【完結】輪廻を越えた蒼き雷霆は謡精と共に永遠を生きる 作:琉土
龍の
因縁の地で響くは女神と謡精の歌声
それはこの世界全ての人々の、そしてぶつかり合う少年達の為に等しく奏でられる祈りの歌
戦いが終わり女神が姿を消した後、皆は小高い山に泊めていた飛天に乗り込み浮島から離れ、僕達は最後の戦場の舞台となったこの島を大地の心臓を介して消滅させた。流石にアレだけの規模の空に浮いた島をそのままにしておくのは今の段階ではマズイと判断していたからだ。
その後、飛天内部で皇神組、エデン組、フェザー組による三組でどこに浮島を作り出すか、今後のそれぞれの組織の関係について等の事が話し合われた。
そして話し合いは終わり、エデン組の皆は一度ベラデンに残っている能力者達とも意見交換を行う為にそこに帰還し、皇神組の皆もこの話を上層部に持ち掛け、交渉に臨む為に帰還する事となった。そしてフェザー組はこの皇神未来技術研究所跡地にて、一週間後に僕とアキュラの決闘のジャッジをする為にこの場の使用許可を取ってくれた。
以前アメノウキハシでのミッション前の雑談の際、アキュラに「今までの俺の…いや、俺達の全てをお前にぶつけたい」と頼まれていた。そしてこのミッション後、色々とゴタゴタが一度に舞い込んでいた為に先延ばしになってしまっていた。
それが全て片付き一段落した事で、遂にこの時が…アキュラとの決着を着ける時が来たのである。この戦いに意味等と言う物は無い。あえて言うならケジメを付ける、区切りを付けるくらいの意味でしか無い。だからこそ僕はそんなアキュラの提案に乗った。この決着を持って互いに手を取り合う為に。
その為、決闘前の準備も念入りに行われる事となった。準備が必要なのはアキュラ側も同じだったからだ。
今回の僕の装備は「神秘のレンズ+」×2、「セラフリング++*1」「謡精のペンダント++*2」「ディヤウスプラグ」。以前のアシモフとの戦いを見るに、雷撃麟の射程範囲内に収める事が困難であると判断し、SPスキルを中心に立ち回ろうと判断したからだ。
後、決闘時のルールも話し合われた。終段の使用の禁止や、謡精の歌及び謡精女王の呪歌の使用時、シアン達は協力強制してパワーバランスを均一化する事、そして歌は決闘開始前に発動する事、そして決着は一度動けなくなったり、降参の意思を相手に示す事等がこの時に決まった。
この決闘に歌が盛り込まれた理由はミチルのアキュラに対して力になりたいと言う想いを汲み取ったのが主な理由だ。それに、シアン達も同じ気持ちがあったのもあり、シアン達とミチルとの能力の差の考慮も考えた結果、協力強制してパワーバランスの均一化を図ったのだ。
実際に決闘の五日前あたりからこの試みが上手く行く事は確認済み。その際、アキュラにこの強化に慣れてもらう為に軽い組手をしたりした。そして一週間後の皇神未来技術研究所跡地にて、僕達は互いに向き合った。
「この日を待ちわびたぞ、ガンヴォルト」
「僕もだよ、アキュラ。…じゃあ、そろそろ始めよう。これ以上、言葉は不要だろう」
「その通りだ。俺の持ちうる全てと、ミチルとロロの
「負けるんじゃねぇぞ、GV!!」
「アキュラ様、ご武運を」
「GV、私から言える事は全力を尽くして後悔の無い様にして欲しい。それだけよ」
「アキュラ君! 私の歌が、きっと守るから…! アキュラ君の
『GV! 私の歌が、貴方の
『アキュラ君! 僕もミチルちゃんと歌いながら一緒に戦うから、全力を出し切ろう!!』
『アタシの歌よ! 想いよ! GVに
「私の雷撃とシアン達の歌が勝負開始の合図だ。互いに悔いの残らぬバトルを私は望んでいる。では、始めよう。…迸れ、
『『『「響け!
