン。
乗っているパワーローダーは、センチュリオンMk-3改。
外装はセンチュリオンMk-3改であるが、中身はMk-4で、ブースターとスラスターを装備。
脚部は、ブルーブラスターの技術が積み込まれている。現ローダーの中で機動力が優れた機体の分類に入り、スラスターによるダッシュ、短時間ならば空を飛ぶことが可能であるが、冷却に30秒掛かってしまうのが難点である。
何故、この様なローダーがあるかというと、彼が自ら改造を行った為である。
本来ならば、軍の備品を無断改造および私物化で重罪なのだが、僕たちの部隊を助けてくれた人という事で、この部隊に入ることで、免除として貰ったのだ。
……色々裏話もあるけど。
お、おほん。失礼。(マキ風)
とにかく、俺は新生平和維持軍に仮入隊として入っている。
「リグナイテッドさん」
「ん、ミチル……ついに、か?」
顔つきと雰囲気を察したリグナイテッドは、作業を止め、ミチルと向かい合った。
「で、聞きたいことは何だ?」
落ち着いて答えるリグナイテッド。
「まあ、何と言うか……場所を変えるか」
そう言いながら、リグナイテッドは立ち上がり、格納庫を後にした。
続いてミチルも、後を追った。
~夜空の川に願いを~(前編)
「って、何で食堂なんですか!?」
雰囲気的に、誰もいない場所を選ぶと思いきや、もろ人が集まる場所にきていた。
ちなみに只今夕飯の時間帯です。
「別にコソコソ話をするよりは、マシだと思えるが?」
「いや、あなたには一応偽証罪が掛かっているんですよ?」
呆れ口調で答えるミチル。
その言葉に、二人に視線が集中した事は、言うまでも無い。
「まあ、いいじゃん。実際そうなんだし」
と、オムライスを口に運ぶリグナイテッド。
一応、エルザやシンシンたちも食堂にいたが、潔さに唖然としていた。
「じゃあ、どこの生まれなんですか?」
「知らん」
即答。
「聞かれても、第一この名前自体偽名だし……ずずずずずずずず」
お茶を啜る。
「まさか、どこかの組織のスパイだ。って言い出さないですよね?」
さすがに、頬が引き攣り始めるミチル。
「うむ、それも判らん。お前らと初めて会った時より、三週間前の記憶が無い。一種の記憶喪失らしい」
「記憶喪失ですか?」
驚くミチル。
「ああ」
「じゃあ、身元も調べようが無いわね」
と、ミチルの後ろから声が掛かる。
「マキさん」
「マキの姐さん」
ミチルとリグナイテッドは、この部隊の隊長の名前を言った。
「姐さんって……まあいいわ。ところでリグナイテッド、調子はどう?」
「ボチボチって所です。センチュリオンの整備・調整も、あと少しで終わります。ところでマキ隊長、この前の始末書の清書、終わったんで取りに来てもらえますか?」
「っちょ、リグ!シーーーーー!」
大慌てで、静かにのジェスチャーをするマキ。
「マキ」
「ぎく!」
マキの背後から、巨大なプレッシャーが襲い掛かる。
「どういうことかしら?オーバーン曹長、詳しい話を」
「うっす。この前の戦闘の始末書の清書を、マキ隊長から預かった次第です」
普通に報告するリグナイテッド。
マキが、何かジェスチャーを送っていたが、あえて無視した。
「そう、わかったわ。……隊長」
「なっ、なんでしょうか、エーちゃん」
ビクビクしながら答える新生平和維持軍・初代隊長マキ=アルディート中佐。
ちなみに、エルザはこの部隊の副隊長である。
この光景から見て、どっちが隊長で副隊長だか、時々わからなくなるのが、リグナイテッドの本音である。
「ここの所の報告書の内容が良すぎると思ったら、何新人にやらせてるの!」
「ひ~~~~、ごめんなさ~い!」
エルザに説教されるマキ。
まあ、いつもの事なので、皆、気にしないで飯を食べる。
ミチルも、乾いた笑いを浮かべながら飯を食べる。
リグナイテッドも慣れているが、近くでやられるのも迷惑なので、マキに助け舟を出してやった。
「エルザ副隊長」
「何かしら?オーバーン曹長」
「マキ隊長も反省しているようですし、それに俺の処遇はどうなったんですか?」
再び驚くエルザ。
マキに助け船を出すために、自分の不利――つまり、偽証罪の事を出してきたからだ。
「え、あ、ええ、さっきアナタが言っていた通り、記憶喪失ならどうしようもないけど、一応、施設で厳重に検査を受ける必要があるわね」
「まあ、それがセオリーっすね」
苦笑しながら言うリグナイテッド。
「でも、何で嘘を?」
と、尋ねるミチル。
「いい加減、あの惑星にいるのがシンドくなったから、かな。あとは破棄されていた軍の基地の食料や物資がスッカラカンになったからだな……すいません~ん、お茶のおかわりキボンヌ」
「き、キボンヌですか?わかりました」
調理を担当していた隊員は、少しばかり困惑する。
この言い方は、もう聞きなれた言葉だが、未だに困惑を出す者もいる。
「でも、そうなると……あの機体はどこから手に入れたんですか?たしか、あの軍の基地は、センチュリオンMk-4が2~3機配備されていたとしか、記録に残ってないんですが?」
ふと、前の作戦のブリーティングの話を思い出して、リグナイテッドにミチルが尋ねた。
「ああ、何か一機だけ外装の無いローダーがあったから、それを拝借して改造した。ブースターは、スラスターを上手く調節して、簡単にカスタマイズしたものだから、いい加減本腰入れて一から作らないとまずいからな――ども、ずずずずずずずず」
