ダークバスターの旧作品群   作:ダークバスター

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第一話

「達哉」

「菜月、今日はバイトだから、早く行かないと」

 達哉は、教科書などをカバンに入れながら答える。

「ええ、行きましょ」

「菜月、朝霧くん」

 と、緑の髪のポニーテイルの娘が、声を掛けてきた。

「翠」

「遠山」

 菜月は名前を、達哉は苗字と、それぞれの呼び方で言った。

「ねえねえ、今度どこかに遊びに行かない?」

「いつ頃なんだ?」

「え~と……、今週か来週の日曜日辺り」

 顎に人差し指を当て、天井を見ながら答える。

「ごめん、その時期はちょっと」

「私も~」

「え~! 残念」

 少し涙目になり凹む、翠。

「でも、遠山さんは諦めません!」

 と、一気に復活して、テンションを上げる。

 その姿を見慣れていた二人は、毎度の事ながらも苦笑した。

「それじゃ、また明日」

「翠、バイバ~イ」

「また明日ね、ご両人!」

「み、翠!」

 真っ赤な顔をする菜月。

「はははは」

 カバンを掴んで、一足先に離脱した。

「こらー! 翠!」

 廊下に響く、菜月の声。

「待ったねー! 朝霧君! 菜月!」

 手を振りながら、廊下を駆け抜けていった。

 そして、玄関で靴を履き替え、学校を出た。

「さて、と……、一旦家に戻ってから、駅前でも行きますか」

 鼻歌を歌いながら、翠は歩き続けた。

 

 

 

「……む」

 ガタンゴトンと一定のリズムを立てながら揺れる電車の中、青年は目を覚ました。

(いつの間にか、寝ていたのか)

 そう思いながら、座席に座りなおし、持ち物を確認する。

 そして、無くなっていないことを確認すると、安心して背もたれに寄りかかる。

 それと同時に、アナウンスが流れる。

 次の駅は『満弦ヶ崎中央連絡港市』。

 俺自身、初めて来る場所だ。

 前世の記憶が目覚めてから、早十数年。

 ついでに、この前世の記憶のせいで、色々な出来事に巻き込まれた。

 両親共に、一度も信じてもらえずに、俺の前から姿を消した。

 それから、親類に引き取ってもらうことになったが、押し付け合いが始まった。

 どうせ盥回しになるくらいなら、と勢い良く出てきた。

 だが、出て来たのはいいが、当てが無いことに気が付いた。

 そこで前世の記憶で、未だに名前がある街へ目指した。

 そして、今に至る。

 揺れる電車の中、ただ一人モノ老ける俺。

「月人がいる町、か」

 呟きながら窓を見た。

 そこには、満月のように開かれた海があった。

「――――の跡か……、――も派手にやったな」

 そう呟いた。

 

 

 

