【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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継承(インヘリテンス)

少女(シアン)の歌と肉体による藍を織りなす糸
それは(GV)の生命と彼女の万物の女神(パーシテアー)としての力を縫い止める
少女と謡精(モルフォ)の魂をその身に抱き留め(拘束し)、新生せし蒼き雷霆(生きた宝剣)


謡精と一つになって
第一話


 僕はシアン達を(記憶)の世界へと送った後、今の僕自身の状態を確認した。

 簒奪の弾丸、パンテーラの攻撃、そして「終段(ついだん)」の反動が完全に回復しており、紫電達との決戦の時の、ストラトスさんの運命の捕食者(デスティニーファング)による左腕の喪失も元に戻っていた。

 そして、僕は波動の力で鏡を形成し、自身の全身を見た。

 僕の着ていたフェザーの制服は既にボロボロになっており、僕の髪の色が、金色からシアンと同じ紫色へと完全に変化していた。

 そして瞳の色も、青色から赤色に変化していた。

 あの時、シアンは自身の亡骸を蒼き雷霆(アームドブルー)で分解し、僕の左腕や出血分の喪失を補う為に使っていた。

 その結果が、今の僕の髪と目の色なのだろう。

 

 そして、次に僕の能力なのだが……どうやら蒼き雷霆以外にも、シアンの能力である電子の謡精(サイバーディーヴァ)が、いや、未来のシアン達の能力である素粒子の謡精女王(クロスホエンティターニア)が扱えるようになった感覚が僕にはあった。

 実際に、背中から僕の大好きなシアン色の翼を展開出来たのだ。

 今の僕には未来のシアンから能力共有された気配が無い。

 それなのにこの能力が扱えるという事は……つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 恐らく、シアンが僕を蘇生させる際に、自身の亡骸を僕の喪失部分を補う為に全てを使った事が理由だと思われる。

 つまり、今の僕は文字通り魂以外完全にシアン達と一つになっている状態にある。

 だけど、シアン達の魂は、本人がその気になれば直ぐにでも僕から離れられる状態にある。

 これは単純に、素粒子の謡精女王の中に蒼き雷霆が内包されている為、魂だけの状態でも単独でその存在を維持できるからだ。

 だからこそ、シアン達を夢の世界へと送ったと同時に協力強制の枷も施したのだ。

 二度と僕から離れない様にする為に……何らかの外的要因でシアン達と僕が引きはがされない為に。

 

 そしてこれは、アキュラの妹のミチルの為でもある。

 この能力の大本は彼女の物なのである。

 それが何らかの要因で彼女に戻ったら、恐らく強すぎる能力に押しつぶされ、その魂諸共飲み込まれ、神園ミチルと言う存在はシアンの記憶の中だけの物となるだろう。

 僕自身がこの能力を引き継いだ時に、その事を確信していた。

 では何故、僕自身は大丈夫なのか?

 それは僕がシアン達の能力を引き継いだ理由と同じだ。

 僕自身が生きた宝剣としての役割をシアンから引き継いだ事、そして、能力…シアンが僕を消し去る訳が無いと確信できるのも理由の一つだ。

 シアン達はミチルの事を内心敵視している。

 だから、この事を知れば嬉々としてミチルを取り込み消滅させて、僕を取り合うライバルを減らせると実行するだろう。

 

 シアン達が目覚めて一息入れられる状況になったら、ミチルは僕じゃなくてアキュラが好きなのだという事を伝えておこう。

 流石にこれが理由でミチルを消滅させてしまう訳にはいかないし、アキュラとも再び敵対関係になってしまうのは絶対に避けたい。

 アキュラ、すまない…僕は君達の(こじ)れた関係を加速させてしまう事になりそうだ。

 ノワもそれを止める気配が一向に無いし…まあ、彼女は悪魔なのだから、そう言った事も好みなのかもしれないけれど。

 後気になる問題は…「詩魔法」を僕自身が扱えるかという問題か。

 試しに、今倒れ伏している紫電達に使ってみる事にする。

 勿論紫電達を死なせる訳にはいかないので、使う詩魔法も当然決まっている。

 それは命の温もりを伝え、小さな傷さえも見逃さず、癒す為の詩魔法。

 

「Wee ki ra murfan near en crushue. Wee ki ra selena sarla sos yor.」

 