隊員が入れてくれたお茶を再び飲む。
食堂は、いつの間にか何ともいえない空気に支配されていた。
「……隊長、彼の処遇はいかがなさいますか?」
冷静に切り出すエルザ。
「そうね……一応人智無害だし、変な事もしてない。だけど、この事態を予測して、ミチルに言って置いた用意周到さ。結果からして、監視つきで部隊に居てもらってもいいんだけど、念のためにテルル参謀にも話を通さないといけないから。ってな訳で」
みま~と笑顔を浮かべるマキ。
だが――
「それくらい、自分でやりなさい」
エルザの即答が飛んできた。
「そうっすよ、さすがにエルザ副隊長ばっかりさらせてないで、偶には自分でやるべきですよ」
「その割には、隊長の始末書を書いているのはどういうことかしら?」
「大雑把な内容だったんで、これ以上、副隊長の仕事を増やさないようにと思った次第です」
「無用な気遣いは結構……でも、礼は言っておくわ。隊長、行きますよ」
と、エルザに首の袖を捕まれ、引きずられていくマキ。
「まだご飯食べてないんだけど~~~~~~~~~…………」
反響を残しなら、食堂から強制退室させられるマキ。
「ミチル」
「何ですか?」
「あとで、隊長と副長に飯を持っていくぞ」
「はい、わかりました」
「ああ。って訳で、おばちゃん飯二たrびは!」
中華鍋が、リグナイテッドの顔面に直撃した。
「誰がおばちゃんよ!」
おいおい生きてるか?痛いそ~。などと、言葉が飛び交っていた。
『……わかりました。リグナイテッド=オーバーン曹長についての処遇は、マキ=アルディール中佐に一任します』
テルル参謀が、モニター越しに答える。
「宜しいんですか、テルル参謀」
少々驚くマキ。
『ええ、MBH弾の時みたいに、再び一つに戻ったあなた達がいるのですから、大丈夫だと思っています』
「わかりました。彼に不審な行動が見られれば、再度通信させてもらいます」
マキの変わりに、エルザが言った。
『ええ、それでは良い休暇w――』
――パシュ
と、扉が開いた。
「ちわーす、隊長と副隊長に出前どえ~す!」
料理を持ったリグナイテッドとミチルが入ってきた。
『彼が、リグナイテッド=オーバーンですね?』
その言葉は、どこと無く震えていた。
「そうですが。あなたが、テルル参謀で?」
ちなみに、今のリグナイテッドはヒラヒラの可愛らしい絵柄の描かれたエプロンを装備していた。
いい男が台無しである。
『え、ええ、そうです。所でマキ=アルディールト中佐からの報告では、記憶喪失だ、そうですね』
「はい、三週間くらい前から以前の記憶がありません」
真面目に答えるリグナイテッドだが、エプロンと持っている料理でしまるものもしまらなかった。
「決まってませんよ、リグナイテッドさん」
呆れるミチル。
「リグナでいいぞ。リグナイテッドは適当に考えた名前だから、リグナでいい」
「う~ん、だったら最初からそうすればよかったんじゃないの?」
呆れ口調のマキ。
「あだ名が欲しかった」
その一言に、ミチル・マキ・エルザ・テルルがズッコけた。
「アンタ、何考えてるの?」
起き上がりながら言うマキ。
「何も。ところで、料理も冷めてき始めてるんで、食べてくださいな」
と、エルザに差し出す。
「あ、あうん」
戸惑いながら受け取るエルザ。
「ミチル、早くマキ隊長に渡さんか、冷めるぞ?それとも、熱々バカップルの如く、食べさせたり、口移ししたりするのか?」
その言葉に、今度は顔を赤らめる四人。
「じゃ、エルザ副隊長、お邪魔虫は退散しあしょう」
エルザの背を押しながら、退室していくリグナイテッド。
「どこの口調よ?って、まて、背中を押すな、コラ」
「では、ごゆっくりどうぞ」
エルザの抗議を無視する。
「それからテルル参謀、また後で」
『そうですね、また後で』
先の爆弾発言に察したテルルは、リグナイテッドと簡単に言葉を返す。
そして、そのまま退室していった。
『では、マキさん、ミチルさん、ごゆっくり』
「え、あ、白瀬!?」
――プツン
そこで通信は途切れた。
っというよりも、相手から切ったと言ったほうが正しいかもしれない。
そして、残された二人の場は、気まずい雰囲気に包まれるのであった。
そして、本当に二人で熱々バカップルの如く、食べさせたり、口移ししたのかは、定かではない事を記載しておく。
「ふぅ、貴方も中々の兵(つわもの)ね」
皮肉として取って良いのか、困る発言をするエルザ。
「いや、それほどでも。それよりも、早く食べないと、本当に冷めてしまいますよ」
「そうね。……いただくわ」
「どうぞ、召し上がれ」
その後、テルル参謀と言葉を交わし、監視付でありながら新生平和維持軍にいることが許された。
そして一同は、リープゲートに入り、惑星ローウェンに向かったのだった。
続く
七夕SSなのに、どこが七夕なんだ?と自分でも疑問に思えるSS。
まあ、第一話ってことで処理。
今回は、オリジナルキャラの紹介と経緯&作者の暴走なわけです。
ファンの方、納得できなかった方にはスイマセン。(汗
制作開始:2006/7/7~2006/7/10
打ち込み日:2006/7/10
公開日:2006/7/10
変更日:2008/10/23
修正日:2006/7/22