IS×スーパーロボット大戦 アンソロジー戦線   作:再開のたけじんマン

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今回のお話もキャプテンハーロックのですが、機動戦士ガンダムAGEとも大々的にクロスオーバーしています。
キャプテン・アッシュとは海賊仲間であり、トチローに次ぐくらいの友人という設定です…無理あったかしら?


さすらいの宇宙海賊、キャプテンハーロックがゆく!2

 謎の敵の襲撃とその撤退時に深追いして時空転移に巻き込まれた、織斑一夏とその仲間達。

 

 右も左もわからない異世界で途方に暮れる彼らは、マゾーンやボアザン星などの異星人勢力の襲撃を受けるのだったが、そんな彼らは『宇宙海賊キャプテンハーロック』率いる海賊宇宙戦艦・アルカディア号に拾われるのだった。

 

 そんな彼らは、今は…?

 

 

   *   *   *

 

 

 その1:再会と、別の宇宙海賊との対話

 

 

 その日、アルカディア号は…とある宙域で第2根拠地こと、機械化自動変形小惑星『デスシャドウ島』に寄港していた。

 それも、同盟を結んだ別の宇宙海賊である、『機動戦士ガンダムAGE』の宇宙海賊ビシディアンの旗艦・バロノークも、入港しての事だった。

 

 その通路にて――更識姉妹が再会を果たし、一夏らと共に語り合っていた。

 

「まさかお姉ちゃんもあの転移に巻き込まれて、

 別の海賊船に拾われていたなんてね…」

 

楯無

「ホント、私もびっくりよ。でも最初は海賊だって聞いてびっくりして警戒もしたけど、

 みんな結構いい人達だし、首領にして艦長のキャプテン・アッシュも、よくしてくれたわ」

 

「そっか…よかった」

 

一夏

「しっかし楯無さんが無事で本当によかった…

 簪もそうだったけど、俺だって離ればなれの行方知れずになってて心配したんですよ?

 そんな矢先に、向こうの海賊船から降りてきたのを見た時は、本当に驚いたのなんの!」

 

楯無

「それは心配かけてごめんなさいね…って、そりゃお互い様だけどね。

 私だって簪ちゃんや一夏君達の事、全く気にかけてなかったと言えばウソになるしね」

 

「そ、それは確かに…お互い様かも…」

 

一夏

「は、ははっ…こりゃ一本取られたか」

 

 乾いた苦笑いの、更識簪と織斑一夏であった。

 

楯無

「それにしてもまさか、暗部の家の長の私が、海賊に厄介になるとはね…

 まあ裏社会とかに通じる点は共通してるおかげで、色々とその手の情報とか手に入ったり

 今の地球圏の色んな事情なんかを聞けたわ…」

 

「そ、そうなんだ…。

 (相変わらずというか何というか…)」

 

一夏

「ところで、そっちの艦に居た…キャプテン・アッシュって人は、どんな人なんです?

 さっきアルカディア号で聞いた話じゃ、こっちのキャプテンとは

 志を同じくするっていう、海賊仲間で古い友人で…あと、元軍人だとも」

 

「あっ、それ私も聞きたい…」

 

 一夏はキャプテン・アッシュについて、気になっていた事を質問する。

 

 彼はキャンプテン・アッシュについては、このデスシャドウ島に2隻揃って寄港する前に、通信でその顔を見た後にミーメや螢や副長のヤッタランからどんな人かについて訊ねており、その時には同じくアッシュがそんな人物かについて気になっていた台羽正も一緒にいた。

 更にビシディアンの活動自体も、連邦とヴェイガンの双方だけでなくネオ・ジオン残党からも物資の強奪や大規模戦闘の防止、ヴェイガンと内通する連邦高官の粛清、木星軍やネオ・ジオンなどの残党へ目を光らせ、ヴェイガンや星間連合の侵攻にあえぐコロニーへの救援など、多岐にわたる活動をしている事も聞いていたのだ。

 

楯無

「そうねえ…大体だけど、今一夏君が言った様な人よ。

 他は…普段は冷静で少し尊大だけど、それでいて優しさがあって

 チームワークを大事にする…そんな人よ」

 

一夏

「な、なるほど…。

 (千冬姉とうちのキャプテンを掛け合わせた感じの人か?)」

 

楯無

「それにね、彼は凄腕のモビルスーツパイロットよ?

