【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる 作:琉土
虐げられし者達に射した
救世の巫女――その名はパンテーラ
能力者達を夢幻の愛で束ね、体現せし
僕は家を飛び出し並行世界のパンテーラを補足した後、辺りを見回した。見慣れた街並みは既に瓦礫と化しており、僕の家から離れた位置でアシモフを中心としたフェザー組の皆が彼女に対して応戦していた。
アシモフは空中に居る彼女に対して蒼き雷霆による電力供給が可能となった
並みの
アシモフの持つE.A.T.R.の銃身が焼き付いていたり、息切れしそうなジーノを見る限り、どうやらこのやり取りは既に何度か行われている様だ。
(ちっきしょう、結界に阻まれて攻撃が届かねぇ! アリスの結界よりもずっと頑丈じゃねえか!!)
(バリアにクラックを入れる所までは問題は無い。だが、再攻撃を仕掛ける時点で即座に修復されてしまうか)
(この場に居る皆はこのまま攻撃を続けながらGV達が戻ってくるまでこの場を持たせて! あのバリアを突破出来ない以上、私達に出来るのはそれだけよ!)
対する別世界のパンテーラは攻撃が途切れた隙を縫って七人の能力者やエデンの兵士達を呼び出して…いや、
それを見た僕達、エデン組、皇神組、アキュラ組、そしてフェザー組の中で僕達に同行していたアリスとシャオがアシモフ達を掩護する為に、メラクの
「アシモフ! ジーノ! モニカさん! 皆無事か!?」
「GV、ナイスタイミング! ジーノ様を含めた皆は今の処ピンピンしてるぜ? ただ、あの女の結界をぶち抜けなくてなぁ」
「その上で増援を嗾けられてこちらが不利になる直前だった。本当にいいタイミングで来たな、GV」
「それよりも、今私達が戦っている相手が別世界から来たパンテーラなのは確かなの、シャオ?」
「間違いない、僕の居た世界のパンテーラだ…もう二度と会う事なんて無いと思っていたのに」
「―――――――――――――」
異世界のパンテーラは言葉を発していなかった。だけど、シャオを見つけた途端シアンにも迫る程の狂気を発散し、大量の剣や鉄槌を降らせた。
それに対して僕は波動防壁で対抗しようとしたのだが、その前にシャオが手をかざし、何かしらの力を働かせてそれらを迎撃していた。…うっすらと、僕達を囲むようにシャオの第七波動の力が展開されていた。恐らくシャオの時間操作能力により、時間を停止させた空間で迎撃したのだろう。
少なくとも、これで彼女がシャオを明確に狙っている事がハッキリした。そして彼女は自身の攻撃が防がれたのを見た後、新たに能力者を創造し、元々創造していたG7も含めて僕達に嗾けた。新たに創造された能力者は、エリーゼを除いた皇神組の能力者を始めとし、それ以外の見た事も無い能力者や、そして…
…分かっていた事だけど、こうして見せつけられると改めて思い知らされる。向こうの世界の僕は彼女に敗北してしまったのだと。…あの彼女が創造した能力者の中にエリーゼが居ないのが唯一の救いだった。恐らくだけど、以前僕が話した事の通り、エリーゼの能力因子は彼女の手に渡らなかったのだろう。だけど、それは何の慰めにもならない。
何故ならば、打倒されたらまた創造すればいいのだから。彼女の撃破した能力者達が再び彼女に創造され、再び戦列に加わって来た。このままではこちらの力を使い切ってしまうだろう。そこで僕はシアン達に塔を出現させて別世界の彼女ごと葬ろうとしたのだが…パンテーラが待ったを掛けた。
「ガンヴォルト、ここは私に…いいえ、
「
「ええ、
「……幻はそれ単体では他の存在が無ければ姿形も取ることが出来ない…君の凄まじい承認欲求は、これが理由なんだね?」
「そうです。だからこそ私は電子の謡精の力が欲しかった…アリスが持つ夢想境の力が欲しかったのです。ですがガンヴォルト、貴方が教えてくれた
……幻は何物にもなれませんが、他の存在があれば姿形を得ることが出来ます。それも、
「確かに、幻なのだからそのくらい出来て当然だ。……
パンテーラはこくりと縦に頭を振った後、テセオにベラデンに居る全ての
彼女は言う。一歩間違っていれば今戦っている彼女の末路を辿る事になっていた事を。だからこそ、この危機を
『力を合わせて乗り越える…同士パンテーラ、私達はどうすれば!』
「皆さんの…エデンのメンバー全員で、協力強制を行うのです」
『ですが私達はポーン…このようなか細い力では、パンテーラ様達の力にはとても…』
「…確かに、一人一人のその力はか細いのかもしれません。ですがそれを束ねれば、何者にも勝る力となるのです。…この島の誕生を、テセオの映像経由で見た皆さんならば、それが分かるはずです」
『同士パンテーラ…』
『同士パンテーラが、私達の力を必要として下さる…!』
『ならばそれに応えるのが、我等ポーンの死命!』
『受け取ってください、同士パンテーラ! 私達全てのポーンの力を!』
「…………ありがとうございます」
ベラデンのある方角から、神代の結界を透過してパンテーラに力が流れ込んでくる。そして今の話を聞いていた僕を含めたこの場に居る皆からも、同様に力が流れだした。この場に居る全員がパンテーラに力を貸したいと願ったからだ。