 あれから10分後、電車を降り、駅を出た。

「…………」

 一吹きの風とほんの僅かな塩を香りに、そこまでも広がる青い空が、出迎えてくれた。

 家族に、同世代、周囲にいた者――人に拒まれても、世界は受け入れてくれた。

 辺りを見回して、

「戦争のことなど、空言にしかない……、か」

 そう呟きつつ、手荷物を確認してから、歩き出したが――

「いいじゃん、ちょっとだけなんだしさ」

 その言葉が聞こえた方に顔を向ける。

「すいません。急いでるんで」

「だ~か~ら、少しだけでいいからさ、な」

 明らかに嫌がる相手を、無理やりナンパしている男。

 周りの連中も、遠巻き見てたり、見て見ぬフリをしている。

 呆れる光景だな。と、言いたいが、これが普通である。

 下手な正義感は、逆に状況を悪化させる場合がある。

 だが――俺は、自動販売機から、アルミ缶とスチール缶のジュースを、それぞれ一本ずつ購入。

 そして、アルミ缶のジュースの中身を空にし、ナンパ男の後頭部目掛け、投げつける。

「いでっ!」と言う声と、カコーンといい音が、広場に響いた。

「って、誰だ!」

 ナンパ男は、後頭部を抑えながら叫ぶ。

「すまない。大丈夫か?」

 平然と答える俺。

 そして、その一部始終を見ていた周りの連中は、動揺していた。

「いきなりとは、これだから野蛮人は!」

「いや、缶をゴミ箱に投げ捨てようとしたんだが、手元がくるってな。どうやらこの缶、ナンパ男が嫌いらしい」

 その言葉に、ナンパ男の口元が引き攣る。

「なんだと?」

「詫びの品として、これを――」

 片手に持っていたスチール缶のジュースを、中身の入ったまま素手で潰し、丸めてナンパ男の手に乗せた。

「差し上げますから、今日は勘弁してもらえませんか?」

 ナンパ男や、嫌がっていた娘、周りの連中も驚愕していた。

「はっ、はい! ありがたく頂戴します! それでは!」

 ナンパ男は、全力疾走でこの場から去っていった。

 それを見届けてから、俺も歩き出した。

「あっ、あの!」

 だが、俺は振り向く事無く歩く。

 これ以上、この場にいたくなかったからだ。

 ナンパを撃退した勇敢な男として、拍手喝采に近い状況になるからだ。

 なら、自分たちが助ければいいだろう。

 そんなことしか、思い浮かばなかった。

「待ってください!」

 いつの間にか、先ほどの娘が目の前にいた。

「……急いでいるんじゃなかったのか?」

「えっ、あ、いや、その……」

 目の前にいる娘を看破して、横を通り過ぎ――

「待て、って言ってるでしょ」

 問答無用で、腕を捕まれた。

「何だ?」

 諦めて尋ねる事にした。

「先ほどは、ありがとうございました。私、遠山翠と言います。アナタは?」

 小さなため息をついた。

「俺は、晴山(はるやま)、晴山彰浩(あきひろ)だ。じゃあな」

 遠山に背を向けるが――すぐに確保されてしまった。

「まだ、話は終わってないって」

 少し怒り気味に答えた。

「お礼くらいさせてよ、ね?」

「……わかった」

「やったぁ~!」

「やったぁ~、じゃ、ねぇぞ糞ども!」

 その言葉に、遠山はバンザイをしたまま固まる。

「なるほど……、今度は数。定番だな」

「やかましい! 手はず通りに頼むぜ!」

『おお~!』

 声を上げる不良ども。ナンパ男も含めて、30人近くはいた。

 あわわわわっと、慌てふためく遠山を、問答無用で近くの店に押し込む。

 それが合図となり、一斉に襲い掛かってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――三分後