手を取り合う為の
アシモフの蒼き雷霆の合図の雷撃と同時にシアン、モルフォ、ミチル、ロロの協力強制による歌が、僕とアキュラを強化した。その響き渡る歌の名は「藍の運命」。この歌は転生前の大学受験が終わった時に初めて聞かせてくれた歌だった*3。元々はデュエット曲として作成された物で今回の場合、それぞれのパートをシアン達とミチル達が二手に分かれて担当している様であった。
一週間前の黄昏の女神の
そして、アキュラと手を取り合う為の互いの全てをぶつける
先ずはダートリーダーでアキュラをけん制。アキュラも僕の放ったダートと同じ軌道にレーザーを撃ち込み、相殺された。どうやら考えている事は同じのようだ。
その事に、僕もアキュラも好戦的な笑みを浮かべつつ、互いに本格的な動きが始まった。今回の歌の強化は過去に類を見ない程の物。アキュラの元々凄まじい機動性も更に輪を掛けてとんでもない事になっている。まるで見えない壁を使って跳ねているかの様な軌道を何の前触れも無く繰り出しながら間合いを離し、僕を翻弄しつつ正確な射撃を繰り出してくる。
だけど、歌による強化はこちらも同様。神秘のレンズ+×2による補正も加わった今の僕ならば、こんな風にダートリーダーでアキュラを狙いつつSPスキルの複数即時発動だって出来る。
「降り注げ! スパークカリバー!! 舞い散れ! ライトニングスフィア!! 絡み取れ! ヴォルティックチェーン!! 両断せよ!! ルクスカリバー!!」
「ぐっ…そう来なくてはな! 迎撃するぞ!!」
『了解だよ、アキュラ君! この一週間で僕に増設されたビットとエクスギア、それにミチルちゃんと僕の歌で強化された今なら、複数の特殊弾頭カートリッジの同時使用だって出来るはずだよ!!』
「ああ、細かい制御は任せたぞ、ロロ! システム『ギルトコンビネーション』起動!! 奴の雷撃を迎撃する!!」
アキュラのビットから放たれる七宝剣の能力者達の能力を再現した疑似第七波動によって僕の攻撃が迎撃されていく。これらも全て歌と波動の力による強化を受けた事で、SPスキルにも負けない程の出力を得ているのだろう。スパークカリバーがブレイジングバリスタで迎撃された。ライトニングスフィアがワームホールに飲み込まれた。ヴォルティックチェーンがミリオンイーターに喰われた。ルクスカリバーがグリードスナッチャーによる簒奪の弾丸に飲まれた。
アキュラは見事に僕のSPスキル群を攻略しのけた。流石はアキュラ。そう来なくては喧嘩のし甲斐も出てこないと言う物だ。
高速で動き回りながら見たアキュラの表情が僕に訴えかける。「お前の力はこんなものでは無いだろう? 様子見はそろそろやめたらどうだ」と。確かに、そろそろ準備運動もいいだろうと僕は思った。僕のそんな気配を感じ取ったのだろう。僕が能力と動きの強さと速さのギアを引き上げたのをアキュラは感じ取り、より深い好戦的な笑みを浮かべながら
その事に不意を突かれた僕は
(カゲロウが無力化されたのか! アキュラもカゲロウを再現していたから、無力化する手段も当然用意しているか。…アーマーとペンダントの効果が無かったら、大きな隙を晒していた処だった)
「防がれたか…まあいい、それは前準備にすぎん。本命はこちらなのだからな!!」
『いけー! 撃ち抜けー!! アキュラ君!!』
この時、
その攻撃に身動きを取れずに捌くのに手一杯の僕に、アキュラは隙と見て新たな疑似第七波動を展開した。それは今までのそれとは全く性質が異なっていた。
「これは…!」
「これがパンテーラの第七波動を解析して出来た疑似第七波動「ラストドップラー」だ。…本来ならば俺の形をした幻を複数展開するのが限界だったが…ロロとミチルの歌のお陰で一時的にではあるが、限りなく俺自身に近い実体を持った幻影の展開すら可能となった!