皆の力を受け、パンテーラはその瞳に涙を浮かべていた。何故なら今の彼女は力だけでは無く、自身を信じてくれている皆の想いも、全て受け止めていたからだ。
その行為を隙と見たのだろう。別世界の彼女や創造された能力者全員がパンテーラに集中砲火を仕掛けて来た。だが、その攻撃が彼女に届く事は決してなかった。
炎が、氷が、雷が、水が、金属が、光が、植物が、糸が、水晶が、髪が…パンテーラと協力強制した能力者によるありとあらゆる能力が同時に共存して防壁となり、その全てが防がれた。そう、
これがパンテーラの新たな答え。幻故に全てを許容し、受け入れ、幻と
「幻と現、その境界線を取り払う事で矛盾すらも含めた全てを受け入れ、共存させ、皆の居場所を体現する力…これが私の新たな
大いなる
…先ずは貴女の持つその狂気を晴らし、今の私の在り様を此処に示させて頂きます」
そんなパンテーラから放たれる多種多様な何百と存在する第七波動。だけど僕には分かる。それら全ては幻だ。だけど、これはどういう事だろう? その幻の奔流に別世界の彼女に創造された能力者達は飲み込まれ、消え去っていく。同様に巻き込まれた僕を含めた味方に、一切の影響を与えずに。これが幻と現の境界線を取り払うと言う事なのだろう。
それに対し別世界の彼女は再び能力者達を創造し嗾け、自身のSPスキル「
そして幻が晴れたその先にはボロボロになった別世界の彼女の姿があった。そんな彼女の狂気は晴れ、シャオでは無くパンテーラを見つめていた。羨む様に、願う様に。この世界の中心で狂気の晴れた無垢なる彼女は涙を零しながら、今ひとたび揺らめき吼えた。ただ、「そうありたかった」と…
皆の祈りを、想いを受け、真の聖者はその姿を現した。
想い、願い、祈り、そしてそれらに内包された矛盾すら夢幻の愛で束ね、体現せし存在。
そんな聖者である彼女を前に、
彼女が持つ能力は夢幻鏡では無く、そして夢想境でも無い。
その能力の名は
故に――狂い哭け、悲しき
――――
この言葉を受け、私はとても複雑な気持ちで彼女を見ていました。彼女は間違った道を突き進み、
だから私は彼女に手を差し伸べたその時、彼女の体が崩壊を始めたのです。…向こうの世界で無理をして無能力者を殲滅した事に加え、この世界に来る際にも力を使い、そして私達との戦いで遂に力を使い果たしたのでしょう。彼女は私の手を取ろうとしていたのですが、自身の体の崩壊の始まりを知り、伸ばしていた手を引っ込めてしまいました。「悪夢から目を覚まさせてくれてありがとう」とお礼を言いながら…
今の私は
ならばシアン達の詩魔法による癒しならどうかと、私は彼女達の詩魔法に関する記憶を読み取りつつ*2、これを行使しました。ですが、やはりその崩壊が止まりません。
このまま彼女を見捨てるのは宜しくありません。折角皆が笑顔で未来へと進める事が確定したと言うのに…こんな事で出鼻を挫かれる訳にはいかないのです。そこで私は彼女の崩壊を食い止める為にシャオの時間操作能力を用いて彼女の時を止めながら、私はガンヴォルトに尋ねました。彼女を助けるにはどうすればよいのかを。
「シアン達の詩魔法やエリーゼの能力でも無理だと、もう直接的に救う手段が無い。残念な事だけど…ね」
「……そう、ですか」
「だけど、間接的にだけど、救う手段はある」
「間接的に…ですか?」
「僕がこの世界に来た方法を…
『『GV…
「……シアン、モルフォ、大丈夫だ。今回の転生は
「では、私が行うのですか?」
「ある意味そうではあるのだけれど、厳密に言うと
私はガンヴォルトの言う通りに、愛と転生を意識して記憶を拝見させて頂きました。そして私はその記憶の中で、
私がお目当ての記憶を見つけた事にガンヴォルトは気がついたのでしょう。彼はとある考えを私に話しました。
曰く、「異世界と言う物が存在しているのだから、こう言った創作物の世界もまた、本当に存在しているのではないのか?*3」と。普通に考えたら現実と創作を区別できない馬鹿馬鹿しい考えなのですが、現にガンヴォルトはその異世界から転生してこの世界に来ており、その上、目の前の彼女は平行世界からこの世界に来ているのです。
ならば試してみる価値はあると、その神を呼んでみる価値はあると私は考えました。そして私はガンヴォルトにその神を呼び出す方法を教えてもらいました。邯鄲の夢の概念を。第六法「終段」を。
…皮肉な物です。この終段と呼ばれる物でエデンの計画は台無しになったと言うのに。それを私が用いて、別世界の私を救おうと言うのですから。ですが悪い気はせず寧ろ、呼び出される神に対してワクワクしている私が居るのです。
そしてこの日私は、その神を通じて本当の愛を知る事が出来たのでした。
「あらゆる
……如何かこの場に姿を現し、彼女を次の来世へと導いて下さい。
――
それは黄金に輝く髪を靡かせ、荘厳なるドレスを身に纏う、無垢なる女神。
運命や人の心や生き方に干渉せず、今生における自由を許し、来世を保証する神。
全ての人間に慈愛を振りまき抱きしめ、幸せを願う法則が形となった存在。
その神の
輪廻転生の
故に――狂い哭け、避けられぬ
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。
この話の更新に伴い、Dies iraeがクロス先に追加されます。
なお、他の神の出番は多分ありません。