オリンフィス戦争――それは、地球と月の戦争の名称である。
多くのテクノロジーを駆使して作り上げられた兵器は、地球と月との間で宇宙(そら)を舞い、爆発という光となって消えていった。
そして、地球のとある場所の森の中に隠れて建っている施設の中。
廊下の中は、床と壁の境に、淡く光るプレートが埋め込まれている。空気は、空調が効いているのか、意外と清んでいた。
報告ではここは、既に廃墟と成っている筈の施設。なのに、整備された通路に、稼動している電流。つまり、当たりを引いたと言っても、過言ではない。
そんな通路の真ん中に、二人の男が立っていた。
「この先に、連中がいます」
右手に角ばった剣、左手に丸い剣――特殊な二刀を持つ、黒髪に男。
名は――霧生・O・クライアント(きりゅう・おう・くらいあんと)。地球人と月人のハーフである。なを、この時はまだ、ハーフという存在は当たり前だった。
「了解、隊長。って、言っても、俺とお前の二人しかいないけどな」
右手にレイピア、左手にカスタマイズされたリボルバーを持つ、白髪の男。
名は――朝霧 総一郎(あさぎり そういちろう)。こちらは、生粋の地球人である。
「本当にいいんですか、俺が隊長なんかやって……」
恐縮する隊長の霧生だが、当然の反応と言える。
何せ、この部隊――ルナアース隊に、入隊してから2年しか経っていないのである。
「実際、お前はこの部隊の次期隊長候補の人間だったんだから、今更気にするな」
霧生の肩に、手でポンッと叩く総一郎。本来なら、総一郎が勤めるべき役割であった。が、亡くなった前隊長の言葉に従った結果、霧生が選ばれたのである。
「はい!」
その言葉に合わせるように、霧生は両手に持った武器を握り直す。そして、両足に力を入れる。
「それでは、行くぞ! ――って、隊長はお前だろ!?」
「了解! ――って、すいません!!」
などと、会話をしながら走り出す二人。
だが、その走る速さは常人ではなかった。その速さは、100メートル4秒台。空気は、体によって切られていき、その速さのまま前方に見えてきた扉を、勢いよく吹き飛ばす。
両開き扉のため、Vの字を描きながら、吹き飛んでいく。
その出来事に、部屋にいた連中が動揺する。服装から、月の貴族と地球の高官の者たちと判断できた。
そして霧生は、武器を構えながら、高らかに宣言する。
「ルナアース隊だ! ここに居る全員が、戦争開戦を目論むとの事! よって、月と地球の平和を脅かす者たちとして、拘束さ――」
霧生が宣言する最中、背中から小さな衝撃が走る。その時は、何が何だか判らなかった。だが、腹部を何かが突き抜け、血飛沫が飛び出した瞬間に理解した。
自分は、刺されたのだと。
「――っがぁふぁ!」
勢い良く血を吐く。しかし、体制は崩さなかった。何とか踏ん張りながらも、咳き込む衝動を抑えつつ、後ろをゆっくり振り向く。
そこには、何か異物を見る様な目をした総一郎の顔があった。
何故だという考えが、霧生の頭の中に飛び交う。だが、そんな事は知らないと言わんばかりに、総一郎は無言のまま剣を横に振り、体を裂く。
「――――――――!!」
血は噴出すと共に、引き千切れた肉も飛び散り、体全体に激痛が走る。
半分残っているのが災いして、激痛を明確にさせる。
「……なぁ、何故ぇ……?」
激痛に耐えながら、総一郎に尋ねる。
「何故、か……ふっ」
霧生の言葉を鼻で笑い、血と肉片がついたレイピアを振り払う。その際、血と肉片は、壁や床に飛び散る。
「それも判らない貴様は、やはり無能だったと言う事か。隊長も、こいつに目を掛け過ぎだって言っていたのに」
視界が血で染まり、痛みで周りを感じる感覚が麻痺し始めた為、何も判らない。唯一判るのは、自分の傷の痛み、血が抜けていく感覚、地面がどこか、耳はまだ無事くらいである。
「言いたい事は沢山あったが……その姿を見ていると、どうでも良くなる」
体から力が抜けていく間隔に襲われる。
死にたくない衝動に掛かれるが、生存本能から来るものではない。ただ、何故こうなったのかが知りたいだけである。
「……ぅん? まだ足掻くか、見っとも無い……」
(当たり前だ)
「仕方が無い。冥土の見上げに、教えてやる」
(何をだぁ?)
「隊長たちのデータをリークし、抹殺した。だけぇの話さ」
(なっぁ、にぃ?)