 その詩魔法の名前は「EXEC(エグゼグ) HYMME(ヒュム) LIFE(ライフ) W(ウォーム):R(リフレッシュ):S(シャワー)」。

 この詩魔法は段階的に強化された三つの回復効果を持った詩魔法が統合された物。

 それぞれ弱い順に説明すると、「ライフウォーム」「ライフリフレッシュ」「ライフシャワー」の順に効果が変化していく。

 そして「ライフリフレッシュ」から蘇生効果が追加されるようになり、その効果が詩魔法を歌っている間、一定間隔で永続して効果を発揮する。

 それ以外にも、これは本来この詩魔法の機能には無いのだが、シアンの能力が素粒子に影響する関係上、無機物にもこの回復効果や蘇生効果が適応される。

 実際に、先の戦闘での床や壁等の戦闘痕が綺麗サッパリ無くなっており、修復されていた。

 僕自身のフェザーの制服や壊れてしまった「手作りのペンダント」も直っておりこの「アメノウキハシ」の外に設置されていた衛星「星辰」も修復されたようだ。

 紫電達もボロボロだった状態から、完全に何事も無かったかのように傷も着ていた服も直っていた。

 

 どうやら、僕自身も詩魔法を扱えるらしい。

 だけど、詩魔法は基本女性(レーヴァテイル)特有の物のはず…いや、他に詩魔法が出てくる作品があった。

 それに出てくる()()()()()()()()()()()()があれば誰でも詩魔法を行使できる事を思い出した。

 つまり、この機械のイメージのお陰で僕は詩魔法を行使出来る。

 厳密に言うと使われている言語が違うと言う問題が出てくるが、第七波動(セブンス)はあくまでイメージや意思の強さが重要。

 極論を言えば、僕が出来ると思えば出来るのだ。

 そして、これまでの出来事を隠れて目撃していた存在が居た。

 

「あ、あの! た、戦いは、お、終わったのですか?」

「君は……弱気な方のエリーゼか。うん、少なくとも、紫電達との戦い、そしてパンテーラとの戦いも終わったよ。もし良かったら、紫電達を介抱する手伝いをして欲しい。今この「アメノウキハシ」の下の「オノゴロフロート」で、正体不明の機械群と僕の仲間達が戦闘を継続している状態なんだ。その上、最終防衛結界「神代」も機能を停止してしまっている。だから、彼らの力を借りたいんだ。……それと、僕は君達を害するつもりはもう無い…だから、そうやって緊張する必要はないんだ、エリーゼ」

「そ、そうですか……分かりました。先ずは気絶している私達を起す事にします」

「それじゃあ、僕は紫電から介抱する事にするよ」

 

 弱気なエリーゼと協力して、僕は紫電達を介抱した。

 その際、デイトナと一悶着が発生しかけたが、僕は悪くない。

 奴は僕のシアンの事を未だに引きずっているのが悪いんだ。

 それもメラクにたしなめられ、僕は紫電達から事情を説明するように求められた。

 

「で、ガンヴォルト? 僕達が気絶している間、何が起きているのか説明してくれないかな?」

「そうだね紫電。実際に僕が説明したい所だけど……それよりももっと確実で、信用も得られる方法がある。エリーゼ、君の見た記憶を映像化させてもらうけど、いいかな?」

「私のですか? ……分かりました、私のでいいのでしたら、是非お願いします。私は先の戦いであまりお役に立てませんでしたので……」

「じゃあ互いに同意を得られた事だし、始めさせてもらうよ」

 

 そしてあの戦いの後、何が起こったのかをエリーゼの記憶を通じて紫電達は把握した。

 僕とシアンがパンテーラに撃たれ、シアンが息を引き取り、僕がボロボロの状態になりながらもパンテーラを撃退した事を。

 そして、シアンと僕が文字通り一つとなり、生きた宝剣としての役割を引き継いだ事も。

 そして詩魔法の存在を知り、「アメノウキハシ」や衛星「星辰」が修復されていた事を知った時、メラクがある事に気がつき、それを僕に尋ねたのだ。

 

「ガンヴォルト、ひょっとして……奇跡の海域を作り出したのは君達?」

「……その通りだ、メラク」

「なんだと? ……発見当時十年は持つ海底資源を、君達は作り出したというのか?」

「信用できないなら、その当時の記憶を映像化するが……」

「いや、必要ない…事実、そこに資源が蘇り、実際に僕ら皇神が活用している。衛星が直っている事といい、その事を考えれば確かにあり得る話だ。……それよりも、もっと重要な事もあるしね」

「オノゴロフロートを攻めている正体不明の機械群の事に、「神代」が解除されちまってる事だよな? 紫電」

「その通りだよ、デイトナ。……この正体不明の機械群に「神代」の件……ガンヴォルトは把握しているのだろう? これらを引き起こした組織の正体を」

「紫電やメラクだって、把握しているだろう? ……そう、二人が思っている通り、これは多国籍能力者連合「エデン」の仕業だ」

「そしてパンテーラは、その組織の回し者で、スパイだった。僕も気になっていたから意図的に泳がせていたんだけど……僕の勘は正しかったという訳か」

「申し訳ありません、その事に私が気がついていれば、アキュラ様に止めを刺す事を止めていたのですが……」

「「「「「「「「……っ!!」」」」」」」」

 

