Fate/Nilotpalagita Synopsis 【改訂版】 作:時雨
深い、闇の中だった。
少しの間だったが、この世界で一緒に生活をしていた大人たちが私を囲むように立っていた。よく見てみると、その中には前世で関わったことがある人もいる。
しかし、そこで私はある違和感に気付いた。
そこにいる彼らには皆、生物にあるはずの
そして、私がそれに気付くやいなや、彼らは口々に罵倒を浴びせてきた。
「お前は不吉な子どもだ。親だけ死んで、何故お前だけが生きている」
「気味の悪い姿だ。本当にあんたは人の子なの?」
「■■■■ってなんか不気味だよね。何か言っても表情一つ変えないし」
「■■■■、何でこんなこともできないの。将来、困るのは自分なんだよ?」
……あぁ、五月蝿いな。だからなんだ、もう過去のことなのに。どうしてこうもしつこく夢に出てくるのか。君らの言うことはもう聞き飽きたし、
普通は、この世界で死んだ母に罵倒される夢を見るのだろう。「何で私が死んで、お前は生きているんだ」と、そう言われて恨み言を散々吐かれるのだ。
今はまだそのような夢は見ていないが、いつか見るときがくるのだろうか。
━━━━願わくば、どうかこの夢が早く覚めますように。
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意識がゆっくりと浮上する。
私が目を開けると、灰色の見知らぬ天井が視界に広がった。やけに重い体を起こして回りを見渡してみると、なんとも質素な部屋がそこにあった。
この部屋の主は今はいないようで、水を打ったようにしんと静まり返っている。
「……というより、なんでここにいるんだろう」
森で、過呼吸のようなものを起こしてしまったのは覚えているのだが、その後のことはさっぱり覚えていない。
きっと、森で会った彼が私をここに運んで、介抱をしてくれたのだろうと勝手に自分でそう解釈し、体を起こしたときに捲れた布を再び自分にかける。
……もし、その予想が外れていたら、いろいろと詰んでしまうが。
自分の予想が当たっていることを願いつつ、おとなしく待っているとカタン、と戸が開く音がした。どうやら誰かが帰って来たらしい。
しばらくするとミシミシと床が軋ませ、倒れる前に見た彼が部屋に入ってきた。
「お、起きたか。調子はどうだ」
「大分よくなりました」
「そうか」
「迷惑をかけてすみません」
私が頭を下げて彼にそう言うと、気にするなとでもいうように笑って私の近くに座る。やはり彼が私をこの家に運んできたようだ。
予想が当たったことに安堵しつつ、介抱をしてくれた礼を彼に伝える。
「介抱をしてくれて、ありがとうございます」
「どういたしまして。いや、それにしてもすまないことをしたな」
彼はばつが悪そうに頭を掻く。何かされたっけ?と疑問に思っていると、相手はとても言いづらそうに口を開いた。
「あー、その、親のことだ。まさかあんな反応をされるとは思っていなかったからな」
「…………」
「そう怖い顔をするな。だから、悪かったと言っているだろう」
「……怖い顔をしてるつもりはないんですけど。親のことは、少し動揺してしまっただけです」
あの時は不意に聞かれたから、驚いてしまっただけで決して、地雷が爆発したのではない。誰がなんと言おうと、違うったら違うのだ。
「そ、そうか」
彼は少しどもりながら、私から目をそらす。……そんなに怖い顔をしているのだろうか。前世ではよく仲の良い友人に、「某英雄ではないけれど、目で人を殺せそうなぐらい絶対零度の目をしているときがあるよね」と言われていたが、そんなに冷たい目をしているつもりはない。
ともかく、親に関することはある程度、心の準備はできている。言葉にはしていないが、恐らく彼は私が何故あんな反応をしたのか気になっているはずだ。私はひとつ、大きく深呼吸をした後にゆっくりと言った。
「親は死にました。つい、最近のことです」
それを聞いて彼は一瞬、目を見開いたが、すぐさま納得したかのように頷く。
「……やはり、そうだったか」
「えっ」
彼の言葉に、私は思わずそう返してしまった。まさか、気づかれているとは……。
「誰だってあんな反応をされたら、さすがに察するだろう。それに、お前をここに運んで来るとき、少し魘されていたからな」
呆れたような顔で、彼は私にそう言う。確かに、いくら鈍感な人でも聞いたとたんに過呼吸を起こされたら気づくか。おまけに、寝ていた時に魘されていたのなら尚更。
そう考えに耽っているうちに、私の眉間にしわがよっていたらしい。彼が自分の眉間に人差し指をトン、と軽く叩いて「しわがよってるぞ」と私に教えてくれた。
「子どものうちからそんな顔をしていると、将来気難しい顔になるぞ」
「余計なお世話です」
気難しい顔って、どんな顔だよ。心の中でツッコミをする。考え事をしていると眉間にしわがよるのは、前世からの癖だから、しょうがない。
その後、お腹は空いていないか?と聞かれたので、正直に空いてます、と伝えると果物を一つこっちに投げて渡してくれた。驚いて彼の顔を見ると、「なんだ、食べないのか?」と言われた。いや、食べるけれど……。
じっと、果物を見る。それは、前世でよく食べていた林檎だった。……古代インドって、林檎あるんだね。初めて知ったよ。無花果とかアルブカラがあるのは知っていたけれど。というか、そのまま渡してきたってことは、丸かじりしろっていう意味かな?
……まぁ、そのままでも食べれるし、いいか。
ガブリとそのまま林檎をかじり、咀嚼する。赤く熟れたそれはとても甘く、懐かしい味がした。