 30人近くの不良が、道端で山済みになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お強いんですね~」

 でっかい汗を垂らしながら、後ろからついてくる、遠山。

「別に。ただ、チャラチャラした奴が嫌いなだけだ」

「ってことは……、アタシ、も」

「いや、お前の場合、無理してでも笑い飛ばすタイプだから」

 それから会話が途絶えた。

 そして、無言のまま歩き続ける二人。

 時折、彰浩が道を尋ね、遠山が答える。

 そんな会話だけが、続いていた。

「あの店です」

 遠山が声を上げる。どうやら、目的地についたらしい。

「トラットリア左門……、軽食店か。イタリア料理にしては、珍しい店だな」

「判るんですか?」

 驚きの声を上げる。

「中途半端で、偏った知識しか持ち合わせていないが」

 そう言って、肩を竦めて見せつつ、店のドアを開けた。

「いらっしゃいませ!」

 赤をベースにした制服を着た、女性ウェイターが出迎えてくれた。

「おじゃましま~す♪」

 俺に続いて、遠山も入ってきた。

「あ、翠、いらっしゃい。で、そちらの方は?」

 と、俺を見てきた。

 名前で呼んでいるから、彼女らは知り合いだと判る。

「私を助けてくれた、白馬の王子様!」

 遠山を押し返して、店を出ようとするが、

「あわわわわ、ごめんなさい、冗談です!」

 また腕を捕まれた。

「え~と、お席は……」

「どこでもいい」

 戸惑うウェイターに、即答で返す。

「はい、こちらへどうぞ」

 そこで、窓際の奥の席に案内された。

「こちらがメ――」

「何も乗ってないパスタを頼む」

「へ? 何も乗ってない……、パスタ、ですか?」

 やはり固まるか。

 普通の店に、そんな物が置いている筈が無い。たとえあったとしても、始めてきた人間に出すことはしないだろう。

「ふむ。君は、相当な美食家だと見た」

 いきなり現れた、男性ウェイター。

 カウンターの所にいたはずだが。いい足を持っている。

「に、兄さん!?」

 しかも兄か。彼女も、何か特技があると見た。

「親父殿! プレーンパスタを一つ!」

「あいよ!」

 出してくれるのか!? 美食家と勘違いしたか。

「ところで、君は誰だい? 僕は、このトラットリア左門のオーナーであり、コック長の鷹見沢じ――ぐぁ!」

 さすがの俺も驚いた。なんせ、いきなりしゃもじが飛んできたのだから。

「失礼しました~」

 手馴れた手つきで、しゃもじと兄貴の首根っこを掴んで、裏手へ運んでいった。

「お待たせしました」

 別の男性ウェイターが、プレーンパスタを運んできた。

 彼の顔立ちは良いが、平凡的な雰囲気が漂っている。

 だが何と無く、彼は近い将来、大きな出来事に関わると、確信が持てた。

 これは前世の記憶の経験上からくる、直感。

 だが、思い出したことがあった。

「お前、何か頼んだのか?」

「あ! そういえば何も頼んでないよ~。朝霧く~ん、今日のオススメでお願い」

「はいはい、わかりました。おやっさん――」

 さて、食べるか。

 店のやり取りを眺めながら、プレーンパスタを口に放り込んだ。

 うん、まずまずだな。

 それからは、料理に意識を集中することにした。

 何か話しかけてくる誰か。

 無視して、黙々と食べる。

 食べる。

 食べる。

 食べる。

 食べ――、辛っ! ばっ、馬鹿な!? プレーン=何も無い混ざりっけゼロのモノが、どうして激辛に変わるんだ!?

「ぼふっ! ぼふっ!」

 変な咳き込み方をする俺。

 やば! 鼻にパスタが!