 そうして互いに情報交換をしていたら、この大広間にとある人物が侵入していた。

 そう、ノワが何事も無かったかのように僕の隣で当たり前の様に佇んでいたのだ。

 僕はどうやって彼女がここに来たのかを把握する為に、シアンの能力の、波と電子の揺らめきを感じる能力を「アメノウキハシ」全体に展開した。

 そうしたら、「アメノウキハシ」に見慣れぬ小型の宇宙艇らしきものを感知した。

 恐らくこれに乗ってノワはここに駆けつけて来たのだろう。

 そして今気がついたが、僕らが居るこの部屋の前に、とある女の子の気配を感じる。

 だけど、如何してここに彼女が? 僕はノワに尋ねる事にした。

 

「ノワ、どうしてここに!? それに……ミチルがこの部屋の前に居るのは、一体どういう事なんだ?」

「……「神代」が解除された際に、とある能力者達がミチル様を攫おうと画策したのです。故に、小型宇宙艇(コスモアキュラー)にミチル様を連れて乗り込み、ガンヴォルトを当てにこの場所まで逃げて来たのです」

「……僕が紫電達に負けていたら如何していたんだ」

「ガンヴォルト、貴方の実力はアキュラ様が誰よりも信用しております。故に、ここに逃げ込めば大丈夫であると私は確信しておりました」

 

 ミチルが攫われそうになったのは本当なのだろう。

 それにアキュラが僕の実力の事を誰よりも信用している事も。

 だけど、それ以外に何らかの方法で僕達の戦いの様子を把握していたのだろう。

 彼女を謡精の目で見ると、彼女の尻尾は何所か得意げに揺れていた。

 まあ、これ以上の詮索は不要だろう。

 

「そう言う事にしておこうか、ノワ。……少なくとも、僕達はもう互いに争う事は無くなったから、ここにミチルを入れても大丈夫だ」

「……所で、ミチル様がここに居る事を良く把握出来ましたね、ガンヴォルト? その変化した髪の色と、何か関係でもあるので?」

「詳しい話は後でするけど、シアンの能力を僕は引き継いだんだ。その能力で、把握させてもらった」

「……分かりました、ではミチル様をこの部屋にお連れさせて頂きます」

 

 そうしてノワは紫電達を置いてけぼりに、部屋の前に居たミチルを迎えに行った。

 突然現れたノワという存在に、紫電達は困惑を隠せないようだ。

 まあ、これは僕も既に通った道だ。

 だから紫電達も早く彼女の理不尽さに慣れて欲しい。

 そうして出て来たミチルに、デイトナが反応した。

 どうやら、シアンと見た目と雰囲気が良く似ている彼女に興味を示したようだ。

 まあ、明確に僕はシアンを僕の物だと明言したので、枕替えしてくれるのならば大歓迎だ。

 まあ、ミチルはある意味シアン以上にいけない所があったりするし、アキュラと言う超が付く程のシスコンを相手にしなければならないと言う問題もあるが。

 

「そういえばガンヴォルト、貴方にはもう一つ要件が御座いました。……新しいお召し物を、用意させて頂きました」

「それは……! モニカさんが言っていた、新型のプロテクトアーマーじゃないか!!」

「ええ、ここに逃げ込む直前に完成していたので、序に拝借させてもらったのです」

「抜け目が無いな。この事をモニカさんは?」

「把握しております」

 

 その事をモニカさんの能力による通信で尋ねたら、確かに把握している事を伝えられた。

 寧ろ、僕の無事を確認出来てモニカさんも喜んでいる。

 そして、こちらの状況を説明し、下で未だ戦っているアキュラ達とも情報を共有し、僕はこの新型のプロテクトアーマーを「波動の力」を用いて瞬時に着替えた。

 この装備(新型のプロテクトアーマー)は以前のフェザーの制服よりも軽く、それでいて丈夫に作られている様だ。

 僕はこのミッションに出撃する前に、この装備のデータを把握していた。

 この装備は、強度、耐性、靭性等を僕の第七波動(セブンス)で変化させることが出来、そして、アシモフの弾道操作技術も組み込まれており、簒奪の弾丸(グリードスナッチャー)にもある程度対策出来る。

 そうして僕がこの装備の事を蒼き雷霆で操作しながら把握していたら、僕の見せた夢からシアン達が目を覚ました。

 その事に僕は喜び、僕は僕の中に居る二人に対して、シアン達の能力を用いたテレパシーで声を掛けた。

 

(気がついたみたいだね、シアン、モルフォ……)

(私は……っ! GV!! 良かった、本当に無事で良かった)

(GVィ……アタシ、アタシ……!)

(……心配を掛けてゴメン、それと、僕を助けてくれてありがとう)

 

 二人は実体化して僕に抱き着いてきた。

 そして僕はシアン達を一緒に抱きしめ、互いに喜びを分かち合った。

 そうして、多国籍能力者連合「エデン」との戦いに必要な役者が揃い、僕達は紫電達と協力し、この新たな戦いに身を投じる事となったのであった。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。





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