 それもニュータイプやXラウンダーを複数人相手にしても全く引けを取らない程の、

 いわゆるオールドタイプでのスーパーエースよ」

 

「えっ…オールドタイプで!?

 まさかそれで能力持ちパイロットに並ぶ程だなんて…!」

 

楯無

「ええ…初めて見た時は私も驚いたわ。

 それも、黒いガンダムに乗ってね…」

 

一夏

「が、ガンダム!? ビシディアンの首領って人は、ガンダムにも乗ってるんですか!?

 トビア達クロスボーン・バンガードもガンダムに乗ってたりするけど、

 まさか別の宇宙海賊もガンダム乗ってて、しかも首領がだなんて…!」

 

 楯無からの話を聞き、一夏と簪は驚きの連続である。

 

楯無

「それとね…あの人は、たぶん簪ちゃんのよき師匠とか、

 理解者になってくれるかもしれない人よ」

 

「えっ? わ、私の…?」

 

一夏

「それって、どういう…」

 

楯無

「まあ、これは私に訊くより、本人に直接訊いた方がいいと思うわ…」

 

 そう言って楯無は、呆然とする2人を尻目にその場を去って行った。

 

楯無

「(簪ちゃん…ちょっと悔しいけど、あのキャプテンならきっとあなたに親身になって、

 今より成長する素晴らしいキッカケをくれるだろうと思うわ…

 かつて悩んで苦労した末にスーパーパイロットになったという、

 アセム・アスノ…あの人なら!)」

 

 その後、簪は先程言われた事が気になってキャプテン・アッシュに会って話し合ってみると、

 

『お前は昔の俺に似ているな』

 

 と言われ、キャプテン・アッシュ自身もかつては父親とライバルとの間の板挟みになって悩み苦しんでいた事を、そしてその当時の隊長にして恩師から『お前はスーパーパイロットになれ』と言われた事を、細かい所は伏せつつも語ったそうな。

 更にその光景を、友人であるハーロックは遠目に見ており、「昔は教わる側だったお前も、若者に道を示すようになったか」と、自分と似た立場や役割になったアッシュを…本名『アセム・アスノ』を、そう評してはクールな笑みで返されたとか。

 

 

 

   *   *   *

 

 

 その2:海賊の同志にして友との語らい

 

 

 時間は少し戻り、更識姉妹や一夏が話し合っているのと同じ頃、ハーロックはある一室でビシディアン首領のキャプテン・アッシュと、テーブルを挟んでイスに座って語り合っていた。

 

キャプテンハーロック

「さて…改めて、久しぶりだなアセム。

 いや、今はキャプテン・アッシュと呼んだ方がいいか?」

 

キャプテン・アッシュ

「いや…アセムでいいさ、お前といる今この時は」

 

 そう言ってニコやかに微笑むキャプテン・アッシュ。

 

キャプテンハーロック

「近頃はお互い、新しいクルーを…

 それも多少なりとも訳ありの若手を、迎え入れたようだな」

 

キャプテン・アッシュ

「そうなるな…しかもそっちの艦にいる連中の何人かの、知り合いを拾ったよ」

 

キャプテンハーロック

「ああ、さっき通信で聞いたな。それにバロノークから降りてきた際に

 うちの一夏達と、それに妹の簪とも再会を喜んでいたな」

 

キャプテン・アッシュ

「だな…生き別れた友や姉妹の再会とは、よかったというものだな。

 …だがまあ、俺の方はもう少し先になりそうだがな」

 

 そう言って微笑み、グラスの酒を少し飲むアッシュ。

 

キャプテンハーロック

「生き別れた、か…ふむ」

 

 アッシュの発言を聞いて少し訝しげにするハーロック。

 それはキャプテン・アッシュことアセム・アスノのかつて地球圏に置いてきた家族や昔の仲間達…その事を考えているのだろうか。

 

キャプテン・アッシュ

「で、こっちにはその姉妹の姉の方を拾っているんだが、なかなかくせのある奴でな…

 人当たりが良さそうで、それでいて猫のような奔放さや食えなさがある」

 

キャプテンハーロック

「ほお…それはまた随分とくせのありそうな新乗組員だな」

 

キャプテン・アッシュ

「しかも大概の事は器用にこなすが、妹関係では

 どうも結構不器用でシスコン気味みたいでな…」

 

キャプテンハーロック

「何だそれは…もはや器用なのか不器用なのか、よくわからん奴だな?」

 