「あわわわわわわっ! あ、朝霧君!」

「タツ! 水だ!」

「はい!」

 などの会話が、耳に入ってきた。

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁぅ~、はぁ~」

 水を飲み、息を整えなおす俺。

「大丈夫ですか?」

 申し訳なさそうに尋ねてきた、遠山。

「ああ。大丈夫だが、何で急に辛くなったんだ? 麺の中に隠し味として、辛子関係のものを練りこませるのか、この店は?」

 直球で感想をぶつける。

 いくらなんでも辛すぎだわ。

「あ~、それアタシのせい」

「何? シカトしていた憂さ腹に、辛子系統をぶち込んだとでも?」

「うん♪」

 満々の笑みで答えるか、この女。

「君、大丈夫か?」

 カウンターから、コックが出てきた。

「一応」

 水を一口。

「しかし、いきなり咳き込むから、驚いたよ」

「翠、恩師の人に何やってるのよ」

 笑顔で語る、先のしゃもじで撃墜された男性ウェイターと、呆れて友人に言葉を投げかける女性ウェイター。

「だって~、アっきんが無視するんだもん」

「ぶっりこかまして言うセリフじゃねーだろうが」

 容赦無く俺は、遠山の背後に素早く回りこみ、口を開け、激辛となったプレーンパスタを放り込む。

「―――――――!」

 悲鳴にならない悲鳴を上げる。

 慌てて行動を起こす三人。

「君、なかなか素早いね」

「撃墜された男性ウェイター、か」

「いや、名前で呼んでくれよ」

「『じ』までしか判らん」

「おいおい、聞いてなかったのか?」

「途中で撃墜されて、中断となったから」

 真顔で答える俺。

「あはははは。それなら、仕方ないか」

 相も変わらず、笑顔を浮かべる男だ。

 軽い感じの人間だと、第一印象で感じたが、けして嫌なタイプではない。

 むしろ、自分の大事な部分を隠しつつも、いざとなると助言や後押しをしてくれる人。

 悲しいピエロではなく、自ら望んでピエロになった。

 俺には、そんな感じがした。

「僕は、仁。鷹見沢仁だ。宜しく」

「こちらこそ。名前は、晴山彰浩。彰浩で構いません」

「そうか、彰浩君か。仲良くやろう」

 それから少しだけ、他愛も無い会話を始めた。

 

 

 

「うっく、うっく――ぷっは~! いや~、生き返ったよ」

 飲み干したコップを置く。

「翠、今度こそ大丈夫?」

「うむ! 完全回復しましたよ!」

 立ち上がらんとした勢いで答える。

「それくらい声がでれば、大丈夫だろう。菜月、彼に……、ふむ」

 左門が途中で言葉を止める。

「そうしたんですか、おじさん?」

 達哉が代表で尋ねる。

 無言のまま、左門は顎で指す。

 三人は、顔を向けると――

「君、やっぱり美食家だよ」

「いや、ただ単に食べたかっただけですから」

 二人は、他愛も無い話で盛り上がっていた。

「……………………」

 それを見て、安心する左門。

「さて、仁。彼の食器を下げてくれ」

「うぃーす。じゃ、また」

 皿を持ち上げる仁。

「ああ」

 返事を、柔らかい声で返す彰浩。

 それを聞いて満足する左門。

 店に入って来た時は、歳に似合わない雰囲気を出していたが、ある程度緩和していた事に満足した。

 そして、次に来た時は、どんな料理を出そうか、考えるのであった。

 

 

 

「会計を頼む」

「あ、それなら別にいいって、お父さんの伝言」

「いいのか? 始めてきた人間なのに?」

 ってか、あまり恩を貰いたくないんだよな。

「うん。お父さん、アナタの事、相当気に入ったみたいだし。あと、いつでも来いよ。だって」

「……わかった。気が向いたら、また来ると、伝えておいてくれ」

「ええ、それじゃ」

 俺は、遠山を置いて、店をあとにした。

 そして、後ろから遠山らしき声が上がったのは、言うまでも無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何かに出逢う者たちの物語・外伝Ⅱ

夜明け前より瑠璃色な

~Memory of the past and the tomorrow's future~

 

 

第一話

満弦ヶ崎中央連絡港市と呼ばれた街

 

END

 

 

 

 

 

次回予告

 

勢いで出てきた、彰浩。

当ても無く、夜が来てしまう。

公園で寝泊りしてもいいが、警察の御用にはなりたくない。

そんなこんなで、月人が住んでいる居住区へ、足を運ぶ。

そこで、モーリッツという人物と出会う。

 

 

次回

何かに出逢う者たちの物語・外伝Ⅱ

夜明け前より瑠璃色な

~Memory of the past and the tomorrow's future~

 

第二話

罪を背負う教団の神父




 どうも、DBの最新作。
 まだ連載終わってないのに、新作ですよ。はい。
 馬鹿です。
 もう、終わりなき無限回路へ突入しました。
 でも、完結させます。
 今回は、主人公視点重視で書いていきます。
 サイト『生まれての風』のとらは小説に、影響されました。
 あれは、主人公が面白すぎ! 真面目な話で、上手く他のキャラと絡み合ってます。
 ぜひ、読んでみてください。

 行き方は、直接打って飛ぶか、我がサイトの『リンクの海』から行けます。






制作開始:2007/1/11~2007/1/18

打ち込み日:2007/1/18
公開日:2007/1/18

修正日:2007/1/23
変更日:2008/10/24
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