「じゃあなぁ」
(まっ、待て! まだ聞きた――)
そこで、意識は完全に途絶えた。
その数ヶ月後――開戦。地球と月の5度目の戦争と成り、後に第五次オリンフィス戦争と呼ばれる。
多くの傷跡を残し、勝敗すら判らなくなった戦争は、いったい彼らにどんな利益を齎したのか。
霧生は、知る事は無かった。
ただ判っている事は、戦争阻止失敗及び、仲間に裏切られた事。そして、自分の死のみ。
何も判らないと、同じだったが。
だが、転機が訪れる。まぁ、意識だけを考えると、一瞬だとしか言えないが。俗に言う、転生という奴を得る。
あれから――7・800年後の、ある日の夜明け頃。日本のある街で、一人の男の子が生まれた。
「おめでとうございます、元気な? 男の子です」
疑問系で答える女性看護士。それもその筈、生まれた瞬間泣いたには泣いたが、ほんの5秒ほどで大人しくなり、当たりを見回しているのである。疑問系に成るもの、当然と言えば当然なのかもしれない。
「ああ……あら? 何か握っているわよ?」
赤ん坊と受け取った母親が、何か握っているのに気がつき、赤ん坊の手の平を空けようとする。
だが、赤ん坊はそれを放さないと、暴れだしたのである。
慌てて赤ん坊を抑える、母親と女性看護士。その赤ん坊が、手に持っていた物を見た瞬間、2人は固まった。
それもその筈、血の塊だったら判るが、球体の金属の塊を持っていたのだから。
それからも、暴れる赤ん坊を宥めながら、球体の金属は解析に回された。だが、結局何も判らず、特に害も無いと結論に至り返された。
それから、もう1つ。腹部から右の脇にかけて、裂かれたような痣があったのである。
痣にしてみても生々しすぎるので、皮膚移植を検討するが、基本的に健康なので出来るか微妙との事。
まぁ、あくまで痣なので、歳を重ねれば薄れていくはずだと医師から伝えられた。でも、人によっては、広がる可能性もあるので、何とも言えないのが本音である。
それから、5年後――赤ん坊を子どもになった。
やはりと言うべきか、幼稚園で痣を見られてから、その痣でからかう輩が出てきた。が、特に反応する事も無く、あっさり沈下した。
だが、沈下するのは大いに結構であったが、余りにも子どもらしからぬ対応に、困惑を隠せない大人たち。時たま読んでいる本も、大人でも難しいモノを読んでいるのを、目撃されている。
さらに両親共に、子育てをしているのかどうか不安にあるほどで、さらに他人行儀が見え隠れする時もあった。
そんな日々を送り続けたが、精神的に参り始めたのは母親である。
息子が、自分に気に入らない言動をすれば、すぐに怒鳴りつける。息子も、それに従って、なるべく気を使う。何とも、奇怪な光景である。
だが、いくら気を使うと言っても、何事にも限度があり――ついに、爆発してしまう。
母親が、息子を殴ろうとした瞬間、あっさり息子の手によって払われる。
「――このぉ!!」
反対の手で、思いっきり振りかぶって殴りかかってくるも、バックステップでかわす。
母親の怒りは、さらに増してしまい、今度は物を使って殴りかかる始末。さすがの息子も、これには拙いと思い、近くにあった物を掴んで投げる。投げた物は、母親が持っていた物を弾き飛ばす。
「何で逆らうの!? ちゃんと言う事を聞きなさい!!」
理不尽極まりない言葉を、母親の口から吐き出される。
「はぁ~……今の言う事やらに従っていたら、怪我確定だろう」
ため息を吐きながら、母親に正論をぶつける。だが、これが子ども――しかも5歳の息子から放たれる言葉。13歳くらいであれば、それほど問題では無かっただろう。
それから、発狂したような奇声を上げながら、子どもに襲い掛かる母親。息子も、これ以上は、命に関わる可能性があると踏んで、外へ逃げる事に。
これを気に、子どもと母親は、母親の方から一方的に家族の縁を寸断させられたのである。
父親の方も、必要最低限の事をして、それ以上は踏み込んでくる事は無かった。
家族との関係は、最悪の一言。両親の仲は、現時点で問題は無いので、なるべく関わらない様にする事を選んだ子ども。
この選択は、子どもにとって最悪の選択だったと言えたのだが、それを痛感するには10年以上の時間が必要であった。
それから、子どもは他の人を遠ざけるようになった。
色んな人たちが、子どもに寄ってきたが、最終的には諦めていき、孤独を得る事ができた。
幸い文武共に優秀だった為、変わった天才児としか移っていなかった。それでも、それが気に食わない連中も現れたが、合法的に叩き潰していった。
具体的には、前日の夜にビデオカメラなどの映写機関係を、野外などに隠して置いておく。そこに、タチの悪い連中を誘導して、暴行などの瞬間を収めて親に突きつける。で、言わずとも、コピーは残しておいて、ネットなどで公開して破滅させる。