世に誇る我が
これで終わってくれるなよ、ガンヴォルト! 舞い踊れ、ファイナルラストドップラー!!」
「……っ! 波動防壁、最大展開! 迎撃しろ、ヴォルティックチェーン!!」
ビットを核として出来たアキュラの幻影達が僕目掛けて左腕に持った盾から異なる疑似第七波動による攻撃を一斉に放ってきた。僕は波動防壁を即座に全面に展開しつつ、波動の力で強化したヴォルティックチェーンでアキュラ達を迎撃した。何体かの幻影と
そして、幻影三体による同時ロックオンを受けその攻撃に晒され、身動きの取れない僕目掛けてアキュラ本人による上空からの急降下攻撃を仕掛けて来た。だけど…
『嘘! タイミングは完璧だったはずなのに、受け流された!?』
「気圧されるなロロ! ガンヴォルトならばこの位出来て当然だ! 切り替えて次の手で行くぞ!
(受け流された時、奴のアーマーの手応えが可笑しかった…ただアーマーの強度を引き上げるだけの装備では無いと言う事か。奴の体捌きもそうだが、フェザーの技術者も侮れん)」
「(受け流されたと同時に僕の雷撃麟の範囲外に即座に離脱したか。流石に、楽に勝たせてはくれないな。…こちらの消耗はまだ許容範囲内。それに、
流石だよアキュラ…今度はこちらから行くぞ!
響き渡るは謡精の歌声 轟かせるのは龍の嘶き 総身総躯、雷神と化せ!
シアン…モルフォ…僕に力を! アンリミテッドヴォルト!!」
「……来るか、ガンヴォルト!」
僕はこの戦闘の間に特殊なダートをアキュラを狙いながらこの戦いの場に規則的に打ち込んでいた。この特殊なダートは僕の増幅された第七波動に呼応し、突き刺さったダートを起点に僕の第七波動の網目の結界を展開する様に出来ている。そう、僕が潜在能力を開放した瞬間、アキュラはこの網目の結界に捕らわれた。
…やっと捕まえたぞ、アキュラ。今度は、君が僕の攻撃を受け止める番だ。
「掲げし威信が集うは切先…」
それは真の力を解き放った
「夜天を拓く雷刃極点…」
それは蒼き雷霆の
「齎す栄光、聖剣を超えて!」
出現させた真なる雷剣を両腕で天に掲げ、波動の力で更に増幅し、聖剣の
そしてこの時僕は別の
「行くぞ、アキュラぁぁぁぁ!!」
「『……っ! アキュラ君!!』」
「ミチル、ロロ…俺を信じろ! まだ勝負は終わっちゃいない! 今こそ、
そして僕はアキュラに対して蒼き巨大な柱を叩きつけ、この勝負に決着を着ける事が…
…僕は以前、ノワ経由でとある資料を渡していた事を思い出していた。そう、アキュラの父親である神園博士の死の真相を纏めたファイルと同時に渡していたあの情報…命を失った能力者の能力因子は魂に乗って彷徨う事、つまり能力の拡散に対しての事だ。恐らく今僕の第七波動を吸収しているあの機能は…!
そう考察している内に、蒼き巨大な柱を経由し、どんどん僕の第七波動がエクスギアに取り込まれていく。そうこうしている内に、アキュラは複数のビットをエクスギアの先端部分へと集結させ、そのビットから爪を模ったエネルギー刃を形成した。恐らく、僕の第七波動も利用しているのだろう。
それは嘗ての自身が持っていた怨嗟ともう一人の蒼き雷霆の鎖を断ち切った舞い踊る爪。それを一点に収束、形成させた真なる絶爪。それにより、蒼き巨大な柱は完全に迎撃され、返す刃を持もって僕にブリッツダッシュで接近しながらその爪を振り下ろした。
「我が盾に集うは我が半身 討滅せしは狂った
行くぞロロ、オーバードライブ『カタストロフィ』起動!」
『了解! 僕の全部も持ってって、アキュラ君!!』
『「行く
『『負けないで、GV!!』』
「まだだ! シアン達の想いが届く限り、僕は倒れはしない!
