Fate/Nilotpalagita Synopsis 【改訂版】 作:時雨
現の夢
腥風が吹き荒れ、多くの命が散り逝く戦場に、
多くの敵を相手にしながら広い戦場を駆け抜けた為か、その身に纏う灰色の外套は血に染まっており、やっとのことで
しかし、それでも、彼女は己の友人が
「…………」
「どうした。攻撃を止めて……降伏でもするのか?」
ふと、動きを止めた彼女に対して、凶悪なその顔にニヤリと笑みを浮かべ、せせら笑うように男は問いかけた。彼自身も、満身創痍であったが、構えている槍はしっかりと握られており、どことなく余裕を感じる。そんな男を見て、彼女はポツリと言葉を溢した。
「……今、ここで私が降伏したとしても、容赦なく君は私を殺すでしょう?そうすれば、彼は進んで君に挑むだろうから」
「ッチ。なんだ、ばれていたか」
「君は分かりやすいからね。申し訳無いけれど、彼と君を戦わせる訳にはいかないんだよね。……だから、君と刺し違えてでも、私はこの場所で君を
凛とした声で彼女は男にそう答えた。それを聞いた男は言葉を返すこともなく、不意に槍を突き出した。心臓を狙う穂先を彼女は片刃刀で素早く反らし、勢いよく上に弾いた。男が僅かによろめく。その隙に彼女は男の懐に飛び込み、胴を切りつけた。
パッと赤の飛沫が宙を舞う。苦痛に顔を歪めた男だったが、槍の柄を手の中で滑らせ、石突の上辺りを握るやいなや、横に振り抜いた。視界の外から槍の石突が迫るのを感じて、首をひねる彼女だったが、完全に避けることができず、急所であるこめかみの近くを石突に強打してしまった。
衝撃で身体が吹き飛び、痛みで意識が遠のく。今がチャンスと言わんばかりに、男は瞬時に間合いを詰め、槍の穂先を彼女の心臓にめがけて突きだした。胸に吸い込まれる様に突きだされた穂先は、そのまま━━━━。
「……ッ!!」
バッ、とそこで
汗が額を伝うのを無視し、確認するように自分の左胸に手を当てる。あんな夢を見たせいか、心臓は狂ったように脈を打っていた。
「あ、起きたのね……って。ちょっと、大丈夫?」
心配そうな声が、正面から聞こえた。慌てて顔をあげるとそこには、いつもお世話になっている保健室の先生が立っていた。一瞬、今見た夢のことを先生に聞いてもらおうかと考えたが、これ以上、迷惑をかけるわけにはいかないと思い直し、ゆっくりと首を縦に振る。
「……そういえば、先生。なんで、私は保健室にいるんですか」
「なんでって、あなた。覚えてないの?」
ふと、思ったことを口にすると、先生は呆れたような顔をした。それを見て、私が、すみませんと言うと、先生は「別に謝らなくてもいいわ」と優しく言葉を返してくれた。改めて私が保健室にいる理由を聞くと、先生は視線を反らし、少し言いづらそうに話し始めた。
先生曰く、私が廊下を歩いていたところ、
何を言っているのか分からないって?大丈夫、私も分からない。
その後、無事に保健室から解放された私は、一人寂しく商店街を歩いていた。何故、私がここにいるのかというと、親に連絡を取った際、不本意ながらも買い物を頼まれてしまったからだ。
今日見た夢や、学校であった事を考えると、今日は厄日なんだろうから、さっさと家に帰りたいと思ったが、仕方なくいつも寄っているスーパーに向かう。
夕方ということもあり、周りには帰宅途中の学生やサラリーマン、私と同じくスーパーに向かっている主婦などが歩いているのがちらほら見えた。今頃、買い物を頼まれていなかったら家でのんびりしながらゲームができたのに……。
面倒だなぁ、と思っていたそのとき。
────ガラッ
と、何処かから音がした。
何だろう?周りの人が上をしきりに青ざめた顔で指差している。不思議に思って、私も上を向いてみると……。
━━━━吊り下げられていた鉄柱が、自分に向かって落ちてきていた。
「えっ」
私は一瞬、頭が真っ白になった。落ちてくる鉄柱が、まるでスローモーションのようにゆっくりと動いて見える。それと同時に、今日見た夢が脳裏にフラッシュバックした。
「おい、早く逃げろ‼」
誰かが、そう叫んだ。逃げなければいけないのは頭では理解しているが、体がその場に縛りつけられたかのように固まって動かない。必死に体を動かそうとしているが、相変わらず指の一本も動いてくれず、悲鳴をあげたくても、口が開いてくれない。周りの人たちは「早く逃げろ」と遠くで騒いでいる。正直言って、
そして、ついに。
────ドシュ
何ともいえない鈍い音が、五月蝿かったこの場所に響く。自分の全身に激痛が走り、口から真っ赤な血が吐き出され、コンクリートの地面に真紅の花を咲かせた。そのとたん、女性の耳を
どうやら鉄柱は、私の体を貫いてコンクリートの地面に突き刺さっているらしい。実際、激痛に襲われている最中だが、微かに自分の体が浮いているのが分かる。簡単に言うと、串刺し状態になっている。
……なんだか某プロジェクトのようだ。いや、普通はトラックが主流なのだろうけれど。ちなみに、こうして呑気に考えているが、体は滅茶苦茶痛いし、口の中は血塗れで気持ち悪いし、周りは五月蝿いし、目が霞んでくるしでいろいろとまずい状態だ。遠くで、救急車のサイレンの音が聞こえるが、それもだんだんと聞こえなくなっていく。
(……あの夢って、結局こうなるんだろうな)
ふと、私は今日見た夢の内容を思い出す。
いつも、戦場にただ立っているだけの夢だったのが、今日に限って、槍を持った男と戦うという壮絶な内容だった。
(まるで、あのゲームみたいだったな)
フッと小さく笑みを浮かべた。久しぶりにハマってプレイしていた、とあるゲーム。まだ全部クリアしていないが、世界観がとても好きだった。
(また、やれるといいなぁ)
視界が、黒く染まる。その思いを最後に私は、意識を手放した。深い、深い、闇の中へと。
────おやすみなさい。よい夢を。
音が無い世界で、誰かがそう、呟いたような気がした。
皆さん、お久しぶりです。
久々に文を書いたので、変なところがあるかもしれませんが、楽しんでいただけると幸いです。