キャプテン・アッシュ

「フッ…あいつはな、ちょいと極端なんだよ」

 

 そう言いながら微笑むアッシュ。

 

キャプテン・アッシュ

「それにそっちのアルカディア号も、また随分とにぎやかになったみたいじゃないか。

 さっきチラッと確認したが、若手の連中が多く入ったものだな」

 

キャプテンハーロック

「まあな。どいつも揃いも揃って一癖も二癖もある連中だ、

 頼りにもなるが若さ故の失敗や先走りも幾つかある」

 

キャプテン・アッシュ

「だろうなあ…俺も昔はそうだった。だからこそわかる」

 

 そう言ってまたグラスの酒を少し飲むアッシュ。

 

キャプテンハーロック

「だがな…その未熟なあいつらだからこそ、教え甲斐があるというものだ」

 

キャプテン・アッシュ

「ははっ、よく言うぜ」

 

 語り終えて自分のグラスの酒を少し飲むハーロックと、楽しそうに笑うアッシュの2人。

 

 この時2人の間には、穏やかな雰囲気があった。

 

 …だが、それは途端に切り替わる。

 

キャプテン・アッシュ

「ところで…今の連邦政府の、その腐敗具合についてはどう見る?」

 

 それを聞いた途端に、ハーロックの顔付きも変わる。

 

キャプテンハーロック

「ああ…全くひどいものだな、随分。

 しばらく大規模な戦乱も少なかったのでその平和ボケもあるだろうが、

 軍や他の直轄組織も少々たるんでいる所が幾つかあるし、マシな部隊があっても

 実力不足や関係各所とも連携が取れずに後手に回りがちだ」

 

キャプテン・アッシュ

「やはりか…。

 (ヴェイガンとの大規模な戦闘が勇気の日の武装蜂起までほぼなかったのは、

 俺達ビシディアンがそう仕向けたのもあるが…

 しかし練度の低さはそれのせいもあるのか、どうなんだ?)」

 

 内心で自分らがこれまでやって来た活動も原因になっているのではと懸念するアッシュだが、ハーロックに悟られないようにする。

 

キャプテンハーロック

「…なんせうちの新乗組員の台羽もな、以前に事故で母親を亡くした際には

 救助隊の職務怠慢も原因にあったらしい。

 それがなければ間に合っていたとも言っていた」

 

キャプテン・アッシュ

「そいつもまた、連邦とその下の組織の腐敗の犠牲者か…」

 

 アルカディア号の新乗組員にしてハーロックの新たな仲間である、台羽正の悲しき過去。

 その一因である連邦政府やその下部組織の闇を聞いて、アッシュの表情は曇ってしまう。

 

キャプテンハーロック

「連邦政府も昔は少しはマシな時期があったが、

 そのトップが今の代になってからは、ひどくなっちまったものだな…」

 

キャプテン・アッシュ

「今の代って…ああ、あのチビでチョビヒゲのかぁ」

 

キャプテンハーロック

「チビでチョビヒゲ…フッ、そうだな、まさにその通りだな…」

 

 アッシュからの言い方が笑いのツボにハマったのか、ハーロックは少々愉快そうなニヤけ顔になる。

 

キャプテン・アッシュ

「おいおい、そこまで来る程かよ…」

 

キャプテンハーロック

「すまんすまん。なにせ余りにもストレートに表していたものでな」

 

 そう言いながらハーロックは笑いを堪えるような素振りになり、落ち着いた所でグラスの酒を飲んだ。

 

 しかし、これを見てアッシュは怪訝そうな顔と気分になりながらも、「昔はもっとほがらかに笑っていたのになぁ…」と、少々さびしい気持ちになっていた。

 

 余談だがその同時刻頃、あるゴルフ場にいる低身長どころか低等身な黒髪でチョビヒゲの中年の男が、くしゃみをしていたとか。

 

 




ちなみに最後の方で触れた、チョビヒゲのおっさんとは、『宇宙海賊キャプテンハーロック』や『キャプテンハーロック ~次元航海~』の作中に出る、地球連邦の首相です…そう、あのゴルフやくだらない自己顕示欲的意見ばかりの、あの首相ですよ。
まあこんな連邦軍なら、キリタ長官(キャプテンハーロックのライバル的なキャラであり、後に味方に)の鬱憤も溜まるでしょうて…って、ブライト艦長やフリットもか。

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