迸れ、
僕の第七波動を吸収した真なる絶爪が僕に迫る。それを、余剰の力が無くなった真なる雷剣で受け止める。その衝撃で互いの
とはいえ、何となくこんな状況になるだろうと僕は思っていた。だからこそ事前の仕込みでダートリーダーをテールプラグと直結し、
テールプラグ「ディヤウスプラグ」には真なる雷剣の余剰の第七波動を限界まで蓄積させている。そしてこのプラグには、ナーガのチャージショットの威力を一気に跳ね上げる能力がある。つまり僕がやろうとしているのは、僕自身のプラグに限界まで蓄積させた第七波動の放射と強化されたチャージショットの重ね掛けだ。
そして、もう既に僕は先ほどの状況を作り出す為の無茶が祟ってオーバーヒートしてしまっている。それを利用したダメ押しの為の底力のレンズ。これが本当の僕の切り札。
僕は体勢を整え、既にチャージを済ませたダートリーダーをアキュラに向けた。その時僕が見たのは、無防備の状態のアキュラでは無かった。僕と同じように銃を構え、
それはそうだろう。何しろ互いに考えている事がここまで同じだったのだ。思わず笑いたくもなる。向こうも同じように笑っていたのだから、多分僕と似たような心境だったのだろう。
そして僕達は互いにトリガーを引いた。極限まで威力を引き上げたチャージショットと、以前エリーゼ戦の時に見せた緊急発射モードの
…今の僕はオーバーヒート状態である上に、アーマーもダートリーダーも機能を失う程に損傷しており、僕自身も満身創痍と言ってもいい状態だ。そして土煙が晴れた先に居たアキュラも僕と似たような状態だった。
アキュラもヴァイスティーガーと銃がほぼ全壊な状態の上に、僕同様に満身創痍で辛うじて立っている状態であり、ロロも人型を維持出来なくなってしまったのだろう。ビットも全て破損しており、ロロ本人もバトルポットの姿で辛うじて浮遊している状態であった。
互いに装備は全破損。その上満身創痍。だけど、まだ互いに立っている。ならば…まだ僕達の勝負は付いてはいない。僕は全身に走る痛みを無視し、アキュラに対して格闘戦に持ち込むために前へと駆け出した。アキュラはそんな僕を見て、破損し、機能を停止したヴァイスティーガーをパージし、僕と同様に駆け出し…互いにぶつかり合った。奇しくも、五日前の組手をした時と同じ状況となった。
「ぐぅ…いい加減に…倒れろ! ガンヴォルト!」
「シアン達の前で…倒れる訳には…いかない! アキュラこそ、いい加減に倒れたらどうだ!?」
「それこそお断りだ…! ミチル達の前で、無様に倒れる訳にはいかん!!」
「互いに武装の無い状態なのに…アシモフ、もうそろそろ二人を止めた方が…」
「ダメだ。今ストップしたら、互いに悔いも残る上に、私があの二人から恨まれる事となる」
「でも…」
「モニカ。あそこまで来たら、もう互いの男の意地と意地のぶつかり合いだ。止めるのは野暮って奴だぜ? それにほら、見て見ろよモニカ」
『いけー! アキュラ君! そこ、右だよ!』
『GV! 左から攻めて!』
「アキュラ君、そのまま真っすぐ!」
『正面から来る…! 受け止めて、GV!』
「アキュラ様、負けたら特別メニュー一時間追加で御座います。身を粉にして尽力して下さい」
「…こんなんだぜ?」
「はぁ…全く、しょうがないわね」
歌が鳴り響く。
持てる手段を出し尽くし、互いに無手の僕達に。
それでも戦い続ける僕達に。
優しく、祝福され、未来に対する希望に満ちた
それはまるで新たな時代の幕開けであるかの様に。
そして、互いの渾身の一撃で僕達は倒れ、その後…
僕は遂に
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました。