【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる   作:琉土

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第十二話

 僕は狂愛の謡精女王(シアン)が戻ったのを確認した後、この戦闘による周辺被害の確認をしながら、その被害を詩魔法(ライフシャワー)で治しつつ降下した。僕の直下には、戦っていた皆が揃っていた。

 そしてこの場に着陸し、全員の無事を確認した後、テセオに尋ねた。勝負をやり直す必要はあるのかどうかを。元々、彼女の乱入のお陰でそれがうやむやになってしまったのである。この確認は間違いなく必要であるはず。

 

「やり直す必要は無いっスよ、今回のテセオさんの生放送は過去最高の記録を叩き出したんでww…それにテセオさんの切り札で皆に迷惑かけちゃったし、ガンヴォルトの実力(じつりき)は十分に見せてもらったし、これ以上は不毛だとテセオさん考えたんで、もういいかな~っつってーww」

「そうか…分かったよ、テセオ。…これでもう試しの儀は終わった。パンテーラ、これで話し合いをする為の条件は満たされたと認識していいかな?」

「そうだねぇ…おっと、この愛にあふれる姿を戻さなくては。…ええ、その認識で問題ありません。私もニケーも貴方の事を認めていますので」

 

 パンテーラは男の姿から元の少女の姿へと戻りながらこう答え、その後、テセオのやらかした事を謝罪しつつ、この場に居る全員による話し合いの場を当初の予定通り、飛天内部で設ける事となった。

 その内容は、この試しの儀でも触れられていた、能力者の居場所についてであった。

 

 元々エデンは「能力者こそが新たな時代を築く新人類であり、第七波動(セブンス)を持たない旧人類は滅ぶべき存在である」と標榜し、能力者だけの理想国家の設立を目指していた組織である。

 だけど、旧人類を滅ぼすのに必要なシアン達の力が使えず、借りに使えたとしても旧人類とほぼ相殺される形で能力者も犠牲となる事が試しの儀の最中に判明した為、この方法を取れなくなった。

 

 だからこそ、こうして話し合いの場を設ける事となったのだとパンテーラは話した。旧人類が滅ぶべき存在であるという結論に至った理由…それは彼らエデンの構成員の大部分が無能力者達に虐げられてきたからである。

 つまり、無能力者を排除せず、尚且つ能力者達の安全で、飢えもしない居場所を確保する。この方法を話し合えばいいという訳だ。

 

 …普通に考えるならば、無理難題にも程がある。この近未来の地球上ではもう人の手で開拓されていない所など無い。彼らの拠点であるベラデンと呼ばれている要塞も、元々はウズベキスタンの首都であるタシケントを乗っ取り要塞化した物。元々は無能力者の国であり、居場所だった。

 

 そう、酷い話ではあるのだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のである。だからこそエデンは旧人類を殲滅しない限り、能力者達の安全な居場所は得られないと考えていたのだろう。そして色々と計画していたものが僕の手で手詰まりとなった。

 だからこそ彼女達は助けを求め、縋る思いで敵対していた僕に対して話し合いを持ちかけたと考えている。

 

 紫電とアシモフが僕の方に顔を向けている。この無理難題にどう立ち向かっていくのかと、この二人は気になっている様だ。彼等もまた能力者なのだから、僕が考える方法が気になるのは当然と言える。…まず、実現する手段を開示しようと思う。こう言う事は、口で言うよりも直接見せた方が確実だからだ。

 

 僕達は再び表へと出て、その方法をテストも兼ねて実演する事となった。とはいえ、この方法は詩魔法…いや、「ヒュムノスエクストラクト」*1を用いるので、今までとは勝手が違うのだ。何しろ、今まで詩魔法として使っていたのは、「ヒュムノスワード*2」と呼ばれる物であったからだ。

 そして今回使うヒュムノスエクストラクト、その中でも難易度と要求される想いの力が恐ろしく高い「EXEC_with.METHOD_METAFALICA(メタファリカ)/.」。

 アルトネリコ2における最終目的、移住先の大地「理想郷(メタファリカ)」を生み出すヒュムノス。

 

 恐ろしい難易度と言われる所以…それは、ヒュムノスエクストラクトは機械的な挙動をするが故に、詩の効果を実現する為に要求された想いを得られるまで歌い手から想いを搾り取るからだ。それこそ、足りなければ歌い手の全ての生命力を想いに変換してまでも。

 それと、大勢の人々の想いを一身に受け入れる必要がある事に加え、この詩は二人一組で謳う必要がある。その為の訓練所として、インフェルスフィアなんて物もあったくらいなのだ。だからこそ大昔に一度失敗し、本編でも二度目の失敗をしたのもあって、実現するのに長い長い年月を要する事となったのである。

 

 つまり、さっき出現させていた(アルトネリコ)に加え、理想郷の核となるインフェルピラも必要になる。とはいえ、流石に馬鹿正直に条件を満たす必要も無いだろう。第七波動で再現する関係上、塔無しで詩魔法が歌えたりするので、上記の難易度は緩和されているはず。

 …その確認も兼ねて、僕達がまずは試すのである。いきなり命のリスクがあるかもしれない方法だけを開示してパンテーラ達に丸投げすると言うのは無責任だろう。

 

 そう言う訳で、まずは塔とインフェルピラをシアン達が紡ぎだした。但し、サイズは飛天よりも小さい状態で。あのサイズでは凄まじく目立つ上に、あの戦いの後、最終防衛結界「神代」が復旧した事もあり流石にまたあの大きさで塔を紡ぎだす訳にもいかなかったからだ。第七波動はこういう所で融通が利くから非常に助かる。

 それに、第七波動によるヒュムノスエクストラクトの挙動も調べる必要もあった。何しろここがそのままであった場合、下手をすれば命に係わる問題があるからである。まあ、エリーゼが居るから最悪死んでも何とかなるとはいえ、そういったリスクの確認は絶対に必要だろう。

 

「……あの二つの構造物が必要になるのかい? 正直、特異点での戦いの時とさっきの戦いの時の光の柱を思い出して身震いしてしまうのだけれど」

「……ああしなければ紫電達に負けを認めさせつつ生かす事が出来なかったんだ。それに、あの使い方は本来の使い方じゃ無い。本当の使い方は、今から見せる方法なんだ。それにこの方法は前に僕が言った代案でもある。行くよ、シアン、モルフォ……パンテーラ達に道を示す為に、そして、能力者と無能力者が手を取り合える為に必要な種を撒くために、力を貸して欲しい」

『『まかせて、GV! (アタシ)達は雷霆の奉仕者……貴方の望みは、(アタシ)達の望みその物だから!!』』

「ありがとう、二人共……塔とインフェルピラの維持は僕が担当するから、コントロールを僕に回して欲しい。二人は、詩魔法を頼む。……ヒュムノス(ヒュムノスエクストラクト)を行使するのはこれが初めての試みだ。だからモルフォ、支持者の想いは余裕を持って多く集めて欲しい」

『了解よ、GV。アタシの支持者は紫電達との戦いで、未だに大勢いる事が分かっているわ。だから歌いましょう、この詩を…(能力者)達の理想郷を作る為の第一歩として!』

 

 こうして僕は塔とインフェルピラを維持し、シアン達は詩を…理想郷を創造する詩を歌う事となった。二人は互いに背を向け重ね合わせ、手を繋ぎ歌い始める。先ずは僕達が思い描く理想郷を、この場に出現させるのだ。

 僕達の描く理想郷…それは転生前に僕が居た世界の、僕が住んでいた街の再現である。

 

『Was yea ra chs leeya fhyu en xest eazas yanyaue yor.』

『Wee ki ra chs wasara dor en xest eazas yanyaue yor.』

『『xest 1x1101101001100110111000 >> syec mea』』

 

 ヒュムノスが、理想郷の創造が始まった。二人の詩の旋律が、インフェルピラに集うモルフォの支持者達の想いが束ねられていく。転生前の僕の住んでいた街が、あの思い出の小高い山が生み出され、形となっていく。

 そして、シアン達が歌い終わったその時、インフェルピラを核に僕の記憶の中だけにあった転生前の街並みが浮遊島と言う形でその姿を現した。

 

 僕がパンテーラに示した新たな道。それは地球上で居場所が無いならば、こうして新たに創造すればいいという物だった。そして今回の大地の、理想郷(メタファリカ)の創造はあくまでテストの様な物。どうやら第七波動によるヒュムノスは詩魔法と同様に、かなり融通が効く事が分かった。今回の創造は、大半がモルフォの支持者達の想いのみで出来た物。それも、三割程度の人数で紡いだものだ。

 そして、束ねた想いに対するコントロールも問題は無く、後は紡がれた浮遊島と永続性の確認…大地の心臓*3の確認のみであった。

 

 この様子を見ていた僕達以外の全員は、この現象に驚愕し、創造された浮遊島を茫然と見つめていた。何しろ一つの街と小高い山を内包した島が浮いているのだ。何も反応が無いという事はあり得ない。実際に、パンテーラ達の表情は新たな希望を、道を明確に見つけ、こうしてその結果を目撃した事で清々しい笑顔の表情をしていた。

 

「ガンヴォルト……これが、貴方が私達に示した新たな道、新たな希望なのですね」

「……今の地球上、能力者が誕生する以前から、もう人の手が入っていない場所は無い。悲しい現実だけど、最初から能力者に本当の意味で居場所なんて無かったんだ。だから僕はこうして直接的な意味で、居場所を作ればいいと考えた。エデンは能力者こそが新たな時代を作る新人類と言っていただろう? だから新人類らしく争わずに、無能力者から居場所を奪う事無く、理想郷を創造しよう。その為ならば僕達も協力は惜しまないつもりだ」

報恩謝徳(ほうおんしゃとく)*4、僕達は決してこの恩を忘れはしない。新たなる道をこうして示してくれてありがとう、ガンヴォルト」

「ありがとうございます、ガンヴォルト…エデンの巫女として不甲斐ない私ではありますが、貴方のお陰でこうして希望の光を見出す事が出来ました」

『二人共? 安心するのはまだ早いわよ?』

『そうだね…まだあの浮遊島の安全の確認とかもしないといけないし、今回の創造はテストなんだよ? 私達もその時は手伝うけど、本番の時はパンテーラ、貴方を中心に歌うんだから』

「……わっ私がですか!? ですが、私にはシアンさん達みたいな力は…」

「姉様、だからこそGVは兄様との戦いの時に協力強制を教えてくれたのでしょう? それに、姉様はエデンの巫女なのですから、エデンの皆の想いを束ねて理想郷を紡ぐ適任者は姉様が一番だと私は思うのです」

『アリスも他人事みたいに言ってるけど、貴女も私達の時と同じ様にパンテーラと一緒に歌うんだからね?』

『この詩魔法…ヒュムノスはアタシ達がさっき歌った時みたいに、互いに同調する必要があるのよ。パンテーラと同調するのに最適な相手はアリス、貴女以外に居ないわよ?』

「私もですか…ですが、私はエデンの皆を一度は裏切ってしまった身です。とても歌い手に相応しいとは…」

「それについてなんですケド…テセオさんの生放送の時の映像経由でアリスとパンテーラが和解してる映像流れてたんで、大丈夫だと思うっス。と言うか、パンテーラに妹が出来た事に肯定的な意見しか出て来てないんで、問題は無いと思うっスよ? エデン専用掲示板のスレでも、テセオさんが弄るまでも無く、肯定的なスレしか無いし、寧ろ皆ノリノリで受け入れてる感じっスね。「パンテーラ様なら仕方がない」って感じで」

『……まあ、二人共理想郷を紡げるか不安なのは分かるわよ? アタシ達だって、GVが出来ると信じていたからこそ、こうやって紡ぎだせたんだから』

『一度や二度くらい失敗したっていいの。こうやって結果が出せた以上、諦めなければ必ず夢は叶う事が分かったんだから』

「…エデンの能力者を相手に協力強制をする場合、パンテーラとアリスが一番の適任者だと僕も思う。エデンの中で能力者の理想郷を目指そうとしていた中心人物は、間違いなく貴女達なのだから。…皆、先ずはあの浮遊島に行こう。上手く行っていればあの島は、僕達三人が思い描いた理想郷になっているはずなんだ」

 

 僕達は飛天に乗り込み、浮遊島へと向かった。そして、浮遊島の街付近にあった小高い山の平な部分に飛天を着陸させ、僕達は街へと足を運んだ。そこには、転生前の時と何も変わらない、今の時代では古臭く、のどかな街並みが広がっていた。街に入ってから、特にジーノやテセオにシャオ、そして珍しくメラクが関心していた。なぜならば、この街の無人のレンタルビデオショップやゲームショップでは、この世界では見慣れぬ娯楽作品が大量に存在していたからだ。

 

 皆はこの街並みを見て不思議に思っているようだ。「どうしてこの見慣れない、古臭い街が理想郷なのだろう」と。僕はアシモフ達には既に簡単に話をしていた事を、この世界に転生した事をこの場に居る皆に話し、そしてこの街は、僕の転生前に居た世界にあった場所であると明かしたのだ。

 普通ならば、まず僕の言う転生等と言う戯言を信じる事は無かっただろう。だけど、こうして皆にとって見慣れぬ街を創造してみせた。

 

 だからこそ、皆は僕のこの話を信じてくれた。そうして説明している内に、僕達はとある場所へとたどり着いた。そう、転生前の僕が住んでいた家に。この僕の住んでいた家から、膨大な第七波動を感じたからだ。つまり、この場所に大地の心臓があるのだろう。

 皆で家に入る為に僕は玄関を開けた。その廊下は僕の記憶通りの、何一つ変わらない、僕やシアン達にとっての、何時も通りの光景だった。僕は先に玄関から上がり、リビングへと足を運んだ。そこには、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その階段の先から、あの膨大な第七波動を感じる。この先に、大地の心臓があるのだろう。僕は皆を呼び、この階段を目指そうとしていた時、ロロがリビングにあったある物を見て驚いていた。

 それは、僕の家族全員が映っていた写真であった。つまりロロは、黒髪姿の自分と瓜二つの姿が写真の中に存在していたから驚いたのだ。

 

『ちょっとガンヴォルト! この写真、一体どういうことなのさ! これじゃあまるで、僕がガンヴォルトと結婚しているみたいじゃないか!!』

「……懐かしいな。ロロ、この写真は、僕の家族皆が揃った写真なんだ。結婚している訳じゃあ無く、この写真に写っている君と瓜二つな女の子は、僕の妹だったんだ。」

「ガンヴォルトの妹…だと?」

『……因みに、この写真の女の子は誰と結婚したか分かったりする?』

「ちょっと待って欲しい…僕の記憶が確かなら、確か廊下の物置に妹の結婚式の時の写真があったはずだ。……よし見つかった。ロロ、この人が僕の妹の結婚相手なんだ」

「これは……! 俺と同じ姿をしているだと!?」

『あ…アキュラ君と同じ姿をした男の人と結婚してたの!?』

 

 写真に写っていた(あきら)侶露奈(ろろな)の結婚式の時の写真を見て、二人は驚きを隠せない表情をしていた。…今にして思えばこの二人は、アキュラとロロの並行世界における、同位体と呼ばれる存在なのだろう。そして、アキュラ達にこの二人の顛末についても聞かれたので、正直に答えた。

 侶露奈は結婚相手の明に、その子供や孫に囲まれて老衰で息を引き取り、その後を追う様に、葬式が終わって翌日に明も同じように息を引き取った事を。

 

 この写真を見て、僕の話を聞いて、ロロは何かを決心したようだ。そしてアキュラは、何事も無く無表情を装っていたが、その動揺は歩き方を見れば一目瞭然であった。まあ、ロロを作ったのはアキュラなのだから、その複雑な心境が分からない訳では無い。

 そう言ったやり取りの後、僕達は地下へと続く階段へと足を運んだ。長い長い階段を下りた先に有った物。それは僕の予想通りの、大地の心臓の姿がそこにあった。

 

 大地の心臓には本来、人格が存在しているのだが、その気配が無い。代わりに、僕やシアン達が干渉して操作できる事を確認することが出来た。塔と一体化するように、この大地の心臓と接続する事で、浮遊島と一体化する事も出来る。それに加え、この浮遊島を操作することが出来、分解し、消滅させる事も出来る様だ。

 …そんな僕達の様子を、シャオは希望に満ちた表情で眺めていた。

 

(凄いよ、GV! これなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()! エデンの偽りの楽園による地獄が齎される事は、もう絶対にあり得なくなった! この世界なら、本当の能力者の楽園がきっと出来る!! 僕の安住の地が、漸く見つかったんだ!! ……でも、油断は出来ない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それに、先の戦いでの膨大な第七波動の衝突は、世界を越えて彼女に伝わっている可能性は十分にあるんだ。)

「GV、話があるんだけど、聞いてもらってもいいかな? (GVは転生してこの世界に来ているんだ。だったら、僕の第七波動による()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()*5に対して理解を示してくれるはず)」

「シャオ、どうしたんだ? そんな改まって」

「実は…」

 

 シャオが僕達に何か話を切り出そうとした時、この島全体を揺るがす大きな衝撃が僕達を襲った。念の為、外で待機していたアシモフを始めとしたフェザー組の皆がいたので、外で何が起こったのか、モニカさんの通信経由で説明をして貰った。

 それによると、島の上空に謎の大きな穴による空間が開き、その穴から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()が現れ、この島を攻撃しているのだそうだ。

 

 僕達は島が攻撃を受ける前に一体化を解除していた為、無事ではあったのだが、その報告を聞いたシャオは顔を真っ青にしていた。……どうやら、シャオが切り出そうとした話に関係がある様だ。僕達は階段を駆け上がりながら、シャオから事情の説明を皆と情報を共有する為にモニカさんの能力経由で聞く事とした。彼は一時、エデンと繋がっているのではと僕は疑っていた。だけど、そう言った事は無かったが、彼の説明を聞いて、あの時のシアンに対する言い方の理由を把握することが出来た。

 

 シャオは僕と同じく、この世界の本来の住人では無く、第七波動による時間操作能力を応用した事による並行世界移動によってこの世界に来たのだそうだ。この世界に転移する以前に居た世界で僕とシアン、そしてオウカと知り合い、エデン打倒に協力した。

 そして…並行世界の僕はベラデンでの決戦に置いて、パンテーラにシアンの魂をミチルを利用する事で完全に引き剝がされ、パンテーラに普遍化(ノーマライズ)と言う形で完全に取り込まれてしまったのだそうだ。

 

 パンテーラはシアンの魂を取り込んでアリスと同じ能力、夢想境(ワンダーランド)に目覚め、その圧倒的な能力を前に並行世界の僕は敗れ、その僕自身もシアンと同様に、能力因子ごとパンテーラに取り込まれてしまったのだそうだ*6

 その後の顛末は、僕がテンジアンに話した時と同じ事が…無能力者の殲滅と引き換えに、シャオとパンテーラ以外の能力者は滅んでしまったのだそうだ。

 

 その後、パンテーラは自身の能力で能力者の皆を復活させたのだが…その能力者の皆が、自身の生み出したまやかしであると把握してしまってから、彼女は狂いだした。

 そして、この世界で唯一の生存者であるシャオを殺し、取り込む事で本当の楽園が完成すると彼女は彼の命を狙い始めたのを切欠に、自身の能力を利用してこの世界に逃げて来た。これが、シャオから聞けた話であった。

 

 僕は階段を上がり切り、僕の家から飛び出し、シャオの言っていた彼女の姿を捉えることが出来た。その姿はモニカさんの報告があった通りの外見に加え、その髪の色は僕と同様にシアンと同じ紫色の髪をしており、変身現象(アームドフェノメン)まで引き起こし、背中に自身よりも大きな翼を展開していた。

 こうして僕は…いや、僕達は()()()()()()()()()()()()()に身を投じる事となったのであった。

*1
「塔をコントロールする詩」の事で、アルトネリコを直接制御できる力を持つ。よりメカ的でシステム的な、無機的部分が多く含まれ、「想い」を信号としてしか見ない類の、明らかなる「人工的な処理」が介在する。このヒュムノスを歌う為には、本来ヒュムネクリスタルと呼ばれる物に込められた想いをダウンロードする必要がある。

*2
いわゆる第三紀で「詩魔法」と言われているもので、戦闘などで使う妄想魔法の事

*3
正式名称は「四次正角性中核環」。レーヴァテイルオリジンとβ純血種の核である「中核三角環」のハイレベル版。そのコアは大地の生成を可能にすると言われる大地の中核となる存在。

*4
受けためぐみや恩に対してむくいようと、感謝の気持を持つこと。

*5
この設定は、この二次小説独自の物です。

*6
この事をシャオが知っているのは、一度彼女と対峙した時にその話を聞いたからです。




ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。

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