こちらの方が、ある意味タチが悪いが、親の手を借りる事ができない以上、形振り構っている訳には行かない部分もある。
それから、子どもは小学生と為り、中学生、高校生へ。
そして、最悪の選択を選んだ結末を間も辺りにし、家を飛び出して、ある町へ向かう。
柵(しがらみ)が無くなった以上、危険な橋を渡っても、問題は無くなったから。
ある意味気楽になった反面、全てを失った。
子どもから、青年になった俺――晴山 彰浩(はるやま あきひろ)は、駅のホームのベンチに座り、空を眺めて呟く。
「とにかく、月人がいる町へ向かうか……まぁ、皮肉にも、あそこは月と関係が直通だったくらいだからな」
そう言いながら、地面に目を向けると、電車が来るとアナウンスが流れる。それに合わせ、ゆっくりとベンチから立ち上がり、黄色い線の近くに立つ。
不意に階段の方が、騒がしくなる。多分、親戚が追ってきたのだろう。
「ガメツイ連中だな……それとも、責任逃れか。どちらでも良いが、このままでは捕まる、か」
俺は、辺りを見回す。不意に、ベンチの下の足辺りに、中身が残っている空き缶が置いてあった。さすがに拙いと思ったが、隠れる場所が無いので、退場願う。
「いっ――」
親戚の1人が、俺を見つけて叫ぼうとする。だが、その言葉と同時に、素早く缶を拾って額に投げつける。
「たぁ――あぁぁぁぁぁぁぁぁ――――…………」
ちなみに、この駅の階段を上る奴なので、階段の下へ落ちていった。後ろにもいたので、多分死亡者は出ていないはずである。怪我人は、確実に出るだろう。
階段の方では、少し騒ぎになっているが、運行には問題ないだろう。
俺は、電車に乗り込んだ瞬間、発信音が鳴り響く。そして、エアー音と共にドアが閉まり、電車が動き出す。
ガタンゴトンと揺れる車両の中を移動し、開いている席に座り、目を瞑る。
電車の窓から見える風景を眺めるのも悪くないが、そんな気分には慣れなかった。この町にあった出来事を、余り思い出したくないからだ。
別に目を背ける訳ではない。言い訳なのかもしれないが、今は少しだけ時間が欲しいだけだ。
受け容れられる様に。背負える様に。前を向いて歩く為に、少しだけ遠回りさせて貰いたい。
そう思いながら、意識を闇の中へ落としていった。
この先の出来事――月と地球の交流の架け橋の一端に関わる、重大な事とは、俺は知る由も無かった。
同時に、最後の任務が課せられる――オイディプス戦争阻止失敗の原因の報告。今の政府、王国に報告する義務は無い。だが、この世界のどこかに、過去の記憶を継承した人間がいる筈である。
それは、術中八苦、月人だろう。地球では危険すぎるが、派閥はあっても、月に国は1つだけしか存在しない。つまり、他の国家から狙われる事は、まず無い。
さらに、地球よりも狭い場所で暮らしているので、誰がいなくなったなどすぐに判明するはず。
さらに、ロストテクノロジーの扱いに関しては、7・800年前に比べても、月の方が何枚も上手である。
小難しい話は追々として……俺は、彰浩と霧生の間にいると言って、過言ではない。
多分、この世でもっとも歪な存在だろう。先も言った、ロストテクノロジーの使用を除いた場合で、だ。
とにかく、俺は行かなければならない――あの満弦ヶ崎中央連絡港市へ。
この話は、前世の記憶を持った青年が、ある月人の女性聖職者と出逢う事と……最後の戦いの話。
色々な出逢いと別れをし、世界の歯車を大きく動かしていく。
悩みを越えた青年は戦士へ戻り、1つの町を駆け抜ける。
昔、残してきた使命を胸に秘め、世界に翻弄される事無く、刃の如く貫いていく。
何かに出逢う者たちの物語・外伝Ⅱ
夜明け前より瑠璃色な
~Memory of the past and the tomorrow's future~
プロローグEND
最終章の販売を気に&リリカルなのはが行き詰ったので、改正版公開。(汗
ついでに、少し話を追加変更。
PCやってフィーナラブに、PS2版をプレイしてエステルに転向。PS2版は、フィーナ、エステル、翠、リース以外はスキップで飛ばしてクリアしたので、CG埋まってません。
ちなみに、最終章はプレミアムエディションです。ファーストの初回限定を、中古に出した人間が言うのもアレですが、やはりファンにはたまらないセットですよ。
制作開始:2006/2/12
改正日:2006/11/4~2006/11/10+2006/12/18~2006/12/23
再改正:改正日:2009/2/25~2009/2/28
打ち込み日:2006/12/23
公開日:2006/12/23
変更日:2009/2/28
修正日:2009/3/1